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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 フリーダム







    第三章  フリーダム



 第114話  「フリーダム」




 私はナナミル。


 私達、ドリアード奪取作戦でスペルティのリーブルに乗り込んだのは121名でした。


 しかし、リーブルの住民に計画を阻止されてしまい現在は29名、いえ……


 今、リヒター元総大将が、相手の総大将様が振る剣で首が飛ばされ…… てない?


 しかし、首から大量に流れる血が、首と胴体が離れていることを示唆してます。

 

 どうやったらあんな風に斬れるのだろう?



 ノマノーラ最強の飛翔族を相手に、この星の住民は圧勝しました。

 

 初めからこの人達を相手にしているのが分かっていたなら、私達は諦めてノマノーラに帰っていたかも知れません。

 だけどそれをノマノーラの住民は受け入れてはくれないでしょう。


 私達は…… 私と私の家族はもうきっとノマノーラに帰っても住むところがない。

 昔の人々のように夏は太陽を避けてノマノーラの裏へ行き、冬は太陽を求めて移動する生活をすることになるはずです。

 

 ドリアードを奪えなかった場合を考えていた人は、残念ながら居ないと思います。

 誰もが星を救った英雄を夢見て、また私達はやっと自由になれることを夢見た……


 121名が28名となった今回のドリアード奪取作戦。

 何の成果もないまま、私達28名は過酷な未来へと向かいます。




 全ての死体を里内から出してもらう、総大将様。


 リヒター元総大将が死に生き残りは28名で、そのうち飛翔族ハーフは8名となった。


 「さぁ、これで本当に最後だ。 残った飛翔族にも飛翔族ハーフにも選択肢を与える。 飛翔族がこの星に残る場合、リズーン国とナラサージュ国の裁きを受けてもらう。 まぁ、裁きを受ければ長い寿命の君達だ、自由に生きていける。 飛翔族ハーフは俺達が面倒を見てやる。 もちろん残りたいやつだけの話だけどな」


 え…… 私達がこの星にいても良いの⁈


 「先ずは飛翔族から聞く、この星に残りたいか?」


 思いっきりやつれているナインレット隊長が手をあげて話す。


 「俺は隊長だった…… 生きる資格はない。 リヒターと同じくアンタがやってくれ」


 総大将様にそう言ったナインレット隊長、そしてその言葉に続く第2グループの隊員達……


 「俺もやってくれ。 どうせ俺達に帰る場所はない……」


 やっぱり誰もが思うことです……

 でも…… 私達はこの星で暮らして良いと総大将様は言った。

 早く…… 早くもっと詳しく聞きたい。


 「俺も同じ隊長だ。 戦う気もないよ……」


 アーモン隊長…… 1番若く強かったけど、上には上があることを知ったのでしょう、諦めて処刑されることを選んだ……


 「じゃあ、処刑を選ぶ人は手をあげて」


 総大将様の言葉に手をあげたのは13名、残りの7名はノマノーラに家族を残して来た人でしょうか⁈


 「分かった。 死を覚悟した君達に仕事を与えよう」


 ハッ? って感じのナインレット隊長達。

 しかし、総大将様が言うことは新たな希望となる……


 「レミア、出て来て」


 フッと突然に現れたドリアードに誰もが驚いた。


 美しい……



 「お前達が狙ったこの東のドリアード、もしお前達が攫っても、この人の寿命はあと数年しかない」


 え…… 何故?

 マクニール様の説明では、東のドリアードはまだ70歳を超えたばかりと言っていたのに……


 「前回、裏で攫われたドリアードは現在、ノマノーラにいる。 本来なら新しいドリアードが裏の世界、レイモンの南に誕生するはずだが、砂漠化により神木はこの人の住むリーブルの東に生えてしまったのだ」


 ノマノーラと同じ?

 ノマノーラも神木が生えて来なかったのは、生える場所に偶然に建物などの障害物があったのでは? っと伝えられています。


 「つまり今回ドリアードを持って帰っても、この人の寿命はノマノーラのドリアードと同じだったのさ」


 ……先鋒隊は何も言っていなかった。

 でも…… そんな情報は本人から聞かなきゃわからないわよね……


 「お、俺達は…… 何のために死んだのか…… 全てが無駄だった……」


 何の意味も無さなかったこの作戦……

 スザクとラムツェルを思うとやるせない気持ちになる……


 「だけど前回の先鋒隊、ロナインが教えてくれた可能性。 神木が生えて来なかった場合、他の場所で生える。 これはノマノーラでも起こっることと思われる」


 !!

 ……まさかノマノーラでも何処かに森がある⁈


 「ロナインは自分勝手な理由で奪うのではなく、自分の手で探す道を選んだ、あの歳でな。 やってもらいたい仕事はノマノーラに帰って新しい神木を探すこと。 ノマノーラは広いというので会えないかも知れないけど、ロナインを手伝ってやってほしい」


 ノマノーラは広いけど…… 行動できる範囲は季節によって決まっている。

 それでも広いので会えるか分からないけど。


 「ほ、本当なら俺達がここに来た価値があった。 とても高い代償だったけど、この情報の価値は高いんだ…… お、俺達が死なずに帰ってもいいんだな……」


 ナインレット隊長達は涙を溜めながらお互いを見る……

 作戦は失敗でも、もし新しいドリアードを見つければノマノーラの未来が変わる。

 

 「やる! 俺達が新しいドリアードをノマノーラで見つける!」


 こうして飛翔族の13人が新しいドリアードを見つける任務に着くことを決心しました。

 そして残りの7名も後から合流することとなりました。



 「次は飛翔族ハーフ、スザク、ハーロック、おチビちゃん、ナナミル、タールはどうする?」


 相変わらずチルピンは覚えてもらえないみたいですね……

 でも…… 私は貴方と行きたい!


 「わ、私は総大将様に付いて行きます」


 言ってしまった……

 それにしても…… カッコいい〜!


 「ハルロックもチルピン…… タールもいいよね、私達はこの星で暮らしたいです!」


 言っている途中から涙が溢れてきたスザクが言った。

 ラムツェル…… 貴方を殺めた人達は全員、亡くなったよ…… ガレットなんてスザクが仇を取ったんだから……


 「タール、いいよな?」


 総大将様が言ってもずっと泣いているタール。

 タールの中でミーチャの大きさが分かる。

 だってたった2人だったんだもんね、貴方達は産まれてからずっと……


 「この少年は私が預かろう。 いいよな、ルークにリュウ」


 貫禄のある人が言った。

 あの人達はレイモン出身と言ってたし、お兄様ももの凄く強い。 ……何という種族かしら?


 兄弟が頷く……


 「他はどうする?」


 3人の飛翔族ハーフ、全員が帰ることを選択した。



 スザクと私はジャネルタさんと話した。

 何故、この星に残らないのか……

 それは新しいドリアードを探すのを手伝いたいからとジャネルタさんは言った。

 そして、そうすることが新しい森に飛翔族以外が暮らせるようになるからと。


 私もスザクも自分自身の勝手さを痛感しました。

 本当は私達も新しいドリアードを探すべきだと…… しかし、ジャネルタさんは私達にこの星に残ってほしいと言った。

 そして、幸せになってほしいと……



 ジャネルタさんはウイチさんとまた契約するらしい。

 今度はドリアードが見つかるまでの契約。

 そして、それが終わったらジャネルタさんが『死ぬまでの契約に変えてほしい』と言われたことを嬉しそうに話してくれました。 ……羨ましい!

 


 こうして全てが終わった……


 

 ーー ーー



 勝手に終わらすなっつうの。

 まだ仕事は続く。


 羅刹種20人が本当に帰るのかをルークと俺とで見送る。

 帰って来られたら困るのだ。

 


 上空へひたすら上がって来るが、気温が凄く低い。

 対策はしてあるけど凍えそうだ。


 今まで上がって来たことがない高さまで登ってきた。


 やはり上昇するのは遅い翼持ちの種族。

 俺とルークはスーッと上がって行けるけど、翼は結構な重労働そう。

 それでも羅刹種は無詠唱なので、風の魔術を上手く使って上昇している

 何回も回復薬を飲んでたけど。


 

 そして…… 俺達の装備では危険を感じ始めた高さで、羅刹種とお別れする。


 「もう帰る期間がギリギリだし、君達からドリアードを奪うにはこの人数では無理だ。 ……もう君達は戻ったほうがいい」


 ノマノーラへ渡れるか分からないくらいの時間が経っている。

 本当にこの人達がノマノーラへ帰れるのかは誰も分からない。


 「どうしても無理そうなら、戻って来てもいいですよ」

 「ありがとう。 でも、必ず帰るさ。 ……最後に1つ、君達の種族名を聞いていいか?」


 俺はロナイン爺さんとの関係を言ってない。

 俺と身内だと分かったら、爺さんも敵のように扱われるかもと思ったからだ。

 

 おかしな方法で飛んで、口から無詠唱魔術を打つんだ、上位亜人のスキルと思われても仕方ない。


 種族名か…… そういうの得意でしょ、ルーク。


 しかし……

 ルークはそっぽを向いて知らん顔……


 ちっ!


 「フリーダム…… 自由族ってことさ」

 「そうか…… その〜…… 今更だけど故郷のこと…… 済まなかったな……」


 人それぞれの正義ってやつか?


 「まぁ、時は戻せないさ。 それよりこれからを見ようぜ」


 爺さんにも同じようなこと言ったな……


 『ああ』っとだけ言って、グループの隊長は羽ばたいた。



 それから上をずっと見ていた……


 「フリーダムか…… 悪くない」


 独り言のようにルークが言った。


 「俺もだよな? リュウ」


 気に入ったようだ。


 「ああ、それを目指して行こうぜ」

 「ん…… お前はいつでも自由にしてたぞ」


 なるほどね……


 自由とは自由、本人の気持ち次第。



 「これからの予定は?」


 ルークが俺に言った。


 「スザク達と話すよ。 その後は氷竜族の里でガルフさんなんかも待ってるから報告。 飛んでリズーンに行ってヒラニと話して帰るって感じかな」


 土竜族の犠牲が5人なので気が重い。

 何を言われるか……


 「スザク達とは俺も参加するよ。 ……そうか、ヒラニさんと会うのか」


 ルークは馬車で帰るので、俺の方がリズーンに早く行けるだろう。


 

 ふぅ…… 上を見るともう何も見えない。

 ……戻る。



 ーーーーー



 ナカミツ族の里に戻ると、里内では宴会の準備でごった返していた。


 この里とも本日限り。

 この里はこの後、ホオヒューガ国と氷竜族の協力の元、復旧が始まる。



 「リュウ、集めて来たよ」


 俺はまだ吐き気が出るほど体調が悪い。

 予定はたくさんあるけどサンカルムに帰ったら病院に行こうと思ってる。


 集めてもらったのは飛翔族ハーフ達と、関係者になっても良いという男達。


 先ずは俺の考えたことをスザク達に話す。


 「スザク達に決定したことを話す前に、俺が考えて皆んなに却下された話を聞いてほしい。 俺は飛翔族がこの里に残る場合、ナラサージュとリズーンの裁判を受けてほしいと言ったのを覚えてるよな?」


 ほんの数時間前に言ったこと。

 ……スザク達が頷いたので進める。


 「俺はスザク達にも同じ罰を与えようと思っていた。 それはどうしてか分かる?」


 スザクの名を代表で使っているのでスザクが応えた。


 「私達も同じ罪があるからです」

 「そう。 実際には同じ罪がある。 それでも犠牲者が居なければ良かったけど、俺達も怪我人は多数…… まぁ、怪我はいいとしても犠牲者もそれなりに出してしまった。 その犠牲者の種族はお前達を恨むと思わない?」

 「リュウ、真剣勝負までさせたお前が言うことじゃないでござるよ!」

 「いや…… ラザノフ君、それは違うかも知れない」


 兄はやはり鋭いな……


 「あそこで飛翔族の罪を削る意図があった、違うか? リュウ」

 

 悪いのはあそこで死んだガレット達と思ったはずだ。

 そして自らの種族が恨みを晴らしたと今は思い込んでいる。

 安心してマッチアップ出来るゼウスさんを出さなかった理由は、鬼族の犠牲がなかったからだ。



 「まぁいい。 牢屋でお前達に自殺されたら後味は悪いからな、これからの話をしよう」


 タールは危険だ、生きる姿が想像できない。


 「お前達が住める国は2つ、ナラサージュかリズーンだ。 ナラサージュは観光地が多いけど影響力はない国、リズーンは全ての国のトップだ。 何方がいい?」


 リズーンを選んだ場合は自動的にルークが面倒を見る役だ。


 「そ、総大将様の側がいいです。 ……わ、私みたいに汚れた…… うぅ…… 嫌です……よね……」


 ナナミルだっけ……


 「俺の前の彼女はナナミル達と同じ目にあった人だったよ」


 !!


 ここに居る人達がザワついた……

 兄でさえキョロキョロしてる。


 「い、嫌になったのですか?」

 「全然。 フラれた、選ばれなかった、ついでに不能になった」


 !!


 ……コラ、ポンタ、口をパクパクさせるな。 ……喋るなら喋れ。


 「フッハ〜、だからフノウなのか〜」


 シータは余計なことを言うな。


 「ナナミル、お前は汚れてなんかないよ。 ……でも、俺には婚約者が2人も居るけどね」

 「ん、2人とは?」


 ルークには言ってなかったな。


 「ミナリとレミア。 ちなみにレミアは順調でも4年待ち」


 もうレミアは凄く若く見える。

 今現在が一番いいかも。


 「ミナリちゃんか…… いい子を選んだと思うよ」


 俺は別に思ってなかったけど、決まった時からどんどん良かったと思ってきてる。


 「ま、待ちます!」


 いや…… 待ってもらっても困るんですけど……


 「お、俺が面倒を見るよ! いいよな、リュウ」


 面倒くさい男、ポンタが言った。


 「ハハ、俺も今はサンカルムが拠点だ。 良かったら何でも教えるよ」


 ゼウスさんも結構、世話好きだな。


 「まぁ、サンカルムを選べばルーク以外は居るから色々と教えてもらえると思うよ、俺以外は皆んな優しいから」

 「そんなことないと思います。 あの…… ご兄弟ですよね?」


 ルークと俺を見てスザクが言った。


 「ルークは俺の兄だよ。 俺の方が背が高いけど」


 ルークは飯が食えない環境で育った。

 俺は成長期にいっぱい食べれたことが大きい。


 「あの時はビックリしたよ。 こんな大きくなったんだって。 ……まぁ、最後のほうは急激に背が伸びてたけどな」


 人間国の首都の近くに引っ越した辺りから飯の量が増えて、俺の背もグングンと伸びたな。


 「それで、皆んなサンカルムでいい?」


 ちなみにタールは呼んでない。

 もうリズーン行きが決まっているからだ。


 「はい。 いいよな、ナナミル……」


 複雑な表情のハーロックが言い、皆んなが頷いたのでサンカルムに決まった。


 俺が保証人になって冒険者にでもなれば、配達の仕事で食っていける。


 

 

 その日の夜は宴会となったが、もちろんスザク達は家の中にいる。

 一応、ポンタが見張りとして付いているのは、スザク達を守るためでもある。


 俺は出席するだけ。

 この体じゃ酒は飲めないし、宴会用の飯だってキツい。


 「リュウ、レミアとこれ作って来たの」


 見るとラモーナが柔らかく煮込んだ野菜スープを持って来てくれた。


 「ありがとう。 レミアは?」

 「私だけで話しても良いって。 リュウ、今日が最後じゃないよね」


 レミアは本当に心の広い人だな…… って言うか優しいのかな。


 「ドムやギル、パンクンとは友達だからね。 ここに来るし、その時にラモーナに会ってもおかしくないでしょ」

 「うん。 私だけに会いに来るのは…… ダメ?」


 会いたいと思ってしまう……


 「リュ、リュウ。 おで達もリュウに会いに行く」


 パンクン…… 助かった。


 「ああ。 サンカルムってところだ。 遠いけど歓迎するぜ」

 「おお。 直ぐに行くぜ。 なっ、ギル」


 ラモーナは消えてしまった……


 「ああ。 サンカルム、サンカルム、覚えたぜ」

 「ナラサのサンカルムで覚えとけばバッチリだぜ。 ゼウスも居るんだろ」

 「多分ね。 シータやポンタなんかもね」

 「おお〜、絶対に行くぜ!」


 実際この里からサンカルムは正反対というか、とても遠い。

 ただ猿人は山道を移動するのは得意だし、3人なら魔獣も怖くない。



 フと居なくなったラモーナが気になった。

 レミアの時もそうだったけど、ドリアードの人生とはとても過酷だ。

 ただひたすら森を徘徊するだけ…… レミアのように色々な森を冒険するならまだしも、ラモーナやミザリーは自分の気に入った森から出ない。

 人との交流を覚えてしまったラモーナ…… いや、ラモーナは俺以外とは話しているところを見たことがない。

 いつもレミアか俺だけ……


 

 宴は続く……

 

 お酒を飲んで笑い合う猿人と氷竜族……

 戦い前のような歪み合いはもう無さそう。

 

 ラザノフも楽しそうにしているけど、何か変な感じもする。

 土竜族の戦士が亡くなったことで本心では楽しめないのかも……


 そう言えばずっとレミアも見てない……

 上の気配を探っても…… 気配はない。

 外か⁈


 

 外まで来て、戦いが始まる前はいつもレミアとラモーナと話した崖の上まで来ると、ラモーナがレミアの胸で泣いていた。


 俺に気づいたレミアが話しかけてくる。


 「リュウさん、ラモーナは嫌いですか?」


 崖の上で見る夜景は格別だ。 

 しかもここは明かりなどがないから星が異常に美しく見える……

 ってレミアの質問か…… 嫌いなはずがないけど、君が聞くかね?


 レミアは人族ではない…… だから少しだけ感覚がズレていると思えるところがある。

 

 「嫌いなわけがない。 自分より大切と思える2人だから危険だけどベストと思える場所で戦ったんだよ」


 自分で言うのはなんだけど、俺が居なかったら中の犠牲も増えて、その分レミアやラモーナが奪われる確率も高まったと思う。

 間違いなく今回の戦いで羅刹種を1番倒したのは俺だ。


 「それなら私を連れてラモーナに会いに来ましょう。 ミザリーのところにもね」


 ミザリーもそうだな……

 まぁ、ロナイン爺さんに似てるルークにもミザリーに会いに行くことを進めよう。


 「レ、レミア…… 私はリュウと2人でも会いたいの……」


 ん? っとちょっと困った顔をしたレミア。


 「じゅ、10年に一度でいいなら、2人で会ってもいいです。 ……ね、リュウさん」

 「レミアがいいなら喜んで。 ラモーナ、俺は人間で直ぐに爺さんになるけどいいかな?」


 5回目に2人で会う時は、俺はもう直ぐ70歳、ラモーナは変わらない見た目……

 悲しい現実!


 「ふふ、ドリアードの愛情を舐めないで。 ……守ってくれてありがとう、リュウ」


 そう言ってラモーナは俺にキスをした……

 


 

 次の日。


 昼頃までゆっくり寝ていたのは俺だけ。

 俺のパーティーメンバーやゼウスさん、スザク達は一足早くサンカルムまで陸路で帰り、ラザノフやルカルスさんは氷竜族の里に寄ってから船で帰る予定になっている。


 俺もナカミツのラリョンカさんにお礼を言ってからドム、ギル、パンクンと別れ、そして悲しそうな目をしたラモーナともお別れして氷竜族の里へ飛んだ。


 

 氷竜族の里の上空。

 昼間なので堂々と里の広場に降りると…… 直ぐにムジカとクラルさんが寄って来た。

 2人で待っていた?


 「リュウ君…… ラリィは?」


 ニュ、と影から顔だけ出してラリィが先手を打つ。


 「母ちゃん、ごめんなさい。 でもラリィね、お兄ちゃんをまた助けたんだよ」


 実際に助けられている。

 

 「本当に助かったので、ラリィを叱らないでください」

 「そんな資格なんてないわよ…… でも2人とも無事で良かった」


 来年には里に帰ることが決まっているクラルさん…… 帰ればラリィとはしばらく会えなくなるだろう。


 「お兄ちゃん、空に行きたい」

 「ムジカ、後にしてくれ。 リュウ、族長が報告を待ってるでござる、行こう」


 いつの間にかラザノフも寄って来ていた。


 報告か…… 気が重いな。


 

 

 土竜族の族長ガルフさん、氷竜族の族長ゾフさんにこの里の長老。

 

 向かいに座ったのはゴルゾフさんとルカルスさんに俺とラザノフ。


 レミアは後からの挨拶となる。



 先ずはゾフさんが俺に報告してくれと言った。


 「無事この星のドリアードを守ることが出来ました。 羅刹種121名のうち93名を撃破、生き残りは昨日ノマノーラに返しました」

 「負傷者が続々と帰って来たからな、もちろん知っておったぞ。 それにしても見事な戦いかた、驚いたぞ」


 竜族の負傷者や戦死者はこの里に送られていた。


 「ガルフさん、土竜族の戦士を5人も死なせてしまいました、すいません!」


 人の価値に大きさはない。

 でも、上位亜人が貴重なのは俺だって分かっている。


 「いや、それは中の責任者の俺とルカルスに罪がある」


 ゴルゾフさんが庇ってくれる……


 「最強布陣で地形も有利、羅刹種が強いのは分かっていたが、それでも心の何処かで舐めていた。 ……最後までな」


 最後とはルカルスさんとミルトラインさんが組んで戦った時のことだろう。

 あの場所じゃなければ負けてた試合もあっただろう。


 「リュウ君、ワシはこの戦いで半数の戦士が失うと思っていた。 もしリュウ君が外で率先して戦ってなかったら、やはり半数は持ってかれたはずだ……」


 俺が戦えたのは猿人の援護があったから。

 もちろん最高の援護は俺に付いて来てくれた4人。


 「それでも氷のレベルが高い。 何とかラザノフが立場を守ったがドムフまであのレベルまできているとは……」


 後からドムフから聞いたが、ドムフは帰って来てからルカルスさんと試合をして撃破! 更にラザノフと意気込んだがラザノフには返り討ちにあったらしい。


 「ラザノフ、そろそろ戻って来んか?」

 「…………」


 何となく、こういう流れになると思ってた。

 たまたまな部分もあったろうけど、明白に土と氷のレベル差が戦死者や負傷者の数の差で出てしまった。


 「す、少し考えたいでござる……」


 ラザノフの実力はもうとっくにルカルスさんを超えている。

 ルカルスさんが族長、もしくは族長補佐にでもなってラザノフが兵団長になれば、数年後には全体的な底上げは出来てるだろう。


 「それで…… 其方は大丈夫なのか? 随分と顔色が悪いぞ」

 「大丈夫です。 数日前よりマシなので」


 俺よりラザノフの顔色が悪い。


 いつかはラザノフは里に戻る。

 上位亜人の定めとはいえ、旅を始めた頃の無邪気なラザノフは今より随分と若かったように思える。 ……それだけ長く旅したとも言えるけど。


 

 「とにかく皆んな立派に戦った。 スッキリとした祝勝会とはいかんが、今日は皆の戦いを労おうぞ」


 戦死者を出さないつもりは俺が甘かった。

 ルカルスさんとミルトラインさんが有利な地形で苦戦させられる強さ、もし羅刹種だけ121人だったらガルフさんが言うように半数は持ってかれたかも知れない。



 この日も昨日と同じように酒を酌み交わしたけど、当然、怪我人の俺は出席しただけだった。



 ーーーーー



 次の日も少し遅めに起きて、先に帰るラザノフ一家を見送る…… が?

 何故かドムフまで行こうとしてる……


 「ドムフは土竜族の里にでも行くの?」

 「えっ? 俺はサンカルムに帰るよ、まだサートゥラン達にも別れを言ってないし、それにまだまともにリュウさんから教わってないじゃん」


 俺は別に特別な練習メニューは持ってないぞ……

 この1年やってきたことが全てだし……


 「ゾフさんもゴルゾフさんも、いいんですか?」


 この里の仕事だってあるだろう。


 「ああ。 この1年の伸びは凄かった。 でもまだ甘いところもあるからな、引き続き頼みたい」


 甘いところとはラザノフとの試合で出たのか?

 まぁ、クラルさんが居るうちはドムフが居た方がいいけど。


 「分かりました、もう少し預かります」


 

 …… アイツ、初めから帰る気がなかったな。

 まぁ、子供達は皆んな懐いてるし、意外と頼りになるからいいか。


 

 ーーーーー



 それから俺は予定通りにカラカイッサムに飛んで、ルークの家に滞在しながらトゥルフ王子に面会を申し込んだ。

 

 返事が来るまではルークの家で待たせてもらうが、ここには当然、ユーリスがルークを待っている。

 ユーリスは俺を見つけると直ぐにルークの無事を確認して来たように、今はもうルークの嫁としての気持ちが大きいようだ。


 次の日の昼間にトゥルフ王子から面会許可が出てお城に向かう。


 

 お城の一室に案内された俺はトゥルフ王子、そしてこの前に少しだけ話したゴーメラン王、後は第二とかの若い王子達と対面して座らされた。


 「リュウ、早速だが報告を頼む」


 ……俺はこの国に貴族じゃないんですけど。


 「この国に攻めて来た羅刹種を全て撃破しました」


 おお! っと若い王子達が盛り上がる。


 「ぜ、全滅か!」

 「……いえ。 捕獲して交渉に使おうと思っていたので捕獲も多かったです」


 ここで初めてゴーメラン王が話す。




 ゴーメラン王


 中位亜人だけど息子達よりガタイがいい。

 上位亜人の血も入ってそうな感じ。



 「それではこの国で捕まえた捕虜も有効活用したのだな」


 ……泣き虫タールのことか?


 「捕獲したのは50人近かったのでその半数以上をあの場所での正式な試合で処罰しました。 この国で捕まえたタールと言う少年はショーザッタさんとルークが連れ戻します」

 「ご、50人! せ、正式な試合とはどんな風にやったんだ!」


 トゥルフ王子にしては珍しく、ガタンっと立ち上がって言った。


 「それはこの国の貴族のショーザッタさんとルークから聞いてください。 ちなみに試合にはルークも出て隊長含む羅刹種2人に圧勝してましたよ。 ……まぁ今回、自分がカラカイッサムに寄ったのはヒラニとギヌリさんに面会したいからです」


 皆さんが顔を見合わせて不思議そうな顔をしている…… 何か変だった?


 「め、面会は私も一緒に行こう。 ……それでルーク達はいつ帰る?」

 「今日の夜には戻ると思いますよ」

 「それならルーク達と一緒にもう一度報告をしてくれ」


 それならこの場で報告するっつうの。


 「自分は怪我人で、今も実は横になっていたいくらいなので早く戻って病院に行きたいんです」


 昨日だってユーリスに直ぐに戻って病院に行きなさい、と怒られた。


 「そう言えば顔色が悪いな。 もしかして試合で怪我をしたのか?」

 「まさか…… 戦場でやられたんですよ」


 ここで若い王子が話す。


 「其方が怪我するくらいに強い羅刹種2人を、我が国のルークは圧勝したのだな」


 フッと満足そうな顔を見せる皆様……


 確かにあの魔術は俺も欲しい。

 もし俺がアレを使えれば間違いなくこの世界の最強⁈


 「その辺りもルーク達に聞いてください」


 もう余り掘り下げずにさっさと終わらす……



 ーー ーー



 その後、お酒を持ってヒラニ達の部屋(牢屋の中はテーブルやソファーが置かれて部屋みたいだった)に行った俺とトゥルフ王子、さっきと同じような報告をしたけどヒラニから最後に印象的な質問を受けた。


 それは、友達は出来たのか? っと言う質問。


 俺は『俺にも猿人の友達が何人も出来たよ』っと答えたが、それを聞いた2人の顔がとても満足そうで、何かとても印象に残った……




 ルークを待たずに帰る予定だったけど、ルーク達も早めに帰って来たので夕食後に帰ることになった。


 その夕食後の会話。


 「ヒラニさんには会ったらしいな」


 もうすでに聞いていたようだ。


 「うん。 いつ解放されるの?」

 「明日になるんじゃない」


 居心地は良さそうだったな……


 「それより2人共に無事で良かった」


 ユーリスがレミアを見て言ったので、レミアも大きく頷いた。


 「リュウはレミアさんも助けたんだね」


 ユーリス…… ああ、あの時か。

 忘れてた。


 「小さな頃から鍛錬してきたことが身を結んだな」


 ルークが言う……


 そう…… 俺は大事な妹2人を救ってユーリスとレミアも救った。

 これだけでも努力してきた甲斐があったけど…… 救えなかった人も居る。


 「これからも大事なものは守るよ」


 レミアを見て言ったが、流石にもうそれほど危険はないはず。

 それでも事情を知る人の前以外では、人族になるまでレミアは消えてることが多いだろう。



 ーーーーー



 帰り道。


 夜にうちに海まで来て、そのまま海沿いを飛んで朝日が出てきた頃……

 レミアが話があると言うので陸に降りようとしたが……


 「リュウさん、このまま向き合って話しましょう」


 ……っと言うので海の上の上空で向き合って話すことにした。


 「リュウさん、この度は私とラモーナのために命を賭けて守ってくださりありがとうございました」


 改まってどうした?


 「あの…… 約束のキス……」


 ハッ! ……忙しさと痛みで忘れた訳じゃないけど後回しにしてた。


 「では今でいいの?」

 「はい。 ……でも聞いていいですか? いつ向こう(レイモン)に連れて行ってくださるのですか?」

 「え〜と、そんなに楽しみだった?」


 まぁ、もう少しゆっくりしてからだな。


 「リュウさんの妹さんとお母様に挨拶したいのです」


 お母様じゃなくてお母様代わりだけどね。


 「数年後には行きたいね」


 今はそうとしか言えない。



 朝日が出て、とても美しい肌が目立つ美少女。

 もう最初に会った時に思った19歳くらいの見た目ではないけれど、今は今で一番いいと思えるほどの美少女が目の前にいる。


 歳下は好きになったことはないけど…… いや、レミアは70を超えてるか……

 

 俺は初めてレミアの唇に触れた……

 




 帰ってからひと月。


 病院のベッドで寝てる俺にラリィとラザノフが面会に来た。


 このメンツは今は嫌な予感がする。


 「リュウ、拙者達の旅ももう終わりにするでござるよ」


 やっぱり……


 「家はどうするの?」


 2人のものが沢山ある。


 「拙者の部屋だけは取っといてくれ。 ……それ以外はリュウの好きに使うがいいでござるよ」


 寂しそうに言う……


 「結婚式は里でするの?」

 「まだそれは急いでないでござる。 まぁ、その時はリュウにラリィも呼ぶので来てくれ」


 ラリィの瞳に涙が浮かぶ……


 「ラリィ、泣くな。 拙者は直ぐに帰って来るから直ぐに会える。 ……リュウ、それであの船なんだが、拙者に譲ってくれないか?」


 船も2人のものだ。


 「ああ、いいよ。 直ぐに帰って来るんだろ」


 ラザノフはニカッと笑ったが……

 少し寂しさを感じた。



 これでこの物語は終わり。

 そう…… 戦いが終わってからの寂しさは物語の終わりを意味していたのだ。



 転生は珍しい話ではないのかも知れない。

 ただ、やはり転生して記憶があって嬉しいのは知識だろう…… あっ! 次のためにもうちょっと勉強しとけば良かった。



 その日、俺はソマルさん家族以外に初めて転生者であると告白した。


 夜中、病院の庭をこっそりレミアと散歩中、ここで告白した。


 「レミア、俺は前世の記憶があるんだ」


 レミアには知っててもらいたかった。


 「ふふ、私にもありますよ」


 えっ!!


 ま、まさか……


 レミアは美咲か〜!!



 「あのさ、あの時、おばさんの料理は美味かったし美咲の作ったおにぎりは最高だったよ」


 体育祭で親の来ない俺を、美咲の家族が一緒に食べようと誘ってくれたのだ。

 本当にあの頃から優しいし可愛いし堪らんな。


 「はっ? ドリアードの前世は妖精ですよ。 長く生きられなかった妖精がドリアードになると言われてます」

 「……だと、今思った」


 美咲にちょっと似てると思ったんだけどな〜、目と鼻と耳が付いてるところとか。


 「じゃあ、ラモーナやミザリーもそうなの?」

 「はい。 そうですよ」


 

 不思議な世界への転生。

 だけど逆にこっちから地球に転生ならもっと不思議に感じるかも知れない。


 この世界は回っている。

 宇宙も人も全て……


 「俺はレミアに出会えて良かった」

 「はい、私もです!」



 そう言ったレミアは……


 美しい。




 

 

 


 


 これでこの物語の本編は終わりです。

 次回は数年後の世界から『里帰り編』が少しだけ始まります。


 

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