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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 一緒に行こう


    第一章  旅立ち(亜人国編)


 第二十八話  「一緒に行こう!」




 遂に夏祭りの日。


 別れはいつでも辛いものだけど、ローチェとシスターには必ずまた会える予感があった。 

 でも、リリカには何故かその予感がない。

 ソマルさん達にはあるのに……



 朝食後にリリカと一緒に外に出ると、ソマルさん達も一緒に出て来た。


 「リュウ、昨日も言ったが今日は祭りで1日中祭りの会場にいる。 だから別れはここで終わりだ…… 必ず生きて戻って来いよ」

 「うん、必ず戻って恩を返すよ。 本当にありがとうございました」

 「ふふ、恩は返さなくてもいいから、遠慮なく帰って来なさい。 ……せめて、私達が生きている間にね。 それと今日はリリカをお願いね」


 いい人達に凄く信頼されてる…… 昨日の夜は本気でリリカを連れ去ろうと考えていたのに。


 リリカとベニラムまで歩く。

 リリカの目が赤いのは皆んな気付いてただろう。


 「昨日、もらった刀を抱いて寝ちゃった。 リュウを感じて涙が止まらなくなっちゃったよ」


 まただ…… 不意に言いたくなる…… 『一緒に行こう』って……

 冷静になれ、俺…… 海に行った時に痛感したはずだ。  

 リリカを連れては海の滝は越えられないと……


 「リリカ、いつも泣かせてばっかりでごめんね……」


 自分がもどかしくて仕方ない。

 力がない、意志も弱い、全て中途半端。

 涙が出てくる……


 それからは何も話さずお互いを見ないようにベニラムまで歩いて来た。 

リリカも涙が止まらなかったようだ……


 気を取り直した感じでリリカは……


 「待っててくれるんだよね…… それは凄く嬉しいよ」


 と言い残し、学校へ行った。

 

 

 最後にベニラムを見て回る。


 この街は人間国の王都の半分もないけど、街はこちらの方が発展している。

 そしてこの街にもライザ流、と言う剣術道場がある。

 そして街から離れた所にも、陰火流、という剣術道場があるらしい。

 そしてこの陰火流は人間国の王都にもあった。

 有名な流派なのだろうか……

 ちなみにドスケーベはライザ流を習っているらしい。 


 裏の世界にも剣術道場なんてあるのだろうか?

 俺は貧乏だったから練習方法も含め完全に我流。

 今更通うなんて出来ないだろうな……



 リリカと合流して家まで帰って来た。

 リリカの送り迎えで1番会話のない行き帰りになってしまった…… 最後なのに。


 お昼なのでリリカが軽く軽食を作ってくれたので、それを頂く。 

 やはり2人共この後の別れを意識してしまい、いつものように楽しい会話は出来ない……

 

 この後の予定は、今度いつ入れるか分からない風呂に入り少しでも寝溜めしておく。

 そして3時頃に祭りの会場に行く予定。

 先ずは風呂だ……


 浴槽に入りながら、フゥーっと一息。

 此処での生活が楽し過ぎて、裏の世界へ行く事が不安でしかない。

 それでもこの生活は人の優しさに甘え、俺自身が何も生み出せない世界でしかない。

 俺の未来はもうレイモンにはないのだ……


 「リュウ、私も入ってもいい?」


 えっ! 驚きが大きくて、応えるのに間があったのは確かだけど……

 ガラッと戸を開けて、リリカは入って来た。


 真っ赤になっているけど何も着てないし、何処も隠してない。

 もちろん思春期の俺の目はいつもと違う場所に釘付けとなった。


 「は、恥ずかしいね…… でも恋人だからいいよね」


 いや、絶対にダメだ! 俺は今日の夜にはいなくなるしソマルさん達だって帰って来るかもしれないんだぞ! っと言うつもりだったんだ……


 「リリカ…… 綺麗だ……」

 「ふふ、リュウの視線がやらしいよ……」

 

 ハッ、何をしているんだ俺は…… いや、リリカが決意して何処も隠さずにいる。

 男として俺だって何処も隠さない!


 「洗ってあげるから、こっちに来なさい」


 俺ももう決心した。 「うん」と返事して洗い場へ。


 「キャハ、リュウ凄いね。 リュウはこういうのに興味ないと思ってたよ、本当に凄い……」

 

 どこ見てそのセリフを吐く!


 「仕方ないでしょ、俺は前世でも12歳までしか生きてないし、こういうのは初めてなんだから」

 「知ってる! でも私だって初めてだよ」


 お互い全く目を合わさずに話す。

 そして自然にお互いを洗っていた……


 「ふふ、この触りかたってタローに教わったの?」

 「タローは犬! ……教わってたら怖いでしょ」


 少しふざけ合いながらも俺達の幸せを感じた時間は夕方まで続いた……

 


 夕方。

 予定の時間はとっくに過ぎているので、ソマルさん達も心配しているかもしれない。


 リリカは祭りの時に着る衣装に着替えている。

 化粧もしているようだ……


 「お待たせ、どうかな……?」


 黒と赤を基調として紫のラインの入った短いスカートのセクシーなドレス。 


 「うん。 凄く綺麗で、ちょっとびっくりした」

 「う、嬉しい…… じゃあさっきと比べると?」

 「……断然さっき」

 「キャハハ、それも嬉しい。 リュウを好きになってよかった」


 ドキッとした……


 「それじゃあ行こうか、リリカ」

 

 「うん」とニコッと笑うリリカが愛おしい。



 俺は周りの風景を目に焼き付けながら歩いた。

 毎日、同じ時間に走った坂道を今日は歩く。

 この道を帰る時はリリカは家族と一緒だろう。 

 そこに俺はもういない……


 会場に近づくとドンドンと太鼓の音が聞こえた。

 いつもは誰もいない山の坂道も、今日は人が歩いている、


 そして200段以上ある階段。

 この階段も強烈に思い出深い。

 朝はリリカは絶対に自分では登ろうとしなかったので、朝だけはリリカを抱いて飛んだ。

 そして、何度転んだか分からない階段下りを毎日した。

 ただ、この練習方法は瞬時の頭の回転に役立つので、蓮撃だけでなく戦いの中でも役立つだろう。



 会場は人が沢山いる……

 とりあえず建物の中にいる、ナッソーさんにリュックを預ける。


 「何か変だね。 私は毎年この祭りに来てるけど、今年は私とリュウの場所に、勝手に祭りの会場を作られたって感覚だよ」

 「まぁ、毎日2回も通ってたからね。 しかもその間ほとんど人には合わなかったし」

 「ちょっと複雑。 ここは私とリュウの場所なのに!」

 「俺達が勝手に通ってた場所でしょ。 俺達の場所じゃない」

 「違うの! この場所はこれから先もずっとリュウと私の場所なの!」


 リリカ…… その理屈だと、俺達が毎日歩いた通学路も俺達の場所になってしまう。

 そしてその通学路を、これからはリリカ1人で歩かなければいけない。

 その時、リリカが泣かなければいいな……


 「リュウ、私は大丈夫だよ。 時間はかかるかもしれないけど、誰かと恋をして普通に暮らして行くと思う。 でもリュウの事は初恋だから忘れてあげないね。 それくらいはいいよね……」


 また感情が昂る。 


 リリカを連れて行きたい……



 祭りは広場の中心に音楽隊が何かを弾いている。

 その周りに踊る人々、結構スピーディーな踊りだ。

 そして端っこの方にはパイプテントが幾つも建てられ、中で何か料理が作られている。

 人気のある食べ物なのか、人が並んでいるテントもある。 

 ここの食べ物は全てタダなので、早い者勝ちなのかも。


 ぐるっと1回りしている時に、リリカは何人も学校の友達に声をかけられていた。

 その中には男も数人いて、明らかに俺に敵意のある視線を向けてきた。 

 ムカつくけど、俺がいなくなっても相手は沢山いそうだ。


 だいたい、リリカは何故俺に惚れた?

 金はない、性格も自分勝手とよく言われた。 マスクは目が鋭く、男には不評だった。

 いいとこないじゃん!

 


 個人的には、兄のような正義の味方マスクが良かった。

 

 「大丈夫か? お前はまだやり直す事が出来る! 月に向かって一緒に走ろう!」

 

 みたいなセリフの似合う。

 俺のマスクから、出そうなセリフは……


 「チャンスをやる。 今ここで俺に斬られるか、月に向かって一生走るか選べ!」


 だな……

 まぁ、いくら俺が頑張って一緒に走っても、途中で面倒臭くなっちゃって、斬ってしまう可能性が高い。

 

 「ねぇ聞いてる? 何か食べる物でも取ってこようよ。 この後、大変なんでしょ」


 確かにこの先は、まともに美味しい物など食べれなくなる。 いっぱい食べておかないと……


 一旦リリカと離れ、それぞれ食べ物をもらってきた。

 鍋料理に、焼き肉、後はよく分からない、ごちゃごちゃした料理。

 それを2人で広場の端っこで食べていると、付かず離れずの距離でリリカを見てる男が数人。


 「リリカが学校の友達? さっきからこっちをガン見してるけど」

 「友達ってほどでもない。 そんな事よりいっぱい食べておきなさい。 これからまともに食事だって出来なくなるんでしょう」

 

 そうだった。 無理してでも食べておかないと……


 「この後は最後のチークタイムなの。 簡単なステップだし、一緒に踊ってくれる?」


 なるほどね。 だからチャンスを狙ってリリカを見てたのか。

 

 「当然。 リリカは俺の女だ」

 「ふふ、そうだよ。 でも明日から私は、フリーになるの」


 リリカには幸せになってほしい。

 出来れば、俺より弱く情けなくて、マスクの余り良くない人を選んでほしい。

 ハッ…… これが俺が正義の味方マスクになれなかった理由か⁈



 祭りの最後のダンス。

 スローな曲調で簡単なステップなので、初めてでも踊れる。

 相変わらず視線を感じるけど、今はリリカに集中したい。

 リリカは今日はずっといい匂いがしている。 もう制御しようともしてないようだ。


 「ごめん、兄さん。 ちょっと代わってくれる?」


 さっきガン見してた1人が、話しかけてきた。

 俺はリリカの従兄弟の設定だからな……


 「他をあたって。 私はリュウの女なの」


 そいつはびっくりした顔をしていたけど、ガックリして戻っていった。

 それにしてもリリカはカッコいい。


 その後は邪魔される事なくダンスを踊った。

 たまに目が合えば、人の目を気にすることなくキスをした。 

 この時間はお互いしか写ってないかのように、2人とも集中していた。

 それでも終わりはくる。


 曲が終わるとリリカは、『嫌だ〜』と叫び、その場に座り込んでしまった。

 しばらくボーっとしていたリリカだが、『ごめん』とスッと立ち上がった。


 2人で建物までやって来て、ナッソーさんからリュックを受け取る。


 「いよいよだね。 私とソマルはいつでもこの村で待っているからね」

 「ありがとうございます。 何十年後になるか分からないけど必ず戻って来ます」


 ナッソーさんはコクリと頷いた。


 ソマルさんは隣の人と楽しそうに酒を飲んでいる。

 でもチラッとこっちを見たので、深くお辞儀をした。

 この世界は日本式のお辞儀なんてないけど、ソマルさんは日本かぶれだったので意味は通じるだろう。

 これで…… 最後。


 「ありがとう、リリカ。 ここで……」

 「下まで送ってく!」


 どうやら俺の心は弱いらしい。

 もう1分1秒だってリリカと一緒が辛いのだ。

 それでもリリカの手を取り歩き出す。


 そして階段の上で約束をする。


 「リリカ、俺は下に降りたら山を登って行く。 リリカはまた階段を上がってきて家族と合流する。 約束出来る?」

 

 ツツーッとリリカの頬から涙が流れた。


 「うん…… だったらリュウは絶対に振り返らないで。 ……私も振り返らないから」

 「分かった。 いつも泣かせてばかりで、 ……ごめん…よ」


 最後の方は言葉になってなかったかもしれない。


 階段をゆっくり降りて行く。

 握られた手から、お互いに離したくない気持ちが伝わる……

 いつもより少ない段に感じるくらい、あっという間に下まで着いてしまった。


 下に着いてもお互いに、手を離せなかった。

 でも、初めから分かっていたこと! 決心して俺から手を離した。

 そしてお互い短く、「ありがとう」と言い合い、リリカはまた階段を、俺は山側に歩き出す。


 歩き出すと直ぐに光が届かなくなる。

 暗い道は心まで暗くする。 


 リリカ…… もう一度だけ、リリカを見たい……


 俺は約束を破り、振り返ってしまう……



 リリカは居た。 

 階段を登らずに、ずっとこっちを見ていた。

 そして俺が振り返ったのが分かると、ダッと駆け寄り飛びついてくる。

 『リュウが振り返るから〜、あ〜』と……泣きながら何回も言う……

 『一緒に行こう!』この言葉を何回我慢してきたのか。

 それでも大好きなこの子の未来を、不透明なものには出来ない。


 落ち着くまで抱き合った後、涙でグチョグチョの瞳を見つめ合いながら2人で『サヨナラ』を言った。



 今度は振り返らない。

 涙で前さえまともに見れないけど、後ろは振り返らない。


 何故、あの家にリリカが居たのか。

 何故、刀が出来上がった時に直ぐに発たなかったのか。

 何故、中途半端にリリカの気持ちに応えてしまったのか。

 

 辛い別れに心を引き裂かれつつ、

 俺はジェットを起動した。


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