この星の未来
第一章 旅立ち(亜人国編)
第二十四話 「この星の未来」
今日は早めにリリカを迎えに来て、ベニラムの街で保存食の下調べをする。
値段を調べつつお金が余ったら回復薬が欲しいと思っていたけど、お金は余りそうにない。 諦めよう。
まだ時間があるので街を見て回っていると、前から知ってる鼻が歩いて来た。
でも気まずいので鼻(目)を合わさないようにやり過ごす。
「リュウだったな」
速攻で話しかけられてしまった。 仕方ない……
「鼻ちゃんか…」
「鼻ちゃん? 我が名はドノヴァンだ」
なんと! ついこの前、鼻デッカちんから改名したばかりの鼻ちゃんがまた改名だ。
鼻ちゃん改め、ドノヴァン。
もちろん今後の出番は…… ない!
でも鼻デッカちんから鼻ちゃんに改名しといて良かった。
『鼻デッカちんか』では、またケンカになっちゃうよ。
「ドノヴァンか。 どうしたのこんな所で?」
「我は学校を卒業して、この街の自警団に入った。 警護がない時は、陶芸の修行をしている。 それよりリュウに聞きたい、我等が戦ったあの場所で、パッツァンの死骸が見つかった。 其方が関係しているのか?」
どういう展開になるか分からない。
黙っていた方が得策か……
「案ずるな、我はもう其方等を困らせるような事はせぬ。 それにその傷跡を見れば大体の想像はつく」
骨折から約1カ月。
自分の感覚では、結構治ってると思う。
でも診断は全治3ヶ月。
もう少ししたらもう一度病院に行ってみよう……
「まぁ、何とかね。 それよりリリカには近づいてないの?」
「あ、いや…… 街で会った時くらいは話すぞ」
そりゃそうだ。
俺もリリカからドノヴァンやドスケーベのことを聞いている。
寂しそうに昔はあんなじゃなかった、と言っていた。
「もう直ぐ、去るらしいな…… リリカが泣きそうな顔で言ってたぞ」
「……そんな事まで話してるんだ。 まぁ俺は人間だからね。 そのうち去るさ」
「リリカを連れて行ってやってくれ、頼む」
まさか鼻デッカ…… ドノヴァンとの会話で、こんな事を言われるとは思わなかった。
「連れてくと言うことは家族を裏切るという事。 リリカもそこまでは望んでない」
「そうか…… 其方のことを話すリリカを見てるとな…… いや、済まん、変なことを言った」
その後もドノヴァンとの会話は続いた。
ドノヴァンは結構いい奴っぽいんだけど……
まぁ、リリカも昔は凄くいい人だったと言ってたけど。
でも、最後に聞いておきたい……
「人間は嫌いか?」
ドノヴァンは少し考えた後……
「この星の未来に獣人や亜人はいないだろう。 何百年か、何千年かは分からないが…… だから今少し、壁を作るのを許せ」
確かにそうだ。
もし、ハーフが人間以外とも子供が産めるなら、人間の血が入った亜人や(亜人の血が入った人間の俺のような)、人間と獣人の血が入った亜人だって居て、こんな種族別れの国になってなかった。
全ては人間から種を守りたいから別れているだけの事。
でも…… リーブルは種族が混じり合っていると聞いた。 それならリーブルは人間が多い⁈
ドノヴァンとの会話の後、急いで待ち合わせ場所まで行くと、リリカはミシルを連れてきてくれていた。
心なし嬉しそうなミシルが話す。
「気にかけて下さりすいません、リュウさん」
「いや、途中だったし…… あとリュウって呼んで」
ミシルは少し恥ずかしそうに、はい、っと答えた。
やっぱりローチェと少し似てる。
帰り道を聴くと途中まで一緒だったので、そこまで話しながら歩くことにした。
「リリカさんからリュウがハーフじゃない事を聞きました」
「そうなんだ……」
「親戚じゃない事も言ったよ。 でもあの3人だって私達が親戚だなんて思ってないよ、多分」
そりゃあ、3人の前で親戚に愛の告白はしないでしょ。
ドノヴァンもカケラも思ってない感じだった。
「いいですね、リュウは自由で……」
今一瞬、空を思い浮かべた…… 自由とは……空?
亜人国はいい国だ。
でも自由ではない。
俺はソマルさんに守られてるから、この国にいれるだけ。
それが無ければ自由とは程遠い。
それでも未来を自分で切り開ける俺は、ミシルから見れば自由だろう。
「20歳になったら人間国に行くって言ってたよね、何処に行くか決まってんの?」
「私は孤児院に預けられるくらいだったので、遠い親戚を頼っても迷惑かけちゃうかなと思います。 なので学校に通っている間に、看護とかの勉強をして手に職を付けた方が良いと父と話してます」
あの国、馬鹿みたいに戦争を200年も続けてるから看護なら引く手数多だろう。
ただ24時間、働かされそうだけど……
「手に職を付けるのはいいと思うよ。 ……そうだ、その時が来たら俺の育った孤児院に行ってみてよ。 孤児院って言っても結構洒落たログハウスみたいな家なんだ。 シスターをしてんのが俺のおばさんで、きっとミシルの力になってくれると思うから」
「リュウのこと余り私は知らない…… もっと知りたいのに……」
俺の過去を聞いてもきっとつまらない。
稽古して、空飛んで、海に潜ってただけだから。
「凄く裕福そうな孤児院ですね。 私のいた孤児院は寝るスペースもないくらいでしたよ」
確かにあの家を孤児院とは呼ぶのは無理がある。
家の作りがオシャレすぎる。
またシスターも教会が近くにないから孤児院とは認められないと言っていた。
あくまで臨時の孤児院。
「そこの孤児院は裕福だったね。 でもその1年前までは南の最果ての孤児院で暮らしてて、物資が届かないから食う物がない、薬がないで、病気で亡くなる子が何人もいたよ」
「そうですか…… やっぱり何処も大変なんですね。そこのリュウのおばさんのシスターを頼ればいいんですか?」
「うん。 行くあてがないなら訪ねてみて。 ローチェって俺の妹みたいな子もいるし、亜人国で俺と会ったことを話せば喜んでくれると思うよ」
「ふふ、それならリリカさんにリュウの事いっぱい聞かなきゃ」
「いいよ。 初めてウチに来た時から話してあげる。 キャハ、今も鮮明に覚えてるし」
それから俺の腕が治るまでの期間、ミシルも途中まで一緒に帰るようになる。
その期間はひと月ほどだったけど、それでも元々のミシルは明るい子なんだと思えるくらい明るくなっていった。
そして全治3ヶ月だった腕の怪我は、2ヶ月で治った。
怪我が治ったと言っても速攻でクナイを作り、裏に飛んで行こうとは思わない。
散々世話になったので、俺は特にソマルさんの手伝いに気合いを入れるつもり。
そして稽古にも気合いを入れるつもりだ。
そしてハッキリさせた方がいい事を、食後に皆んなの前で話す。
「リリカ、明日から途中までしか送り迎えはしないよ」
「そんなの知ってる。 今日の帰りにも話したでしょ」
一応、皆んなの前で言っておきたかったのに……
予定では、何で? と言われ、ソマルさんの手伝いを頑張りたいから、と答え、ソマルさんが感動するイメージだったんだけど……
「それとあの稽古場には俺1人で行くから」
「何で、ヤダ!」
ソマルさんとナッソーさんは俺を見る。
俺は軽く頷く……
こうなった時のリリカを止めれるのは俺だけだ。
「あそこは危ないから、皆んなリリカに行って欲しくないと思ってるよ」
ナッソーさんは頷く。
ソマルさんはチラッとリリカが自分を見てない事を確認してから小さく頷いた。
父親の立場が弱いのがよく分かる。
「私が勝手について行ってるだけ。 それにリュウがいつも守ってくれるもん。 私はちっとも怖くなかったよ」
リリカは俺への信頼がハンパない。
ローチェやシスターでさえ、獣人との戦いでは信頼してくれなかった。 今回なんてパッツァン相手だぞ……
「守れればね。 今回は余裕なんてなかった。 本当にギリギリだったんだ」
ナッソーさんは頷く。
ソマルさんはチラッとリリカを確認した時に、リリカと目が合ってしまった。
ヘラ〜とソマルさんは微笑んだ。 ……立場弱すぎ、ソマルさん!
「本当〜? パッツァンに今日は風呂に入るからって言ってたよね〜。 しかも僕ね、今日ね、とかって、私はあんな時に笑っちゃったよ〜」
「き、聞いてたんだ。 いや、俺からいい匂いが出てるのかな〜と思って」
「キャハ、やめてよ、もう〜。 でも何で私を抱いて飛んで逃げなかったの?」
「……その発想はなかった。 でもあのままにしてたら、この村に被害が出てたかもよ」
「じゃあさ、今度から刀を持って行こうよ。 刀を持ったリュウは最強でしょ」
「まぁね!」
よし、今度からは刀を1本持って行こう。
ン…… ⁈ ハッ、丸め込まれた!
ソマルさんとナッソーさんは、ハァ〜って感じで頭を抱えた。




