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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 真剣勝負



    第三章  フリーダム



 第113話  「真剣勝負」





 山道を進む王族専用アシスト馬車。


 この馬車は山道でもそれほどは揺れない。

 でも、普通の馬車だとこの道は通れないだろうな……


 もう直ぐ着くはずだけど、怪我人のタールにはこの旅はきつかっただろう。


 目の前のショーザッタさんも立場的には上だけど、この強行スケジュールに文句一つ言わずについて来てくれた。


 「ルーク、猿人はどうだった?」


 ショーザッタさんは猿人を見たことがない。


 「身体能力が高そうですね。 知能がとても高い種族もいるみたいですよ」


 逆に凄く低い種族もいると聞いた。


 「それにしてもルークの弟は凄いな。 竜族と猿人を従えるなんて誰が出来るんだ?」


 上位亜人でもトップレベルと言われている竜族、そして人族登録すらしていない荒くれ者の集団の猿人。

 確かにどうやって従えさせることが出来たのか、気になるけどどうせアレだろ。


 力を示したのだ。



 「向かうに着いたらもっと驚きますよ」


 捕虜が32人って、どれだけ余裕で戦っているんだよ……



 「サーファレイ様、確認をお願いします」


 運転手が小窓を開けて言ってきた。



 

 ナカミツ族という種族の猿人の里。


 入り口の前のいつもの猿人(ギルとドムとパンクンと言っていた)とポンタ君とシータさんが居た。


 「あっ、ルークさん、捕虜を連れて来たんですね?」


 ポンタ君はフォルマップル出身の元貴族と聞いている。

 学校の大会でリュウに殺されかけたと言っていた。


 「ああ、中に入っても大丈夫?」

 「もちろん。 シータさん、俺が案内するから」

 「フッハ〜。 馬鹿、俺も行くって」


 どうやら見張りは暇らしい……




 里内では皆んな食事中? ……いや、捕虜だけか?


 リュウは椅子に座っている……

 そしてリュウの周りにも椅子が用意されている。

 何か始めるつもりか?


 話しかける。


 「リュウ、捕虜を連れて戻ったぞ。 こちらがリズーン国、第1騎士団長のショーザッタ様だ。 ……なんか捕虜が増えてない?」



 ーーーーー



 赤毛のアンちゃんをテーブルまで連れて来た。

 アンを座らせて俺も対面に座る。


 お茶とお菓子を勧めて質問と報告をする。


 「ビックリだ。 顔は腫れてるけど綺麗なんだね」


 本当は酷い傷跡だ……

 女の顔をここまで殴ること出来る男はあの男…… カウキとか言ったか、アイツと被るな……


 「は、恥ずかしいので、み、見ないでください……」


 上目遣いで俺を見て、アンはモジモジした。

 ……やっぱり最近の流行りなんだ、これ。


 「それで質問。 君以外で俺に付いて来る人はいる?」


 上空の羅刹種を見ながら言った。


 「ジャネルタさんなら…… お、女の人なら付いて来るはずです」

 「ありがとう、でもその人が悪いやつなら殺すからね」


 目を見開いて驚いているアン。

 この人の目は俺の目の天敵だ。

 目が合うと動きを止める目と、直ぐに視点が合ってしまう目、何度も動きを止められた。


 「あの、わ、悪い人ではないです!」

 「だったら大丈夫。 俺も今回はしっかり話を聞くことにするから。 あっ、ナナミルとハーロックとチビッコは元気だよ」

 

 また目を見開いたアン…… アンじゃなくて何だっけ?


 「ほ、本当ですか! あの、チビッコじゃなくてチルピンでは?」

 「あ、うん、そう、そう言った? 君の名は何?」

 「スザクです。 あの…… お名前を伺ってもよろしいですか?」

 「ああ。 リュウ。 フノウ・リュウ。 ……ゼウスさん、この子の相手をお願いします。 友達のことを教えてあげてください」

 「ハハ、任せろ…… 上か?」


 軽く頷いてからジェットを始動した。




 上空。


 近づきすぎると逃げるので、逃げないギリギリで話しかける。


 「お〜い。 お前達のリーダーはデルマ城に戻った。 最速で帰って来ても12時間はかかる。 ……ずっと飛んでられないだろ」


 話を聞いている証拠に、俺の方を全員向いている。


 「スザクはお茶とお菓子を食べてゆっくり待つってさ。 ジャネルタさんも来てだってさ〜」


 ピクッとした1人の羅刹種、確かに女っぽい。


 「スザクは私を呼んだのですか?」


 凄い進歩。

 話しかけてくれた。


 「ああ。 いい人だって言ってたよ〜」

 「…………」


 さぁ、行けるか?


 スッと下のスザクを見る……

 ゼウスさんが一生懸命に話しかけて、スザクが大きく頷いている……


 俺が見たことで羅刹種の全員もスザクとゼウスさんを見ている。


 しばらく2人のやり取りを見ていたが、ゼウスさんとスザクの間に敵という雰囲気は全くない。



 「近づくよ」


 ゆっくり近づいて、目の前でクルッと回って手を差し出した(ちょっとカッコつけてみました)。


 サッと手を重ねてくれたので成功。


 『行こう』っと言うと、『はい』っと返事をしてくれた。 ……が。


 「ちょっと待て。 俺も行く」

 

 っと言って、バサバサ〜っとジャネルタの横に来た男の羅刹種。

 スッとジャネルタが俺の手を離したので恋人か? 

 でも、チャンスだよな。


 「どうせ隊長達はまだ帰って来ない。 茶でも飲んでゆっくり待とうぜ」


 ……っと、他の羅刹種に言うと、数人が動いて、更に数人、結局全員と付いて来てくれた。


 

 羅刹種を椅子に座らせてお茶を振る舞う。


 そして……


 一杯目のお茶を飲み干す羅刹種、その時にバッと合図した。



 俺の意図を汲み、直ぐに動いたのはラザノフとゼウスさんとゼブンさんとギルとドム。

 少し遅れたのはゴルゾフさんと俺のパーティメンバーとパンクン。

 大きく遅れたのはルカルスさんとドムフ……


 そう。

 一気に羅刹種を捕獲したのだ!


 

 終わって縛り上げてからひと言。


 「ドムフ、遅い! 何を習いに来てたんだよ!」

 「だ、だってリュウさん、これは汚すぎるだろ〜!」

 「アホか。 俺は大人の汚さが詰まった男と呼ばれてるんだぜ、な、ラザノフ」


 振り向いたラザノフは……


 ニカッと笑った。



 ーーーーー



 「あ、相変わらずやることに躊躇がないな…… それでこんなに捕虜が増えたんだな」


 デルマ城に向かった4人を除いて、羅刹種11人を無傷で捕獲した。

 大人の汚さを備えてて良かった〜っと。


 「それで何故、捕虜達が食事を摂っているんだ?」


 この人はリズーン国のショーザッタさん。


 「最後の晩餐。 風呂にも入ってもらってますよ」


 目を見開いたショーザッタさん。


 「ぜ、全員、殺すのか?」

 「まぁ、俺1人なら。 でも皆んなが居るので納得する形で裁きますよ。 ルークも当然参加するだろ?」

 「う…… お前は恐ろしいから応えたくない」


 何でだよ〜!


 「まぁ、4人が帰って来てからですよ。 それまで色々と情報を集めているので」


 っと言った先から氷竜族、ミルトラインさんが報告に来た。



 ミルトラインさんの報告。


 捕虜44名のうち、羅刹種は32名と断定。

 ハーフと嘘をついていたのは10人。


 それにしても…… やっぱり羅刹種ハーフは弱いって言うのもあるけど、ポジション的に危険なところに配置されてたのが分かる。

 圧倒的に死亡が多い。



 ラザノフの報告。


 ナナミル、スザクの証言から8名がラザノフの怒りに触れたらしい。

 詳しくはまだまとめてない。



 ドムフや俺のパーティメンバーやゼウスさんにも、他の羅刹種やハーフの証言を集めてもらっている。



 情報を集めて死に値するのか、を考える。

 もちろん他の星のドリアードを盗もうとしてたんだ、全員でもいいと思う。

 

 でも、スザク、ナナミル、タールの話はそんな単純ではないと思わせてくれた。

 そしてスザク達を生かすなら皆んなが納得しなくてはならない。

 特に死亡が多かった猿人、それに土竜族からだってスザク達を生かす不満が出るかも知れない。


 皆んなが納得できる、俺なりの裁きをする!



 ーーーーー



 夜、22時。


 リュウから最終会議があるので参加してくれと言われた。


 その時間になる前に、ショーザッタさんが俺に質問した。


 「俺も参加していいのかな?」


 それは分からないな……

 何と言ってもリュウなので無茶を言ってくる可能性大だ。


 「覚悟があるならでしょうね。 アイツは何を言ってくるか分からないですよ」


 ジッと一点を見たまま動かなくなったショーザッタさん、脅しすぎたか?


 「ま、まだ4人の羅刹種が残っているんだよな」

 「って言ってましたね。 お金で売るとかポンタ君が言ってたけど……」


 この里の保証とかで使うのか?


 「行くよ。 やっぱりあの少年の未来は気になる…… 未だにこの世界からサヨナラしたいみたいだからな」


 ボーっとして泣いてることが多い。

 見てられないよな……


 「分かりました。 覚悟があるなら行きましょう」

 「え、あ、ああ…… やっぱり怖いな」


 何言われるか分からないぞ……




 時間になったのでリュウの使う家に行く。

 ちなみに俺達にもリュウは家を空け渡してくれた、そこにタールを寝かせている。


 家に入ると結構な人々…… 猿人も何人も居る。




 リュウが話し出す。


 「集まったから進める。 先ず羅刹種の4人が帰って来たら俺とゼウスさんで迎える、そしてゴルゾフさんとゼブンさんは遠くの茂みに隠れててください」


 少し気になったので手を挙げた。


 「何、ルーク?」

 「リュウとゼウスさん、対する羅刹種はグループの隊長が4名、もう少し増やした方が良い」


 頷く人達……


 「数的な不利をワザと作ってる。 だから警戒を解いて穴の中まで誘えるのさ」


 なるほど……


 「でも、お前は怪我人だ」

 「余計なお世話だ。 最後なんだ、これくらい何ともない」


 ふぅ…… まぁ、昔から生意気だけど。


 「俺達が里内に入ったら、詰めてゴルゾフさん達も入ってください」

 「つまり、蓋をするって感じか」

 「そうです」


 リュウの作戦の続きはこうだ。


 虎鉄というリュウの技(俺は知らない)で、ガレットという男を叩く、っというより触る、という技らしい。

 触られたガレットは必ず悲鳴をあげると言うが…… 何か痺れるのか?


 その悲鳴を合図に4人を一斉に拘束するようだ。



 ここでショーザッタさんが質問した。


 「4人の居ないうちに仲間の羅刹種を捕獲する、どうやったか見当もつかないが見事な作戦だ。 ただ金を要求するなら倍は要求した方が良かったな」


 1人当たり10,000トア。

 国を相手取るなら払ってもらえる。


 「金なんていらない。 俺が要求したのは首、前回の先鋒隊の2人の首だ」


 !!

 こういうやつだよ……

 敵に回したら恐ろしい…… いや、味方でも恐ろしい。


 「ふぅ…… 先鋒隊は3人だろ」


 残すと厄介だぞ。


 「言ってなかったっけ? マクニールは俺がデルマ城に忍び込んで殺って来たよ、ついでに王子も」


 !! 

 信じられない……

 マクニールと言う名前だけでピンポイントで殺れるものなのか?

 いや…… 無理だよな、普通は。

 

 まぁ、普通じゃないからな……



 「進める。 ラザノフ、頼む」

 「ああ、任せるでござるよ」



 さっきまで赤毛の女の子の話を聞いていたラザノフ君、内面から出る怒りが見えるようだ。


 ラザノフ君の調べた内容。



 ガレット  諸悪の根源とも言える男。

 スザクやナナミルに一生消えない傷を負わせた。


 ゴルソリ  汚い小物。 同じくスザク、ナナミルに死以上の屈辱を与えた。

 ただし、今は地面から鼻だけ出して絶望中(皆んなも見に行って笑ってやってくれ)。


 ラソーダ  ハマン  上に同じ。


 ザルメ  ヨシダ  解放されたナナミルを脅して弄ぶ、最低男。


 マーナリーグ  最後にやらかした最低男、こいつは拙者が殺る!


 「拙者の調べではこんなもんでござるよ」



 次のシータさんとポンタ君が調べたのはタールだ。

 さっきまでタールの話を聞きに来ていた。


 ヤーマン  傲慢な羅刹種。 ただ死に値するのかは大将に任せる。


 ハッシューナ  第3グループの女隊長。 タールとミーチャ(死亡)を弄び痛ぶった。


 マーナリーグ  仲間を売る最低の隊長。

 ただし、ラザノフがターゲットにしているので任せたい。


 「フッハーッ、俺達はこんなもんだぜ、大将、ヤーマンはどうす……」

 「2人で殺れ」


 被せるように恐ろしいことを言う……

 もう眠いのか?


 「ちょ、ちょっとそれは……」


 腰が引けてるシータさん…… ポンタ君も今にも逃げそうだ。



 「ミルトラインさんとルカルスさん、次お願いします」


 ミルトラインさんと言う氷竜族の人と、土竜族の団長、ルカルスさんの合同での報告。


 嘘をついていた10人のうち、6人をクズと認定した。

 6人以外は嘘をついていただけなので不問とした。


 ゴーマ  ロクロウ  リュウが捕まえて来た羅刹種。 

 村を襲っていながら羅刹種に脅されてやったと言い張っていた。


 ハザラ  ミシマ  モルゼンタ

 同じ隊のハーフ女を弄び、暴力を振るう。


 ジーティ  普段から羅刹種ハーフをイジメる。 

 ただ死に値するかはリュウの判断としたい。


 多いな……


 

 「次はドムフとゼウスさん」


 ドムフ君とゼウスさんの報告。

 2人が調べたのは主に羅刹種ハーフ。


 許せないのは羅刹種の味方をしていた4人。

 

 ラルフ ミケ ズルドー ゴーメル

 こいつ等は女絡みでも許せない行為をしていた。

 ハーフを逆手取り、脅されていたと言うが、俺達なら死刑にする。


 

 ドムフ君とゼウスさんはリュウに判断を任せるではなく、ハッキリ死刑にすると言っている。

 なかなか男前な人達だ。


 

 「こんなもんかな? まぁ、明日の朝に来るだろう4人の中にもガレットとマーナリーグが入ってる。 ……今度は遅れるなよ、ドムフ」

 「ああ! 俺も大人の汚さを身につけるぜ!」


 ハハ…… リュウのあの嫌そうな顔……


 「それとこの会議に参加した人は明日は楽しいことになるからね。 ……覚悟を決めておけよ」


 ウグッ…… ほとんどの人が嫌そうな顔……



 ーー ーー



 会議の後にリュウに頼んでタールを良く知るスザクやハルロック、ナナミル、チルピンを俺の家まで来てもらった


 ただ……


 タールはラムツェルという少年が亡くなったことにとても悲しがり泣いた。

 そして、その様子を見たスザクも取り乱して泣く。

 最後は皆んなで号泣(ショーザッタさん含む)という事態となってしまった。


 

 ーーーーー



 朝方、珍しく目が覚めなかった俺が、ギルに起こされた。


 首を取りに帰っていた4人の羅刹種が帰って来たと言う……


 ゼウスさんと合流して外に出ると、ドムとパンクンが羅刹種4人と睨み合っていた。


 先にギルに聞いてるはずの、トンネルで寝ていたゴルゾフさんとゼブンさんは見当たらない。

 何処かに隠れているのだろう。


 パンクンとドムを下がらせて4人と話す。


 「ご苦労だったな、首を確認するから来てくれ」

 「ちょっと待て、俺達の仲間は何処に行った?」

 「何時間かかった? 飛んで待っていられるはずがないだろ、皆んな飯食って寝てるよ」


 これ本当。

 ただ両手を後ろで縛って土魔術で固めてるけど。



 顔を見合わせてる4人……


 「ほ、本当に仲間は帰してくれるんだろうな? お、俺達はもう帰る場所さえないんだ」


 フォルマップル国は大混乱だろうな。

 この後のフォルマップル…… どうなるか?


 「俺はこの作戦の総大将。 そして1番危険な場所で動くくらいの正直男でもある。 お前達も俺と剣を交えただろ? こんな面倒くさいことしなくても、俺とこの人だけでお前達を殺れるぜ」


 これも本当。

 だけど、制裁ではなくなる。

 特にスザクを思うと生け捕りにしたい。


 「わ、分かった。 穴の中でしっかり確認してくれ…… いいな、ガレット?」

 「ああ、構わぬ」


 危機管理能力が低いな……



 コレは前世の記憶だ……


 俺の前世では電気自動車なるものが道路を走っていた。

 静かに近づく電気自動車に気づかない友達ゆうじ…… 俺はその時に思ったのだ、ゆうじの前世は飼いウサギだったに違いないと。


 『きゃわいいね〜ウサちゃん』とか小学生に言われながら育つ飼いウサギ。

 危機管理能力が喪失しているので自然に帰っても餌にしかなれない。

 狼が近くにいても『この葉っぱ美味しいよ〜』、って感じで堂々と自分自身も餌になるのだ。


 俺? 俺は直ぐに気がついた。

 俺が車に轢かれることはないのだ〜!

 ん⁈ 俺はどうやって死んだっけ……?


 まぁいい、とにかく皆んなも後ろから静かに近づく車には気をつけてくれ。




 6人で穴に入る。

 

 入り口の横に居たドムとパンクンも蓋をする役割だ。


 トンネルを抜けて里内に入ると俺が気安くガレットの肩を “ポン“ っと叩く予定だったが、ガレットが少し右足を引きずっていたので……


 「どうしたの、この足」


 っと、右膝に虎鉄を打った。


 「う…… さ、触るな。 お前達の…… ウギャアア!」


 時間差がある虎鉄…… もしかしたらガレットはもう歩けないかも知れない。



 合図に直ぐに反応する仲間達。

 

 何発かの下級魔術は飛び交ったが無事4人を拘束した。


 「汚え、汚えぞ〜! 貴様〜! グワァアア、痛え〜!」


 虎鉄の痛さは半端ないはず……

 回復薬はあげないけど。


 「何で? 仲間は解放するよ」


 えっ…… っとした4人。


 「とにかく黙ってろ」


 

 金は110,000トア、キッチリある。

 これは亡くなった味方の家族へ均等に渡す。


 首も他の捕虜に見せると本物と分かった。



 ガレットは相変わらず『痛え〜、許せねえ〜』を連発している。

 実は俺も痛くて寝ていたいので、凄くイライラする……


 まぁいい、制裁はもう始まる。



 

 続々と捕虜を集めて俺を中心に円ができる。

 もちろんスザクを含む捕虜達は、両手両足を紐で縛り上げている。


 俺の後ろには色んな種類の武器が並ぶ。 俺以外は全員の武器を後ろに並べてある。



 そしてこのイベントの発表だ。


「俺はこの作戦の総大将を任されたナラサージュ国のフノウ・リュウと言う」


 捕虜達も新たに捕まえた4人も何が起きるのか知らない。

 ついでに仲間も知らない。


 「他の星のドリアードを奪おうなんて、本来なら全員死刑だ」


 悲劇的な顔はショーザッタさん……

 何で?


 「タール、ナナミル、スザク。 お前達は悲劇的に振る舞っているけど、ドリアードを盗まれたらどうなると思う?」


 塞ぎ込んでる3人を指名してみた。


 「前回ドリアードを奪われた裏の世界、レイモンでは何百年も戦争してるよ。 豊かな土地を求めてな」


 この辺りを知らなかった羅刹種も居るのか、ググッと集中して聞いてるやつも居る。


 「俺と……」


 ルークに立つよう施す。


 「俺と俺の兄はレイモン出身だ。 戦争が嫌でこっちの世界に来た。 俺は産まれた時から両親が居ない、戦争で失ったんだ」


 厳密には母親は違うと言う人もいるかも知れない。

 でも、確実に戦争が絡んでいる。


 「つまり、俺や兄の親の仇はお前達でもあるんだぞ、スザク、タール…… いや、どれほどの人数の仇か分からないぞ」


 戦争で身内を失った人、それだけではなく、ローチェのように間接的な不幸も全てに戦争が絡んでいる。


 2人の瞳に涙が浮かぶ。

 不幸から逃れたい一心で、ドリアードのことも、その後のこの星のことも考えたこともないのだろう。



 「今から呼ぶやつは俺の仲間と真剣勝負をしてもらう。 勝てれば自由、負ければ当然、死んでる、真剣勝負だからな。 武器は後ろから好きなものを選べ。 ……仲間は自分の武器を使われたくないなら早めに真剣勝負に参加したほうがいいぞ」


 自分な大事な武器は人に使わせたくない。

 振り返って武器を見たのは竜族の人達とゼウスさんと…… ルークもチラッと見てたな。


 「リュウ! それでは悪いやつが制裁を受けない場合もある! それに仲間も死ぬんだぞ」


 ラザノフの “ござる“ 無し発言。


 「だったらラザノフが全員殺してくれ。 ……それとも俺がやるか?」

 「ウグッ…… そういう問題ではないでござるよ……」

 「心配するな、無理なマッチアップはしないし味方は断ってくれてもいい。 捕虜もドリアードを盗もうとした罪以外は何もしてなければ戦うことはない」



 今の俺の言葉で敵も味方も、ピーンと緊張の糸が張り詰める。

 敵も味方も自分が指名されたらどうしよう? って顔のやつが多い。


 余裕があるのは3人だけ、ゴルゾフさんとゼブンさん、それに少しだけ表情が分かるようになったゼウスさん。



 「ちょっと待ってくれ…… 俺はいい、だけど仲間は助けてくれ」

 

 リヒター前総長だっけ?

 都合がいい、もうお前だけでは足りないのだ。


 「先ずはリヒター、お前だ。 お前の罪は部下の暴挙を止めれなかったこと。 まぁ、お前も総長だったんだ、俺が相手してやるよ」


 怪我人同士、やりましょ。

 少しだ、動けよ、俺の身体。


 「お、俺はいいんだ、な、仲間を頼む〜」

 「じゃあ、お前は最後。 その代わりもう何も喋るな。 喋ったら……」


 刀を抜いて相変わらず『痛え〜』を繰り返すガレットにツカツカと近づく……

 ズキズキと痛む腹を気取られないように、ピュと刀を軽く振ると、ガレットの更にうるさい悲鳴が里内にこだました。


 掠めるように斬ったのは左目、失明ではないけど、しばらくは見えない。

 まぁ、見えても視力は大きく低下してるだろう。


 「喋ったら全員の左目をもらうからな、分かった?」

 

 コク、コクッと頷いたリヒター。


 「うるさいとこっちも行くよ」


 ガレットの右目、1ミリの位置に刀を寄せる……

 ガレットは『あがっ』っと言った後に身体を硬直させて痛みに耐えた。

 

 

 ラザノフは思う。


 このモードのリュウは危険だ…… それでも立場が総大将。

 ラリィの時よりマズいのでは……?



 

 「先ずはマーナリーグ。 お前は西に行ったけど全てを部下に任せて自分は村を襲ってたな。 それに下衆な男でもある。 ラザノフ、やるんだろ?」

 

 ゴクッと唾を飲み込んだラザノフ。

 ラザノフは優しいので人族を殺ったことがない。

 今回も生け捕りばかりしていたと聞いている。



 マーナリーグは俺の後ろに転がる色々な種類の武器の中から短剣を選ぶ。


 戦えるスペースを作る……

 

 「ほ、本当に勝ったら自由だろうな?」

 「勝てないから考えるな」

 


 マーナリーグが納得しないまま真剣勝負が始まる。


 スッと緊張を解いて、静かに佇むラザノフ…… 雰囲気が出てる。

 初見でラザノフと対戦するなら俺も充分に注意して動くだろう、それくらい隙がなく思える。


 ボスッ、ボスッと魔術がラザノフの間合いに入った途端に見えるが、ラザノフは必要最小限の槍の動きで魔術を流す。


 流れた魔術が捕虜や仲間達に向かって悲鳴があがるが、ラザノフの集中力に翳りはない。


 ゆっくりとスペースを消すように近づいたラザノフ。

 そのプレッシャーに負けたのだろう、マーナリーグは飛行形態へ移ろうとするが……

 

 途中、ドスッ、ドスッと致命的な一撃…… いや、二撃を入れられて絶命した。


 ラザノフ圧勝!




 絶望感が募る羅刹種達…… 飛べる場所、集団では無類の強さを持つ羅刹種でも、この条件では竜族の敵ではない。


 「もう分かってると思うけど、ノマノーラでは最強の飛翔族でも、ここでは大して強くない。 まぁ、今の男は特別に強い、次は弱いポンタ、残り全員とやれ!」

 「やれるか〜!! いじめるなぁ! バカリュウ〜!」


 プフッと仲間にだけ緊張が薄れたが全て冗談とは言わない。


 「ポンタ、お前と同じ境遇で、更に同じ境遇の人を陥れてたやつがいる。 どうだ、やるか?」


 黙って考えているポンタ……

 自信がないのは分かるけど、集団でユーリスを脅しに来てた時は威張っていたよな。


 「な、何人?」

 「たったの4人」

 「……殺そうとしてる?」


 なんでだよ。


 「誰か〜、弱いポンタの補佐する3人は居ないか〜?」

 「お、おでやりたい。 リュウ、いいか?」


 パンクンじゃ強すぎる……

 

 「じゃあ、2人でいい?」

 「いい。 おで頑張る!」

 「いや、あ…… あと2人……」


 ポンタは無視する。


 「ラルフ、ミケ、ズルドー、ゴーメル、お前達はラッキーだ。 相手は2人、しかもアドバイスをしてやる。 ……俺ならチビから殺る。 そしてデカブツは足元に弱て……」

 「リュウ!! ……あんまりいじめるな」


 ラザノフに言われてポンタを見ると、シータの胸で泣いていた……


 可愛いやつ。


 でも、今回の相手は羅刹種ハーフ。

 スキルの遺伝よりも翼の特性を引き継ぐことに重点を置いたので強くないはず。


 

 泣いても何してもこの戦い、スザクやタールの話を聞いた者には参加してもらう。


 ポンタは聞くな、ってあれだけ言ったのに、個人的にナナミルから話を聞いたのを俺は知っている。




 ポンタ、パンクンvsラルフ、ミケ、ズルドー、ゴーメル。


 

 パンクンはゴツゴツした金属バット、ポンタは短剣、羅刹種ハーフ達は剣と槍を選んで始まったこの戦い、詠唱を始めたハーフ2人とポンタに突っ込んで来たハーフ2人。


 俺のアドバイス通りだ、っと思った瞬間、パンクンはジャンプ一番、詠唱をしている1人の頭を思いっきり武器の金属バットで叩き下ろした!

 

 カツンッ、っと乾いた音がしたその先は見るに無惨な光景が広がる。

 近くで見ていた人が悲鳴をあげて、もう1人のハーフは詠唱を止めて逃げる。


 

 ドム、ギル、ゼウスさんが速すぎるだけでパンクンは本当はめちゃ速い。

 パワーは額の目を解放したゼウスさんと同等でタフさはゼウスさんを上回ると俺は見ている。

 


 ポンタは得意魔術のランザ何とかで2人のうちの1人を吹っ飛ばす!


 が、もう1人の槍がポンタを……

 ズドーンっと吹っ飛ばされたのはハーフの方。

 ポンタのもう1つの得意魔術、え〜と、氷の太いやつが飛び出る魔術がもう1人のハーフを吹っ飛ばした。

 



 ポンタは強くはない…… が、防御力は高い。

 得意魔術が2つとも防御向きなのだ。


 

 飛ばされたハーフは次々にパンクンが葬る…… やはりパンクンが強すぎた、勝負にさえならない。


 ポンタとパンクンの勝利!


 

 ……え? 逃げた詠唱ハーフ?


 アイツは出口に続くトンネルで弓矢隊にやられているはず。

 毒付きのね……


 

 ズルズルとトンネルの前に運ばれる羅刹種の遺体。

 今、5体目が運ばれた……



 「次はゴーマとロクロウ。 カラミージャで村を襲って3人を殺害、しかも仲間への裏切り行為も確認されてる。 俺が捕まえたし、俺とポンタでやってもいいけど誰か……」

 「俺がやろう。 話を聞いてた男だからな」

 「それなら俺もだ」


 そう言って名乗りをあげたのは、ルカルスさんにミルトラインさんの同期のライバルの2人。

 ポンタのホッとした顔がムカつくぜ。



 ゴーマとロクロウが俺に聞く。


 「ほ、本当に自由になれるんだな?」


 まだ聞くか……


 「俺は嘘をついたことはない」


 ……えっ? って顔の味方。

 止めてもらえます?



 ゴーマ、ロクロウvsルカルス、ミルトライン。


 竜族は槍、羅刹種は短剣を持った。


 

 戦いが始まると直ぐに無詠唱、しかも間合いまで見えない魔術がミルトラインさんだけを狙う。


 1つを何とか捌いても1つは被弾するミルトラインさん。

 焦るのはルカルスさん。

 強引に羅刹種に詰めようとするが途中でミルトラインさんに向かっていた魔術に当たってしまう。


 更に2人で共同の魔術、土の魔力と風の魔力が混ざった結構強い魔術がミルトラインさんの右肩に当たった……


 

 マズいな……

 羅刹種は1人より2人だと、通常よりかなりの戦闘力アップになる。

 更に3人だとどうなるのか……


 

 「ルカルス、慌てるな!」


 里内にこだましたミルトラインさんの声、ハッとしたルカルスさんが弧を描くように移動する。


 その間にも魔術を捌ききれなかったミルトラインさんだが、忘れてはいけないのが竜族のタフさ。

 竜族のタフさは俺も最初のルカルスさんとの戦いで、嫌ってほど分からされている。


 同時に竜族化する2人……


 真ん中に羅刹種を挟む形にしたミルトラインさんとルカルスさん、ジリジリと間合いを詰める。


 ゴーマとロクロウもマズいと思ったのか、狙いをミルトラインさんに絞る!

 魔術の怒涛の連発に紛れて飛行形態になったロクロウが突っ込む!


 ロクロウの短剣がミルトラインさんの胸を狙うが、ミルトラインさんはしゃがんで交わそうとする!


 ドスッと短剣がミルトラインさんの鎖骨辺りに突き刺さる! 


 が、ミルトラインさんはロクロウの腕を掴んで背負い投げを狙う!


 二の矢とばかりに詰めるゴーマだが…… 後ろからルカルスさんの槍が届いた!

 大きく弧を描くように振られた槍は脇腹辺りに当たってゴーマを吹っ飛ばした。


 投げからマウントポジションを取ったミルトラインさん、自分に突き刺さっていた短剣を引き抜き、ロクロウの首に突き刺した……


 追いかけてゴーマにトドメを刺したルカルスさん。


 思わぬ苦戦だが……


 竜族組の勝利!




 ふぅ〜、危なかった……


 土と氷の最強クラスでも、羅刹種のあのスキルが重なると厄介になることが分かった。


 回復薬をミルトラインさんに飲ませるルカルスさん…… 自身も回復薬を飲む。


 危なく2人を失うところだった……



 

 負けはしたがあと一歩まで追い詰めた羅刹種。

 これが大いに羅刹種の希望となった。


 『行ける! 行けるぞ』、『大将クラスなら必ず勝てる!』、『約束は守れよ!』

 などと叫んでいる。


 クソ…… こいつ等には絶望のみを与え続けたかったのに……



 「ザルメ、ヨシダ、出て来い。 お前達はあえて何も言わない、自分で分かってるだろ。 誰か相手はいる〜?」


 

 こいつ等はナナミルがガレット達から解放されると直ぐにナナミルを脅した。

 仲間をいじめるとか殺すとかまで言ってナナミルを自らの部屋に押し込んだのだ。

 かなり悪質な性欲異常者だと思う、ナナミルはまだ17歳だぞ……



 「俺が出る」


 そう言って名乗りをあげたのはゴルゾフさん。


 実は俺もゴルゾフさんに出てほしかった。

 理由は1つ、羅刹種に圧倒してほしかったから。


 ん⁈


 他に誰も名乗りをあげない……

 完全に信頼されてるな。


 「おめでとう、ザルメ、ヨシダ。 相手はこの人だけだ」


 そう言っても2人は喜ばない。

 そりゃあ、あの人を見ればね……


 

 氷竜族 ゴルゾフ


 2メートル20センチ超えの身長、太い足からは5メートルの跳躍力が生まれる。

 若干、硬そうな身体をしているが、逆に鋼鉄のように硬そうにも見える。



 勝負が始まる。


 魔術を捌きながら斜めに羅刹種に近づく、ゴルゾフさん。


 焦って魔術を打っても斜めに動くゴルゾフさんにはまともに魔術は当たらない。


 そして……


 射程からは遠い、っと思った場所から一気に踏み込み飛び膝蹴り!

 初めて見た氷竜族の鉤爪、膝から土竜族より太い鉤爪が出ている……

 

 完全にザルメかヨシダか知らないけど1人を貫いたゴルゾフさんの鉤爪!

 まぁ、ザルメでいいや。


 膝から出た鉤爪に腹を貫通させられて無惨にこうべを垂れるザルメ。

 膝の鉤爪から槍でドンッと押し退けて、やっとザルメが膝の鉤爪から離れた。

 それを見てまた変身をして逃走を試みるヨシダ。


 が…… ドスッと背中を貫いた槍。

 ゴルゾフさんの投石術がヨシダの背中を貫いた……


 ゴルゾフさんの圧勝! ヨシダの背中を貫通してしまった槍が他の人に当たらなくて良かった、それにしても怪力!


 

 呆気に取られて意気消沈な羅刹種達。


 あまりの力の差に、呼ばれれば死を覚悟するだろう。




 「次はラソーダ、ハマン。 お前達は是非苦しんで死んでほしい、ってほどの下衆なやつ。 誰かやる〜?」

 「俺が1人でやるにゃ〜」


 ゼブンさん……


 氷竜族ナンバー2の男。

 何故かそれほど尊敬されてないのは “にゃ〜、にゃ〜” 言っているからか。


 

 勝負が始まる。



 あれはゼブンさんが少年時代だった……


 ある日、氷竜族の里に1匹の子猫が迷い込んだ。

 里の子供達は歓喜して子猫を可愛がる。

 特にゼブン少年は子猫を可愛がり、子猫も…… もしかしたらゼブン少年を親と勘違いしてたのかも知れない、ゼブン少年の行くところ、全てに付いて行った。


 竜族にはペットを飼うと言う概念はない、なので子猫の名などはない。

 ただ子猫が『にゃ〜』っと泣くので『にゃ〜』っと呼んでいた。


 そんなある日、突然と子猫…… いや、この頃にはもう大人の猫となっていた『にゃ〜』が居なくなってしまったのだ。


 ゼブン少年は探しに探しまくった。


 家の天井裏、トイレの肥溜め、長老のパンツの中、ゴルゾフさんの鼻の穴までくまなく探したのだ……


 しかし……


 『にゃ〜』は居なかった……



 それから数ヶ月。


 『にゃ〜』は帰って来た…… 4匹の子猫を連れて。


 『にゃ〜』が全部で5匹、ゼブン少年の言葉は必然と『にゃ〜』が多くなる。


 「もう行くにゃ〜、ダメにゃ〜、早く飯食うにゃ〜」


 みたいに……


 これはゼブン少年の遠い記憶である……



 多分、こんな感じだろう、間違いない…… って試合が終わってるよ!


 変な妄想してたらゼブンさんの試合が終わってた。


 ゼブン少年の勝利!!




 やはりこのレベルの人達はこの場所では羅刹種だろうと歯が立たない。


 

 「弱いなお前達は…… ハンデをやろう。 ハザラ、ミシマ、モルゼンタ、ジーティ。 ドム、ギル、パンクン……行けるか?」


 パンクンは2度目の登場。


 「ああ、余裕だぜ」


 ギルが威勢よく言った。


 

 ハザラ、ミシマ、モルゼンタ、ジーティとの勝負は無惨なものとなる。


 無詠唱魔術で一気にギルだけを狙ったのは間違いではない。

 ただギルが横に走りながら避けることに全集中したことで、ほぼ魔術は当たることはなかったのだ。


 その間に詰めたパンクンとドムが数を減らして羅刹種のパニックを引き起こす。

 そしてギルまで加わって全ての羅刹種を叩いた。


 連携では一枚もニ枚も上だった3人の、完勝!




 残りはガレットとゴルソリ、そして命を諦めたリヒターのみ。


 「次はゴルソリだけどドムフ、いい?」

 「ああ、真打ち登場だな」


 真打ちは次……


 

 この試合も静かな立ち上がりでラザノフの試合と似た感じになった。


 かなりの集中力で魔術を弾くドムフ。

 ゾーンに入っている。


 そしてドンドンっと2発の魔術を発動した隙に飛び込み、ゴルソリを粉砕した。


 最後の2発の魔術は被弾したが、それをものともしない覚悟の飛び込みは、ドムフのニュースタイルって感じの攻めだった。


 俺をチラ見しながら回復薬を飲んでるが…… ドムフの完勝!




 さぁ、真打ちの登場。


 「最後だ。 ガレットにスザク、やれるか?」


 考えてなかったのか、驚くスザク。


 「リュウ、先にルークを出したらどうだ?」


 ん? ……何かあるのか?


 俺達の戦いの後に西のドリアード、ミザリーを守ったルーク(出る気ならショーザッタさん)にしようと思っていたけど、スザクの気持ちが戦いに向いてなかったか?

 

 「じゃあ、ヤーマンとハッシューナ。 ヤーマンは子供をいじめるクズ、ハッシューナは子供をいじめる変態。 パンクン、タールを優しく連れて来て」


 パンクンが布団ごとタールを抱えて帰ってくる頃には、もうルークが前に出て…… ポジションを気にしてる⁈

 まぁ、珍しくやる気だ。



 ハッシューナもヤーマンも相手が普通の男に見えるルークだからか、お互いの動きを確認し合っている。


 タールは…… 俺はあいつの泣き顔しか見たことない、今も泣いてる。


 そしてこの試合を先にやれと言ったゼウスさんはスザクに何かアドバイス? をしてる。


 チラッと俺を見たルークの準備は万端のようだ。



 勝負開始!


 っと思ったら、ルークが消えた……

 気配は…… 人が多すぎて分からねぇ!


 ハッ! 上から針金をすり抜けてズドンっとヤーマンの頭に長めの短剣を突き刺したルーク。

 まさか昨日のうちに転移魔法陣を天井に描いていたか⁈


 ハッシューナが慌ててルークに短剣を振るが、ルークは避けながら指からレーザービームのような魔術をハッシューナの首に当てた。


 『あつ!』っと叫んで首元を手で押さえたハッシューナ。

 が…… 直ぐにその手は腕ごとハッシューナの体から離れた!


 バシッと飛んだ腕、なかなかの斬れ味の剣をルークは持っている。


 大きな悲鳴が里内をこだまして、ハッシューナは偶然か、それとも狙ったのか、タールを抱くパンクンの方に逃げた!


 「お前が来なけれ……」


 ドスンっと倒れたハッシューナの背中にルークの短剣が突き刺さる。

 ルークは左手でジェットを操って加速してハッシューナに追いついたのだ。

 この辺りがポンタと…… いや、全体的にポンタとは違うか。



 圧倒的な勝利! 

 ルークは隊長含めた2人に圧勝とは、俺の予想以上だった。


 ……それにしてもハッシューナ、最後に何を言いたかったのか。


 目を丸くして倒れたハッシューナを見るタール……

 いくらハッシューナを倒してもミーチャは帰って来ない。

 この現実からタールが立ち直れる日が来るのかは、俺には分からない。


 

 さぁ、これで本当に最後の勝負、スザクvsガレット。


 「リュウ、頼む、その剣をスザクに貸してあげてくれ!」


 ……はっ?


 これはどうしても貸せない、っと何度も断ったが…… スザクの命がかかっているんだと押し切られて……

 俺は短い方の刀をスザクに貸した。



 ガレットvsスザク。


 ガレットは剣、スザクはゼウスさんのアドバイスか、盾と俺の刀を持つ。


 開始と同時に魔術を放つガレット。

 スザクは盾を構えてガレットの左側へと移動する。


 左目が見えないガレット、そして右膝も壊れているので剣は杖のように使ってバランスを取っている。


 しかし、とにかくガレットの見えない位置までクルクル移動するスザク。


 ガレットも最初は上手く回って対処していたが、それでも剣は杖ではない。


 剣が地面に深く、ズズッと刺さってしまいバランスを崩して転倒!


 ここぞとばかりに近づいたスザク!

 ヒュンっと刀を振ってガレットの腕を飛ばす…… そして勢いよく地面に刀が刺さった。


 「ウギャアア〜」


 っと叫んだのは俺! じゃなくてガレット!

 でも、俺も叫びたい……


 その後もガレットの足を、刀が地面に突き刺さるくらい強く叩いたスザク。



 俺は決心した。

 刀を直しに裏に帰ろう、そしてソマルさんにまた玉鋼をもらってクナイも作ろうと!


 

 「グハァ〜、ハァ、ハァ、スザク…… 覚えとけ、お前とナナミル……」


 スザクの振った刀がガレットの首を飛ばした……


 スザクの勝利!


 しかし…… スザクに笑顔はない。


 

 ーー ーー



 ガレットを打った……


 ありがとうございます、ゼウス様、総大将様……


 ラムツェル、これでやっと貴方のもとへと行けます。

 もう私は汚れてしまったけど、それでも私は貴方のもとから離れませんよ……


 スッとこの斬れすぎる剣で自分の首を…… 飛ばした?


 えっ?


 剣が手にない……?


 

 不思議に思い辺りを見ると、額から血を流したゼウス様が私の持っていた剣を持っている……


 あり得ないスピードを持つゼウス様が私に言った。


 「まだ終わってない。 それにお前の家族を置いていくのか?」


 ハッとなり、皆んなの方を見ると……

 泣き顔で私を見て頷いている……


 ラムツェル……

 

 私なんかが生きていていいの……?


 「スザク…… 一緒に生きようよ〜」


 ナナミル……


 

 ゼウス様が言った『まだ終わってない』、それは何を意味するかは分からない。

 

 でも、私にもドリアードを奪おうとした“ 罪 “ はある


 ラムツェル…… これだけ離れたことなんてないから不思議な感覚が抜けないよ……

 でも、ナナミル、ハルロック、チルピンを残して勝手に死ぬのは止めます。


 だから……


 もう少しだけ待っていてください……


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