告白
第一章 旅立ち(亜人国編)
第二十一話 「告白」
リリカの学校が休みの時に、ベニラムまで回復薬を買いに来た。
俺は3連戦なので、初戦に怪我するとその後の戦いにも影響する。
出来れば回復薬を2本、欲しいけど……
回復薬は予想通り、高かった。
普通回復薬で400ペレ、高回復薬だと1000ペレもする。
俺の持ち金は約1200ペレ。
リーブルに行く時には、最低1週間分の保存食が欲しい。
なので普通回復薬1本だけ買おうとしたけど、リリカも1本は私が買うと言うので、合計2本の回復薬を買った。
その後はベニラムの街を案内してもらう。
ベニラムは水路と階段の多い、美しい街。
街から遠くに見える大きな山は、亜人国で1番高い山だという。
街には学校や図書館、プールまである。
学校には通えない場所から来る子もいるらしく、その場合寮に入り3年間そこから通うようだ。
「いい街だね」
「うん…… リュウもウチの子になって、一緒に学校に通おうよ」
初めの頃にも言われた気がするな……
「ありがたいね、皆んなには世話になりっぱなしだよ」
「大丈夫だよ。 私が頼んであげるから、ね」
「そこまで甘える訳にはいかないよ。 それに俺は兄との約束を守るつもりだし、シスターやローチェもそれを望んでいる」
「……じゃあ、刀が出来てももう少しだけ家に居ようよ。 私達が稽古してる場所で夏祭りがあるの、その日まで居ようよ……」
「本当にありがとう、リリカ」
と言ってリリカの頭をポンポンと撫ぜた。
リリカと変わらなかった背の高さは、今でははっきりと差がついている。
それだけ長く居たと言うこと。
帰りはリリカと手を繋いで帰った。
いつかローチェの手から感じた寂しさを、リリカの手からも感じた。
ーーーーー
決戦当日
早めに来て基本練習だけしておく、今日は曇り、好都合だ。
遠くの雲を冷やして動かす……
時間はかかったけど、ここから光が見える…… 出来るかも……
「リュウって魔力量、どれくらいあるの?」
見ていたリリカが聞いてきた。
「正確には分からない。 でも全てに適性はあるみたいだよ。 リリカは?」
「全てって…… そんな人、いるの? 王族……? あっ、やっぱりパパが言ってた上位亜人! リュウの祖先は魔力が多い上位亜人だよ、絶対! ……え〜と、私の魔力は聞かないで」
魔力の多い上位亜人か…… 確かに兄の魔力量も、王都で噂が立つ程だったと聞いた。
興味はあるけど、調べる術がない。
それにしても……
「リリカは今日の勝負で付き合う奴が決まるっていうのに、結構気楽にしてるね」
「付き合うはずないじゃ〜ん。 私は好きな人がいるの。 その人に守ってもらうんだぁ」
えっ、俺じゃないよな…… 俺は弟扱いだし……
じゃあ、学校に居るのか……?
だったらソイツに守ってもらえよ!
なんかガッカリしたなぁ。
そんな時に奴等は現れた。
リリカと付き合えると信じて疑わない、スケベ面だ。
何か可哀想に思えてきた……
ダントツスケーベ1号は喋りだす。
「リ、リリカちゃん、約束通り僕が勝ったら付き合ってもらグホッ も、もらうよ。 僕の超絶テクでリリカちゃは〜んは、ムキュキュでムハハのピヒ〜」
突き抜けた、ダントツだ……
リリカも一瞬で青ざめてる。
「リリカ、我等のうち勝ちっぷりが良かった奴を選ぶがいい。 選ばれた奴は、リリカにキス等、色々出来る。 いいな」
等とか色々とか、細かく付け足してくるな……コイツ等。
リリカは今にも泣きそうだ。
「ま〜ずは俺だよ、リーリカ。 俺は手加減出来ないから、その人間は死んじゃうかもよ〜。 戦い終わったらもう降参して〜」
「だ、ダメだよ、リリカちゃん。 折角、新しいテク編み出してきたんだから。 2回戦まではルールだからね」
「もうやめて〜!! 約束は守る。 でもリュウが勝ったらもう付き纏わないで! わ、私はリュウが好き!」
なっ……いや、待て。 アイツ等を諦めさせるために言った言葉だ。
リリカは学校に好きな人がいる。
フゥ、なんかそれでも嬉しい。
1戦目は魔術勝負、相手はインテリ宇宙顔、ジーン。
1戦目だったのでさっき遠くに冷やした雲が使えるかも…… 更に摩擦と冷却を進める。
試合が始まると宇宙ジーンは詠唱を始める。
俺は遠くの雲に集中、もう少しで雲の中に光が見えるはず……
と、思っているうちに、宇宙ジーンのファイアーボールが飛んでくる。
難なく避ける…… はずが、ファイアーボールは俺の顔めがけて、ギュウーンと曲がってきた。
バチィンと何とか裏拳で弾いたけど、俺の拳に火傷の痛み……
また宇宙ジーンは詠唱している。 だけどこの詠唱の空き時間って何なの? 待つべきなのかな……
俺の雲に光が見えた。
その電力を体内に取り込む。
やっと詠唱が終わったのか、宇宙ジーンはファイアーボールではない、炎の魔術を出してきた。
導火線でもついてるように、炎が真っ直ぐ俺に向かう。 でも走りながら避ける…… が、やはり炎は向きを変えて俺に向かってきた。
最後は横っ飛びで避ける。
今のではっきりと分かった。
コイツのスキルは魔術を曲がることが出来る、だろう。
でも直角に曲がれる訳ではなさそう、走っていれば問題ない。
また詠唱を始めた宇宙ジーンだが、俺ももう身体がピリピリしてる、もう充分だ。
走って近づくと丁度詠唱を終えたのか、宇宙ジーンは石飛礫のように、複数の石が飛ばす魔術を撃つ。
俺は土の盾を出し防ぐ。
ビシッピシピシっと石が盾に当たる。
後はゆっくりでもいい。
どうせ詠唱の待ち時間だ……
堂々と歩きながら近づきファイアーボールをブッと宇宙ジーンに向かって放つ。
な、何、それ? っと声を漏らした宇宙ジーンの腹部にファイアーボールはヒット。
蹲ってお腹を押さえる宇宙ジーンの肩を掴み、放電。
「アギャ、ギャ、ギャ、ギャアー」
と悲鳴をあげながら痙攣し、宇宙ジーンは失禁しながら倒れた。
ヤバい…… 威力が強すぎた。
直ぐに俺の持ってる回復薬を飲ます…… と、宇宙ジーンは何とか意識を取り戻した。
だけど、髪の毛は焦げて逆立っている……
回復薬ではどうにも出来ない場所なので、諦めてもらおう。
……世の中には、色々な人がいる。
きっとその髪形でもステキと思ってくれる人が……
プフフフ、いません!
1戦目、勝利。
2戦目は1番頭にきているセクハラ男、ダントツの1号ことスケーベ。
木刀を持ち、前に出てきたダントツ1号が喋りだす。
「へ、変な魔術を使うな…… 人間の癖に。 でもこれは剣術の試合。 魔術は無しだからな! 分かったか! 人間!」
「 お前相手に魔術が必要か? グダグダ言ってないでかかって来い、スケーベ!」
「こ、この人間め〜っ、僕はケーベだぁ!」
「えっ? そうなの、ごめん。 グダグダ言ってないでかかって、こいドスケーベ!」
「僕は…… そんなに濃くないドスケーベだ〜!」
結局、認めたよ。
試合が始まると怒りに任せ、勢いよく木刀を振る、ドスケーベ。 ……意外だけど速い。
小柄な体格から、リズム良く打ち込むドスケーベ。
だけどスピードタイプは蓮撃の大好物…… 良くするバックステップに合わせればいい。
ドスケーベの打ち込みを捌いた後、バックステップを誘うように左を振る。
蓮撃は相手が後ろに下がる一歩に、こちらの踏み込む一歩がシンクロした時、発動する。
ー蓮撃ー
1セット目 後ろに下がりながら捌かれる。 でも目に恐怖の色がある。
2セット目 早々と当たりだす。 だけど急所への攻撃は手加減して、痛めつける選択をする。
しかし、ドスケーベは木刀を捨て、手を前にだす。
参った!のポーズだろう。
その手を打ち下ろし、左袈裟斬りで最後は仕留めた。
宇宙ジーンより、よっぽど軽傷だろう。
2戦目、あっさり勝利。
虎峰の完成から少しして、蓮撃、フィニッシュの型も完成している。
フィニッシュの型を出すタイミングは、俺の体力か頭の回転が限界になるくらいまで、相手に捌かれた時。
そんな強者がこの世界には居るのだろうか⁈
3戦目は鼻デッカちん。 ……正式名称は忘れた。
リリカの話では、学校で1番体術が強いという最上級生。
試合が始まる。
相手を探るような静かな立ち上がり…… から、徐々にスピードを上げていく。
鼻デッカちんは、掴み技が得意なのか、たまに腕を取ろうとしたり、タックルで崩そうと仕掛けてくる。
だけど掴み技が得意なのは、お前だけじゃない!
パンチを打つ振りをして、中指で襟元を掴み引き寄せる。
そして担ぎ上げ、地面に叩きつける。
ドッザァーと鼻デッカちんは地面に叩きつけられた。
うっと小さな呻き声を上げた鼻デッカちんだが、直ぐに立ち上がる。
鼻デッカちんに焦りの表情はない。 3戦目なので俺が強い予想もしていたのだろう。
起き上がった鼻デッカちんにラッシュの如く、パンチを浴びせる。
しかし鼻デッカちんも応戦する。
違和感…… 何度かいいパンチが入っている。 けど全く効いてる様子がない…… それどころか、俺の拳が傷んでいる…… まさか、スキル?
今更気にしていられない。
隙の多い鼻デッカちんの右のガード、今も打って下さいと言わんばかりだ。
左ストレートが鼻デッカちんの右テンプルを打ち抜いた。
でもその左腕を取られて、捻られながら一本背負いを仕掛けられた。
何とか、髪の毛を掴み足を絡めて崩す。
ドッザァーっと、2人してもつれるように転ぶ。
2人とも直ぐに立ち上がる……
左拳から出血がある。
さっきの左ストレート…… 罠を張られていた……
奴のスキルは、硬い鱗のような皮膚に出来る能力。
硬化の能力か。
鼻デッカちんはチャンスとばかりに攻め込んでくる。
左側に回り込んでくるのは、俺の左腕が傷んでいる、と思っているからだろう。
確かに投げに捻りを入れられた。
でも俺は小さな頃から柔軟の一環として、関節の可動域を広げてきた。
その年数は10年以上!
今では各関節、知らない人が見たら骨折してると、間違われるくらいに良くしなる。
必死に左側に回り込み、踏み込んでくる鼻デッカちん。
完全に俺の左腕を壊したと思っているのか。
そんな鼻デッカちんの大振りの右フックを捌きながら掴み、今度は俺が捻りながら一本背負い。
ドガッと鼻デッカちんは叩きつけられ、グワッと声がでた。
鼻デッカちんは足を打ったのか、フラッとしながら立ち上がった
硬化の能力は部分的なものか? 捻った腕は痛がってない。
しかし、足は少し引きずっている……
硬化しようがしまいが、効かせる技はある。
俺の中で禁術とした技、虎鉄である。
あの時、ケビンの脂肪たっぷりのオケツは、虎鉄を喰らい、内出血していた。
大した怪我じゃない。
でも、もし虎鉄を打った場所がテンプルなら、後頭部なら、心臓なら、多分ケビンはこの世に居ない。
虎鉄を打つ場所は……
ボクシングのような打ち合いの中、足が痛いのか、徐々に俺が押し込んでいく。
だけど決めにいくパンチは、ことごとく硬化の能力を使われる。
やはり禁術、虎鉄を使うしかない……
鼻デッカちんが捨て身で俺の腕を取りに来た時、肩関節に虎鉄をコンッと打った。
数秒のタイムラグがあり、鼻デッカちんはガッハァァァ! っと肩を押さえた。
その隙に後ろは回り込み、虎峰、スッパーンといつもの音がして、鼻デッカちんは吹っ飛んだ。
鼻デッカちんは倒れたきり、ピクリともしない……
ヤバい、またやり過ぎた。
でも3戦目、勝利、
リリカが買った回復薬は、リリカが持っている。
リリカに回復薬をもらい、直ぐに鼻ちゃんに飲ませる。
突然だが、鼻デッカちんは鼻ちゃんに改名した。
鼻デッカちんだと名前が長いのだ。
これからは鼻デッカちん改め、鼻ちゃん。
もちろんこれからの出番は…… ない!
意識が戻った鼻ちゃんは「済まぬ」と一言。
続けて……
「我等の負けだ…… 約束通り、もうリリカには近づかない……」
と言い、ドスケーベが真ん中で2人を支えながら、哀愁を漂わせ、帰って行った……
3人が去ると、リリカが興奮して抱きついてくる。
当たり前だ…… もし俺が奴等とキスしなければならなかったら、今すぐノンストップでリーブルまで逃げれる自信がある。
「リュウ、ありがとう。 でも私はリュウが勝つって信じてたよ」
またいい匂いがする…… 離れないから、魅惑の香りをまともに吸ってしまう。
「自信があったんだ。 何で?」
「毎日朝夕リュウを見てるんだよ。 剣術も体術も自信があったよ。 でも魔術だけ見たことがなかったから少し不安だったかな。 それより私の回復薬は、リュウのために使って欲しかったよ」
「宇宙ジーンと鼻ちゃんはやり過ぎたんだ…… あそこまで威力のある技とは思わなかったから」
虎鉄はケビンに1回だけ試したけど、虎峰は人に打ったのは初めて。 サンダーの技は、やたら時間がかかるからもう使うことは無いと思うけど、威力は凄かった。
「キャハハ、宇宙ジーンってジーンでしょ。 鼻ちゃんは…… ドノヴァンだよね、じゃあケーベは?」
「アイツは自分で認めたけど、ドスケーベだよ。 他にもダントツ1号がある」
「プハッ、でも何か合ってる」
「それよりリリカは何でいつも、いい匂いしてるの?」
「え…… あの…… 好きだよって証……」
マ、マジですかいな。 結構前からだよな……
「ありがとう、リリカ。 でも学校にも好きな人いるんだよね」
魔性の女、リリカ。
「はぁ? 何でそうなるの? さっきは皆んなの前で告白もしたし、ずっと好きって態度もとってきたよ!」
マジか…… 生まれて初めて告白された……
でも……
「私のこと…… 嫌い?」
「嫌いじゃない…… でもよく分からないや、ごめん。 あっ、でもたまにリリカを見るとドキドキするよ、よく分からないけど」
「プフフ、いいよ、今まで通りで。 でもドキドキするんだ…… 受け止めてあげようか? ふふ、ダントツ2号君」
「結構、ゴツゴツしてるけど…… 抱き枕として生きていけるかな……」
「キャハハ〜、私が離さないよ」
良かった…… 今日の最後のリリカが笑顔で。
俺はもうすぐリーブルへ行く。 だからリリカも好きと言っても踏み込んで来ない。
この関係のまま、お別れしよう。




