魔術
第一章 旅立ち
第ニ話 「魔術」
だいたい寝ているせいか、それとも脳が赤ちゃん仕様なのか、意識はそれほど繋がりっぱなしにはならなかった。
ただ、無意識に乳を吸い、無意識に泣いていたように思う。
だけど徐々に意識の繋がる時間が増えてくる。
そして、目が見えるようになってからは色々と把握してきた。
先ずこの家は……見窄らしい。
裕福ではない家庭なのか、それとも国が裕福ではないのか、家も部屋もボロい。
ついでに着ている服も悲しいほど貧乏くさい。
そして俺には親がいないようだ。
面倒を見てくれている人にそれらしい人はいない。
大人の男の人は見た事がないので、もしかしたら父親は出張中の可能性はある。
母親はよく分からない。
乳を飲ませてくれる人(牛に似ている)はいるけど昼間だけ。
夜はよく分からない味の乳を、シスターの格好をした人に哺乳瓶で飲ませてもらっている。
シスターの格好をした人は2人いる。
その内の1人は俺に特別な愛情を向けているのが分かる。
もしかしらこの人が俺の母親? この人は可愛らしい顔をしているのでこの人が母親でいい。
牛は嫌! 遺伝的にも……。
後は子供が沢山いる。
でも俺に世話を焼くのは数人、この子達が兄弟? まぁそれもその内分かるだろう。
分かった事はそれだけではない。
ここは日本でも英語圏の国でもない、言語が違うのだ。
でも、それもその内分かるだろう。
皆が俺を『リュウ』と呼んでいる、それに違和感などない、俺は前世では 龍太郎 と言う名前だったから……。
仲の良い人は俺を『リュウ』と呼んだ。両親とか爺さんとかが……。
二度と会えない人達。
『ありがとう』も『ごめん』も『サヨナラ』さえ言えずに俺は勝手に死んでしまった。
何故、俺の記憶が残ったのか?
僅か12年しか生きられないで、この見窄らしい国の科学技術や医療技術を発展させる記憶などない。
それどころか俺は前世では剣道と武術に没頭していたせいか、学校の成績は笑えるほど酷かった。
母さんにはいつも説教されていた。
ただ爺さんだけは笑いながら『気にするな、勉強だけが全てではない』と言ってくれたけど。
俺が前世から引っ張り出せるのは古武術の稽古の仕方だけ、後は剣道の基礎練くらいか……。
それが役に立つかは分からないけど。
2歳になる。
もちろん色々分かった事はある。
先ずは俺の兄弟だ。
3つ上の ルーク と言う少年、とても正義感の強そうな世話好きの男の子だ。
髪は明るい金髪、顔も王子様の小ちゃい頃って感じで将来はモテそうな感じ。
俺に一生懸命に言葉を教えようと頑張ってくれている。
しかし俺は変に日本語が混ざってしまい、まだ喋ることは出来てない。
どうやら頭の中身は前世と余り変わらない気がしてきた。
でも、まだ変わらないと確定した訳ではない。
小学生の時は馬鹿だったけど中学生になってから凄く伸びて、いい高校に入る人もいると聞いた事もある。
多分、俺はそのパターンだった可能性が高い。
いや、もう証明出来ないんだ、断言してもいいだろう。
俺はそのパターンな男だった。
今はアホでも12、3歳からグイグイ行く予定です。
そして重要な情報として、ここは戦時中らしい。
戦争の理由としては南から始まった砂漠化により、豊かな土地を求め戦争が始まったようだ。
そしてここはその砂漠化の真っ只中にある南西の孤児院。
ここにいるのはシスター2人を含めて今は10名、神父は見たことがない。
もしかしたら戦争と関係があるのかも知れない。
住む場所は隣に小さな教会のあるボロい孤児院。
でも海が近いので俺は好き。
3歳になり色んな情報も集まった。
えっ、言葉? ……まだ喋れないけど、日本語が混ざって難しくしてるからしょうがないでしょ。
でも言葉の理解は出来ているし、片言なら話せるんだ、人それぞれ、俺は全く焦ってない。
さて、1番驚いた事はこの星は地球ではない、と言う事だ。
俺は確かに勉強は出来なかった。
しかし興味のある事には詳しかったんだ。
それはこの会話を聞いてくれ。
「龍太郎〜 早く宿題出せ〜」
「何言ってるの先生? 今日は皆既月食があるんだぜ」
「うん、宿題には全く関係ないな」
「あるよ! 宿題やってたら見れなくなるじゃん。
先生は見たくないの?」
「ったく、龍太郎は興味のある事だけは詳しくて一生懸命なんだよなぁ まあ、俺も見るけどさ……じゃあ、明後日に出してくれよ」
と言うように地球から見える星とこの星から見える星が違う。
何より皆既月食でもないのに赤っぽい月がよく見ると3色で、位置も近すぎる。
そして皆んな日本やアメリカを知らない。
その先生は宇宙オタクで授業中でも色んな宇宙の話をしてくれた。
宇宙には生物の住める星が沢山あり、科学技術や文明が地球より発展している星が山ほどある。
その星の中には地球へ来れる技術を持っている星もあり……と、その後は未確認飛行物体の話になるのだが、それはいい、この星の事だ。
この星は残念ながら科学技術は余り発展していない、感覚的だけど江戸後期くらい。
シスターが何処かに通信していたので、全く発展してない事はないけど冷蔵庫はない、洗濯機もない、エアコンもない、ついでに食べ物もない。
本当に残念な星だし追い討ちをかけるように、俺には父親がいない。
何でも俺が産まれる2ヶ月前に戦争で亡くなったと通達があったらしい。
そして母親もいない。
俺を産み、2日後に息を引き取ったと聞いた。
俺もあの時を一瞬だけ覚えている。
俺が母さんのお腹から出てきた瞬間、慌ててる声や泣き叫ぶ声が聞こえた。
もしかして俺を産んだ負担で母さんは亡くなった⁈
でも俺には兄がいる。
世話好きで優しく俺にとても甘いにいちゃんだ。
俺にとっての唯一の救いなのか⁈
この孤児院はシスター2人を含め現在10名の人が住んでいる。
俺より歳下はいないので、比べられなかったのが良かったのか、俺が中々喋れなくても俺も兄も表立っては馬鹿にされる事はなかった。
えっ? 表立ってない時?
星が変わろうが嫌な奴は何処にでもいる。
それに、そう言うのは俺は気にしないタイプだ。
まぁそれでも、俺は4歳になりようやくこの星の言語がペラペラに喋れるようになった。
喋れるようになった事で分かった事も多くある。
それはこの星の住人の話。
この星には3種の人族がいる。
人間と獣人と亜人だ。
正直言って見たことがないので獣人が何なのか、亜人が何なのかは分からない。
特に亜人って何?
約300年前、人間国の南から始まった砂漠化は東側に住む獣人の土地にまで浸透していった。
当然、西側に住む人間国の土地も砂漠化していった。
人間も獣人も国境線を勝手に引き直し、豊かな土地を自分達の領土と主張した。しかし、それが戦争の引き金となり、約200年前から休戦を挟み続いていると言う。
そしてこの星の住人は皆、魔力なる物があると言う。
魔力とは火を付けたり、風をフーフーするらしい。
でも、正直ごめんなさい、興味ない。
それでもこの魔力を使った魔術という現象、生活に密接しており、誰にでも何らかの魔術は出来るようになる、らしい。
この魔術という現象……多分この星の科学技術が余り進歩してないのは、この魔術のせいだ。




