間者
第三章 フリーダム
第106話 「間者」
俺が猿人の里に居るころの同時刻、サンカルム、俺の家。
「すいません、リュウ君は居ますか?」
慌てて来たリュウさんの友達、ミナリって名だったよな……
クラルさんが対応する。
「リュウ君は氷竜族の里に行ったわ。 何、急用?」
「はい…… 貴族街には入れないからって、ポンタ君が……」
ポンタ君か…… 何の用だろう?
俺が聞いてみる。
「ポンタ君が何の用か分かる? ミナリさんだっけ?」
「うん、ドムフ君だよね…… ポンタ君がユキナさんに、リュウ君のパーティーに依頼が来てるって言われたらしいの。 ……リュウ君が居なければ受けられないよね」
何の依頼だろう? 俺はリュウさんの代理だし、話くらいは聞いてもいいよな。
リュウさんのパーティーでも、今はラザノフ君も居ないしルークさんも居ない。
おまけにユリアさんも俺と入れ替わるように海の家から出て行った。
実質、リュウさんの代わりの俺とポンタ君とシータさんだけか。
ミナリさんと一緒に下町まで来てポンタ君とシータさんと合流、ミナリさんは帰るようだ。
「ありがとう、ミナリちゃん。 俺…… 俺のために走ってくれたミナリちゃんの優しさに感動したよ…… し、死ねると思う」
「何を言ってるんだ、ポンタ⁈ ミナリは俺がもらうんだ! もちろん俺も死ねる!」
この2人…… 直ぐ死ぬな……
「ブッブ〜、残念。 私はリュウ君のお嫁さんになるの。 本人にも言ってあるよ、5人目でも10人目でもいいって」
確かに男でもゾクッとする妖しさと、無邪気で悪戯っ子な面を持つリュウさん。
俺もタイプ的には似てるのでああなりたい。
そうなったら俺もミナリさんのような子と…… ハッ、里には居ない……
「止めときなってぇミナリちゃん。 俺かシータさんのほうが優しいし特に俺はおススメみたいだよ」
「フッハ〜、おススメは俺だ。 昔、母ちゃんに言われたことがある」
そこまで遡って覚えてるとは…… 悲しいな。
「ふふ、早く会いたいな〜、リュウ君に。 ……じゃあね、仕事の準備があるから行くね」
タタタッと走って行ったミナリさん、ブレない人だからシータさんも諦められないのかも…… ポンタ君? ミナリさんのうしろ姿を見ていいケツしてるな〜だって。 あの人は性別がメスなら魔獣でもいいと思う。
急いでギルドまで来た俺達、もちろん俺の担当もユキナさんだ。
ユキナさんを呼び出すと、少し疲れた表情のユキナさんが現れた。
「ごめんユキナさん。 リュウは出掛けて居ないんだ」
「そう…… それなら仕方ないわね、この依頼は断ることにするね」
少し疲れた表情が、可愛い顔を美しい顔へと変化させてるように思う。
リュウさんの知り合いは美しい人が多い。
「な、何の依頼? 俺とドムフ君が居るから、もしかしたら大丈夫かもよ」
確かに…… 俺はリュウさんの代わりだ。
それにあのスタイルが俺に合っていることが証明されて(ゼウスさんとの試合で証明した)、俺は強くなっている!
チラッと俺を見たユキナさんが話す。
「今この依頼を受けても貴方達のランクは最高がシータさんのC。 つまり満額は受け取れないって、分かってる?」
いつもはリュウさんかラザノフのAランクで報告してるから、逆に俺達のランクがなかなか上がらないのだ。
……っと言っても俺は登録したばかり。
「もちろん。 話だけでも聞かせてよ、ユキナさん」
こうしてユキナさんは依頼内容を話した。
レビッツェルの討伐。
サンカルムの西にあるホフラ山で羊飼いに連れられた放牧中のヤシム(ヤギ型魔獣)が襲われる。
羊飼いは逃げたがその時の魔獣の特徴からレビッツェルと思われる。
レビッツェルは雑食で主に草木など山の物が主食だが非常に凶暴で危険。
街から近いこともあり、サンカルムのギルドからの依頼となる。
「……と言う依頼でサンカルムで1番強いパーティーの ”素敵な変人達” に依頼が来たの」
レビッツェルは何度もラザノフやゾフさんから聞いた。
リュウさんとラザノフがダンジョン攻略をした時の最下層のボス、亜種で腕が4本あったとか。
随分と前にも氷竜族の里の近くに出たこともある。
その時はランキング内のミルトラインさんを含む3人の戦士で討伐に成功している。
ただ3人共に大怪我で、高回復薬でも治らない怪我だった人もいた。
この3人では厳しいかも。 ……いや、ラザノフは亜種のレビッツェルを俺と同じ歳の時に倒してる、俺だって当時のラザノフより強い自信はある。
「俺はやりたい。 ポンタ君とシータさん、やろうぜ」
「前衛に中衛、おまけに後衛まで揃ってる。 シータさん、行けるよね⁈」
「おまけはムカつくがミナリは渡さねえ。 行くぞ、ポンタにドムフ!」
ミナリさん、関係ある?
「シータさん、俺は苦しめないよ、ユキナさんを…… ユキナさん、前からユキナさんを好きでした、もちろん死ねと言われ……」
「登録してくるね……」
疲れるから付き合っていられない、って感じだな…… 俺もだけど。
だいたい告白するのが遅いよ……
こうしてレビッツェル討伐が決まったが……
戦う前からダメージが大きい人、有り。
とりあえず武器を取りに戻ってまた下町に集合。
ただ、クラルさんに付いて来てもらった。
昼間でも数時間は動けるようになった吸血族のクラルさん。
今回は馬車を借りたのでキャビンの中で待機すれば大丈夫。
運転はシータさん。
「ありがとうございます、クラルさん。 現地近くまで行ったらソナーをお願いします」
ポンタ君がカッコつけて言った。
クラルさんに来てもらった理由はソナーがあるから。
それ以外はキャビンの中で待っててもらう。
「大丈夫よ、ラリィも居ないし…… それよりリュウ君が居なくて大丈夫なの?」
「大丈夫。 レビッツェルの通常型だしポンタ君もシータさんも補佐するのが上手いから」
シータさんなんて逃げるのも上手い。
「そう…… 無理しちゃダメよ」
「あ、あの…… 心配してくれてありがとうございます。 お、俺はクラルさんのために死……」
「ポンタ君、リュウさんにマジで殺されるよ」
誰でも口説こうとするけどリュウさんはクラルさんとレミアさんの時は本気で怒る。
「あの子は怖いわよ。 何の躊躇もなく2人をバラバラにして吸血族の男2人もボロボロにした。 1人は手足をスッパーンと斬り落としたわ。 私は絶対に頭のおかしな殺人鬼と思ったもの」
それは見たかった!
そう言えば13歳くらいで盗賊7人を斬り倒したって…… 本当だったの⁈
あの人が人に恵まれてなかったらヤバい殺人鬼になってたかも……
「ウグッ…… 俺だってフォルマップルでは危険な感じで、モテモテのモテ太だったんだ〜」
……嘘だな。
「フッハ〜、危険なモテ太、そろそろ着くぜ」
運転席からキャビンを覗くカーテンを開けてシータさんが言った。
意外と早かったな……
先に降りて辺りに魔獣が居るかを調べる…… 気配も足跡などの痕跡もない。
クラルさんを任されてる手前、しっかり事前調査をしたあと……
……って、クラルさんをモテ太君が下ろしてる…… 手を繋いで嬉しそうだな。
……まぁいいや、とにかく近くにレビッツェルは居ない。
それからクラルさんは空からレビッツェルを探した……
待ち時間の俺達。
「シータさん、ここで誰かが怪我したらリュウさんに怒られると思うぜ」
「な…… アイツは年上とか余り気にしないからな……」
シータさんは何かされた?
「け、怪我はしないように慎重に行こう。 ドムフ君が前衛で対峙してる時に俺が回り込んでランザマイノールを仕掛ける。 シータさんは俺を援護して」
「ああ。 ……ドムフ、レビッツェルの弱点は?」
「関節と目だけかも…… 俺も知らないけどそうだと思う」
シータさんの針じゃ…… 針治療になってしまうかも。
「シータさんはひたすら目を狙って」
シータさんが頷きながら、上を見た。
クラルさんが上空から降りてきて報告してくれる。
クラルさんの報告。
レビッツェルは東の位置、約7キロ先に居る。
足を止めて穴を掘っていた、とのこと。
急いで俺達は東へ向かった……
山道を歩くこと50分、3キロくらいは進んだか⁈
「危険なモテ太は彼女は居ないのかい?」
「変な名前つけないでよ。 シータさんだって居ないんでしょ」
パーティーメンバーが真っ二つに別れてるな。
モテる組とモテない組。
「フッハーッ、だが俺はモテる。 付き合ってなくても呼び出せる女は何人もいるさ」
確かにシータさんは色気のある中年男でしかも上位亜人、下町で遊んでてもおかしくない。
「それなら今日呼び出して飲みに行こうよ。 ドムフ君も含めて3対3でどう? い、いいでしょ、シータちゃん」
シータちゃん?
「あ、俺はパス。 クラルさんを任されてるし何かあったら大変だから。 2人で行っ……」
……っと言ってる時だった。
草むらに潜んでいたレビッツェルが飛び出してモテ太君に突進した。
不意を突かれた俺達、レビッツェルもこちら側に向かって歩いてくれば、もうここら辺は危険地帯だったのに……
ズブッとモテ太君の脇腹に自分のノコギリ型の左腕を突き刺したレビッツェル、更に右腕でモテ太君の首を狙う!
ドカーンっと氷の柱に飛ばされたのはレビッツェル。
モテ太君の得意魔術だ。
詰める俺だけどレビッツェルは起き上がり、俺に向かってくる!
カンカンっと攻撃を受ける…… 速い!
必死に受けるだけで目一杯の俺、その時に俺の頭の上を通過した針が見えた。
ピン、ピ〜ン、っと耳触りの良い音がして針は落ちた。
目には当たらず…… って、この金属音で硬さが分かる!
……が、ギロッと後ろのシータさんを睨んだレビッツェル、俺を無視してシータさんに突進する。
舐めるな!! っと思っても、レビッツェルはやたら速い。
だけど……
超一流の逃げ足を待つシータさん、スピードでは敵わないと思ったのか木に登る!
追いかけて木に登るレビッツェル、結構な高さで追いつかれる! っと思った時、シータさんが俺の向かって木から飛び降りた!
空中で『頼む!』っと言ったシータさん、俺の近くにドスンっと落ちた。
追いかけて飛び降りたレビッツェル、倒れてるシータさん目掛けて手を振り翳す!
ドン、っと俺の槍が空中のレビッツェルにヒット! 吹っ飛ぶレビッツェルだが、関節には当てられず……
仕切り直し……
シータさんは流石だ…… 足を引きずってたけど、あっという間にもう俺の後ろに回ってる。
モテ太君は中腰で血だらけの脇腹を押さえてる、回復薬がまだ効いてないのか?
もう2人で戦うしかない。
またレビッツェルと俺との戦い。
やたら速いレビッツェルに俺は悔しくて仕方ない…… 本当にラザノフはこんな化け物に勝ったのか?
小さな頃は、俺はラザノフと互角に戦えてた。
だけど今はいくら戦っても1回も勝てない、それどころか勝てる気すらしない。
当たらない気がするのだ……
レビッツェルの速さに徐々に押されて一発、二発と裂けるような痛みの攻撃を受ける。
動きの速いレビッツェルには、シータさんの針攻撃も全く通用してない。
そして…… ズガッと肩に被弾! 潜り込まれた能面のレビッツェルと目が合った時、俺はこれはマズい! っと思っていた。
ドーンっとモテ太君のランザマイノールがレビッツェルに当たって、レビッツェルが俺から離れてくれた。
「ドムフ!!」
っとシータさんの怒鳴り声!
今が最大のチャンス!
倒れてるレビッツェルの首に槍を突き刺す!
が、バシッと受けられて逆に足元にガッと、反撃された。
痛みを堪えてもこのチャンスを逃す訳には……
キンキン、ブス、キィーンっとシータさんが飛ばした針の一本がレビッツェルの目に命中!
怯んだレビッツェルの首元へ、ブスッと槍を突き刺した……
ビクン、ビクン、っとなかなか死なないレビッツェルの首を、俺は叫びながら何度も槍で突き刺した。
ハァ、ハァ、ハァ、変な汗が出る……
自分達の実力以上の討伐、死んでもおかしくはなかった。
足を引きずってシータさんが近寄る。
「大丈夫か、ドムフ?」
肩、足、その他も削られた、でも回復薬を飲めばほぼ治るはず。
「俺は大丈夫。 シータさんは?」
「……捻挫か、もしかしたらヒビが入ってるかも。 でも大丈夫だ……」
そう言って見た先に、腹を押さえて倒れてるモテ太君が……
その日のうちにサンカルムに帰った俺達、モテ太君は2ヶ月の入院と言われて激しく抵抗、リュウさんが帰って来るまでの入院にしてもらった。
つまり…… 討伐は大成功で皆んな軽い怪我で済んだことにするつもり。
後はリュウさんの前でバレないように痛みに耐えるしかない。
まぁ、俺はほぼ回復薬で治ったから関係ないけどね。
今回の結果。
2人の病院代に馬車のレンタル、高回復薬3個の経費。
それでも1人、2,000トアずつと充分な報酬が残った。
ーー ーー
猿人の里。
ドム、ギル、パンクンVSリュウ。
今回はHP方式でやらせてもらう。
つまり今は皆んなHPが満タンの100HP。
右の木刀を鉤状の2本指で持って魔術を使えるようにする。
奴等のフォーメーションはゴルゾフさんが戦った時と同じ、左右に双子、正面にパンクン。
試合が始まり右手からの強風に口から魔術で炎を乗せる。
前のパンクンは近づけない。
左右から詰める双子、俺は左の赤猿に照準を定めた。
ジェットで近づいて思いっきり左上段!
ガッ、っと棒を両手で持ち頭の上で防御した赤猿、隙の出来た赤猿の顎先に俺の膝が襲う!
グルンっと、俺の顎先への膝蹴りをバック転で交わした赤猿、振り返って、詰めて打ちに来ていた黒猿の攻撃を捌く。
隙を見て詰めようとするパンクンにはジェットと口から魔術のファイヤースネークを打った。
パンクンのHPは変わらず(当たったか見てないから)。
その間にも黒猿の打ち込みを捌いている俺、だけど逆に俺の剣技が黒猿を追い詰め……
ドカッ、っと背中に激痛(赤猿の蹴りか)、そして黒猿に突っ込む俺、待ってましたと黒猿のカウンターでの俺の顔を狙った棒でのフルスイング!
交わしながら黒猿の腹を掴み回り込む。
そしてジャーマンスープレックス二回転!
視界に棒が見えて慌てて避けるも頬をかすめた……
パンクンの棒投げ……
ツツーッと頬を流れる血……
いつの間にか広がっている眼の魔法陣、コイツ等やっぱり強い!
俺のHPは−10、黒猿は−30。
黒猿が鼻血を出して頭を押さえているけどまだ戦えそう。
赤猿とパンクンは無傷、俺はゲリールで背中の痛みと頬の流れる血を抑えた。
俺のHPは97まで上昇。
今度の陣形は右に黒猿にパンクン、左の赤猿。
パンクンの投げた棒は観衆猿により本人に返された。
あれをやってみるか……
単独で居る赤猿目掛けてジェットで近づく!
途中でスモークロッペンを放つ。
そして、右手に虎峰の魔力も集めておく。
スモークロッペン。
黒い霧を発生させる。 ……だけ。
さっきと同じように思いっきり左上段!
……が、見えない中でも予想してたのか、さっきと同じように棒で受けられた。
それならまた同じ技の跳び膝蹴り!
これもも予想してたようだが、タイミングを少し早めている!
ガスッと赤猿の顎を掠めて軽く浮き上がった赤猿が倒れた。
そこに俺の剣の風圧で霧が動いたのか、狙いを定めたようにパンクンのショルダータックル! ……同時に虎峰で対抗する。
ドン、スッパーン、っと音がして俺は吹っ飛んだ。
パンクンは…… 吹っ飛んでない…… けどその場で膝をついた。
相打ちか……
赤猿−40、パンクン−40、リュウ−40。
ふぅ。
立ち上がる…… ギシッと肩関節に違和感、かなり強い衝撃だった。
パンクンは伏せたままだけど俺の様子を見ているのでまだ戦えるだろう。
赤猿は黒猿に介抱されて意識を取り戻し動き出そうとしてる、軽く脳が揺れて意識を失っただけなのでまだ戦える⁈
グルングルンと肩を回してる時に閃いた。
ヒュル、ヒュル、ヒュル、パカーン! っと俺の投げた木刀が赤猿の頭に当たって再び赤猿は倒れた。
棒投げはお前等だけの技ではない!
……そして肩もまともに動きそう。
今度は起き上がれなさそう……
HPは0。
これでやっと2対1。
投げた木刀は観客が拾ったので俺に帰ってくるはず…… って、拾ったやつが木刀を待って後ろの民家に走って行く……
ニコニコで帰って来たやつの手に、俺の木刀はない。
か、隠しやがった!
まぁいい、そのための二刀流だ⁈
ジェットで黒猿に近づく。
途中で再びスモークロッペン!
見えない中での打ち合い!
俺は見えてるけど、それでも黒猿は上手く防いでいる。
だけど反撃は出来ない。
風圧で飛ぶ霧が、俺の位置を黒猿とパンクンに教える……
近寄るパンクンに仕込んでいたウォーターカッター!
スズッと下がるが何とか踏ん張った…… いや、今吹っ飛んだ。
虎峰で傷んだ体では、踏ん張りきれなかったようだ。
パンクンのHP、−20。
霧が消し飛び応戦してくる黒猿。
アクロバティックな動きで俺の攻撃を交わす。
それならと、右上段を深く打つ!
当たり前のように両手で棒を横にして防いだ黒猿、直ぐに跳び膝蹴りに備えてバック転…… ガシッと黒猿の足を踏みつけた俺。
流れるように縦肘!
覆い被さるように打った縦肘は、黒猿の胸から腹に滑るように当たって黒猿の腹を粉砕した。
体重の乗った一撃に、のたうち回り腹を痛がる黒猿。
異常な痛がり方なのでどこか内臓を痛めたかも……
黒猿HP、0。
ドカンッとまたもや背中に衝撃!
グルン、グルンと回る棒が俺を過ぎる…… まだ戦えるのかよ、パンクン。
俺のHPは−10だけ。 ……まともに当たってない。
見ると肩で息をして立ち上がったパンクンがこちらを見てる……
また観衆から投げた棒を返してもらったパンクンが息を整えて走って来る!
俺も走って迎え打つ!
射程に入り棒を振るパンクン!
ジェットを使いジャンプして交わす。
途中にパンクンの首に腕を絡めて…… 首投げ!
裏側から投げた首投げで、パンクンは両手、両膝からガンッと着地する。
直ぐに立ち上がろうとするパンクン、が…… 膝を強打しているのだ、直ぐには無理。
っと油断したのがいけなかった。
ドカ〜ンッと、またショルダータックルをされて俺は吹っ飛んだ。
ドド、ドドドっと観衆猿に突っ込んで、クッションになったのが幸いした。
攻めてこようとするパンクンに待ったのポーズをする……
待ってくれたパンクン、素直なやつだ。
俺が当たった観衆猿の中に居た、親子猿を起こして声をかけた。
「ごめん、大丈夫?」
小さな女の子は泣きべそを描いているけど我慢して何度か頷いた。
「今度、お菓子を待って来てあげるからね」
途中でお父さんを見て言った。
お父さんは不思議そうな顔でコク、コクっと頷いた。
ふぅ。
本当にタフで強いな……
仕切り直し。
1対1での戦いなので黒猿が落とした棒を拾って二刀流とする。
ブンッ、ブンッと大きなスイングで棒を振るパンクン、だけど上半身に頼りすぎ、やっぱり膝が良くないのか。
交わして膝を打つ! バシッと当たってパンクンは堪らず一歩下がった。
ー蓮撃ー
1セット目 意外だが下がりながらも上手く捌かれる。
2セット目 慣れたのか石のように動かずに捌いてくる。
3セット目 俺の打ち込みに対して跳ね返すように捌いてきた…… が、それをやると次の1手が間に合わなくなる。
4セット目 3セットの終わりから当たり続けてる蓮撃、それでも血だらけで体勢を立て直そうと必死なパンクン。
5セット目 動物の本能なのか、致命的な一打は捌いてきたパンクン…… さっき待ってくれたお礼だ!
スパーンっとパンクンの揃った足をすくうように蹴り上げた俺、倒れたパンクンの首元に木刀を押し当てた。
まだHPは残ってそうだが……
「お、おまえ、つ、強い……」
参ったでいいんだよな⁈
呆然と座っている赤猿に腹を抱えて横になっている黒猿。
パンクンも負けを認めたようなので俺の勝ちだろう。
シ〜ンと静まり返る観衆…… いや、ほとんどの時間が静かだった。
1番盛り上がったのは俺の木刀を隠したやつがニコニコで帰って来た時か。
「なっ…… さ、流石ゴルゾフが連れて来た男、な、なかなかやりおる」
あの3人相手に勝てたのは、初対戦だったことが大きい。
俺の引き出しの中身を相手は全く知らない状況だった。
逆に俺はある程度の予想をしてたし予想通りだった。
サルーのように魔術が得意な種も居るけど、猿人は基本的には魔術を使わない。
「強い相手だったよ。 それより約束通り話を聞いてくれ」
頷くレミアに…… ガシッと抱きついて来たラモーナ。
そして俺を見つめて『いいよ』っと元気に言った。
……いや、猿達に言ったんだけど。
随分とフランクなドリアードだけど…… あっちのドリアードはまた頬っぺたを膨らまして怒っております!
ーー ーー
猿人の里の集会所。
俺とキャプトマン王子はこの里の長のギヌリと俺達をこの里まで連れて来たミガックと話をする。
ヒラニは別室で寝ているので、ゴルゾフさんはヒラニが逃げないように見張ってる。
先ずは羅刹種が300年前からドリアードを狙う目的を話した。
そして当然、ヒラニの目的がドリアード奪取にあることも。
「私が小さな頃からこの里に居たヒラニがどうしてもワシ等を騙してたとは思えん…… 目を覚ましたらヒラニが本当に羅刹種とやらなのか、何の目的でこの里に入り込んだのかを聞いてみたい」
それだと嘘をつく可能性もあるな。
殴られた時に詠唱をしてたと言い張れるし、稀に遺伝に恵まれてあまり歳を取らない見た目の人もいる。
「俺が起こしてヒラニが羅刹種と言うことを認めさせて来るよ」
認めてくれればいいが……
「ダ、ダメだ。 其方は凶暴過ぎる」
俺の守るべき人物で子供の次に位置する老人。
誰が殴りたいものか。
だけど羅刹種は別。
近くにいる羅刹種は速攻で排除する。
って言うか、キャプトマン王子が何度も頷くのは、どゆ意味?
「ダメも何も俺だけが知ってる情報もある。 暴力は振るわないよ」
寝てる老人には振るうはずがない。
寝てる羅刹種には…… 排除だな。
約束したつもりはないけど『約束だぞ』と言われてヒラニと話す許可を得た。
部屋の外で見張ってるゴルゾフさんに言って部屋へと入る……
寝てるヒラニ。
確かに俺が殴った時に気絶したかも知れないが、もう回復薬を飲んでから随分と経つ、そのまま寝てしまったのだろう……
だってヒラニは老人だ……
寝顔にロナイン爺さんが映り込んで仕方ない。
こんな老人を追い詰めなきゃいけないなんて気が滅入る。 ……が、やるからにはやる。
ドン、ドン、っと寝ているベッドを叩いてヒラニに『起きろ』っと声をかけた。
やがてヒラニは目を覚まして俺を見てびっくりした。
「見つけたぞ、羅刹種。 仲間の居場所を言わなければ、猿人の里を潰す」
バッと体を起こしたヒラニ。
攻撃してくるかと思ったが、俺を見て泣いた。
「お、お願いだ〜、ワシ1人にしてくれ〜、お願いだ〜、おね…… ゴフッ、ゲホッ、……ああぁ〜」
いきなり追い詰めすぎた、話も出来ないな……
何気に時間をとってヒラニが落ち着くのを待つ。
ーー ーー
落ち着いてきたので話を続ける。
「お前達が何処から来て、何故ドリアードを狙うかを正直に言ってくれ。 もし俺が納得出来る答えなら猿人の里は潰さないよ」
まぁ…… 爺さんから聞いて知ってるけど。
ヒラニのタイムラインに沿った説明は、ロナイン爺さんと同じ内容だったが……
「3人1組のチームに別れて飛んだ仲間達、早速50年後の会合で来なかったチームがあった…… 西に向かったチームじゃ」
そう、ここまではその内容も含めて爺さんに聞いてる。
「けれどそれも折り込み済みで西に向かわせた。 ……西のドリアードは300年後には400歳を超えておる」
その3人は信用されてなかった?
「その理由は?」
「ゴルと言う名のリーダーじゃが、ゴルは短気な脳筋男、ビッテルはいつも逃げ出すことばかり考えておった…… 正義感が強くて融通が効かないロナインも、ワシ達全員のリーダー、マクニールには邪魔な存在だったんじゃ」
ゴルを北や東に回してトラブルを起こすよりは、西でトラブルを起こした方がマシ的な考えか⁈
ビッテルはいつ逃げ出すか分からないし、ロナインの正義感もこの作戦では邪魔になるか。
それにしてもマクニール…… 切れ者だな。
「ここは?」
「……ここ(北)に来たのはワシとタルタルソーとジャメット。 約100年前までは何とか上手くやっておった。 じゃが、ジャメットが病気にかかってフォルマップル国で治療を受けることとなった。 そのタイミングでタルタルソーは逃亡した。 皆んなでソナーを使い探したが、リーブルに飛翔族はおらんかった…… きっとレイモンに飛んだのじゃろう」
もし爺さんが早めにリーブルに来てたら危なかったな……
「それでジャメットとアンタは?」
「もうここのドリアードを監視する必要などない、いつもこの森に居るのじゃから…… それでもワシは猿人の里に入り込むよう言われた…… ジャメットはそのまま東の連中と東のドリアードを監視することとなった、東のドリアードの行動範囲は広くて洞窟の中にまで入り込んでいるらしいからの」
そう、実は活発なレミア。
人族になる決心をしてくれたのも、刺激を求める性格だったから?
「間者と認めたな。 まぁ、別に正直に話してるっぽいからいいけど。 東の情報は?」
「50年前の情報しか知らん。 マクニールは王族の教育係となり今では王族を傀儡のように扱っておる。 その下で働くのは性欲の化身ボリモス、マクニールの弟のマンデミータ、さっき話したジャメットじゃ」
「そう。 じゃあ、そのうちの1人は居ない、俺が処理したから」
ウグッと顔をしかめたヒラニ、次は自分だと思っているのか。
「そ、其方は何者じゃ? ま、魔力量が測りきれんかった……」
ハリケーンラン改で使う魔力は俺の魔力の中でも特に高い火と風だ。
「今はそれはいい。 それよりフォルマップルが無詠唱を増やそうとしてる理由を教えてくれ」
「無詠唱は強い、それだけじゃ。 戦争になれば重宝するスキルじゃからな。 じゃが、本当の目的は無詠唱ではない、飛ぶ特性とソナースキルじゃ」
特性は滅多に遺伝しない。
ラリィが奇跡の子と言われるのはスキルではなく翼があることの意味が大きい。
それでも回復する血の特性はないが。
「何でか教えてもらってもいい?」
無理矢理ではなくの意味。
「……ああ。 それはノマノーラに由来する。 マクニールは今回来る飛翔族は極めて少数と思っておる。 理由は色々あるが、結局は飛翔族が居ないと言うことじゃ。 だからソナー待ちと飛ぶ特性さえあればこちらからノマノーラにドリアードを送ることも可能なんじゃ」
なるほど…… 上位亜人は2人か3人の子を産むのがやっとだと聞いたことがある。
その貴重な血の飛翔族の子が、前回は何人犠牲になったのか。
「ありがとう、嘘でも納得出来る答えだったよ。 それで皆んなでアンタの処分を決めたい、いいよな?」
「ああ、里さえ無事なら文句などあろうはずがない」
「……もう1コだけ質問。 何故、仲間を裏切った?」
「……最後のワシ等、飛翔族の会合は8月じゃ。 ワシはその会合には行かんつもりじゃった…… ワシは……」
「分かった、もういいよ」
泣きそうだったから止めた。
100年近くこの里に住んでいるのだ、情とかそう言うことだろう。
それにしても…… 8月か……
ゴルゾフさんを含めた皆んなの居るところまでヒラニと来て、今度は皆んなの前でヒラニは同じ内容を話した。
ただ号泣しながらだったので、細かな内容は伝わらなかったかも。
「ヒラニ…… ヒラニはこの里を裏切ったわけじゃない。 それはワシが保証する。 だから…… ヒラニを許してやってくれ」
ギヌリさんが俺を見て言った。
「このままと言うわけにはいかない。 ヒラニは危険過ぎる存在だし、もし会合に行かなければフォルマップルに居る仲間達がこの里にヒラニに会いに来るんじゃないの?」
「ワシは会合の前にコーラン国辺りに隠れていようと思ってたんじゃ。 そして10月を過ぎれば…… 戻って来ようと思っていた……」
「その保証がない。 もう監視の対象でしかないのは理解してくれ。 ……何か意見はないですか?」
キャプトマン王子が何か言いたそうだった。
頷くキャブトマン王子が話す。
「それならサンカルムの牢屋に入ってはどうですか? もちろん罪人ではないので居心地の悪いままではなく、色々と持ち込みなんかもすれば良いのでは?」
なるほど、これなら安心だけど……
「ヒ、ヒラニはもう本当にいい歳だ、過酷な環境では可哀想だ……」
「いえ、ベッドなども用意させて頂きますよ。 なるべく負担のかからない形で監禁すればヒラニさんにも良いのでは?」
「そ、それは助かる…… じゃが…… 今からだと寂しくなるな……」
2ヶ月の我慢から半年以上に里を離れる我慢になるからな。
まぁ、俺達的にも目一杯の配慮だけど。
ゴルゾフさんが話す。
「サンカルムへは俺が連れて行こう。 最後にヒラニに聞く、いつ仲間を裏切ろうと決心した?」
「もう、ノマノーラよりこの星の方が大切じゃ…… そしてワシの仲間はこの里の人達…… もう昔からじゃ……」
仲間達との結びつきが薄まれば、ノマノーラよりスペルティが大切に思うのは当たり前だと思う。
「ヒラニ〜、ワシも、ワシも一緒に行く〜、いいよな、ナラサージュの〜」
ナラサージュの〜さんが答える。
「いいでしょう。 監禁という形ですがなるべく不自由のない生活を約束しましょう」
老人2人が泣きながら抱きしめ合ってる。
美しい…… のか?
「それではラモーナ、俺と来てくれる?」
消えてる2人も話を聞いている。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。 護衛はワシ等も参加する。 ミガック、其方にこの騒動が終わるまでの里長を命じる、この若者を手伝ってやってくれ」
確かにアイツ等は使えそうだ。
ただそれだと場所を直ぐに特定されるな……
「分かりました。 リュウ、ワシ達は何をすれば良い?」
俺はこの北の地の責任者じゃないんですけど……
「ゴルゾフさん、ラモーナも俺に守ってほしいと言ってるし、レミアとラモーナ、2人いっぺんに守りませんか?」
「ああ、俺もそう思ってた。 氷に土、更に猿人が加われば簡単には奪われんだろう」
「そうですね。 ミガックさん、早急に話を詰めたい。 これから丁度ひと月後に話し合いましょう。 その時に各猿人の長にも集まってもらってください、もちろん参加する種族は、ですが」
「分かった、話をしておこう。 そちらからの参加は?」
「土竜族が2、氷も2、ナラサージュから今日と同じ2が来ます。 いいですよね、王子」
「ああ、もちろんだ。 ……忙しくなるな…… 間に合うのか?」
帰るのに15日はかかるか?
かなり厳しいか……
「それならリズーン国を利用しましょう。 カラカイッサムなら馬車で行ってもそこまで時間がかからない」
「ちょっと待て。 勝手に他の国、しかもリズーン国を利用なんて恐ろしいことを言うな」
キャプトマン王子…… 弱小国王子の考えが身体に染み付いてるな。
「俺は個人的にあそこ(リズーン国)に貸しがあるので返してもらいます。 まぁ、返させてあげるくらいに思って行きましょう」
「ムグッ…… やりたい放題だな……」
ヒラニとギヌリさんを牢屋で預かってもらうだけだ。 ……新しい回復薬のレシピの方が価値がある。
急ぐ理由がある。
俺はこの里に入って来た時からドリアードを守るイメージが出て来た。
そのイメージ通り進めると時間が足りなくなる。
これからの予定。
俺とレミアが先にリズーン国、カラカイッサムに飛んで、ヒラニとギヌリさんをリズーンの牢屋に収容させてもらう手筈を整えておく。
ギヌリさん、ヒラニ、キャプトマン王子、護衛でゴルゾフさんが馬車でカラカイッサムまで来る。
そして2人を預けた後に氷竜族の里まで戻って俺が帰って来るのを待つ。
俺は一足先にカラカイッサムを出て、一度サンカルムに帰って色々と報告する。
そして猿人との会合に間に合うように氷竜族の里に戻る予定。
「リュウ、悪いが里に戻って事の経緯を説明してやってくれ。 俺が戻らなければ心配するからな」
確かにそうだな。
ラザノフにも船で土竜族の里に戻ってもらって、ガルフさんとルカルスさんを連れて来てもらおう。
「ターミナ達に言っといてくれ……」
これからひと月も、場合によっては数ヶ月も猿人の里か氷竜族の里に滞在するキャプトマン王子。 ……だが、王子扱いはしてもらえない。
そこからは精力的に動く。
その日のうちに氷竜族の里に報告しに行って、カラカイッサムまで飛んだ。
その途中でのレミアとの会話。
「レミアはヤキモチとか焼くんだね。 でもミナリとの結婚を進めるんだ?」
あ…… 王子に言うの忘れた。
「何故だか分かりません。 同じドリアードだから? それとも、ラモーナだから? 私にも分からないのです」
ドリアードの魅力は半端ないからな。
別にラモーナはレミアと違って俺のタイプじゃないけど、自分の新しくいいと思えるタイプの子に会ったような気がするし……
まぁ、200年で初めての人との交流だ。
レミアの相手でもあり、目立ってた俺に少しだけ興味を持ってもおかしくない。
ルークの家には日付の変わる前になんとか着いた。
使用人が居る家なのでルークに取り次いでもらう。 ……もちろん俺がルークの弟と知っている。
2階から降りて来たルークとユーリス……
俺は海の家から去るユリアとは、まともに別れをしてない。
忙しかったのでしばらく会ってないのだ……
「こんな時間にどうした? 何か事件があったのか?」
「とりあえず腹減った、話はその後だ」
「……………」
不満そうだったけど食事を用意してもらった。
レミアも今回は消えてないので一緒に頂く。
食後にリズーン発の紅茶を飲みながら事の経緯を話した。
「そうか、無事に北のドリアードと間者の羅刹種を同時に捉えるとは流石だ。 その羅刹種のヒラニをカラカイッサムの牢屋に収監すればいいんだな?」
「そう。 色々とやりたいことがあってヒラニを連れてサンカルムに帰ってる時間がないんだ。 細かいことは後から来るキャプトマン王子が説明してくれるから」
キャプトマン王子がトゥルフ王子に挨拶や説明をする。
「お前はどうする?」
「とりあえずサンカルムに帰って色々な報告とかしたらその後は武器を作ろうと思ってるよ。 ひと月後からも忙しくて数ヶ月は猿人の里にお世話になるかも…… って言うか、猿人って何を食ってるのかな?」
「食事の心配とは余裕だな。 それで連絡はどう取る?」
「氷の里が近いから氷に連絡して。 次の日には俺に伝わるから」
「分かった…… そっちがメインの戦闘場、色々と決まったら俺にも教えてくれ」
不安そうに俺を見るユーリス……
「ユーリス、やっぱりユリアよりユーリスが似合う」
「えっ…… う、うん、ありがとう」
瞳を潤すユーリス。
「何で泣くの、ルークは優しくない?」
「そんなわけないでしょ。 いつでもルークさんは優しいよ」
だよね…… だったら何で泣くの?
「ルークさんとはな、何もしてないからね」
……聞いてません!
「だから泣いたんだ、罪な男だぜ、ルーク」
「罪はお前だ。 ユーリス姫はまだ完全にはお前の呪縛から逃れてないからだよ」
呪縛って、何?
「そう、私にとっては強烈な呪縛。 でもルークさんもユキナさんの問題を抱えてるからね、今はお互い様」
「ねぇ、レミア、呪縛って何?」
それが分からなければ先に進めない。
「え…… 温泉ですか⁈」
温泉…… そう、私にとっては強烈な温泉。
温泉…… 旅行で一緒に入って洗いっこしようって言ってたような……
「リュウさん? 顔が赤くて鼻がおっぴろがってますよ」
おっぴろがるって何処の方言だよ!
「そんな言葉を使ってはいけません。 分かった、レミア?」
「ふふ、はい。 分かりましたよ、リュウさん」
可愛い笑顔…… 早く人族になって。
「フフ、2人はいつも2人の世界で話すよね」
そうかな?
「ユキナの問題って、ユーリスは納得してんの?」
「知らない女の人より全然良いよ。 学生の頃から彼女は人気だったから知ってたし。 海の家でも女同士が集まって話してたよ、ね、レミアさん」
「ふふ、そうですね。 ……私は少ないですけど」
ユキナは平民なので貴族街の家には来たことがない。
貴族街の家にもよく後輩のコーサやミラー、ミナリが来るけど、レミアが姿を見せて対応出来るのはミナリだけ。
「報告は急ぐのか? そうじゃなければカラカイッサムをゆっくり見て行けば?」
「まぁ、そうだね…… じゃあ、王子達が来るまでお世話になるよ。 だけどパーティーは遠慮するけど」
……っと言っても何もせずにこの国には居られない、それが平民と貴族の違いか。
トゥルフ王子やゴーメラン王などにも会って話をした。
そして1番重要な用事を済ませる。
その用事とはロナイン爺さんに関することだ。
数日後、到着したキャプトマン一行と入れ替わるように、俺はサンカルムへ飛んだ。




