お爺さんとお婆さん
第一章 旅立ち
第十二話 「お爺さんとお婆さん」
直ぐに発つ準備をする。
っと言っても、刀に腰袋とナイフだけ。
だけどシスターが、お金とパンを用意してくれた。
きっと、シスターは俺が行く事を予想していたのだろう。
ありがたい。
早速、院を出て魔術練習をする場所まで歩く。
そしてそこから飛び立った。
今は夜中の2時。
ここからロノア山脈までは北東へ約300キロ、ジェットのスピードが70キロだとすると、4時間くらいで近くには行ってるはず、ただ距離も方向も定かではない。
なので近くまで行ったら、降りて人に尋ねよう。
色々と腑に落ちない事がある。
先ずケビン。
俺が薬の花を採りに行くと決まった瞬間、ケビンは馬で王都に帰った。 ……ルークに伝えなきゃ、と呟いて。
今のこの時間だぞ。
そんなに急ぐ必要なんてあるのか?
それと兄の手紙の中にあった『リュウなら戦わずに勝つことも出来る』という一文。
どういう意味だ?
獣人と出会す ー 直ぐに悪口を言う ー 逃げる ー ちょっと待ってニヤッと微笑む(バカにする) ー 逃げきる ー 勝った気になる。
多分、こういう事だろう。
でも、俺はこんなの嫌だぁ〜!
まぁ、いい。
俺は俺のやり方がある。
獣人と出会し、邪魔されそうなら容赦なく戦い、無慈悲に斬る。
これを初めから決めておけば、その時に迷う事はない。
ケビンから獣人の話も聞いた。
獣人は新獣人と旧獣人がいる。
旧獣人は顔や手など色濃く獣の面影を残している。
なので牙での噛みつきや、鋭い爪での引っ掻きなどで攻撃してくる。
皮膚がやたら硬い種や、牙に毒がある種もいるので要注意。
新獣人はより人化している。
顔や手など人間とあまり変わらなく、尻尾なども短い。
武器を使って攻撃してくるので要注意。
種族の特徴としては身体能力が高く素早い。
厄介なのは新獣人、とケビンは言っていた。
ーーーーー
空が明るくなってきた。
距離的にはこの辺りはず。
だけど、どの山かなんて分からない。
俺は高く飛び辺りを見回す……、すると東の方向に小さな村があるのが見えた。
その村に続く道を探して降りることにする。
ジェットを解除。
高く飛んでいたので、凄い勢いで落ちていく。
そして地面50センチ以内にピタリと止まるように、ジェットを始動。
しかし止まったのは、地面の2メートルは上だった。
海の上では上手くいっても、地面の上ではビビったか。
俺は未熟で経験不足。
気を引き締めていかないと殺られるのは俺の方だ。
歩いて村に向かっている。
この辺りは右側に小さな川が流れてる。
左側は山だけど、前を見るとそのうち畑になるようだ。
緩やかな坂道をどんどん登って行く。
左側が畑に変わり、しばらく歩いていると、畑仕事をするお爺さんとお婆さんがいるのが見えた。
『すいませーん』と、声をかけて近づく。
「すいません、この辺りにロノア山脈、クスクリ山はありませんか?」
「あんそんこは、いみゃーいけんねんで〜、へんならぶったでよ〜」
え〜と、通訳さん…必要か?
しかしお婆さんは少し訛りが薄く、なんとか行き方を教えてもらえた。
ロノア山脈はここから徒歩で3時間。
方角は指で指してもらったので、おおよそな感じ。
でも充分目指せる。
クスクリ山は、山を越えた先に草原が広がってて、そこに一本だけ大きな木が生えてる。
その横の道を行くとクスクリ山へ入れるようだ。
先ずはその木を目指す。
シスターから渡されたパンをかじりながら歩く。
兄の手紙では、魔黒病は黒い斑点が出てくると、ひと月もたないと書いてあった。
シスターが斑点を見つけたのが3週間前、もう本当にギリギリなのだろう。
それにシスター。
俺を息子と言っていた。
でも、兄を産んだとは思えない。
兄もシスターを母親とは全く思ってない。
まぁいいや、どっちでも。
そのうち分かるでしょ。
山の登り道ではジェットの出力を下げ、スケートのように滑って進む。
そう言えば俺は魔術有りの兄との試合でも、魔術を使った事がない。
でも兄はバンバン使ってきた。
今やっているジェットは、練習すれば結構なスピードアップになる。
今回は無理だけど、練習していつか使えるようにしよう。
それと、もし本当に山賊がいるなら、魔術も使いたい。
大体、口から魔術は俺が開発したのに、その技で蓮撃が破られるってどんな悲劇?
別にいいけど、俺も口から魔術使って行こう。
まだ2時間も経っていないけど、どうやらお婆さんに教えてもらった、ぽつんと立つ大きな木があった。
教えてもらった通り横の道を進んで山に入って行く。
この山道は幅2メートルの緩やかな登り坂。
右が谷側で左が山側。
山側を登って行く事も可能だけど、どこに切り立つ崖があるか分からない。
道を登って行く。
1時間も登ったろうか?奴等は突然現れた。
「なんでこんなところに人間のガキがいんだ〜?」
「ふっ、運のねぇガキだぜ。 奴隷決定だな」
「生意気そうなガキだなぁ、腕の一本でも斬り落とした方がいいだろ」
「じゃあ、それは任せろ」
な、舐められまくっております。 …泣くよ。
獣人が3人。
2人が新獣人、1人は頬辺りまで毛が生えてて見た目は剣の達人っぽい。
もう1人は耳がウサギっぽい。 ウサちゃんと呼ぼう。
旧獣人はアルマジロからの進化か。
ヨダレが垂れてる。 ……仲間なら拭いてあげて!
ジローと命名した。
「ヒャハーッ、ここは通さねぇぜ、奴隷ちゃん!」
ど、奴隷ちゃんと命名されてる!
ジローめぇ!
「なんで剣なんて持ってる? 仲間に入りてぇのか」
「人間なんてダメだ。 奴隷くらいしか使い道のねぇ人族だ」
「だなぁ。 その剣を渡しな」
3人同時に話してる。 でも完璧に舐められているのは分かった。
フゥー、俺は刀をスラッと抜き…
「邪魔だ。 子供だと舐めてると痛い目にあ……」
と言いかけて、後ろからの気配にバッと横に避ける。
しかしガシッと肩に熱い感覚……。
見るとネコ科からの旧獣人が、爪に付いた血を確認していた。
多人数に後ろからの攻撃か……。
甘いことは言いたくないけど、奴等に武士としての誇りはないのか! ……もし、あるなら切腹しなさい。
「随分と子供相手に汚ねえな、猫ちゃん」
「バカだろうお前、さっき自分で子供だからって舐めるなって言ってたろ!」
む、むぎゅ〜。
こ、こいつはやな奴だ。
決して言い負かされたから言ってる訳じゃない。
「うるせー、牛猫!」
「牛の要素なんて一つもねぇわ!」
「じゃあ、馬猫」
「シャーッ!」
やはり獣、簡単に挑発に乗って来る。
素早いのは知っている。
でも、爪での攻撃! 刀とは射程が違う。
半歩下り、飛び込み振り下ろした右腕に刀を振る。
バスッと当たり、ボトッと右腕が落ちた。
「グギャァアアア」
流石、刀の斬れ味。 直ぐにタマにトドメを……
しかし、タマを庇うように達人が前に出て剣を振る。
捌くまでもなく避ける。
達人……、中にジロー、少し遅れてウサちゃん。
でもそっちは谷側だ!
ジェットをウサちゃん目掛けて、ブォーッと浴びせる。
毛が炎に包まれ、悲鳴をあげながらウサちゃんは谷側へ転げ落ちた。
キンッと達人の剣を捌く。
ジェットをそのままジローにも浴びせる。 しかしジローは急いで後ろに退がった。
一瞬だけど、これで1対1。
ブッと口から氷の矢(アイス何とか)を達人の顔へ。
えっ、って感じで達人は、両手で慌てて顔を庇った。
絵に描いたような隙だらけ。
刀を振り下ろす。
ズモッと首から腰辺りまで切り裂いた。
プシューッと血が吹き飛び、達人は倒れた。
後2人。
っと、タマが全力で逃げに走った……早い!
ジェットを起動、ジローを飛び越えタマを追う。
タマはチラッと後ろを見たが俺はそこにはいない。
タマは安心したのかスピードを緩める。
そこへ、ドスっと背中から刀を突き刺した。
後ろからの攻撃だけど仕方ない。 ……これでおあいこだ。
ヒューッと渇いた息がして、タマは倒れた。
「グッガルルルルルルーッ」
下から合図のような悲鳴。
ウサちゃんに仲間を呼ばれた?
ジェットでそのまま下へ。
ウサちゃんは四つん這いになり、火傷した腕を舐めていた。
そのままドスっと首辺りに刀を突き刺した。
残り1人。
ジェットを使わずに登って行く。
慌てる必要はない、仲間を呼ぶなら呼んでくれ。
上から降りてきたジローと対峙する。
最後の1人になったジローにさっきの余裕はない。
泣きそうな顔(か、どうかは分からない。 アルマジロだから)か?
ジローは鉤爪を振り回す。
しかし、射程が短いので刀で捌く。 ……と刀に触れた鉤爪がスパーンと切れた。
驚愕の表情(か、どうかは分からない。アルマジロだから)で爪を見るジロー。
「ぬわんだ〜! 貴様はぁーっ!」
ブシューっと黄緑色の液体を口から吐くジロー。
これは汚い! 大きくバックしながら刀を投げる。
ドスっと腹に突き刺さった。
しかし、構わず突っ込んで来るジロー。
流石爬虫類、しぶとい。
ジェットを起動して空へ回避。
途中、何故かスローモーションのようになる。
本当に偶然だった……その時、偶然ジローと目が合ったんだ……。
悲しみの表情(か、どうかは分からない。アルマジロだから)
しばらく空にいると、ジローは蹲り動かなくなった。
降りて、刀を回収。
上の道に上がり、道に倒れてる獣人を谷側に転げ落としておく。
一応、見つけづらくするためだ。
フゥーっと一息。
肩の怪我から出ていた血は、いつの間にか止まっていた。
切り立つ崖を目指してまた歩きだす。
さっき仲間を呼ぶような声を出されたので、注意しながら歩いて行く。
しかし、戦っている時は気にならない痛みも、戦いが終われば痛みだす。
俺も兄も回復魔術を使えるはずだけど、教わってないので使えない。
興味あるのは、回復魔術でどこまで治るのか?
この怪我は治る?
スパーンと切断された腕は生えてくる?
死んで直ぐなら生き返る?
兄は回復魔術を使える人は少なく、貴重だと言っていた。
早く使えるようになりたい。
そして"伝説のドクター・リュウ"と呼ばれたい。
あ〜、久しぶりにテレビ見たい。
道幅が少しづつ広がってきたところに、兄の手紙に書いてある、切り立つ崖があった。
とりあえず獣人の気配はない。
下から見る崖は真ん中より上の方が段になっている。
ジェットでそこまで行ってみる。
段の幅は1メートル弱ほどある。
そこに飛び移ってフォーリスの花を探す。
白い花や紫の花なんかもあり、結構色々な種類が咲いている。
フォーリスの花はここでしか採れない。
理由はこの崖の土にありそう。
黄色い土でふかふかしてる。
兄の手紙を確認して、フォーリスの花の特徴と照らし合わせていくと……。
薄い黄色の花が、合致する。
早速一つ摘む。 これでローチェは助かる……
と思った時、矢が飛んで来るのが視界に入った。
避ける…がもう一本飛んで来る。
キンッと、それは刀で捌いた。
この眼に助けられた。
真剣勝負の場合、少しの時間のズレが戦いの勝敗を分ける。
油断したわけではないけど、結構正確に俺を射た矢だった。
下を見ると、左の草むらから俺を狙う弓使い。
結構はなれた右側にも弓使いがいた。
……さっき俺が登って来た道を、走って登って来るのは体格の良い2人。 ……どちらかがリーダー⁈
そして、パタパタと翼を動かし飛んで来るのは鳥人族の女。
鳥からの人化なので目元が怖く、ヒステリックな印象。
鳥人族の女は、俺との距離を3メートルまで近寄り、空中で止まった。
女は喋りだす。
「貴方、人間の癖にどうやってここまで登って来たの? 汚らわしい」
なんで登って来ると汚らわしいんだ……
「アンタ等に迷惑はかけてないでしょ。 放っといてくれ」
「私達の仲間が倒れてたわ。 貴方ね、汚らわしい」
証拠もないのに俺のせいにするとは! …俺だけど。
それにこの女、俺がどんだけ汚れてると思ってるんだ。
「そんなの、知・り・ま・せ・ん〜。 汚らわしい」
「キィーッ! 貴方の方が汚れてるわ! 汚らわしいったら汚らわしい!」
こ、この女〜っ! 失礼すぎる!
俺は一昨日に風呂に入ったし、その時たまたま体も洗ってる!
昨日は海にも潜ってるし、そんなに汚れてないはずだ!
「お前の方が汚らわしい! 間違いない!」
「ムキィーッ! 貴方よ!」
「お前の方だ!」
「貴方!」・「お前!」・「貴方!」・「お前!」・「貴方!」・「俺!ぁっ」・「貴方!」・
「お前!」・「私!」・「ぇお前!」・「貴方!」
な、なんだか良く分からなくなってきた……
いや、今はこんな事をしてる場合ではない!
ローチェには時間がないんだ!
鳥人女は俺が黙ってるので、優越感に浸ってる。
大変、満足そうだ。
俺は口に氷の矢(アイス何とか)を仕込む。
そして女の顔にブッと氷の矢(アイス何とか)を飛ばす!
女はハッとし、急いで剣で氷の矢(アイス何とか)を弾いた。
しかし、ジェットで俺は詰めている。
ズッと女の喉に刀をひと刺し……
「ガッ、けが…」
女の剣を奪い、刀をズズッと抜くと、ドッサーッと女は落ちた。
さぁ、どうする? 矢を避けながら花を摘むか、敵を倒してから摘むか。
倒した方が早い!
ジェットで、左の草むらに単独でいる弓使いに向かう。
途中、弓使いは弓を射るけど刀で弾く。
そしてファイアーボールをブッと弓使いの股間めがけ飛ばす。
弓使いは必死で両手で股間を庇う。
ボッと手に当たって熱そうだけど弓使いはホッとしている。
でももう俺は目の前にいるぞ!
鳥人女と同じ、喉元に刀をひと刺し!
気持ちは分からないでもない。
でも両手はないし、ホッとしすぎ。
どれだけ大切な物が付いてるんだ。
「大事なとこ…… 間違えたな」
と、一言。
弓使いは、ドサッと倒れた……
走って来るのは体格のいい槍使い。
リーダーは動かない。
その後ろの弓使いもその位置をキープ。
リーダーからの指示か?
でも、これで槍使いと1対1。
リーダーも槍使いも体格がいいので、この狭い道ではお互いが邪魔になる。
それに連携の練習なんてした事がないのだろう。
俺にとってはラッキー。
槍使いは ボッ、ボッボッボッ、っと連続で突いてくる。
意外だが早い!
更にボッボッボッボッボッと、連続の突き。
キ、キン、キン、っと奪った剣と刀で捌く。
更に突いてくる槍を捌きながら思う。
俺は槍の事は知らない。
でも槍での突きは、ボクシングでいうジャブだと思う。
世界を制す、とまで言われるボクシングのジャブ。
この最初だけの"突き"では世界など制せない。
突きに合わせ踏み込み、刀で槍の上を滑らせる。
そして右の剣でバシッと槍使いの左脚を叩く。
ドッという重い手応え、刀とは違う。
その刀の方は手応え薄く、槍使いの指を切断していた。
「ギャハーッオウ!」
という、よく分からない悲鳴を出し、弓使いは倒れてもがき苦しむ。
仕方ない…… 武士の情け(武士じゃない)でトドメを刺す。
残りは2人!
フゥー、ゆっくりと弓使いと俺との間にリーダーを挟むように近づく。
リーダーは虎からの人化か⁈ 片目の大男。
リーダーが話しだす。
「お、お前は何者だ!」
「俺は…… 知性溢れるイケメン兄ちゃん(願望)と、人は呼ぶ」
「そ、そうか。 なら取引しよう。 金はどうだ? それとも女……」
ビュ、っと振った刀を、あり得ない速さで避けられた。
君のお喋りに付き合う義理は僕にはありません。
「き、汚ねえぞーっ! まだ喋ってるとち!」
もう一度、今度は軽く振ったら大きく逃げられた。
「何だ、早く用件を言ってくれ」
疑るような視線で俺を見る、リーダー虎島。
だけど、まだ交渉を諦めてないようだ。
「だから取引し!!」
バッっと刀を上にする。
刀を構えただけなのにビビる、リーダー城虎。
「こんの〜ぉ! 許さん!」
怒り狂い飛びかかってくる、リーダー城島。
刀と剣で捌く。
俺の剣術の腕は、戦争から帰って来た孤児の先輩達より数段上だ。
兄やリチャードも含め、剣術なら圧勝出来る。
数手受けて…… 分かる。
リーダーは兄と同程度。
いや、パワーのある分リーダーが若干上か。
後ろの弓使いは右に行ったり、左に行ったり。
隙を見て打つタイミングを計ってる。
ジャンプしての大振りの剣を、俺も大きくバックする。
ここぞとばかりに弓を射る、弓使い。
しかし、俺も狙っていた。
その矢をリーダーの方へ弾く。
あぶねって感じで一歩下がりながらその矢を避けたリーダー。
でも、その後ろに下がる一歩と、俺の前へ詰める一歩がシンクロした時が蓮撃の発動条件。
ー蓮撃ー
1セット目 必死でリーダーは捌いてる。
2セット目 反撃が出来ない事を知り、焦りだす。
3セット目 後ろの弓使いをチラチラと見るが、ちゃんと指示する余裕はない。
4セット目 剣と刀が擦りだしてからはボロボロ。
最後は弓使いにすがるような視線を残し倒れた……
フゥー、危なかった。
木刀では5セット出来るけど、刀や剣では4セットでギリギリだな……
でも、後は最後の弓使いだけ。
ゆっくり近づく。
「ちょっと待って、な、なぁ、悪かった。 脅されてたんだよぉ。 な!」
な! がウザい。
でも命乞いをしている奴を殺るほど、俺だって非情ではない。
クルリと、弓使いに背を向け崖に向かって歩いて行く。
しかし、後ろからの殺気が……
振り返ると弓を構えている…… でも俺が振り返ったので急いで弓と矢を捨てた。
……残念だ。
本当に逃げてもいいと思ってたのに。
近づき話す。
「言い訳はないよね、本当に残念だ」
「な、違うんだ。 な! 違うはずなのに変なんだな! 分かるだろ、な!」
何だろう、この人が何を言いたいか分からない。
納得出来る言い訳なら許す事にする。
でも納得出来なければ、弓使いの命はない。
「どうして弓を構えた?」
「そ、その時腕がな…… な、分かるだろ。 痒くて掻いたら弓が、ぴゅ」
斬っと横一線。
弓使いの首は胴体から離れた。
今の言い訳、11点。
腕が痒いと弓を打ちたくなるなら危なすぎる。
11点と言えば、よく前世のテストで11点が多かった。
頭が悪いわけでもないのに……
全てが終わり、今はもう夕方。
花も摘み、崖の上で暗くなるのを待っている。
戦利品として鳥人女の剣をもらったけど、リーダーの剣の方が良さそうなので、リーダーの剣と取り替えた。
今は秋。
崖の上から見る紅葉は綺麗だ。 ……もっと下を見ると死体だらけだけど。
この世界は誕生日という概念はない。
生まれた季節にひっそりと1つ歳をとるだけだ。
俺は秋生まれなので13歳になった、15で成人ならもう殆ど大人だ。
でも、前世より結構背が低い。
今はどんどん伸びているけど、もうひと伸び欲しい。
いっぱい食べたいなぁ〜。
まだ暗くならないので反省もしておく。
背中に攻撃を受けたのは、やってやろうと気負いすぎて、目の前の相手しか見えていなかった。
もう少しワイドに気を配った方が良かった。
後は氷の矢(アイス何とか)。
戦っている時でも、アイスなんて言うのか気になって仕方なかった。
忘れた俺が悪いけど、兄とは会えないのでしばらく聞くことも出来ない。
それまで氷の矢(アイス何とか)だな……
後はない。
自分の力を過信せず、今まで通り進もう。




