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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 魔黑病


       第一章  旅立ち


   第十一話 「魔黒病」




 13歳になった。

 前世で生きた年より長く生きることが出来た。

 恵まれない環境でも周りの人には恵まれた。

 そんな俺を支えてくれた1人、ローチェの容体が良くない……


 兄が王都へ向かった1年前より確実にローチェは衰弱している。

 リチャードやケビンに病院の予約を取ってもらおうとしても、一向に予約が取れないのだ。

 金の持ってない優先順位の低い孤児だからか。


 

 ある日、寝ているローチェをずっと見ていた。 

 その内シスターも来て、寝ているローチェを2人で見ていた。

 俺もシスターもある程度はこの先が読める。

 どうにか出来ないのか? 俺がもっと頭が良ければローチェをたすけ……

 ……いる! 

 頭のいい人が、しかも王都にいるのだ。

 もしかしたら調べてくれるかも。



 「シスター、にいちゃんに手紙を書こう」

 「そ、そうね、ルークなら何とかしてくれるかも知れないわ。 それと……」


 シスターはローチェのパジャマのボタンを外し、首の下辺りを俺に見せる……

 黒い斑点……


 「昨日、見つけたわ。 この症状も手紙に書いて」

 「分かった。 リチャードに持って行ってもらおう」


 リチャードは3日前から泊まっている。

 俺が行く方が早いけど、兄にどうやって会えばいいか分からない。

 

 そしてリチャードは次の日、手紙を持って王都へ戻ってくれた。


 手紙の内容は……

 

 久しぶり、にいちゃん。

 にいちゃんも知ってるけど、ローチェの病気があれから進んでいる。

 今は黒い斑点が身体の柔らかい部分に出てきて、呼吸も苦しそうな状態だ。

 熱が出て月の半分は寝込むようになってる。

 ローチェは俺の妹、どうにか助けたい。

 でも、俺の頭じゃ何も思いつかないんだ。

 にいちゃん、ローチェを助けてくれ!


 と、書いた。



 3週間後、兄からの手紙はケビンが届けてくれた。

 ケビンは兄の指示に従い、馬で駆けつけてくれた。


 「どうしたの、あの馬?」

 「ルークが馬で行ってくれって…… 俺…… あんまり乗った事なかったけど……」


 マジか…… それほど切羽詰まってるのか……


 時間がない。

 早速、兄の手紙を広げた。


 ー兄の手紙ー

 

 久しぶりだなリュウ。

 俺も別れ際に体調を崩してたローチェを気に掛かってはいた。

 でも、まさかそんな状態になっているなんて、夢にも思わなかったよ……。

 ローチェは俺にとっても大切な妹だ。

 必ず助けたい。


 手紙を読んでから俺はローチェの病気について調べた。

 その病気の名前は"魔黒病"という。

 体内を巡る魔力が、何らかの原因で不足している。

 ローチェみたいな若い子は主に魔力の核に問題があるケースが多いと言われている。

 他の原因は多枝にわたりあるが、薬については特効薬があり、どのケースでもその薬が効く。


 俺は王都にある全ての病院に行き、その薬を探した。

 しかし全ての病院にその薬はなかった。

 (薬の予備がある病院もあったけど、この薬は貴重なため、その病院の患者以外には使えないと言われた)


 そこで俺はその薬の事を調べた。

 病院では"フォーリスの花"の成分に熱冷ましや栄養成分の入った点滴を打つらしい。

 しかし"フォーリスの花"を煎じて飲ませても一時的だけど良くなる。

 しかし、完全に治すなら病院に通わなければならない。

 数年とも数十年とも言われている、難病だ。 

 病院のことは俺が何とかするが、今は時間がない。 

 魔黒病は黒い斑点が出てきたら、ひと月持たないとも言われてる。

 早急にフォーリスの花を煎じ、飲ます必要がある。


 ただこのフォーリスの花のある場所が厄介なんだ……


 フォーリスの花はそれぞれ3国で採れる。

 人間国ではロノア山脈のクスクリ山、切り立つ崖の中腹に生息している。

 身軽なリュウなら問題なく採れるだろう。

 問題はロノア山脈には数年前から獣人の山賊が出るという事だ。

 何度かの討伐で数は減らしたが、残っている奴等は厄介だ……


 捕らえた奴が話した内容も書いておく。

 休戦前、奴等は人間国に入り込み、パクス、ラーミャン、コーメルという地で小さな村を襲い、子や女を攫う奴隷商みたいな事をしていた。

 戦争が休戦になってからはロノア山脈で、貴族や商人を襲う山賊になった。


 リーダーは虎から新獣人化した片目の大男、かなりの剣の使い手らしい。

 リーダーの側近で槍使い、鳥人族の剣使いがいて、他には4人ほどいると言うが数は定かではない。

 獣人についてはケビンに聞け。

 お前なら戦わずに勝つことも出来る。

 


 2枚目の手紙にはロノア山脈、クスクリ山の繊細な地図、フォーリスの花の特長と煎じかた、などが書いてあった。



 シスターはジッと手紙を見たまま動かない。

 ケビンが話し出す。


 「危険だ。 って言うかルークは何を考えてるんだ。 俺だってリュウの強さは知ってる! でも相手は人を簡単に殺す獣人の山賊だ!」

 「ケビン、俺に行かない選択肢はない。 それより獣人の事を教えてくれ」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ。 シスターも何か言ってくれ!」


 シスターはまだ手紙を見たままだ。


 「あっ、ごめんなさい。 リュウ、行かないで、多分この獣人はローチェの……」

 「行かないでぇ〜!」


 悲鳴のようなローチェの叫び声。

 振り返ると、ローチェが立っていた。 

 そしてゆっくり倒れた。



 ーーーーー



 ローチェはコーメル地方の山の麓の小さな村で産まれた。

 両親と1つ歳上のお兄ちゃん、スタールの4人家族。


 ローチェは小さな頃からお兄ちゃんの後を離れない子だった。

 理由は両親、特に父親にあった。

 ローチェの父、ダンクは生まれつき右足首の変形があった。

 歩くのも遅く、ましては走ることなど出来なかった。

 なので徴兵される事はなかったのだが、それが本人にとって負い目となった。

 自分以外の若い男は国や家族の為に命をかけて戦っている。 

 しかし自分は何もせず、家族と幸せに暮らしている。

 ダンクは次第に家族に厳しくなっていった。

 母親にも子供達を甘やかさないよう、きつく言い聞かせていた。

 なのでローチェは両親に遊んでもらった記憶はない。

 自然と兄の後を追うようになったのだ。


 村にはローチェと同じ年くらいの子が5人いた。

 小さな村だったので、どこかしらに血縁関係があり、皆んなとても仲が良かった。

 ローチェは特に同じ年のジャンナという女の子と仲良しだった。

 いつも男の子達がするチャンバラごっこを近くの木の下でジャンナと座り、お喋りしながら見ていた。



 その日は皆んなでジャンナの家で隠れんぼをしようという事になった。 鬼はジャンナのお兄ちゃんだ。

 ローチェとジャンナは2階に上がり押し入れに隠れる事にした。

 ローチェが隠れたところは窪みがあり、ジャンナがここなら見つからないよ、と進めてくれた場所だった。

 

 隠れてからしばらくすると、異変があった。

 大人達の悲鳴だ。

 

 「ギャァ〜、助けてくれぇ〜!」

 

 えっ…… ローチェはその声に聞き覚えがあった。

 お、お父さ……ん?


 「ジャンナ…」

 

 大人達の悲鳴が止まらない

 ジャンナを呼んでも返事がないのは、震えている⁈

 何が起きてるか分からず、それでもジッとしているしかない。

 本能的に見つかったら殺されると思った。


 大人達の悲鳴が止み、シーンと静かになった。

 ……あの悲鳴は多分お父さん、ここから出てお父さんの安否を確認したいけど……動けない。

 しばらくすると階段をドカドカ上がってくる音が聞こえた。

 ビクッと身体が震え、ドックン、ドックンっと心臓が高鳴る。


 「ホラァ〜! 出て来い! 隠れんぼは終わりだ!」


 し、知らない声……

 やっぱり見つかったら殺される。


 ガラッと押入れが開けられ、自分の心臓が飛び出るほど騒ぎたてる。


 「コラァ! 出て来いっつったろお!」

 「キャアァァ!」


 ドカッとジャンナが引きずり出された音がした。

 もう……だめ…

 

 「もういません!」


 お、お兄ちゃん? お兄ちゃんも捕まった……


 「本当かぁ、嘘だったらぶっ殺すぞ!」

 「ほ、本当です、も、もういませんん…」


 ジャンナ……!

 

 その後、獣人に覗かれたけど、窪みに入り込んだローチェは見つからなかった。



 ローチェは悩んでいた。

 ここで隠れているよりも、殺されるとしても、皆んなと一緒がいいと……。

 でもそれだと自分を庇ったお兄ちゃんとジャンナに申し訳ないし、嘘ついた事でお兄ちゃんとジャンナが酷いことになってしまう。

 でも、ジッとしてばかりはいられない。

 意を決してローチェは押入れから出る。

 そして窓から屋根伝いにカドまで来て、下の様子を伺った。


 下には女の人や子供、お母さんやジャンナ、お兄ちゃん達がロープで繋がられていた。

 やっぱり……お父さんはいない。

 トクンッと嫌な予感で心臓が高鳴った。

 見張っているのは獣人、4人いる。


 ローチェは1度だけ獣人を見たことがある。

 1週間前に遠くからこちらをジッと見る、獣人の片目の大男を見たのだ。

 もちろんその日にお父さんに報告した。

 でもお父さんからは絶対に近づくな、と言われただけだった。

 

 ガサガサっとしてビクッとする。

 さっきまでいた部屋で声が聞こえる。


 「んっとに、しけた村だぜぇ」

 「ああ、金目の物もほとんどねぇ、それに若い女がいねぇ。 クソッ! 下見ではガキの女は2人いたのによぉ」


 ローチェは怖くなり頭を抱えてブルブル震えた。

 今、窓から覗かれたら見つかる。



 どれくらい時間が経ったのか。

 下を覗くと誰もいない…… いるのは倒れてるお爺さんやお婆さんだけ……。

 トクン……お父さん。


 ローチェは不思議と力が湧き、立ち上がり階段を降りた。

 そして走って自分の家に行く。 

 途中に倒れてるのは、ジャンナのお婆さん……

 変わり果てた姿にウプッと嗚咽が漏れる。

 なんとか自分の家が見えた時に、玄関の前で倒れている人も見えた。

 近くまで行って確認すると、やっぱりお父さんだった。

 

 「お父さん〜、皆んながぁぁあぁ〜、おき、起きてよお〜!」


 起きない事は知っていた。

 何より、服がなければ分からないほど、変わり果てた姿だ……


 どのくらい泣いていたのだろう。

 そうだ! まだ皆んなは死んでない。

 お母さんもお兄ちゃんもジャンナも!

 誰かに助けを求めれば、助けてくれるかも知れない!

 ローチェはふらっと立ち上がり、歩き出す。



 それからローチェはどこをどう歩いて来たか覚えてない。

 途中、すれ違う人には必ず助けを求めた。

 親身に話を聞いてくれた人もいた。

 でも、結局誰も助けに行ってくれなかった。

 早くしないと、とずっと焦っていた。

 でも、時間とともに絶望感だけが募った。

 お兄ちゃんを想い泣き、ジャンナ達を想い泣いた。

 ただ、自分が立ち止まってはいけない気がして、ただただ歩き続けた。

 

 何日歩いたのだろうか。

 雨が降っている。

 ローチェは雨のあたらない木の下に座り込む。

 折角、自分を逃してくれたのに、助けてあげられなくてごめんなさい。

 お兄ちゃん、ジャンナ……本当にごめんなさい……

 止め処なく流れる涙は止められない。

 そんな時だった。


 「どうしたの? お父さんとお母さんは?」


 優しい声だった。

 でも応える気力はない……

 それでも続く質問には、首を振ることで応えた。

 そして、その人に手を取られ歩き出す。



 着いたのは、男の子が多い孤児院だった。

 それに歳上の人が多い。

 いや、1人だけいる。

 私より少しだけ背が高い。 

 多分、お兄ちゃんと同じ歳くらい?

 その子は直ぐに私を連れて来た女の人に叱られている。

 だけどその子は有無を言わさず、『これから稽古だから後にして』と言って行ってしまった。

 女の人は諦めず『稽古が終わったらちゃんとするのよ〜』と言ったけどその子は『俺ね〜、物覚え悪いんだって〜」と一言。


 何か面白そうな子だ。


 私は何故かその子の後をついて行った。

 その子の稽古は凄かった。

 こんなに小さな子が剣を自在に操っている。

 ふと思う。 ……お兄ちゃんもこんな風になりたかったのかな。

 その内、男の子同士で試合が始まった。

 凄い! あんなに皆んなより小さいのにその子は負けてない!

 

 それからローチェはリュウの後をついて行くようになった。

 自分でも理由は分からない。



 ーーーーー



 ローチェが倒れてから丸一日。

 もしかしたらローチェはもう目を覚さないかも知れない。


 シスターからはローチェの過去を聞いた。

 ロノア山脈に出る山賊がローチェの家族を壊した奴等なら、きっと俺がクスクリ山へ行くことをローチェは反対するだろう。

 

 俺もシスターもいつローチェが目を覚ましてもいいようにローチェの近くにいた。

 そしてローチェが目を覚ます……


 「リュウ…… 行かないで」

 「そうね、何か他の方法を考えましょう」

 

 起きて第一声がそれかよ。

 シスターも今更どんな方法があるんだ。

 なんか頭きた。


 「ローチェ、お前は俺との約束を破るのか?」

 

 一緒に裏の世界に行くことは出来なくなる。

 ローチェもこの先は分かっているはず。

 涙をポロポロ流しながら言う。


 「リュウがいなくなるよりマシだよ」

 

 自分の死よりも?

 ……俺は死なない。


 「俺には自慢の兄がいる。 兄は短期間でローチェの病気を調べあげ、対処法を完璧に伝えてくれた。 驚きだよ。 俺には出来ない。 でもその兄が俺ならフォーリスの花を採って来れると信じてくれた。 ……俺には親代わりの人がいる。 勝手に母親なんだろうな、と思ってる。 そして小さな頃からくっついて来る、妹とみたいな存在の子もいる。 ……何でローチェとシスターは俺を信じられない! ローチェ、お前は何を見てきた! お前は頼めばいい、薬を採って来てくれと。 シスターは約束させればいい、無事帰って来る事を。 それだけで俺はフォーリスの花を採って帰って来れるんだ!」

 

 2人は驚いた顔をしている。

 心なしシスターは寂しそう。


 「ちょっと立派になったね…… 貴方は私の子、誰が何て言おうとね。 ……必ず帰って来なさい。 もし帰って来なかったらルークを許さないから!」


 そういう脅しはやめて!

 

 「リュウ…… お願い採って来てぇ〜。 絶対採って帰って来てぇ〜、リュウゥゥ……」

 「アホか。 当たり前だよ」


 キーンと心が凍りつくのを感じる。

 これより薬を採る事を邪魔する奴は……


 斬り捨てる!

 

 

 


 

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