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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 ノマノーラの戦士達



    第三章  フリーダム


 第108話  「ノマノーラの戦士達」




 「ラムツェル、作戦が終わったら家がもらえるって知ってた?」


 10月にドリアードを奪うよう運命づけられて産まれた私達、でもそれが終わればこの呪われた境遇からもサヨナラ出来る。


 「4人で住むシェアハウスらしいよ。 どうしよう……」



 彼の名前はラムツェル、私、スザクの恋人です。

 私達の仲間は全員で5人、同じ歳で仲の良い17歳のグループ。



 「僕はいいよ……」


 そう言ったのは内気な男の子のチルピン、優しい子なのだ。


 「俺こそいい。 俺はその時は居ない」


 彼の名はハロルック。

 ナナミルとスペルティでの生活を夢見てる男の子。


 「皆んな考えることは同じよ、だから監視が厳しくなるんだもん。 それに5人だって今より広いんじゃない」



 そう…… 何度も打ち合わせで逃亡者が出た場合を聞かされた。

 もしハルロックが逃亡したらそのグループも罰則があるので、グループ全員で血眼になってハルロックを探すだろう。


 罰則はそのグループのメンバーの家族も受けるのだ。


 

 「それでもチャンスがあれば…… ナナミル、一緒に……」

 「ムリ。 グループも違うし絶対やめた方がいいと思う」


 ハルロックのグループは第3グループでナナミルは第4グループ、スペルティでは別行動になることも多い。


 ちなみに私と恋人のラムツェルは同じ第2グループ、チルピンはナナミルと同じ弟4グループ。


 「シッ! そろそろ最後の打ち合わせが始まる」


 最後…… この広場での打ち合わせが終われば来週にはスペルティ。



 ーーーーー



 私達の森は最初のドリアードが亡くなってから約4分の1の領土を失った。


 その危機を救ったのが飛翔族。


 

 この森は狭くて人が多い。

 取れる作物なども少ないし、飛べる種の飛翔族じゃなければ海に行って漁も出来ない(夏は出稼ぎで多くの人が漁に行きます)。


 全ては飛翔族のおかげ。


 でも…… 約300年前に前回ノマノーラの先鋒隊に選ばれた子達の親から不満の声が上がった。


 その声とは……


 飛翔族の先鋒隊の若者20名を失い、更にドリアード奪取に行った9名が帰って来なかった前回の計画。

 いつも飛翔族だけが犠牲になり他の種族はこの森の恩恵に預かるだけなんて不公平だ! 

 

 ……この声で産まれてきたのが私達だ。



 この森は半分を飛翔族が使って、残りの半分を赤目族、混血族、人間族が使っている。

 当然、他の種族は狭い土地と貧しい食生活でギリギリの生活をしている。


 私達が生活するのは飛翔族の暮らす一画。

 ただ、私達が自由に歩けるのは第11区画から14区画まで。

 後は打ち合わせの時に行ける第10区画は、この歳になるまで入ったことすらなかった。


 何故?


 それは私達が飛翔族ではないから……




 約50年前から始まった飛翔族の特性引き継ぎ作戦。

 偉そうに言ってもダメだ。 ……ただ飛翔族の代わりに犠牲者をそれぞれ出せ!

 作戦だ。


 赤目族の女、30名。

 混血族の女、40名。

 人間族の女、70名。


 これが私達を産んだ母親達。

 総勢110名の女が順次に入れ替わりながら子を産んだ。


 内訳に差があるのは元々少ないとか他のスキルを継承しやすいとかが絡んでいる。


 約5年に1人の子を産むことを義務付けられた女達、飛翔族の魔力量的に3人の子を産むと大概の女は命を引き取った。


 今から15年前まで女を取り替えながら続けられたこの計画。

 私達の世代だけしか分からないようになっているけど、私達の世代では翼が引き継がれたのはたった5名。

 きっと他の世代はもっと少ないはず……


 その理由は……


 第17区画に特別な用があって行ったラムツェルが道で倒れてる男の子に声をかけたことで判明した。

 その時のラムツェルと男の子の会話。


 「どうしたの? 体が何処か痛いの?」

 「あっ、いえ、ごめんなさい。 だ、大丈夫です」


 ラムツェルは随分と怯えてる子だなと思ったらしい。


 「家は? お母さんを呼んでこようか?」

 「あっ、あの…… 母は居ません」


 飛翔族は長生きなので、このくらいの子を残して亡くなるのは滅多にない。

 まさか……


 「もしかして翼持ちのハーフ?」


 この星の人族は皆んな見た目が似ているのでハーフでも分からない。


 「は、はい…… ご、ご、ごめんなさい」


 こうして発覚した私達と同じ境遇のタールと言う少年。

 他にも1人だけ仲間が居るとタールは言った。



 そしてこの最後の打ち合わせ。


 役職の付いている各グループの10名、そして先鋒隊の20名は飛翔族。


 他はきっと…… 翼持ちのハーフ!


 

 1グループ約20人で構成された6グループ。

 総大将を入れて総勢121名となる。



 その総大将にリヒター、飛翔族の中で1番強いと言われている。

 175センチと飛翔族としては平均的な身長。

 痩せ型の筋肉質で魔力の多さは奪取隊で1番ある。

 剣術は1番グループのガレット隊長が強いと言うが、それでも総合的にリヒター総大将が1番強いと思います。



 ちなみに私、スザクの母は赤目族。

 赤目の能力はハーフになると能力が落ちて紫の目になるが、稀にその能力をそのまま受け継ぐハーフもいる。

 その1人が私だ。


 赤目の能力は動物の行動を止めることの出来る能力、紫の目も同じだけど、人族のように大きな動物の行動は紫の目では止められない。


 赤目で止められる時間は相手の能力による。

 例えばリヒターは赤目の能力を使っても、4秒程度で動けるらしい。

 ただ前回のメンバーのロナインとマクニールと言う人は3秒で動けたと言うから驚きだ。


 ちなみに私の恋人のラムツェルは5秒で動ける。

 彼は人間族が母親なので翼の特性だけでなく、無詠唱スキルまで遺伝されたのだ。

 

 

 「それでは各グループ順に並べ」


 私とラムツェルは第2グループ。

 私達は若い方だけど強い人達が集まるグループに振り分けられている。


 隊長はナインレット。

 飛翔族は高飛車で傲慢な人が多いけど、ナインレット隊長は飛翔族、ハーフ関係なく接してくれるいい隊長だ。


 

 そして問題の第1グループ、隊長はガレット。

 この隊長は赤目を使っても3秒で動けると言うが、総大将に選ばれたのはリヒター。

 ライバル関係だったと言うが、とにかくガレットの評判が悪い。

 暴力的で傲慢なドスケベ。

 私達ハーフにまでそんな噂が流れてきてる。


 だから総大将になれなかった…… そう言う噂も頷ける。



 ハルロックが所属する第3グループ。


 隊長はハッシューナ。

 本当は息子さんが奪取隊だったけど剣術の心得がある自分こそが相応しい、と息子さんの代わりに志願したそうです。

 ただ、彼女の家庭を知っている人は、息子というより溺愛した夫のように扱っていたとのこと。



 第4グループには我等がアイドル、ナナミルが所属してま〜す。

 私の無二の親友で明るい子。

 暗い境遇でもナナミルが居たから頑張ってこれたと思う、特にハルロックは。


 チルピンもここに所属。

 小さな頃から体の小さなチルピン。

 おとなしい性格もあって良くイジメられることが多かった。

 ラムツェルでも止めれない境遇がチルピンを萎縮させて育てた。

 隊の中でも不条理に体罰を受けていると、涙ながらにナナミルが言ってたけど……

 チルピン、この作戦が終わったらもう私達は自由だよ。

 作戦が終われば私達は人間族の住む区域に引っ越すことが決まっているの。

 だから、もう少しの辛抱だよ。

 


 隊長はゴルソリと言う人。

 いやらしい視線で私とナナミルを見る気持ち悪い人。

 私は生まれて初めて生理的に拒絶反応がある人を見つけました。


 

 第5は私達の仲間は所属してません。

 だけどラムツェルが17区域で会ったタールが所属しています。

 そしてタールの妹のようなミーチャという子も第5グループです。

 2人共に最年少の14歳。


 隊長はマーナリーグ。

 ずる賢くてケチ。 ……そう第2の飛翔族の方々が噂してました。


 

 第6グループは先鋒隊。


 飛翔族だけのこの隊は、ドリアード奪取するまでは他の隊の補佐をすることが決まっています。

 もし私達ハーフが300年の寿命を持っているなら、私達は喜んで先鋒隊に志願したでしょう。


 リーダーはアーモン。


 若干19歳でリヒター総大将、ガレット隊長と同格の強さを持っていると言われています。


 

 特徴としてはハーフ以外で女はハッシューナ隊長だけ、つまり飛翔族の女はハッシューナ隊長だけなのだ。

 

 他の種族の女はゴミのように扱う飛翔族でも、自分の種族の女は丁重に扱う。

 これは私が17年間生きて来て得た感想です。




 「……っと、前回に行った先人の言葉がある。 そして前回の先鋒隊の中には生きてる者も居るだろう。 その手筈はスペルティに渡って地上に降りるまで、我々は光を出し続ける、ここに居る121人全員がだ!」


 スペルティの夜中に着くように合わせて出発する。


 そして全員が光を出す魔術(火でもいい)を使って上空からスペルティに散らばりながら降りて行く。

 先鋒隊が生きていたならこの時期の夜中の空はチェックする300年前からのルール。

 そして先鋒隊の人が気づけば直ぐにサンダーで位置を知らせてくれる。


 遠く離れた人達にも順次サンダーで方向を知らせるけど、最後はソナーを使って集まる予定。


 

 「とにかくサンダーの2連続が“こちら方面”という合図だ。 必ず3日以内に全員集まれ! 集まらないグループは脱走とみなす」


 そう、スペルティに渡って直ぐが一番辛いかも。

 運良く先鋒隊の放つサンダーの近くならいいけど、1番遠い時は寝ずに目的地まで飛ばなければならない。

 この合図方法も色々とシュミレートして全体練習して行く。



 広場での会議が終わって今日からは宿舎に泊まって明日から合同練習が始まる。

 動きを合わせないと飛翔族は厳しく叱るのでチルピンが心配だ……




 練習はグループと全体での練習がある。


 特にグループ練習は滞りなく進んで、3日目の明日は全体練習。



 時間との戦いになる奪取作戦。

 僅か2週間の期間を過ぎるとノマノーラに帰れなくなる。

 

 1番重要な訓練、飛行訓練。


 鳥のようにV字型になり、集団で飛ぶ。

 そして隊長(そのグループで1番数字の少ない隊長、今回は全体練習なのでガレット隊長)の合図でフォーメーションを素早く交換して行く。


 その時に微妙に隊列が崩れた……


 一度、降りて来てからガレット隊長の説教。


 「お前等、ハーフ共はいいかげんにしろ! 第4の後ろ! それと第5の前! そこら辺で遅れたぞ! 隊長、誰が遅れた!」


 第4の隊長、ゴルソリが話す。


 「分かりません。 が、いつも遅れるのはチルピン。 誰か見たやつはいるか〜!」


 チ、チルピン……

 

 誰も何も答えず……


 「第4、第5のハーフ共、前に出ろ!」


 そう言ったガレット、チルピンを端っこに立てて全員を殴って行くガレット。

 第5には女の子のミーチャやナナミルも居るのに、お構いなしだ。

 ハッ…… それでもナナミルには手加減してくれた⁈

 

 最後に殴られるチルピン、本当に遅れたのはチルピンなのだろうか……


 ガスッ、ガスッ、っと倒れたチルピンをしつこく殴るガレット、悲鳴を挙げて泣くチルピンに、近くにいたハルロックが思わず止めようとするが、それをナナミルが制止した。


 しかし……


 ガレットに見られていたのだ……



 ハルロックに近づくガレット。


 「お前は誰だ? 俺に文句でもあるのか?」


 唾を飲み込むハルロック。

 瞳に溜まっていた涙がポロッと流れた。


 「いえ、ありません」


 悔しいよね、ハルロック……

 悔しいよ…… 本当に……


 ガレットは隣にいるナナミルを見てる……


 ガレットが大声で叫ぶ。


 「レスター、俺の隊のフランが使えん! この女と交換するぞ!」


 えっ、ナナミルのことを言っているの⁈


 いえ、この差し迫った時期にグループの移動なんて総大将が認める訳がない。


 慌てて飛んで来たレスター総大将とナナミルが所属する第4グループのゴルソリ隊長。


 レスター総大将が話す。


 「この時期での移動は認めない。 そんなことを言い出したら収拾がつかなくなるぞ」


 ホッ…… 流石にレスター総大将、ガレットのわがままを許さない。

 それより…… 私達のアイドルをどうしようとしてたのか…… 恐ろしい男。


 「いいのか、レスター。 この奪取作戦の要は第1。 お前の返答次第では第1はどう動くか分からんぞ!」


 絶望感が漂うナナミルとハルロック…… いえ、私達全員が産まれたことを呪った瞬間だ……


 「ウグッ…… 次は認めん、ゴルソリ! フランとナナミルの交換だ!」


 ゴルソリ隊長…… お願い。


 「ああ、いい。 フフフ…… いい」


 ニヤッとしながら言ったゴルソリ、飛翔族なんかに期待した私がバカだった。


 「ナナミルか…… グフッ、其方は俺の身の回りの世話をしろ」


 舐めるようにナナミルを見て言ったガレット。

 怒りに震えるハルロックもラムツェルも…… いえ、私だって動けなかったのです……


 その日、同じ部屋のナナミルは帰って来なかった……


 

 次の日の合同訓練、ナナミルを探したけど第1グループにナナミルは居ない。

 しかし…… ガレットも居ない……



 気が気でない気持ちのまま終えた合同訓練、それは私達の仲間、特にハルロックは責任を感じていた。


 コンコンっとドアを叩く音…… 昨日からよく皆んなが訪ねて来る。


 開けるとやはりラムツェル達だった。


 「ナナミルは!」


 真っ先にハルロックが私に聞く。

 が…… 答えたくないので首だけ振る。


 「くっそおあ〜! ガレット、殺してやる〜! 殺してやる〜!」


 発狂したハルロックをラムツェルがなだめる。


 「まだだ。 ハルロック、抜けるなら冷静さを失うな…… そして最終的にナナミルとスペルティで暮らすんだ!」


 えっ?

 ……それだとハルロックとナナミルとはもう少しでお別れ……


 「ラ、ラムツェル…… だけどガレットは許せない!」

 「れ、冷静になれ。 ……まだ何が起こっているかは分からない。 ナナミルが帰って来たら…… いや、もしもの時でも戦場はスペルティだ」


 何とかハルロックをなだめたラムツェル…… 帰り際にチルピンが言った『僕のせいだ……』が、頭を離れなかった。


 

 次の日の合同訓練も居なかったナナミルとガレット。 ……そしてゴルソリ。


 嫌な予感がして仕方ない。




 その日、私は夢を見た。


 小さな私達が一輪の花の前で笑っている…… ただそれだけの夢。

 


 辛い毎日でも5人は家族だった。

 道を歩くだけ、お手伝いをするだけ、訓練をするだけでも家族が居れば楽しかった。


 しっかり者で正義感の強いラムツェル。

 ちょっとお調子者だけど皆んなを笑わせてくれるハルロック。

 優しいチルピン。

 そして私の親友でもある、可愛いナナミル。

 私は…… 小さな頃からずっとラムツェルが好きだった…… だから一途なスザク。


 ただ私達は一緒に居たいと願っただけ。

 ただ私達は先を夢見ただけなのに……

 


 ハッとして夜中に起きた。


 ……飛翔族にも足元を見ることの出来る人はいる。

 私とラムツェルの第2グループのナインレット隊長なんかはハーフでも隊員は同じ扱いをしてくれる。

 その影響か、隊員達もハーフと飛翔族の主従関係みたいなものがない。


 だけど…… 一般的には飛翔族は嫌な人が多い。 ……いえ、言い方を変えます。

 他の種族に対して嫌な人が多い。

 

 唯一の人が住める森を守っているのは飛翔族。

 この考えが飛翔族を他の種族に対して傲慢にしているのだ。


 そして私達は他の種族ではない!

 一緒に危険を冒してドリアードを奪いに行く同士なのだ。 ……そのために飛翔族が作ったくせに!

 

 あれほど沢山の子を作った飛翔族。

 飛ぶ特性を受け継がなかった子は、きっと小さな頃に処分されたのだろう……


 悔しくて悔しくて仕方ない。


 私は…… 飛翔族を許さない!




 次の日の合同訓練。


 ナナミルは居た。

 ただ私と視線を合わせてくれない⁈

 ……分からないけどラムツェル達も違和感を感じていた。



 訓練が終わると走って宿舎に戻ったナナミル。

 ハルロックが私に声をかける。


 「今日は行かないから何があったか聞いてほしい。 ……ナナミルを頼む」

 

 ハルロック…… 目の下のクマは色濃く付いて、まるで2日で10年の時を過ごしたみたいに疲れている。


 私がしっかりしないと!



 部屋のドアを開けると真っ暗だった。

 ナナミルは居ない? っと思ったけどシャワーの音がする。

 本当にナナミルよね? っと思って覗いた時にナナミルの背中が見えた。


 そう…… アザだらけの背中が……


 

 シャワーから出てきたナナミルはひと言『電気を消して』とだけ言ってベッドに潜り込んでしまった。


 啜り泣くナナミル……

 私には、かけれる声などない。



 

 結局、私まで一睡も出来なかったこの日、午後からスペルティに飛ぶ。


 相変わらず布団に潜り込んで啜り泣くナナミル。

 ラムツェル達が尋ねて来ても何も知らせることなど出来ない。


 ただ……


 何があったかは想像出来る。

 だから…… 私達はガレットがこの作戦で亡くなることを強く望んだ。



 ーーーーー



 午後、特殊な服は全身が包まれるタイプ。

 荷物は着替えさえない。

 理由はこの特殊な服が重いから。

 現地で先鋒隊が用意してくれてるはずと言うが、もし雷が堕ちなければ自力で用意するしかないと言う。

 そう、スペルティで村を襲撃して奪うのだ。

 前回はそうしたらしい……



 ひたすら上へ上へと飛ぶ飛翔族61名と飛翔族ハーフ60名、ハーフの中にはラムツェルのように無詠唱スキルを受け継いだ人も居る。

 私とハルロック、チルピンは亜人とのハーフなので飛翔族のスキルは元々受け継がれない。

 ナナミルは人間族と飛翔族のハーフだけど特性以外は受け継がなかった。



 フと、体が軽くなって無重力になったことを知る。

 練習通りラムツェルの足を掴んで私の足を飛翔族ハーフのトムクロさんが掴む。


 後は私達に出来ることはない。

 ただ先頭のレスター隊長の目指すスペルティに早く着いてと願うだけ。



 どれだけ宇宙を彷徨っていたのか、急に引っ張られて急降下した。


 スペルティ! そう一瞬だけ思ったけどここからグループで東西南北に別れて堕ちていく、私達のグループは南東だ。


 光の魔力がある人は光を、火の魔力がある人は火を付けて、南東に堕ちていく。

 

 

 ナインレット隊長の合図で、私達グループは地上から約500メートルの上空で止まる、それぞれのグループも同じ高度で止まっているはずだ。


 シーンと静まる辺り……

 私達は色々な方向を見てる。

 すると…… 東の奥に何度も雷が堕ちている…… ラッキーだ、ここから近い!


 

 フードだけを取って全員待機、位置的には西側辺りのグループが一番遠い、そのグループは…… 第1グループ、ガレットとナナミルのグループだ。


 しばらく続いた東側からの雷、更に待っても東側からの雷は止まっている。


 それなら私達の出番、ナインレット隊長の指示でサンダーを2回ずつ、計10発のサンダーを打った。


 またまたしばらくの待ち時間……

 どのくらい時間が経ったのか、南側から20発の雷が堕ちた。 ……南側は先鋒隊の第6グループ。


 これで私達のグループは東に向かえる。


 そして……


 

 明け方、私達はソナーを使ってデルマ城と言うお城に着いた。



 ーーーーー



 少し前。

 ナカミツ族の里の崖の上。


 俺達は夜中の見張りも兼ねてレミアとラモーナと俺で崖の上でお喋りをしている。


 ラモーナは俺にべったりくっつきレミアは俺がそっと手を繋いでいる。

 レミアは若いからかとても純情だ。


 「リュウは防衛が終わってもまた私に会いに来てくれるよね」

 「……ナカミツ族やドム達に会いに来る約束はしてるから会えるけど…… レミアは嫌だ?」


 レミアは何故だかラモーナにだけヤキモチを焼く。 ……まぁ、それだけドリアードの魅力は凄いけど。

 そう言えばルークがレイモンではドリアードに近づいてはいけない理由にドリアードに魅了されてしまうから、っと言っていた。

 リーブルでは不死になるなんてデマが広まっているけど、レイモンで広まったことはまさに本当のことだ。


 「ううん、ラモーナは私…… リュウさんを待ち続けた2年間の私なの……」


 何気に責めてません?


 「本当? うっうぅ〜、嬉しいよ〜、リュウ」


 ラモーナの体が熱い……

 どうしてこんなに気に入ってもらえたのだろう?


 「どうしたの、レミア。 態度が変わってない?」

 「ラモーナに自分のところに神木が生えれば良かったと言われました。 私はリュウさんに迷惑をかけ続けたけど、もしラモーナなら、もっと早くリュウさんの力になってたと思います」


 レミアは自分を助けるために俺が何人も人族を殺めてきたのを見てきた。

 ラモーナならそれが無かったと言いたいのか⁈


 「レミアがいいならミナリに聞いてみよう。 浮気をするんじゃないし、お喋りだけだから大丈夫と思うけど」


 どっちにしろギルやドムに会いに来てラモーナは無視して帰るなんて考えてなかった。

 ラモーナにも会って、氷竜族の里に寄って…… そう思っていたのだから。


 「ちょ、ちょっと聞いていい? ふ、2人はチ、チスとかしてるの?」


 チ、チス! ……まだです。


 「レ、レミア。 もしレミアを守りきれたらキスのご褒美、お願いします!」


 ググッと手に力の入ったレミア、俺の方を向いた。


 やはり、きゃわいい顔と言う表現がピッタリだ…… その唇たるや何て言うの、ラザノフ?  ……寝てるか。

 とにかくチョ〜素敵。


 「はい…… ミナリさんより遅れちゃったけど……」


 だから怒っていた⁈


 でも、俺はやる! キスキスキス、ハハンハ〜ン。


 「そ、それじゃレミアの後は私だよ、リュウ!」


 へ…… ラモーナちゃん?


 「ダ、ダメです。 それは許しません」


 ……ホ。 そりゃそうだ。


 「何で? 私だってキスもしないでこれから300年も生きたくないよ! レミアは良いじゃない、リュウとずっと一緒に居られるんだから! ……うっうぅ〜、神木が逸れてれば私がリュウのお嫁さんだったのに〜……」


 ヤバい、この人、めちゃ可愛い。


 それからシーンと誰も何も言えずにいた時、夜空に流れ星? が見えた。


 「あ…… あれは……」


 レミアも気づいて皆んなで夜空を見上げる。



 光はそのままの高さで止まっているので流れ星ではない。

 そして光は消えたが、消えた位置の近くで雷が10発、遠いので魔術かは分からないけど合図のように思えた……


 ……羅刹種がやって来た!



 ーーーーー



 デルマ城に着いたのは私達グループが2番目。 

 1番目はチルピンのグループだった。


 チルピンと抱き合って喜ぶ。

 いくら先人達が星を移るのに成功しても、私達が成功するとは限らなかったから。


 「チルピン、近くて良かったね」

 「う、うん。 食べ物も食べていいみたいだよ」


 

 デルマ城の1階の大広間にテーブルが並べられて料理が並んでいる。

 壁沿いには洋服なども並んでいるが……


 「さっきこのお城の王様がやって来て何でも食べていいってさ。 それと服も持ってっていいと言ってたけど…… 僕達は最後の方が良いと思う」


 そうね…… 先に服を持って行って怒られるのは嫌だもんね。

 でも…… 食事はいいのかしら?


 「皆んな聞いてくれナインレットだ。 次に着くグループがいつになるか分からない。 食事は各自摂ってくれ。 それと2階に部屋が用意されている、4人1組だが今は適当に寝てくれ。 皆んな集まったら部屋割りをする」


 4人1組か…… 私とナナミル、それとミーチャは入れてあげたい。

 後は同じグループのジャネルタさんね。


 ちなみにチルピンのグループがお城に着いてから私達のグループがお城に着くまで8時間、私達はもう、1日何も食べてない。


 

 こうして待つこと数時間、第5グループ、そして次の日には私達の隣にいた第6グループが着いた。


 「タール、良く着いたな」


 ラムツェルが声をかける。


 「は、はい。 あ、ありがとうございます」


 タールの後ろに隠れるように居るのがミーチャ、いつもタールの後ろ側の服を掴んでいる。


 とてもおどおどしている2人、共にとても小さい。

 そして怯えるように誰かを探してるのも2人は一緒、誰に怯えているの……

 どんな人生を歩んできたのだろう? そう考えるだけで涙が溢れそうになる。

 

 私達は恵まれていた……



 「ミーチャ。 部屋は私とナナミル、それとジャネルタさんって言う年上の女の人が居るんだけど、一緒にしよう」


 バッとタールに隠れるようにしたミーチャ…… タールに促される。


 「ミーチャ、お、女の人同士の部屋だ、だから、ミーチャ、だ、大丈夫」

 

 ミーチャはタールを見て、チョコンと頷いた。



 それから数時間、その日の夜中にハルロック達の第3グループが帰還。


 そして更に10時間も遅れて、第1グループが帰って来た。


 私達の最後の仲間のナナミルが帰って来たのが嬉しくて、私はナナミルに抱きついた。


 後から考えるとこれがいけなかったのか。

 遠くからのガレットの視線に私は気づかなかった……




 部屋割りが終わって皆が集まる。

 だけど、帰って来たばかりのナナミルは疲れ果てている。



 先鋒隊の生き残り、この国の王でさえ逆らえないと言うマクニール様は皆に話す。


 「地図を用意した。 先ずこのデルマ城から1番遠い西のドリアードが住むビジョンの森、ここには我等と同じ先鋒隊だったロナインが裏切って、多分、西のドリアードを守っている。 我からはとりあえずのドリアードの確保とロナインの抹殺だ」


 渡された地図を見ながら思う。

 西のドリアードは400歳を超えていると聞いた。

 ノマノーラのドリアードとそういう意味では同じ……


 私は一度だけノマノーラのドリアードを見たことがある。

 とても醜く、何故生きていられるのか分からないくらい痩せ細ってシワだらけだった…… そんなドリアードでいいの?


 「そして北のドリアード。 このドリアードも位置は確認済みだ。 チレイラの森、この森の何処かに居るじゃろう」


 ひと月前の情報。

 ただ、このドリアードは動かないのでこの森に居るみたい……


 「そして今回に絶対に持って行ってほしいのが東のドリアードだ。 まだ70を超えたばかりのドリアード、だが行方が分からん。 ギリギリまで探して必ず見つけてノマノーラへ持って行け。 それと確保した他のドリアードに絶対に危害を加えるな。 もし危害を加えたやつが居たら八つ裂きにする」


 また次の300年後を考えると危害を加えたらマズいようね…… 他は逃すのかしら。


 「言い忘れたが、東と西では揉めるな。 まぁ…… この国の村を襲うのは構わん、お土産の1つもほしいじゃろ。 それと隊長以外は2階から上がって来るな。 ……後はお前らの仕事だ、しっかりやれ」


 

 村を襲ってもいいって……

 怖いことを言うお爺さんね……

 私達のグループの隊長はそんなことはしないわよね……




 マクニールは思う。


 これで我等の300年続いた仕事はほぼ終わり。

 まさかノマノーラでも特性の引き継ぎをやってるとは思わなかった。

 だが、ドリアードを失った世界で戦争が始まるのを知っている。

 何度か順番にレイモンに飛んだが、未だに続いている戦争、そのためにフォルマップルの軍事力を上げてきた。


 西のドリアードが若ければ1番良かったが、東も北のドリアードもフォルマップル国から近い。

 真っ先に砂漠化という被害が出るじゃろう。

 その時の我が国の狙いはナラサージュ。

 砂漠化の被害を受けない国の1つだ。

 そのためにキャプトマンは葬っておきたかったが……



 ーー ーー



 この作戦の担当は大まかに決まっている。


 1番重要拠点に1番グループ、4番グループ、6番グループ。

 2番目の重要拠点には私達の2番グループと3番グループが、そして最後の拠点が5番グループになっている。

 もちろん、大まかな取り決めです。



 レスター総大将が話す。


 「各自の持ち場は予定通りだ。 先ず1番遠い西に行く5番グループが今日の夜中に出発。 そして東と北は共に明日の夜中に出発してくれ」


 1日の休養はナナミル達、第1グループのため。

 私達は本当にラッキーだ……


 その日は疲れたのだろう、部屋に入るなりすぐに寝たナナミル、私はほとんどナナミルと会話をしていない……

 ミーチャも明日は早いので早めの就寝。

 私とジャネルタさんは運良くずっと休んでいたし、明日もゆっくり出来るのでお話をしていた。


 「ミーチャは誰にも心を開かないわね、貴方は話した?」

 「小さく『はい』しか答えてくれません」

 「そう…… 貴方は本当に運が良いわね」


 何かを考えるように言ったジャネルタさん…… でも、この会話の流れでどういう意味で言ってるのだろう?


 「何故、私の運が良いのですか?」

 「ハーフ全体を見て何を思った?」

 「はい。 女の人が少ないと思いました」

 「そう。 羅刹種は女の生まれにくい種族、そしてハーフにも同じ現象が起きているの」


 1グループに女は2、3人、私達の第3グループは私とジャネルタさんだけ。

 ちなみにジャネルタさんは混血族と羅刹種のハーフで36歳。


 「私はさっさと同じ隊の飛翔族、ウイチ、知ってるでしょ、彼と付き合っているわ」


 やっぱり意味が分からない。

 それなら私は同じ隊のラムツェルと付き合っているのですけど?

 

 「ふ~、分からないようね。 大体の女は飛翔族の女になっている、自己防衛よ。 そうじゃなきゃ男の性欲が溜まると無理矢理なんてこともあると思うの。 つまり私の場合はウイチに守ってもらえるってわけ」


 ナナミル……!


 「貴方が運が良いのは第2に配属されたことね、ナインレット隊長はそういうの嫌いだから」


 お、恐ろしい…… もしナナミルと逆の立場なら…… ごめんなさいラムツェル、私は生きていたくない。


 「ほ、他の隊は? ミーチャは……?」


 難しい顔になったジャネルタさん。


 「確信はないわ。 でも何人かの女が明らかに最初と違っている、貴方の友達のようにね……」


 この時だろうか、私がハルロックとナナミルと一生の別れを覚悟したのは……


 「ミーチャは幼いわ、変態が居なければいいと思うけど……」


 とても14歳には見えない…… それにタールが守ってくれる。



 初めから対策してきたジャネルタさん、ただそれに気づくまでは嫌なことをされたと言う。

 

 飛翔族の傲慢さは…… 恐ろしい。



 

 次の日、ミーチャ達5番グループが夜中に出発した。

 私達は北のドリアード奪取の最終確認。


 

 北のドリアードの情報。

 チレイラの森に住むドリアード、しかしここには猿人という猿型の人族が居るらしい。

 森に他者が入るのを嫌うので、もしかしたら戦闘になるかも知れない、とのこと。


 チレイラの森まではここから6時間。



 ーーーーー



 あの光と雷を見た2日後、速馬での伝達の内容。


 現在、空に羅刹種と思われる多数の集団の目撃情報あり。

 東はトトン町付近、西はカラハータ町付近での目撃情報が多数。

 羅刹種は全員、フォルマップル国王都のジーンライネを目指している模様。



 この情報を里内の皆んなと共有したが、おおよそは2日前に分かっていた。


 気になったのが1つ。

 カラハータ町はカラミージャ地方の町だ。

 間者は誰が行っているのだろう。



 「リュウ〜、来ねえな〜」


 俺達は入り口の前で座ってずっと待ち続けている。


 「もうおで、まちくたびれた」


 おでも。


 「ふぅ。 ゼウスさん、実戦稽古でもやる? この武器で」

 「ハハ〜、それは本番前にはキツい。 ……それにしてもその剣、恐ろしい逸品だよな」


 ギルが反応する。


 「髪がファサっと切れたぜ。 凄い斬れ味だぜ」


 そんな皆んなの武器。


 ゼウスさんの武器は鉄撮棒と言うのか?

 鉄製の棒で先端が尖っていて、下端は丸まっている。 長さは170センチくらい。


 ドムとギルは両手にコチラも鉄撮棒。

 長さは70センチで刺すより叩いて仕留めるタイプの武器。


 パンクンは金属バットのゴツいやつ。

 ホームラン狙いか?



 「そのスタイルもカッコいいぜ」


 リリカがくれた革製の腰袋。

 刀を2本差してクナイも5本差せるようになっている。 ……が、クナイは2本しかない(ラザノフに2本、ユーリスに1本あげた)ので、投げナイフを差しわている。

 ちなみに皆んなも1人3本ずつの、俺が作った痺れ投げナイフを持っている。


 「ハハ、皆んなはいつ来ると思う?」

 「今だぜ!」

 「いや、5分後だぜ!」

 「お、おでも5分後にすどぅ」


 5分後ならもう空に見えてるでしょ。


 「まぁ、昼間だろうね。 この辺りは夜は何も見えないからね」

 「ああ。 ……俺は明日とみた。 ハハ、激戦になるだろうね」


  

 そう、間違いなくここが最も羅刹種が集まる戦場となる。

 目撃情報からは以外と多そうだけど、予想は予想、何人来ても対処するしかない。



 ーーーーー



 私達、第2グループ、第3グループでの合同の作戦会議。


 先ずソナー持ちがドリアードの位置を特定。


 猿人が側に居た場合。

 無詠唱スキル持ちが猿人を撃退、大魔術はドリアードに当たるかも知れないのでNG、ハーフは補佐をする。

 ソナー持ち4人(隊長ナインレット含む飛翔族)がドリアードを奪う、その補佐をハーフがする。


 猿人が側に居ない場合。


 ソナー持ち全員でドリアード確保(先頭は隊長のナインレット)、ハーフは猿人の同行を注視する(戦闘も辞さない)。


 

 私達の役割。


 ハルロックは猿人撃退の補佐、もしくは猿人の注視。


 私、スザクは赤目の能力で隊長の補佐、もしくは猿人の注視。


 ラムツェルは猿人撃退、もしくは猿人の注視。


 と、なった。


 猿人が側でドリアードを守っていた場合だけ、私達はそれぞれ役割が違う。




 1階の大広間までラムツェル、ハルロックと来た。

 

 食堂を兼ねている大広間、ここでチルピンとナナミルと待ち合わせだけど……

 チルピンは居るけどナナミルが居ない⁈


 寄って来たチルピンに聞いてみる。


 「ナナミルは?」

 「あの…… まだ第1だけ残ってる」


 ドクンッと心臓が動く…… 嫌な予感。


 ハルロックとラムツェルも嫌な予感がしたのか、言葉少なに食事を済ませる。



 その日、ナナミルは帰って来なかった。

 


 

 


 

 この小説の内容とは関係ないですが、この2年、書いて投稿するをひたすら繰り返してきました。だけど久しぶりに自分の投稿を“小説を読もう”から見ると、昨日シーサイドラインに乗った、と訳が分からない文字が、、、 自分がそんな作者名にしてたことさえ忘れてました。 そしてシーサイドラインに乗ったのはガンの手術で入院の日です。この小説が終わるまで生きていられるか、そう思って投稿したのも忘れてました。これで最終章、、、嫌な予感がするのでもう少し続けることにしました。 最後に、コメントを書いてくれた方、ありがとうございました。 2年前のことなので返信はしませんが、先日、見た時はとても嬉しかったです。

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