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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 さよなら



    第三章  フリーダム


 第101話  「さよなら」




 眼の魔法陣がウザいが、驚くほど冷静でいられる。


 真っ先にラ・マカンとか言うお城に向かいたいが場所を知らない。

 それにラザノフ達も待たせてるし、一度土竜族の里に帰ることにする。


 

 チッカに別れを告げて飛ぶこと1時間、土竜族の里が見えた。



 今は20時、堂々と里の広場の上空まで来てジェットを解除、高さは15メートル。


 ブワワワッ、っと服が空気を切り裂く音がする!

 クッションを効かせてしゃがむように着地、俺の柔らかい身体とバランスの良さがあるからこそ成せる技。


 おおお〜っと見ていた人の驚く声。

 俺は急いでガルフさん家へ……



 いきなりドアを開けてから『すいませ〜ん』と声をかけた。


 直ぐに気づいて駆け寄って来たのはユリア。

 『リュウ』っとひと言だけ。


 その後に集まる人達、ガルフさんが喋る。


 「1人のようだな……」

 「ええ、フォルマップル国に拉致されてました。 今すぐ助けに行きます。 それでラ・マカンとか言うお城って知らないですか?」

 「リュウ、落ち着け。 その眼…… ずっとそのままか? いや…… それはいい。 リュウ、その人は捕まっても殺されることはない。 助けるにしてもしっかり対策してからの方がいい。 拙者も手伝うでござるよ」

 「そんなの分かってる。 暗殺、救出、脱出で俺の右に出る者は居ない。 痛い授業料を払わせて必ず奪ってくるさ」



 ラザノフは思う。

 確かにそうかもと思える。

 リュウは正々堂々と戦っても強いが、卑劣な手も堂々と使う時がある。

 そいつが厄介なのだ……



 「そうね、ラザノフが行っても大きなトラブルになるだけね……」


 サラノフさんが言った。



 俺は妖精のことは伏せて、レミアがラ・マカンと言う城の牢屋に入れられてることを話した……



 「そうか…… 本当は竜族としての対策を話したかったが、その様子では直ぐに飛び出して行きそうだな」

 「すいません。 レミアと一緒に聞きますよ」


 ふぅ。 ……っとため息をつくガルフさん。


 「リュウ、そのお城、一度言ったことがあるわ」


 ユリアが言った。


 「でも場所はハッキリとは覚えてない」

 「それはワシが知ってる。 短い作戦会議と行こう」



 城の情報。

 この海沿いに北に真っ直ぐ行くと陸が広がる地形になる、ここまでが約300キロ。

 そこから約150キロ、左側に大きな都市があるので高く飛んでいれば街明かりで分かるはず。


 都市の名はビリバリッタ、お城の名はラ・マカン。


 ラ・マカンの特徴。

 高い崖を背にしている。

 断崖絶壁なので普通は崖側からは侵入できない。


 牢屋。

 城の中庭から東に行った端の方に地下への入り口がある、そこが牢屋の入り口。

 入り口に兵士、近くに兵舎がある。

 

 

      ー作戦ー


 1  ソロ〜って入って、邪魔されそうならバン、バンって斬って助ける作戦。

 

 2  1で大ごとになったらハリケーンラン改を放出するので知らねぇよ〜作戦。



 「あの技…… 犠牲者が酷いことになりそうでござるが、今回はそんな事言ってられないでござるな」


 魔力の回復薬を3本に爺さんにもらった回復薬を待って行こう。


 「リュウ君、絶対無理しないで危険なら逃げてくるのよ」


 嘘になるかも知れないけど、頷いた。


 

 さぁ、仕事の時間だ。


 玄関を出ようとするとラザノフとユリアに呼び止められた。


 「リュウ、さっきも言ったように今回はドリアードを食すのが目的じゃないはずだ。 もっと時間をかければリスクを減らせることを忘れるな」


 ござるなしか…… でも、そんなのは知っている、俺の気が急いて仕方ないのだ。


 「分かってるよ。 ありがとうな、ラザノフ」


 ラザノフは少し驚いたような顔で頷いた。


 「リュウ…… もし私だったらリュウは助けてくれた?」

 「もちろん」


 即答だったのでユリアは満足そうに頷いた。


 こうして俺は土竜族の里を後にした。



 ーーーーー



 海沿いを飛んでいる。


 今回は距離がしっかり分かっているので、時間だけ気にして飛べばいい。


 真っ直ぐ海沿いに飛んで4時間頃に陸の上を飛んでいるはず、そこからは左の街明かりに注意して進めばいい。



 チッカの話では昨年の夏、レミアはあの砂浜の近くで俺を待っていたらしい。


 俺は完全に勘違いしていた。

 俺の5年がレミアの1年、ただ単純に寿命予定を元に考えていたのだ。

 でも1秒は1秒、1分は1分で感じるのだから、やはり1年は1年なのだ。

 寧ろ寝ることがないレミアの1年は、俺の1年より長いとも言える。

 それなのに約束したプレゼントも渡しに行かないで失恋して塞ぎ込んでいるなんて…… 本当に最低だ。


 今思えば、フと寂しそうな表情をすることがあったレミア。

 あるはずのない神木を見つけ、その運命に戸惑っている時、たまたま俺が現れて気まぐれで俺に姿を見せた。

 

 これが俺達の始まりだと思うが、運命はある。

 それは俺が強くなった意味がここにあると思っていることだ。


 俺はレミアを救うために強くなった、今は本気でそう思える。


 その力を発揮するのは今!




 フォルマップル国に入ってからおあつらえ向きに雨が降ってきた。


 飛べる種対策で高く飛んではいるが、もう街明かりが見える。


 あそこか?


 

 雲に紛れてグルっと街を観察すると……


 やはり崖を背にしたお城があるのでほぼ確定であの城がラ・マカン。


 崖の裏の中腹に降り立つ……



 雨音だけが聞こえる……


 俺が降り立ったところを見た人が居ないか、しばらくジッとしていたが大丈夫そうだ。

 それならと、ゆっくり崖を登って行く。



 崖の上。


 隠れるように観察すると、先ずお城の上の屋上に数人の人族。


 お城の裏手からも見られそうだけど端っこに移動すれば大丈夫。


 下は……


 兵舎から30メートル離れたところに2人の兵士が立っている。

 そこには地下鉄の入り口みたいになっているので、あそこが場所的にも牢屋だろう。


 

 注意すべきはお城の屋上に居る数人、その中でも規則的に動いている人族に気をつけて…… ジャンプ! 


 そしてギリギリでジェットを使用して着地する。


 

 シーンとした空間にシトシトと雨の音だけ……

 隠れて待つこと10分、上手くいったようだ。


 ここで突然に眼の魔法陣が萎んだ。

 ……相変わらず良く分からない眼だ、ここからが本番なのに。


 ……まぁいい、やることは決まってる。



 ここから雨を魔術で本降りにする。

 そしてカミナリを発動した時に一気に近づくことにする。



 俺の魔力はまだたっぷりあるけど、カミナリは大きく魔力を削る。

 出来れば2回で牢屋の近くまで進みたい。

 武器は背中に隠した短いほうの刀とクナイが2本。


 

 俺と兵士の距離は約200メートル。

 兵士の真横に俺が位置している。

 真後ろからはお城の入り口を通るので絶対に無理……


 一度目のサンダー! 俺が兵士の後ろに向くようにピカッと発動した。


 相変わらずの雨……

 草木に隠れてしばらく経ったので、兵士も、お城から見られていたこともないはず。


 二度目のサンダー! 一気に牢屋の横…… バッと途中の草木の生えた場所にまた隠れた。

 1人がカミナリを指しながらこっちを振り返った……

 見つかってないけど…… 距離は残った。


 仕方ない……


 三度目のサンダー! 


 今度は余裕で牢屋の横に張り付いた。




 槍を持って雨に打たれて立っている兵士2人、カッパを羽織っているのでここまでカッパに当たる雨の音が聞こえる。

 

 ジリジリと体を窄めて近づき一気に動く!

 近い兵士の心臓を一突き! 


 「グヌワァ!」


 低い位置のまま2人目の首に一閃!


 「こ……」


 何か言いかけた2人目の兵士の首が飛んだ……

 接近戦では槍は役に立たない。



 ザァーっと雨量の増した雨音だけ……


 倒れてる兵士から流れる血が階段を伝う。


 兵舎から出てくる人影はなし。

 交代の時間がいつかは知らない……



 

 ここからは未知の世界、情報はなしだ。


 堂々と足音を消さずに降りていく。

 一定のリズム…… そう、兵士が歩くように。


 30段ほどの階段を降ると、暗い真っ直ぐな地下道…… 30メートル先に大きな扉と兵士が2人。


 そのまま普通に歩く。

 俺の眼にはしっかり兵士が見えている。

 しかし、兵士の目からは俺の姿が兵士ではないと分からないはず。


 ……ギリギリを目指す。



 コツーン、コツーンと歩く音で兵士は誰か来てるのは気づいている。

 そしてハッキリ俺を認識した目をした時、俺から仕掛ける!


 「すいませ〜ん、鈴木さんに呼び出しです〜」


 鈴木さんの部分は言葉を濁して発音している、鈴木さんにも田中さんにもベンジャミンにも聞こえたはずだ。


 顔を見合わせる2人……


 「ん? もう一度言ってく……」


 ジェットで近づきクナイで喉を掻き切った。

 グフア! っと声が漏れてもう1人が叫ぶ。


 「貴様〜! 何も……」


 手で口を塞ぎながらクナイで喉を刺す!


 暴れる兵士が俺の手をガブッと噛みついたのが、最後の抵抗となった……


 

 ザァー……


 相変わらず雨音がよく聞こえる。

 

 扉の前で待つこと5分、さっきの声は中の兵士には聞こえなかったようだ。

 そもそもこの時間だ、寝てる⁈



 ゆっくり扉を開けて中の様子を見ると……


 前、10メートルの位置に鉄格子、左に人が入る場所があるのでトイレか⁈

 右に小さな看守小屋?


 看守小屋まで近づいて中の様子を探る……


 この時間でも声が聞こえた…… 3人?



 ふぅ、トイレに居なければ最後の3人。


 大胆かつ繊細に行動する。


 『すいませ〜ん』とドアを開けて状況を素早く確認。

 左の2段ベッドの下に座っている看守、右側、機械のある近くに座る看守、目の前テーブルでお茶を飲んでる看守!


 ジェットで右側に座る看守に近づき首に一閃! 首を跳ねたが胴体も機械ボタンから離すように投げた。


 ガタァっと勢いよく立ち上がったお茶飲み看守の肩口から刀を振り抜いた!


 『グワァ』っと言う声と噴き出る血、次!


 そのままの流れで最後の看守の心臓を一突き! 何とも言えない目をしてた看守が崩れ落ちた……


 今のは結構な音と声もしてたかも知れない。

 ただ、もうここにいるのは囚人だけだろう。


 壁に掛けてあるいくつもの鍵を待って外に出る……

 いや、血だらけだ…… 着替えて行こう……


 

 最初の大きな扉を開けて歩いて行く。


 左右に牢屋があって囚人が寝ているが、囚人が居ない部屋もある、レミアが消えてる?

 とりあえず奥まで行くことにするが……



 最後の1つ前の牢屋。


 左右から鎖が伸びて繋がっているようだけど、鎖の先に人は居ない。


 鍵を開けて入る……

 もちろん俺はもうレミアの気配に気づいている……

 そして消えてるレミアを抱きしめた。


 「ごめん、遅くなって……」


 この人のこんな姿は見たくなかった。

 だから俺がずっと守るって言ったのに…… 悔しくて悔しくて…… 涙が止まらない……


 

 ハッ、どのくらい泣いてたのか、今はそれどころじゃない。


 手首に繋がれてるであろう鎖を断ち切ると、鎖はジャラジャラっと巻かれて壁にくっついた。


 レミアは姿を見せず……


 「レミア、お願いだから姿を見せて。 俺、約束の指輪を待って来たんだ」


 レミアは姿を見せない。


 ダメか……


 っと思ったが、レミアは姿を見せてくれた。


 溢れている涙のレミア……

 こんな時でもドキドキするくらい可愛い。

 涙なレミア……いいけどムカつきもある。


 「リュウさん、プレゼントはください。 でも…… 1人で帰ってください」


 ムカつきの正体はきっとこれだ。

 レミアは死を受け入れてる。


 「レミアとしか帰らないよ。 手を出して」


 俺をジッと見つめるレミア……

 俺の心臓があり得ないほど動いてる。



 ……レミアが迷ったあげくに手を向けてくれた。



 スッと指に指輪を嵌めた。


 

 「それじゃ、帰ろうか」

 「わ、私のことは放っておいてください」

 「ダメだ。 この指輪はこの先も一緒に居ようと言う指輪。 俺達は友達だ、友達のピンチは何があっても助ける」


 また俺を見つめるレミア……

 

 きゃ……

 きゃ……


 きゃわいすぎる〜!


 あっ…… こんな場面でやっちゃった。



 「リュウさん、私は何かのためになって死ぬのなら良いのです。 もう…… 私には……」

 「知ってるよ、神木のこと…… ミザリーに聞いた。 ……レミア、人と同じ生活をしない?」


 レミアは不思議そうに俺を見たが、やっと意味を理解したのか諦めたように話し出す。


 「人族になっても何も出来ない私は生きて行けないでしょう。 それに私はドリアードとしての運命を全うしたいと思っています。 リュウさん、貴方に会えて本当に良かった。 ここから必ず無事で帰れることを私は願っていますよ……」

 「あのさ、俺さっき言ったよな。 お前と一緒じゃなきゃ帰らないって。 ……いいよ、帰らないならここでレミアを守るから」

 「もう放っておいてください!」


 怒ったレミア……

 何かめちゃ抱きしめたい。


 「ヤダ。 俺ね、大会の個人戦で優勝したよ。 ……そう、俺はもうこの世界でトップレベルに強い。 ……レミアが死ぬなら俺も死ぬ、但し何十人じゃない、何百人のフォルマップルの兵士も道連れにする」


 軽蔑の眼差しで俺を見るレミア……

 嫌われたな…… 泣きたいけどもう一息。


 「ここまで入って来るのに誰にも気づかれずに7人、今夜は何人と一緒に眠ることになるのだろう? あっ、魔力がないから回復薬を飲んでおこおっと……」


 魔力を回復する回復薬を2本飲むと……

 8割以上は回復!


 ついでに爺さんからもらった体力を回復する回復薬も飲む……


 しかし…… ほとんど変わらず。

 よく考えたら体力は減ってなかったんだ……



 スッと牢屋の外に出て、刀を持つ。


 この中での戦いは狭くて閉鎖された空間なので火系の魔術は止めたほうがいい。

 もし火系の魔術で攻められたら風で押し返すのが正解か?

 それなら地下の入り口で戦ったほうがいいのか?


 そうだな、それならレミアに怖い思いをさせないですむ。



 牢屋に入ってレミアを見る。


 なんだろうな、この人…… ドリアードの魅力なのか、惹かれる。 ……が、それもここまでだ。


 「レミア、最後だ。 俺は入り口で戦う。 でもそれはレミアのせいじゃない、俺がレミアを泣かせたやつが憎いだけだ。

 サヨナラ……」

  

 踵を返して牢屋を出……


 「リュウさん! ……私も行きます」


 ……ホッとした。

 でも…… とりあえずだ……

 

 レミアは今も未来を諦めている。




 コツーン、コツーンと足音が地下牢に響く。


 さっきの俺とレミアの声で起きたのか、囚人が俺とレミアを見ようとするが視点が合ってない。


 そう、レミアのスキルで俺とレミアは消えている……




 先程まで降っていた雨が止み、同時に日が出てきた。

 後ろに注意して飛んで来たけど、ここまで来れば一安心か。


 後ろから回すレミアの腕は、今にも離しそうで弱々しい。

 だから俺の右手を添えるようにレミアの腕に乗せた。


 海沿いに出て飛ぶ。

 一度、止んだ雨がまた降り出した、もう直ぐ着くのにまたびしょ濡れだ……




 レミアと過ごすいつもの小屋に着いて濡れたレミアを風の魔術で乾かしてあげる。

 髪の毛がなびき、そりゃあもう…… なんて言うのラザノフ? って居ねえよ〜、ラザノフ。

 ……とにかく超ステキ。


 俺の心臓のドキドキが止まらないけど、この人と会う時はいつもこんな感じなので無視して現状を話す。



 要点。

 来年、ノマノーラからこの星にドリアードを奪いに羅刹種が大挙して来る。

 奪われたドリアードは古い神木に一生、括り付けられる。


 前回のドリアードが奪われた世界は戦争が始まった。


 レミアの森に生えてきた神木は、レイモンの南に生える予定だったと思われる。


 などを話したが……



 言葉足らずのこの説明がちょっとした誤解を生む。



 「俺はレミアが望まなくてもレミアを守るよ」

 「リュウさん、寧ろ私が奪われれば、リーブルに影響がありません、他のドリアードも無事で済みます。 私を引き渡してください」


 西のドリアードのミザリーは400歳越えか……


 「もう1人は何処にいて、何歳なの?」

 「北のラモーナ、207歳です」


 やっぱり狙われるのは1番若いレミア。

 だけどラモーナも狙われる。


 「リュウさん⁈ 聞いていますか? 私の森に私が居なくても新しいドリアードが産まれます。 確かに6年の空白がありますけど、その影響はほぼないでしょう。 それに私が奪われても6年だけ我慢すれば私は消滅します。 他のドリアードよりきっと私は恵まれてた、それはリュウさんと出会ったから。 ……助けてもらった時は嬉しかったしこのプレゼント…… ふふ、これだけで6年なんて直ぐですよ」


 6年くらいなら影響はほぼないのか、ふ〜ん。


 「レミアを奪いに来るやつは俺が許さない。 これは何処まで行っても変わらない。 ねえレミア、人族になろうよ」

 「イヤです! 牢屋でも言いましたけど、私のことは放っておいてください」


 むぐっ…… 被せるように『イヤです』って言われた……


 「頼むよレミア…… 人族になろうよ…… 頼む……!」


 心の底からの懇願。


 しかし……

 レミアはスッと立ち上がり……


 「ふふ、ありがとうございます、リュウさん。 ……さよなら」


 っと小屋を出て行ってしまった。



 さよなら……か……


 

 アホか! 俺はしつこい男だっつうの!


 

 小屋を出て気配を探る……


 右斜め上の空に小動物の気配あり。


 歩いてその下まで来た。 ……すると気配は戻るように小屋の方へ向かった。


 俺も戻る。


 すると気配から話しかけられた。


 「しつこい男は嫌われますよ、リュウさん。 私のことは放っておいて!」


 口調からは嫌いな感じはしないな。


 「お前が消滅するのを俺が看取ってやるよ。 まぁ、邪魔なやつはさっきのやつみたいになるけどな」


 さっきレミアを抱き抱えて牢屋を出る時に死体の近くを2回通った。

 その度にレミアは体を強張らせていた。


 「リュウさん、貴方がいくら強くても、所詮は表舞台でのこと。 裏舞台には貴方より強い人族はたくさん居ます。 例えば私を攫った飛翔族、彼等は高位の魔術まで無詠唱で発動出来ます」


 羅刹種=飛翔族とは知らない?


 それに俺はレミアの前で…… 前では失敗ゲリールだけ? 

 サンダーは離れてもらったから無詠唱とは分からなかった?

 でも、とりあえず驚いておくか。


 「な、なぁにぃ〜! そ、そんなバ、バカァな〜」

 「きっと私を取り返しに来ます。 そして今度こそ私は直ぐに食べられてしまうでしょう。 でも、それでも…… 他の星に攫われるのでもどちらでもいいのです。 それが運命なら……」


 完全に今回羅刹種が攫ったのを知らないな。

 レミアは飛翔族がレミアを食すために攫ったと思っている。


 「俺の命はレミアにあげるよ。 お前を守って殺されるなら本望さ」

 「リュウさん、私が嫌なのです!」

 「だったら人族になろうよ。 俺の命か、僅か6年のドリアードとしての使命か、レミアにはどちらが大きいの?」

 「…………放っておいてください!」


 姿を消したままのレミア、俺がお前の運命を受け入れることなんてないのに……



 それからレミアはあっちをフラフラ、こっちをフラフラしながら1日が経った。


 ちょっと寝れないのが辛いな……



 次の日、昨日と同じようにレミアを追いかける俺、たまにウトウトと少しくらい寝た時もあったかも知れないがレミアを見失うことはなかった。

 相変わらずレミアは姿を消したままで、夕方まで日が経った。


 しかし、突然レミアが俺に話した。


 「リュウさん、逃げてください、わ、私の森に飛翔族が来て…… きっと私を補足しています……」


 ソナー……

 取り返しに来たか。


 「レミア、俺は最後まで戦うけど、もし負けたらレミアが看取ってほしい」

 「リュ、リュウさん、お願い…… ここから逃げて……」


 ポロポロっとレミアの頬を涙が伝った。

 ん〜、抱きしめたい。


 「レミア、もしこのピンチを2人で乗り越えたら、考えるだけでもいい、人族になることを考えて!」

 「わ、分かりました、早く、リュウさん逃げて〜!」


 何もない空間から魔術がボッ、ボッ、っと飛んできた。


 捌きながら近くまで来た羅刹種ジジイを見る。 ……この前と同じジジイかと思ったが、ジジイの顔は皆んな似てるので確信が待てなかった。


 「ふん、やはりこの前の小僧か」


 ……つまりこの前の失礼ジジイか。


 「老けたな、爺さん」

 「くっ、失礼なクソ餓鬼め!」




 失礼爺さんVS失礼クソ餓鬼、開戦!



 また魔術を繰り出した失礼爺さん。


 ボッ、ボッ、っと飛んできた土系の魔術の最後の一発をワザと肩に被弾した。


 そして走って逃げてレミアの下まで来た!


 「レミアァ〜、ここ、ここやられた〜、痛いよぉ〜」


 レミアは姿を見せて、慌ててゲリールをかけてくれた。

 涙なレミア……


 「お願い…… 逃げてぇ……」

 「多分…… 死ぬけどレミアが人族になるのがかかってるんだ、頑張るよ」


 勝手に確定演出に変えてみた。


 

 大袈裟に足を引きずりながら失礼爺さんに近づく。


 「ふん、情け無いやつめ、足まで挫いておったか」

 「や、止めてくれぇ〜」


 近寄りながら言うセリフじゃなかったか⁈



 ボッ、ボッ、ボッ、っと今度は火系の魔術! 


 「アギャ〜」


 なんて言ってしっかり捌く……


 

 ジジイの今の形は通常の人間型。

 それから翼の形になるのに1秒はかかってたはず。 ……そう、もう俺の射程圏内!


 

 ジェットで一気に近づき失礼爺さんのかざしている右手首を ー斬ー っとぶった斬る。


 驚いた表情で飛行形態へ移行しようする膨らみかけた背中も ー斬ー っと浅く切り裂いた。


 

 例え、無詠唱での下級魔術でも数秒のタイムラグはある。

 タイムラグが嫌なら仕込んでおけばいいが失礼爺さんは完全に俺を舐めていたのか、仕込んでなかったようだ。


 それと背中を浅く切り裂いたのは飛行形態にさせないため。

 多分、それでも変身するなら背中から血が噴き出るはず。



 さぁ、レミアと失礼爺さんを持ち帰るか。


 

 が……


 『やっと……』と聞こえた気がした。

 

 爺さんは無事だった左手を大きく開いた口に当てがって魔術を発動……


 自らの命を絶った。



 ーーーーー



 ふぅ……。


 森の静寂とたまに後ろから聞こえるレミアの押し殺した泣き声。



 まぁ…… どんなやつでも屍は屍。


 俺はレミアに聞いてから穴を掘り、灰になるくらいに焼き火葬した……


 

 一応、コイツだって昔は俺の爺さんの友達でいいやつだった時もあるかも知れない。

 そう思って手を合わせていると、レミアも隣で手を合わせた。


 「リュウさん、大丈夫ですか?」


 落ち着いたレミアが聞いてくる……


 「ありがとうレミア、回復してくれて。 約束だから人族になってくれるよね」


 勝手に約束までしたことにしてみた。


 「人族になっても私は何も出来ませんよ」

 「俺、レミアが側に居てくれると思うと涙が出るくらいに嬉しい」


 何でだろ?


 「ふふ、リュウさん」


 そう言ったレミアはいつもの笑顔で手を広げた。



 ガシッと少し痛いくらいに抱きしめてしまった。

 もう離さない…… ん〜、懐かしい森林の良い香り…… 何て思った時だった。


 

 ムク、ムクムクムク!


 ハッ! そう思って俺はしゃがみ込んだ!


 タツタ…… 俺のクララがタツタ……



 「どうしたのですか? リュウさん」

 「……ありがとう、レミア。 治ったどぉ〜!」



 不思議顔のレミアも美しい……

 でも、やっと治ってくれた。


 

 色々なものを諦めかけていた。

 

 人知れず悩み、寝れなくなる夜が一番怖かった。



 協力して頑張ってくれたサーラ、ありがとう、感謝するよ……

 

 そして、レミア……

 女神様に欲情したとは思わないけどコイツは立ち上がった。

 コイツが何を考えてるか分からないけど後で風呂ででも聞いてみるつもりだ。


 『なんかねぇ、僕ねぇ、立っちゃった』


 とでも言いやがったらぶっ飛ばしてやる! ……やっぱり暴力は止めよう。


 

 とにかく、別れを言わなきゃな……



 静香チン、さよなら。


 



 

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