訪問者
第三章 フリーダム
第103話 「訪問者」
ーリュウさんがユーリスさんと結婚するかも知れないー
最近は少しだけど寝ることが出来るようになってきた。
食事もリュウさんには『もっと食べて』と言われるけど、少しは食べる量も増えている。
だけど……
ミュランちゃんからユーリスさんとリュウさんが婚約するかもと聞いた。
それを聞いてから食欲が全く湧かない。
クラルさんはリュウさんが私に夢中と言っていたけど、リュウさんが夢中なのはユーリスさんだった……
この気持ちのまま私は人族になれるのでしょうか……
12月。
新たな取り決めが決まった。
先ず、羅刹種によるドリアード強奪問題は各国の王族だけの共有で、王族でも王、王候補(王子)のみの共有で、例え王様の奥さんでも部外者扱いになり口外ししたら各国から大きなペナルティーが与えられることになった。
もちろん、各国と言ってもフォルマップル、そしてホオヒューガは除外されている。
ホオヒューガの除外理由。
立場が弱く、王族の家族が多くフォルマップル国に養子、婚姻という形で流れている。
一応、ホオヒューガ国の氷竜族がメイン参加してるので今回は内緒にしておくのが得策という判断になったようだ。
レミア防衛に参加するのは土竜族20名と俺。
とりあえずレミアの防衛は今のところこれだけ、もちろんルークとユリアは除外、他のメンバーは昨日帰って来たシータを含めて海の家に集まって話す予定。
今日はひと月前から俺の家に泊まってるドムフと消えてるレミアを連れてサートゥランとミュランの剣術稽古に来ている。
ドムフがサンカルムに来たことを、王族達は氷竜族とも繋がりが出来たと喜んでくれている。
しかもドムフはとても子供受けが良く、サートゥランなどは憧れの人でも見るようにドムフを見ている。
特に驚いたのはパミヤの妹のミリアが直ぐにドムフに懐いたこと。 ……ラザノフにだって、ミリアはなかなか懐かないのに。
ちなみにドムフの容姿を少し。
背はラザノフくらいまで伸びて2メートルはありそう。
彫りの深いイケメンで少しヤンチャな感じ。
ドムフが参加してからは主にゆっくりした動きのヨガや太極拳の動きを参考に稽古をしている。
その意味は……
ドムフはラザノフと違って攻めタイプ。
スタートから一気に攻め立てるけどメリハリがない。
だから太極拳の動きを取り入れているが……
「リュウさん、俺のスタイルとは違うからこの稽古は上手くいかないな」
この稽古はレミアとミュランが上手い、そして2人は仲が良い。
「ちょっと落ち着きのないタイプが苦手そうだね」
ラリィとサートゥランは苦手そう。
そして肝心のドムフが苦手と決めつけて集中力が散漫になってる。
「リュウさん、この稽古で俺は強くなれるの?」
焦るのは時間がないからか。
「これはドムフのための稽古、分からないなら身体で覚えろ」
スッと木刀を構える……
同時にラリィとサートゥランが下がってミュランもそれを見て後ろに下がった。
ドムフと対峙する。
ーーーーー
ハッ、っと目が覚めた時、俺はベッドの上だった…… もう夕方?
そうか…… 倒され気絶したか……
今日のリュウさんの戦い方…… 凄まじかった。
序盤、静かに佇むリュウさんに全てを見透かされてるように感じて、打ち込んだって当たらない…… という感覚になった。
だが俺のスタイルは1にも2にも攻めること、勇気を振り絞って攻めたけど……
やはり捌かれて、少し流れた時に逆に反撃にあった。
一瞬、蓮撃⁈ っと思ったけど、俺の反撃もリュウさんに当たったので蓮撃ではない。
そもそも反撃などお構いなしに俺を倒そうとする気迫と力強さ…… 途中から止めてくださいと懇願したくなるほどの……
あんなスタイルで戦うことも出来るリュウさんはやはり天才。
俺はどうす……
コンコンっとドアを叩く音がして、レミア姉さんが顔を出した。
「あっ、目が覚めたのですね、丁度お食事の時間ですよ、食べれますか?」
毎日見てても毎日美しさに圧倒される。
きっとこの人もリュウさんが……
「あっ、行きます、食べれます」
そう言って俺はベッドから起き上がった。
2階の食堂に来た。
ここの食事はラリィのお母さんとレミア姉さんが作ってくれる。
ホオヒューガの田舎料理に土竜族の豪快な料理、個人的に慣れ親しんだ氷竜族料理が少しづつアレンジされて並ぶ。
クラルさんとレミア姉さんが、スエメルやサラノフさんから教わった料理だ。
レミア姉さんが作ったと思うと、美味しさが3割アップするのは何故?
ああ、それどころではない、俺は気になってることを聞いてみた。
「リュウさん、俺はもしかして、もう強くなっている?」
里でリュウさんと戦った時は秒でやられた。
でも、今日は結構持ちこたえたし反撃も少しした。
「なってないよ。 それより今日の戦いをどう見た?」
な、なってないのか……!
い、いいけどさ……
「静かに捌かれてたけど、一気にやられる感覚はあった。 その通りやられたけど、俺も応戦が出来た。 ……それでも構わずに追い込まれたけど」
「そう。 俺がドムフに合うと思ったスタイル。 静かに捌いて相手の綻びに一気に打つ! やり返されても関係なしに相手を破壊する。 タフな竜族、瞬発力のある攻撃タイプのドムフにピッタリと思ったんだけど、どう思う?」
俺のスタイル!
めちゃくちゃカッコいいスタイルだ!
「い、いい、凄くいい。 だ、だからあの動きの遅い稽古なの?」
「そう。 空気の流れを読んで、力を溜める…… そして勝負所を間違えずに行ききる」
合う! 絶対に合うに決まってる!
「さっきも言ったけど、捌いている時に力を溜めろ。 その練習があの稽古、ゆっくりの動きの時に力を溜めて、一気に吐き出すイメージで動くんだ」
あ、あの稽古にそんな意味があったのか……
「お、俺のためにサートゥランやミュラン、ラリィにも申し訳ないな……」
チラッとラリィを見ると、抜けた歯の隙間が目立つ口で、ニカッとしてくれた。
「お前は子供達に人気があるから大丈夫だよ。 ミリアまでお前に懐いてるし」
子供は好きだけど、俺のために稽古内容が替わってるのは申し訳ない。
「ぜ、絶対に強くなって、レミア姉さんを必ず守る!」
レミアさんが微笑む…… 何か俺、凄く幸せ。
「いや、お前は北のドリアード担当だよ。 何て名前?」
レミア姉さんが答える。
「ラモーナです、覚えてくださいね」
きっとリュウさんは何度も聞いてるんだろうな……
ラモーナさんか、でも……
「出来ればレミアさんを守りたい。 ゴルゾフ隊長と親父に聞いてみるよ」
もし俺がレミアさんを守る担当なら、これから先のモチベーションも3割アップだ!
ーーーーー
今日も学校を休んだけど、今日は仕方ない、パーティーメンバーとの話し合いだから。
海の家、メンバーは俺とレミアとシータにポンタ、ラザノフとスエメルさんとユリア。
ちなみにキャプトマン王子にはユーリスを俺の嫁に欲しいと言ってある。
もし俺とユーリスとの婚姻が決まれば、他の婚姻話はなくなるだろう……
ただし、上手く行くかはキャプトマン王子の誘導次第だ。
スエメルさんがお茶を用意している時にチャイムが鳴った。
俺が玄関の扉を開けるとミナリだった。
「あれ、学校は?」
「リュウ君が居ないから抜け出してきた。 貴族街の家にも行ったんだよ、そしたらクラルさんがこっちに行ったって」
ミナリ…… 今は極秘の会議だからマズい。
「もう直ぐ卒業だよ! もっとリュウ君に会いたいよ…… ハッ!」
後ろに気を取られたミナリ、後ろには小動物の気配…… レミア、出てきちゃダメでしょ。
「えっ、あっ、あの…… リュウ君の恋人……?」
スッと近づくレミア。
「違いますよ、リュウさんのお友達ですか? ふふ、凄く素敵な髪飾り」
ミナリの髪飾りを見て言った。
俺があげた髪飾り…… 確かにミナリに似合ってるし素敵な髪飾りだと思う。
「あ、あ、あの…… その指輪も凄く素敵です!」
緊張してる? ……確かにレミアの指輪は世界1つの逸品、色がいい。
これも俺のプレゼントで加工賃だけでもバカ高かった。
「ふふ、リュウさんにもらったのですよ」
レミアが幸せそうに俺を見た…… モヤっとした気持ちになるのは何故だろう。
「リュ、リュウ君、もしかして病気、治った?」
女で唯一の俺の病気を知ってる女、ミナリ。
でも、どうして分かったのか?
「治った。 心配してくれてありがとう」
消え入るような声で『うん』っと言ったミナリ…… 何故かミナリの瞳から涙が溢れている…… 本人も気づいてない⁈
「あっ、あれ? 何か…… 涙が……」
後ろに人の気配…… 皆んなゾロゾロと玄関まで来てる。
「ミナリ…… 俺はケジメを付けて来たぜ。 大将、ミナリもいいよな?」
もうレミアは姿を見せてしまったので隠しても仕方ない。
「ああ、どうなったか聞かせてくれ」
レミアの問題の前に、シータのケジメ話を聞く。
ミナリも落ち着き、お茶も配られたころ、シータが静かに話し始めた。
シータは里のあるサージス島の近くまで来て、仲介屋に昔の友達を呼び出してもらった。
その友達に100トアを渡して島に入り込んだのはいいが、その時には出発からひと月が経っていた。
島では隠密で動く。
元々は島を捨てたハグレ、知り合いに見つかったら危険さえある。
とは言え知り尽くした島、サーシャの安否は直ぐに分かった。
“元気” それだけ分かったから帰ろうと思った。 ……が、サーシャと話がしたい。
サーシャを尾行して3日、ようやく誰も居ない空き地で子供達と遊んでいるサーシャに声をかけた。
「サーシャ、俺だ、シータだ」
「シータ……」
初めは拒否反応があったサーシャ、それでも徐々にあの時の…… あれからのことを話してくれた。
結婚が決まり、シータに想いを打ち明けたけど、シータはどうやら私のことは妹としか思ってなかった。
元々、決まりにタテをつけれる立場にはなかったけど、それでもシータも自分を想っていてくれてると感じてたのでショックは大きかった。
それでもそんなことはよくあること。
そう自分に言い聞かせて結婚したけど…… 夫との営みはかなりの苦痛だった。
それならと、子供を求めたのだ……
そして出産。 ……が、待ち構えたように自分を抱く夫。
昔から知っている、ズル賢く優しくない男…… シータ、貴方を忘れられないよ……
死にたい……
そう思って2度目の妊娠をしたのだ。
予定外だったのは、その時にシータに見られたこと。
憐れむような目のシータに、今すぐ死にたくなった日を忘れない。
そして出産。
予定通りに死ぬことは出来なかったが、立ち上がることも出来ない状態で寝たきりとなる。
産まれた子供も身体が弱く、家政婦さんと夫で育てていた。
1年が過ぎ、産まれた子も1歳となった。
寝たきりは相変わらずだったけど、徐々に動けるようにはなっている。 ……そんな時に夫の浮気が発覚。
家政婦の部屋でハッスルする夫を見たとき、何故か私は良かったと思った、別れを切り出せるからだ。
しかし……
そこから夫はガラリと変わった。
私が離婚を切り出すのが怖いのか、優しく子煩悩な夫になったのだ。
今ではそれほど夜の営みも苦痛ではなく、むしろ家族愛が芽生えてきた私が居る……
「フッハ〜、っとまあこんな感じだ。 しっかりケジメは付けて、あの時のことも謝罪して来たぞ、ミナリ」
何でミナリなの?
「ふ〜ん、そうなんだ。 良かったね」
チラッと悲しそうにレミアを見るミナリ。
「お、俺はミナリを泣かせない!」
シータ…… ミナリを狙ってんの?
「私はサーシャさんの代わりじゃないよ。 私はずっとリュウ君一筋、仕方ないでしょ、だって…… ウグッ」
また勝手に涙が出たって感じで両手で顔を覆った。
「ミナリさん…… 私も同じだったけど、諦めたよ…… どうしようもないもの……」
ユ、ユーリス⁈ 貴方は俺の嫁になるかも知れないんですよ〜!
「私は諦めない…… だってリュウ君は上級貴族だもん。 3人目でも10人目でもいい、私のこと嫌いじゃないでしょ、リュウ君」
え〜と、そんなに嫁自体が要らないんですけど……
「嫌いじゃないけど、俺はきっと何人かと結婚させられるよ、王子連中から。 そうしたらミナリは何年も何十年も待つかも知れないんだぜ」
「いい! ずっとずっと待つ」
即答かよ……
確かにミナリは一緒に居て楽しい子だけど……
「結論は出さないでいよう。 約束なんて出来ないから…… それに……今は全力でレミアを守ることに集中したい」
ワァァ〜! っと泣き出したミナリ。
元気なミナリを泣かせてしまったやらせないこの気持ち…… 何なの?
ミナリを連れて女達は2階に上がった。
これからは男の話。
「っと言う訳でレミアの防衛に入るか否か、先ずはポンタ」
「俺は入るよ。 もうルークさんに俺も飛べる補助具を頼んでいるし、ラザノフ君とも毎日の実戦稽古もしてる」
「ああ、リュウ、心配するな、ポンタは俺の後ろでいつものようにサポートしてもらう」
うん、っと頷くポンタ。
「ポンコさんは?」
「大丈夫、もう説得はとっくに終わってる」
精悍な顔つきになった気がする…… けど気のせいか。
「シータはどうする?」
「ああ、もちろん大将は恋敵だ、でもそれとこれとは別のこと、フハッー、俺は逃げないよ」
やっぱりミナリを狙っているのか……
「分かった。 誰が死んでもおかしくない戦いだ。 でも時間はある、しっかり対処して行こう」
皆んなが頷いたので今日の話し合いは終わり。
ーーーーー
スエメルさんの部屋。
スエメルさんが私やユリアさんも一緒に部屋へ誘った。
私を見て悲しそうに泣くミナリさんが話す。
「ごめんなさい、迷惑かけて……」
スエメルさんが応える。
「ふふ、大丈夫よ。 そんなにリュウ君が好き?」
静かに頷くミナリさん……
若くてフレッシュな感じがする女の子、とても可愛らしい顔をしている。
きっとリュウさんも気に入っているに決まっている。
でも、リュウさんは……
リュウさんは魅力的だ……
優しくて強いけど、どんな時でも子供のように無邪気になる。
ふふ、あの時だって、『ここ痛いよ〜』って言うから私は泣きながら慌ててゲリールをかけたのに…… 演技だったなんて!
約束だから人族になる決心をしたけど、きっと私の波長もミザリーと同じかも。
ミザリーは近くに居る人にずっと恋をしている、その波長と同じ。
そう、きっと私もリュウさんに恋をしている……
チラッとユリアさんを見ると、目があった。
美しい人…… 背が高くて凛とした美女。
リュウさんが王子に頼んで結婚したい気持ちも、何となくだけど分かる。
「レミア様もリュウ君を好きですよね……?」
ミナリさんの質問。
でもユリアさんの前で、正直に答えて良いのでしょうか。
「はい…… ごめんなさい」
やっぱり嘘はつけません……
「ミナリさん…… リュウはもう平民ではなくなって上級貴族。 それに王子達からの信頼も厚い。 貴方がいくらリュウを好きでも、きっとリュウは何処かの王族の娘と結婚することになると思うわ」
ユリアさんが私を見て言った。
でも…… その相手がユリアさんと私は知っている。
ユリアさんもリュウさんに気があるみたいだから…… 良かったのよね……
「リュウ君には好きな人、レミアさんと結ばれてほしい。 そうじゃなければ私は納得出来ません……」
……えっ?
「リュウも覚悟をしてると思う…… レミア様、リュウは何か言ってましたか?」
「え…… あの、リュウさんは何も言ってませんけど……」
ミュランちゃんは内緒で教えてくれたけど……
「そう…… 私だってリュウには好きな人と結ばれてほしい…… でも、リュウがレミアさんに何も言ってないのなら、リュウも覚悟を決めていると思います……」
ドキドキします…… リュウさんはユリアさんを好きなはずなのに、この2人はリュウさんは私を好きと思っている。
しかもミナリさんは自分ではなく私と結ばれてほしいと言ってくれた……
でも……
ノマノーラの問題が終わればリュウさんはユリアさんと結ばれ、人族にもなってない私は流れに身を任せるしかない。
私はきっと、良くて妹ね……
ーーーーー
1月、キャプトマン王子からの呼び出しに応じて離宮まで来たが……
「忙しいところ済まんな、どうだ兵団の勧誘は進んでるか?」
もう直ぐ卒業、俺個人の兵団なので直ぐに動ける15名程度の精鋭にしてくれと言われている。
真っ先に動くことになるので個の力が強いのが第一条件だ。
キャプトマン王子からは見込みがあれば平民でも構わないと言われている。
「自分の2歳上から1つ下まで数人から入りたいと言われてます」
噂が噂を呼び俺が兵団を立ち上げるのを知ったのだろう。
言って来たやつは全て俺が直接に腕を見ている。
「確定は自分のパーティーメンバーでもあるポンタと言う男、キャプトマン王子にも話したフォルマップルから亡命して来た男です」
「……無詠唱で魔力が70くらいあると言う男か」
「そうです」
「副団長にするのか?」
「いえ、それは考えてません」
ポンタが副隊長の兵団では弱い。
ウチのパーティーでアイツは弱いメンバーと認識してる。
「ラザノフ君はどうなんだ?」
「ラザノフはそう遠くない未来に里に戻ると思います。 婚約もしてるので……」
この旅は終わりに近づいている。
とりあえずは兵団の話は終わって、キャプトマン王子はレミアのことを話し始めた。
「新しい神木問題とレミア様の人族化、少し報告が遅かったが当初のプランに変更はない」
この前、キャプトマン王子にレミアが人族になる話をした。
もちろん新しい神木から、新しいドリアードが産まれることも。
「それで、どういう立場にします?」
妹か? 姉か? それとも年齢的にはおばあちゃんか?
「ビッシュ王の弟トラッシュ。 僕の叔父だった人だが、若くして亡くなった。 ただ1人目の婚約者との間に娘が産まれていたのだ」
その娘ってことにするのか?
でも…… 何歳の設定になるの?
「そしてその娘も若くして亡くなっている、17歳だったかな」
じゃあ、レミアは生き返ったその娘ってことにするんだな……
「その娘の隠し子として登録する。 リュウ、王族の血筋を持ってる娘の設定なので、婚約すれば他の国の婚姻話は止めれるぞ」
婚約…… か、神様…… 婚約したいッス。
「でも、そうなれば公の場にレミアは出て来ないといけなくなりますよね?」
「そ、そうだな…… それはマズいな」
しかも人族になる時には見た目が中学生のように変わってる。
「え〜と、ユーリスはどうなったんですか?」
「リュウより理がある男に決まった。 魔力はリュウ並にあり、頭が良くてリズーン出身だ。 誰か分かるよな?」
「ルークですね……」
俺の知り合いの女を持ってかないで。
ユキナはどうするのか……
「ああ、王も他の王子も大喜びだ。 ユーリスには悪いがな」
俺は今、ホッとした……
俺は…… レミアに惚れている⁈
「キャプトマン王子、俺はどうやらレミアに惚れてるようです。 だから政治的じゃなく、自分の力でレミアと結婚したいです」
「ん? は? 惚れてるの、今気づいたの?」
何を言ってるんだ、この人? ……頷く。
「ハハハハ〜、そうか。 分かりやすかったから皆んな気づいてると思うぞ」
そんな態度はとってません!
ちょっと冷静に考えよう……
レミアを助けに牢屋に行った日。
今考えると完璧に惚れてた。
つまり助けた時に見た、あのきゃわいい顔に惚れちゃったんだな。
いや…… もう少し遡るか。
2度目に会った、海で遊んだ日。
あの日は人生でダントツ1番に楽しい日だった。
レミアの水着姿はそりゃ〜可愛いの何のって、なんて言うのラザノフ?
とにかくいい、ちょーいい。
……惚れてるな。
初めて会った日。
リリカと別れたばかりなのに、もうリリカと同等の気持ちがあった。
……初めから惚れたんじゃん!
「王子、俺、打ち明けてくる!」
ダッと走って家に戻る!
……キャプトマン王子は思う。
まだ話があったのに……
しかし、アイツ自分の気持ちに気づくのは遅いけど、気づいてからは速攻だな。
ーーーーー
家に帰るとラザノフが来ていた。
「リュウ、今すぐ一緒に来てくれ!」
慌てた感じのラザノフ……
「ちょっと待ってて!」
優先順位と言う言葉がある。
1 心を落ち着ける。
2 何を言うか一応考える。
3 レミアに告白。
〜
312 慌ててるラザノフに付いて行く。
レミアはクラルさんと夕食を作っていた。
近くにはつまみ食いを狙うラリィ、ドムフはラザノフと話してる。
「レミア、話がある!」
「ふふ、何ですか? リュウさん」
「俺さ、レミアが好き。 もぉ、凄く好き」
「えっ……」
ヤバい……
2の何を言うか考える、を考えないで気持ちだけぶつけてしまった。
「人族になったら一緒になろう。 レミア、俺はお前が大好きなんだ……」
レミアは真っ赤になってモジモジしてる……
「あの、その…… わ、私もリュウさんが、その…… あの、ユリアさんの次の結婚相手ということですか?」
肝心なレミアの気持ちは……?
「ユーリスに気持ちはもうないしユーリスはルークと結婚するみたいだ。 俺はずっと女にこだわりがないと思ってたけど、レミアをずっと好きだったから、その…… 何て言うのラザノフ?」
「えっ? チョ、チョーステキでござるか?」
「は? う、うん。 とにかくチョーステキ」
レミアが俺を真っ赤な顔でガン見してる。
小さな顔に白くきめ細かな肌、薄いピンク色の唇もチョーステキ。
「ふふ、早く人族になりたいです」
「そ、それはいいってこと?」
恥ずかしそうにコクンと頷いたレミア。
でも、何が恥ずかしいんだ? っと周りを見ると、皆んなが見てた。
集中すると周りが見えなくなるな、俺。
でも…… 早く人族になってくれ〜!
312番目に優先順位があったラザノフと出掛ける。
ドムフも行きたいと言うので一緒。
「ランラランララーン、フンフフンフフーン、ラララ〜」
「超上機嫌でござるな、リュウ」
早く何があるのか言えよ。
「超普通だよ、な、ドムフ」
「う〜ん、いつもより少し機嫌がいいかな。 良かったね、リュウさん」
元々、レミアさんが家に居るからリュウさんはいつも機嫌が良い。
「産まれて良かった。 母さ〜ん、ありがと〜う。 あっ、また名前忘れちゃった」
父さんは覚えてるのに…… もうちょっと記憶力が欲しい。
「可愛く言ってもダメでござるからな。 相当に失礼だ。 早くルーク殿に聞いてちゃんと覚えるでござるよ」
可愛くは言ってないっちゅ〜に…… ランラランララーン。
海の家に着くと、ミリアが出て来た。
パミヤが遊びに来てるのか、っと思いながらミリアを抱っこしてリビングに向かった。
そこに居たのは……
「ハハ、久しぶりだな、リュウ。 ……覚えてるか?」
白い肌の人……
「覚えてるよ、ゼウスさん。 どうしたの?」
あの時の青鬼の人も一緒だ。
「内容は聞いてないけど、鬼族にコーラン国からの依頼が来た。 命を落とす可能性が高いと言う依頼だけど、ハハハ、内容はリズーンかナラサージュの王族に聞いてくれって言うんだ。 そこでリュウを思い出したって感じさ」
コーラン国からの助っ人だけど、資格が必要。
それがリズーンかナラサージュに認められることなのか?
「俺に王子へ引き合わせてほしいってこと? ……って言うか、ゼウスさんって鬼族なの?」
隣の青鬼とは似ても似つかない。
「ああ、鬼族だし王子に引き合わせてほしい」
「ゼウス、余計なことは言うな」
青鬼さん……
「どちらにせよ盗賊をやるような男達には関係ない話でござるよ」
確かに羅刹種と同じ盗賊にはこの話は出来ない。
「だね。 悪いけど盗賊が関われる案件じゃない」
「ハハ、やはりリュウは関わってるな」
「……ああ」
はっきり言ってこの人の強さは魅力がある。
ゼブンさんやゴルゾフさんレベルの強さ。
「ところで鬼族ってゼウスさんも?」
「……まあ仕方ない、内緒でもないしね」
そう言ってゼウスさんは驚く話をする。
ー鬼神族ー
鬼族は赤と青があり、コーラン国にあるシシガ島で暮らしている。
鬼族の寿命は竜族と同じくらいあって竜族より平均身長が20センチほど高い。
竜族と違い男は結婚するまでは里から出ても良い。
鬼族に稀に産まれる三つ子、その中の最後に産まれた子は体が小さく虚弱体質で真っ白の無表情、鬼族の特徴でもあるツノもない。
代々、呪われた子として扱われていた。
その理由は出産時の難しさにある。
元々、鬼族の子は1人でも体の大きな子に出るので出産が大変、ましてや三つ子ともなると母親の命と引き換えになることがほとんどだ。
今から140年前、その三つ子がたまたま産まれた。
そして最後の子はやはり真っ白……
母親も例外ではなく、出産から数日で亡くなった。
昔は育てた人もいたらしいが、それでも5年も持たずに死んだいく子が多かった身体の弱い白い子。
最近では赤子のうちに処分されることが多かったが……
父の青鬼レットは、白い子を抱きしめ里を出た……
上の子2人を親戚に預けて里を出たレット。
その理由は1つ、嫁のミントがこの子を恨まずに大きく育ててほしい、っと死ぬ間際に強く望んだから。
レットは必死で育てた。
病気に良くかかる息子、レスターを献身的に育てた。
その時に助っ人として協力していた集団、“黒の時間“ この集団が盗賊団である。
ただし、襲うのは貴族やその繋がりが濃い商人だけで、一般人は襲ってない。
しかし、ここでラザノフが話を遮った。
「拙者達は貧乏な一般人だったが?」
ゼウスさんが応える。
「ゴルゾフ…… ハハ、凄く強い竜族だ」
「ん⁈ ゴルゾフ隊長を知ってるの?」
今度は青鬼が応える。
「ゼウスの兄、ザヴァと互角の男、お前もあの男と同じ氷竜族だな」
ガルフさんは知らなかったのに、ゴルゾフさんはゼウスさんの正体を知っていた。
あの人、この眼の前任者とも戦ってるし相当に人生経験が豊富だ。
「ああ、俺とやるかい? 青鬼さんよ。 ハハ、だが俺のスタイルはゴルゾフ隊長さえビビるかも知れないスタイルだぜ」
ビビるとハッキリ言えないところが寂しい。
「おお〜、いいね〜。 体術でやろうぜ、リュウ、強くなっているんだろ?」
「え〜と、話がよく分からないんだけど、襲ったのは竜族だからってこと?」
「そうだよ。 やっぱり強かったじゃん」
ゼウスさん……そうだよ、じゃねえっつうの!
「俺は竜族じゃないよ」
「そんなのは分からんぞ。 ゼウスみたいに新種の竜族だと今まで思ってたくらいだ」
「リュウさんは人間だよ。 ただ無詠唱のスキルを受け継いだ3代目」
「ほ〜、面白い」
ん〜⁈ 無関係だからかパミヤがひと言も喋ってない。
ちょっと気を使ってやろうとドムフに目配せをした。
それに気づいたドムフがパミヤに……
「ミリア〜、そろそろドムフちゃんのところに、来る〜?」
いや、パミヤに話しかけろよ! って言うか自分でドムフちゃんって言うな!
ちなみにミリアは耳が聞こえないんじゃなくて、耳が聞こえづらいと言っていた。
大きな病院で治療すれば治るかも知れないという一縷の望みはあるが、パミヤは貴族ではないし、昼飯も食えない貧乏なので学校を卒業して働いたら病院に通わせたいと言っている。
そんなミリアが喋る言葉が2つ。
1つはパミヤちゃん、そして最近覚えた言葉がリュウちゃんなのだ!
「いや、ドムフ、その前にゼウスさんの話の続きを聞こうよ、凄く話が飛ぶから良く分からない」
っということで、話の続き。
何とかレスターを10歳まで育てたけど、レスターは相変わらずひ弱なチビ。
周りからは鬼族の自分が拾ってきた子と思われていたくらいだ……
そんなレスターが12歳の時、レスターの額にあった目のようなコブの1つが開くようになった。
それからのレスターは変わった。
虚弱体質ではなくなり、上位亜人として認められる強さを持てるようになったのだ。
しかし、それだけではなかった。
それから2年、全ての目を開眼させたレスターは、全ての鬼の頂点にさえなれる強さを待つようになっていたのだ。
レスター15歳の夏、レットに連れられて見慣れない故郷、シシガ島に戻った2人だが、周りからの対応は冷たいものだった。
当然と言えば当然だ。
レスターの2人の兄を差し置いて出来損ないのレスターを連れて出て行ったのだから……
レットとレスターは集落に住めるどころはなく、誰も住まないような不便な地に家を建て暮らした。
鬼族であって鬼族とは違うレスター。
特に子供達からのイジメが多かったが……
子供達より背の低いレスター、ただ馬鹿にされても力は子供達より強く、たとえ一斉に石を投げられてもその石は避けるレスターに当たることはなかった。
そんなレスターの評価が変わったのが3年に一度行われる鬼族同志の体術、剣術の大会。
両方に登録したレスターは両方で優勝する。
特に剣術では圧勝に続く圧勝、そして自分の倍はあろう鬼にも体術でも勝つという離れ業で、鬼族の中での地位を完全に確立した。
それからの3年ごとの大会も勝ち続けたレスター、里でもレスターと同じ形の鬼族を増やそうと何人かの赤鬼と青鬼の嫁をもらったが、自分と同じ容姿の子は産まれず……
運命が変わったのは数年後。
たまたま三つ子、しかも女の子の末っ子が鬼族から産まれたのだ。
白い肌でツノもないその子、クライスは大切に育てられて自然にレスターと恋愛、そして結婚、長男ザヴァが15歳で大会を圧勝した頃、誰からともなく鬼神族と呼ばれるようになっていた。
「こんな感じで俺は次男さ」
たった4人の鬼神族、知らない人が多い訳だ。
「さっき気になったんだけどゴルゾフさんと互角だって本当?」
俺の質問、考えれない。
「ハハ、俺は産まれる前だから知らない」
青鬼さんが応える前にラザノフが名前も名乗ってくれと頼んだ。
「ああ、悪いな…… 俺は青のビーカル、ゼウスのお目付け役だ。 ……ゴルゾフとザヴァの戦いは、ゴルゾフが鬼族の島に武者修行に来た時に行われた。 2回やって1勝ずつ。 見てたが凄い戦いだったぞ」
だから竜族とやりたかったのか。
それにしてもゼウスさんの兄のザヴァさん…… 強いだろうな。
「どんな人なの? ゼウスさんでも勝てない?」
俺の質問。
「ハハ、俺はしばらく戦ってないけど、まだ勝ったことがないんだ。 まぁ、今度は勝つけど」
ゼウスさんが1回も勝ってない人……
「歳はゼウスより30高い、何年も母親を苦しめる出産になるからな。 背はゼウスより低いが、体重は三桁ある」
ゼウスさんの背はリーブルに来た頃の俺と同じくらいの175センチくらい。
その背より低いとハッキリ言うなら172センチくらい? でもその高さで体重が100キロを超えるなら小太りの範疇を超えてるのでは⁈
「そんなに貴重な鬼神が命のやり取りを行う依頼が出来るでござるか?」
確かに4人しか居ないなら貴重だ。
「正直言うと、俺達は普通の鬼とは身体のサイズ的にも合わないし、タイプでもない。 ハハ、親父は頑張ったと思うよ」
……どゆこと?
「なるほど、嫁が居なければ意味がないでござるな」
ふ〜ん、何で?
「フハハハ〜、悲しいがそうだ。 ザヴァの後にゼウスだから、あと何年待つことか」
もしかして…… 三つ子女の子の嫁待ち2番手?
「ハハハ、超気長に待つさ」
人ごとだけど悲しいな。
「それで里ではなく盗賊団に所属してるでござるか?」
「いや、普段は冒険者をしてるぞ。 じゃないと大会に出てないだろ。 あの時はレットさんが所属してた“黒の時間“にたまたま挨拶に行った時に『竜族が居る』って聞いて見に行ったんだ」
ふ〜ん、物取りをしてた訳じゃないのか。
「まぁ、紹介するとは言えないけど、王子達の前でやってみる? いい考えだろ、ミリア」
膝に座ってキョトンとしてるミリアに言った。
「リュウちゃん。 ……リュウちゃん」
可愛〜い。
「それはいい考えでござるな〜。 紹介はしないけど王子達には見てもらう。 その後に自信があるなら王子達に直訴すればいいでござるよ〜。 まあ不甲斐ない戦いでは相手にしてもらえないでござるがな〜、ガッハハ〜。 ところがミリア、そろそろラザノフちゃんに抱っこされるでござるかぁ?」
だから自分でちゃん付けしないで!
ミリアがフンっとしたところでドムフが話す。
「じゃあ、俺は白い人とやりたい。 氷竜族のレベルを教えてやるぜ! ミリア、ドムフちゃんに来い!」
っと言ってドムフは強引にミリアを持っていってしまった。
ミリアは笑顔……
「それじゃ拙者は旅のリベンジ、ビーカル殿やろう!」
青鬼のビーカルさんが『おお!』っと大きな声で言った。
でも、それだと俺の相手が……
仕方ない。
「パミヤちゃん、運が悪かったな。 ……やるぞ!」
えっ? っと声を出して驚いたパミヤ。
「ガハハ〜、運が悪かったでござるな〜、パミヤちゃん」
「ハハ、ここに居るくらいだ、強いんだよね、パミヤちゃん」
慌ててパミヤが応える。
「つ、強くないです!」
「それじゃあ、運が悪かった。 パミヤちゃん、ミリアのためにも頑張るんだ」
最後はドムフが言った。
しかし、この戦いでパミヤは運が悪くないことになる。
ちなみにドムフは数年前の俺やラザノフより体術は強いと思う。
まぁ、俺の場合は体術プラス魔術がないと2人とまともに戦えないけど……
……っと言うことで、このメンバーで体術の試合をすることになった。
ただ、王族を出来るだけ絡めたいので都合の良い日待ちとなるだろう。
昔で言うなら御前試合みたいなものか。
俺もラザノフもあの頃より強くなったことを証明したい!




