爺さん
第三章 フリーダム
第100話 「爺さん」
ビジョンの森、4日目。
船上でメンバー達と別れてから2日、俺達は朝早くにビジョンの森に着いた。
今回はラリィは来なかったので自力で探すしかない、そう思って探しているとガラントゥーゾの方から襲ってきたので首尾よく撃退!
あっさり依頼を終えたが、それからが長くなった。
「リュウ〜、本当に裏から来た人とドリアードが居るでござるか〜?」
「間違いない。 なんと言ってもレミアは嘘はつかないし、それにめちゃ可愛いんだ」
「ガハハ、可愛いは関係ないでござるな。 ……確かにこの森には何か特別なものがありそうな気がするが……」
何となく何か違う。 ……空気?
そんな会話をしながら小動物の気配を探るが何もなし。
5日目。
パレッツェンのような熊型魔獣に襲われてラザノフが負傷。
ゲリールでも治らないと判断して高回復薬を使った。 ……高回復薬の残りは1本。
6日目。
小さな池を発見してラザノフが魚を捕った。
……が、何処かで小さな閉鎖された空間の生き物は食べるな! っと聞いたことがある。
そうだ…… 釣りが好きだった爺ちゃんだったかも。
魚は諦めて山菜で腹を少しだけ満たす。
「リュウ、諦めると言う選択肢はあるでござるか?」
腹が満たせない。
大きな魔術を発動すれば何かしらの動物が取れそうだけど、誤ってドリアードを攻撃してしまっては大変だ。
「俺がラザノフに会う前に、いつかここに、レイモンから来た人に会いに行こう、って決めてたんだ。 だからもう少し探したい」
「そんな前からでござるか。 それなら必ず探そう、どうせ拙者は暇でござるからな。 ガッハハ〜」
俺は暇じゃないけど、ここまで来たら会いたい。
だって6日も探してるんだよ……
7日目。
今回は俺もラザノフもクナイ2本の装備だけ。
ラリィの影空間なしだったので軽装となった。
それでもお互いにクナイで削った木刀と槍は待っている。
「リュウ、流石に臭いでござるな」
きっと俺より君の方が臭い、と心の中で呟く。
「川でもあれば行水でもしよう」
しかし、川はなかった……
8日目。
この日は昼頃から空気がピリッとした感覚があった。
それでもいつものようにラザノフが話しかけてくる。
「そう言えばルーク殿は何で海の家に転移魔法陣を描かないんでござるか?」
「ルークが描く魔法陣は最大でも1キロ程度しか転移出来ないらしいよ。 それに数日しか持たないって言ってた」
「ほう…… 興味深い…… アレを戦いで使われたらやっ……!」
気配! 禍々しい気配、ドリアードじゃない⁈ ……いや、混ざってる!
「敵意はない、話を……」
ブァっと眼の魔法陣が広がって、何もない空間から密度の高い火の玉がボッ、ボッ、ボッっと3発飛んできた!
木刀で弾きながらラザノフに声をかけた。
「ラザノフ、集中しろ!」
そう言ってラザノフを見ると、やはり同じように突然に何もない空間から火の玉がラザノフを襲った!
2発は捌いたラザノフだが、1発を右肩に被弾! だけど流れたので大したことない。
火の玉が来た方向と気配、俺は待っている木刀をそこに投げる!
キャ、っと小さな声が聞こえてドリアード…… な、何ぃ〜! ジジイが姿を現した。
……俺は混乱していた。
さっきの声は完全に女、レミアもドリアードは女しか居ないと言っていた。
しかし目の前のジジイ(おばあちゃん?)は男に見える……
答えは…… 男装婆さん?
しかし、その答えは直ぐにでる。
俺に向かって手を翳した男装婆さん!
またボッ、ボッと俺の近くで出てくる変な塊!
コレはまずい! そう思って横っ飛びで避けると変な塊は爆発した。
ドーンっと爆発した塊!
その時に分かる、この人は無詠唱!
つまり羅刹種!
男装婆さ…… じゃなくて羅刹種ジジイ。
175センチくらいのダンディーなジジイ。
背格好や無詠唱なところなど、ルークの老後(本人は嫌だろうけど)って感じ。
ラザノフがジジイに向かって走る!
……が、木の横を通った時に木が光って爆発した。
ドーンと爆発してラザノフは吹っ飛んだ。
煙が辺り一面に充満する……
ラザノフは…… モゾモゾと動いてる。
残り1本の回復薬でも飲んでいるのだろう。
爆破の魔法陣とは、本当にルークに似てやがる!
俺のルートに木はない、俺が走る!
ジジイは両手を翳して魔術を発動するが、そのカラクリは分かっている!
俺の間合いまで消えて近づく魔術、もしくはスキル。
集中している俺には当たらない!
クナイで捌きながら近づくと、何とジジイは……
ダンディーな感じのジジイが、モリモリって感じで自分の皮膚が動いて変身した。
簡単に言うと、自分の肉を翼に変換した姿になっている。
なので、骨に少しだけ肉を付けただけのガリガリだけど、翼は立派なのが出来上がっている。
……っと言っても俺も飛べるし、所詮は翼、ジェットの方が速い!
近づき、左ストレート!
……が、羽ばたいて逃げるジジイ。
アホか! 俺の方が速い!
しかし…… ジジイの方が速いだと〜!
確かに翼に対しての中心部が普通の鳥族より細くて軽そうだ……
完全に羅刹種、本当に気持ち悪いもん、姿が。
諦めて小動物の気配の方へ。
「レミアを知っている。 敵意はないんだ」
「…………」
『ミザリー!』っと鬼の形相で向かって来るジジイ、でもドリアードの近くなので魔術は使えない。
キンッ、っと短剣での攻撃をクナイで受けて、右手でジジイの袖を掴んだ。
グッと引き込みクルンと腕を極めて首に手を回した。
「何度も言わせるな、少し話がしたいだけだ」
静かに羅刹種に、小動物の気配に向かって言った。
すると……
「もう止めてください!」
っと、姿を見せたドリアード。
ビジョンの森のドリアード。
確か400歳を越えてると聞いたけど、姿は神々しい美しさの40代の女の人。
この人を見て確信する、ドリアードは皆んな美しいんだと……
でも、やっぱりレミアは特別だ、だってめちゃくちゃ可愛いし、声だってきゃわいい……
「何が目的ですか!」
あ…… 少し忘れてた……
「俺はレイモンから来てレミアと出会った。 そのレミアがここに西のドリアードと、多分レイモンから来た人が居るって言うから少しだけ話がしたくて訪ねてきたんだ」
「レ、レミアが⁈ 人族と会ってるの?」
この人は自分はいいけど人はダメって言うタイプなのか?
「貴方だって爺さんと会ってるじゃん」
「わ、私達は歴史があります」
歴史…… そんなに古い間柄?
それに今の話に歴史って関係ある?
「敵じゃないなら離してくれ」
爺さんが言った。
「分かった。 爺さん、離すけど暴れないでね」
スッと爺さんを離すと、爺さんはドリアードの隣に行った。
「それといきなり爺さんが攻撃して来て俺の友達が傷ついたんだ。 誤ってよ」
「ミ、ミザリーの危険は排除するって決めてたとは言え、済まなかった」
お、素直な人だ…… それにドリアードはミザリーって言うのか。
「大丈夫でござるよ。 それより良かったでござるな、リュウ」
8日かかったからな。
「ああ、付き合ってくれてありがとう、ラザノフ」
ラザノフは手を振り照れた。
「それで何が聞きたいのですか?」
「爺さんにだけど、レイモンから来たって本当?」
「本当じゃよ。 其方もレイモンから来たのか?」
やっぱりレミアは嘘つかない。
しかもめちゃ可愛いしたまらんなぁ。
「うん。 人間国出身だけど亜人国から出発したよ。 爺さんは亜人国出身?」
「ああ、トバルって言う港町じゃ」
本当にやっと会えたよ、レイモン出身の爺さん。
「あの変な飛び方で飛んで来たのか?」
「そうだよ」
「良くそれで飛んで来れたもんじゃな、皆んなギリギリで死んだ者もおったのに……」
1人で来たわけじゃない?
「爺さんは1人じゃなかったの?」
「最初はの」
最初と言うことは、来て帰ってまた来たって感じ?
「爺さん、何回も海の滝を越えるとは化け物だね」
「ブハハ、其方にそっくり返すぞ、その言葉」
何をもって俺が化け物なんだ?
「ちょっと待ってください。 貴方達は同じ匂いがします」
突然話に割って入ったドリアードのミザリー。
……って、同じ匂いだとぉ〜!
8日目、俺はとても臭い。
あの臭いラザノフに臭いと言われるくらいに臭いのだ。
ちょっと脇の匂いを嗅いでみるか……
クンクン…… グギャアオオ!
こ、これと同じ匂い……
何か爺さんが可哀想に思えてきた。
「爺さん、風呂は?」
「失礼な。 入っておるし、入れない時は拭いておるわ」
拭いてもなおこの脇と同じ匂い……
泣けてくる〜。
だって凄いよこの匂い。
もう一度嗅いでみるか……
クンクン……
ゴゲェェェ!
「ち、違います。 そうじゃなくて同じ血の匂いがします」
何だ、血かよ。
2回も嗅いじまったじゃね〜か、死ぬかと思ったちゅ〜の。
ん…… 血⁈
「其方、父親の名は?」
まさか……
「俺の産まれる前に亡くなったから知らない」
爺さんは…… ショックを受けている⁈
「そうか…… 名も知らずに育ったか」
「いや、聞いたかも知れないけど忘れちゃった」
「………… それじゃ、母の名は?」
「……俺を産んで死んだ。 名前も聞いたけど忘れちゃった……」
「ず、随分と冷たい男じゃの、お主は」
ガ〜〜〜ン。
本当だよ、最低だよ、最悪だよ俺って。
母を思い出す時は前世の母親。
俺を死ぬかも知れないのに頑張って産んでくれた母親のことなんて、今まで全く気にもかけなかった。
父親のことだって同じだ。
ルークが語る父親も母親もとてもいい人に聞こえた。
それなのに名前すら覚えないなんて、俺は本当に最低ヤローだ……
「俺は最低で最悪のアホ野郎だ…… 爺さんの言う通り」
「い、いや、そこまでは言っておらんぞ。 そうか…… でも会ったこともないのなら仕方ないかも知れん。 そうじゃ、親戚はどうだ?」
「母の妹にルナと言うシスターをしている人が居る」
少し考え込んだ爺さん……
「確かミーナさんの妹がシスターになりたいと聞いたことがある…… その人の特徴を教えてくれ」
「童顔、小っちゃい、首の下にアザがあった。 可愛い人だよ」
「た、多分ミーナさんの妹だ」
な、何と!
ポルカ先生は俺の爺さんが羅刹種と断言していた。
その人がこの爺さんなの?
ミザリーもラザノフも衝撃の展開に俺を見たり爺さんを見たりで忙しそう。
「爺さんが俺の爺さんってこと? 爺さんは何歳なの?」
「312歳じゃ」
300年生きるとは聞いていたけど、本当かよ。
「確かに其方はミーナさんに目がそっくりじゃ。 其方の母親は絶世の美女だったぞ」
華妖の眼、やはり母親からの遺伝か。
「ごめん、爺さん、親父の名前も爺さんの名前も教えて、今度は絶対に忘れないから」
「ああ、分かった。 ワシの名はロナイン、だが爺さんでいいぞ。 そして其方の親父の名はスウェイン、子煩悩な男じゃった…… そうか、亡くなったか……」
爺さんの瞳から涙が溢れた。
「それでも…… 唯一の一粒種に会えたんじゃ…… きっとスウェインとミーナさんが会わせてくれたんじゃ……」
「いや、俺には兄がいるよ」
「何〜! そうか…… やはり其方のような化け物か?」
だから何をもって化け物だよ。
「化け物かどうかは知らないけど、優しい男だよ。 俺みたいなバカで薄情でカッコいいだけの男と違って。 ……爺さんの言う通り」
「ん…… ひと言も言っておらんし最後褒めておるぞ。 でもそうか、会いたいの〜」
「会えるよ。 今度連れて来てあげるよ」
「そうか! 嬉しいの〜、やはりいい男に育っとるのか?」
「正義感の強そうな優しい目。 ルークって名だけど、俺は憧れたね」
マスクだけ取り替えて欲しかったもん。
「ブハハ、それじゃ、スウェインに似たんじゃ。 其方はミーナさん、ルークはスウェインじゃ」
そう言えば名乗ってなかったな。
「俺の名はリュウ。 今は貴族になったからフノウ・リュウだね」
「そうか、リュウか。 覚えておこう」
ここでミザリーが話す。
「貴方とレミアの関係を教えてくれるかしら?」
今は10月、俺は秋生まれなので18歳になったことになる。
それにしても俺の17歳って……
普通の17歳は朝起きて、下半身の疼きをラザノフの顔かなんかを思い出して鎮めて、昼頃に無意味にいきり立つ下半身をポンタの顔……
「ちょっと、聞いてるの?」
「あ、ああ、もちろん。 3年前、海の滝を越えた俺は偶然にレミアが居る森で休んでたんだ。 俺は気配を感じることが出来るから、気配がする方に話しかけたんだ。 そしたらレミアが姿を見せてくれて友達になった」
「そう…… 3年前のいつ?」
「7月の半ば頃。 次の年の夏も一緒に遊んだよ。 レミアの水着姿はそれはそれはもう…… なんて言うのラザノフ?」
「ステキだったでござるか?」
「そりゃあもう。 すんごいよ、何て言うのかな〜、超ステキ」
「み、水着…… そう、7月なら貴方は関係ないわね。 レミアの精神が少しザワついてたの、4月頃からかな」
「それって悪い意味?」
「良くないわ。 でもそうね、夏の間の精神状態は今年と昨年以外は良かったから、貴方が影響しているのかもね」
良くない……
「貴方達は会っている時に何をしていたの?」
「だいたいがお喋りかな? 魚を食べたり宝石を取りに行ったりもしたけど」
「さ、魚を食べた? どのくらいの期間?」
「全部で1週間くらいかな、何で?」
「い、いえ、そのくらいなら影響はないでしょう。 私達は人族と同じ生活を続けると、人族になると言われてるの」
マジか……
「でも前例は一度だけ、その時は2年かかってるわ」
「前例って、人族になったドリアードが居るってこと?」
「ふふ、通信が切れるから詳しくは分からないわ。 でもそのドリアードの年齢はその時で450歳過ぎ、人族になっても高齢になってしまうわ」
100歳の寿命、500年生きるドリアードが450歳だから、え〜と、とにかくばあちゃんだな。
「それにしても、何でレミアは人族と仲良くなったのかしら?」
「それは俺も聞きたい。 でも神木を見つけたから暇だったんじゃない」
神木を見つけるためにフラフラと彷徨ってるって言ってたからな。
「はっ? どう言うことよ!」
え…… ミザリーの突然の剣幕に皆んな目を丸くした。
「だから神木を見つけたから暇だったって……」
「本当? それならあの子はもう直ぐ消滅するわ!」
しょ、消滅……
「どう言うことだ? 俺にも分かるように説明してくれ」
ピリッと空気が変わった……
この空気はあの時(吸血族とラリィのトラブル)のリュウと同じとラザノフは思った。
ミザリーの説明。
ドリアードは神木の中で産まれる。
そして10年、神木で育って外の世界へ旅立つが、その時の見た目は10歳の少女。
それから50年が経つと、今のレミアの見た目のように20歳くらいに変わる。
ドリアードは基本、神木を探すために毎日、自分に与えられた領土を旅してる。
もちろん、自分の気に入った森を拠点にして。
ただただ徘徊するだけの毎日だが、基本的には490年からが本格的な神木探しになる。
その理由は神木のサイクルが500年で、同時に新しいドリアードが産まれる日に古いドリアードが消滅するから。
だから本来ならレミアの土地に新しい神木が生えるのは、あと420年後くらいのはずなのだ。
「本当に神木を見つけたのなら、何かが狂っているのかも……」
その時、愕然と聞いていた爺さんが徐に話し出した。
「ワ…… ワシ等のせいかも知れん」
ワシ等?
「爺さん、どう言うことだ? 包み隠さず話してくれ」
爺さんの話はかなりショッキングな内容だった。
ーーーーー
ノマノーラ、そこは冬は太陽から離れ過ぎるのでマイナス200度を超えて、夏は太陽に近寄り過ぎるので200度を超える。
そこでも生きる人族が4種、その1つが飛翔族(羅刹種)。
ノマノーラの住人は皆が遊牧民のような生活をする。
冬は1番太陽に近い地を求めて移動して、夏は太陽から離れた位置まで移動する。
まだ若い奴はいいが、老人などはそのまま置いて行ってくれ、っと頼んで最期となるのが通例となっていた。
そんなノマノーラに奇跡のオアシスが見つかる。
自然と出来た階段を下がった先にある豊かな森。
夏は太陽の裏側に位置して冬も太陽に近い奇跡の場所、人々はこぞってその森に移り住んだ。
そしてその森にドリアードが居ることも知る。
人々とドリアード、いい関係が続いていたが……
何が悪かったのか?
きっとこの森に移り住む人が多過ぎたのだ。
人々は畑を作り、田を植え、家や小屋 を建てた。
そう…… 新しい神木が生えて来なかったのだ。
神木が生える本来の場所に何かがあったのか? とにかく神木が見つからないとドリアードは言った。
ドリアードは更に言う。
自分の死後に砂漠化が始まり、やがてこの森はなくなるだろうと……
それが350年前のこと。
ドリアードは500歳を少し過ぎた頃に消滅した。
人々は困惑してそして考えた。
この森を手放すなんて考えられない!
300年に一度、ノマノーラが近づく星スペルティ。
先祖の中にはスペルティに移り住んだと言う話がある。
スペルティから持ち帰って来たと言う品物もある。
スペルティに行けるし帰って来れるのだ!
人々の出した答えは、スペルティにドリアードを盗みに行く、であった。
「ちょっと爺さん…… それだともしかして300年前にレイモンからドリアードを盗んだ?」
「リュウ、それだとリーブルもヤバいでござるぞ」
レミア……
「まだロナインの話が終わってないわ」
た、確かに途中だ、それにミザリーとの歴史も知りたい。
レミア…… 何年かけても探す!
い、いや、何年もかけれないんだった。
ロナインの話の続き。
スペルティに盗みに行くのは飛べる種の飛翔族(羅刹種)。
その中の先鋒隊に選ばれたのは最年少、神童と謳われたロナインを含め20人。
先鋒隊。
300年後にやって来る(つまり来年)仲間の手引きをする役目。
実行隊。
飛翔族60人。
飛翔族のスキル、ソナーでドリアードを探して持ち帰った。
「ちょっと腑に落ちないから聞いていい? ドリアードって神木とセットって聞いたよ。 神木も持ち帰ったの?」
「そ、それは……」
ロナインは帰ってないので知らない。
ただ出発前に言ってたのは、前のドリアードの神木を倒れないように保存してたので、捕らえたドリアードを直接神木に括りつければ良いのでは? っと言う話があった。
「……多分、それなら森に栄養が行き渡るはずです」
……っとドリアードが言うので、盗んだノマノーラの住人は喜んでるだろう。
盗まれた人間国では戦争により、俺の親父が犠牲になり母親まで死んだけど。
絶対に許さん!
「爺さん、あんた達の自分勝手な行動が、自分の子を殺すことになったな」
爺さんは泣いているが、俺が自分の子って言った時に悲痛な顔をした。
まぁ、知らんけど。
300年前に南のドリアードを盗まれた人間国と獣人国。
豊かな領地を巡って戦争が200年近く続いている。
俺の周りの犠牲者。
両親に俺達兄弟、ローチェにローチェの家族と村の人。
孤児院の皆んな…… いや、全ての人だろ。
「まだお話は終わってません。 もう少しロナインのお話を聞いてあげて」
少しの間をおいて、ロナインが話し出した。
前回は初めてだったので先鋒隊が居なかったので、ロナイン達もドリアード探しは手伝った。
その後、実行隊とドリアードがノマノーラに向かったタイミングで、先鋒隊の皆んなは海の滝を渡るが……
リーブルに辿り着いたのは、20人居た先鋒隊のうち僅か9人になっていた。
途中で力尽きた仲間達、ロナインはこの時点でも疑念を抱く。
初めて選ばれた時から感じた疑念、俺達って自分勝手過ぎないか?
それに先鋒隊は家族や全てを捨ててこっちに来てるのに、それなのに半分以上がひと月で死んだ。
いや…… 今は仕事を遂行することだけを考えよう。
次はスペルティの裏、リーブルに近づくノマノーラ。
俺達の役目はリーブルのドリアードの探索。
そして300年後にやってくる仲間にドリアードの位置を教えることだ。
9人になったロナイン達は3人1組になってドリアードを探すことにする。
そして情報交換のために50年に一度、皆んなで集まることにした
ロナインとチームになったのは18歳のゴルと16歳のビッテル、先鋒隊は300年後を見据えているので若い奴しか居ない。
ロナイン達は順調に担当した西のドリアードを探し当てた。
飛翔族のスキル、ソナー。
一度触れればピンポイントで探せる。
全方向に3キロ。
数年かけて、西のドリアードの行動パターンも把握、本当に順調だったのだが……
ゴルが不満を爆発させた。
「何の意味があるんだよ、ビッテル、ロナイン。 ドリアードを監禁すればいいだけの話だろ。 それをこんなチマチマと、やってらんねえよ!」
そう言ったゴルは西のドリアード、ミザリーを捉えて監禁した。
そのタイミングでビッテルは脱走。
ビッテルはこの星で静かに暮らしたいと思っていたのだ……
しかし……
怒り狂ったゴルに捕まり殺される……
監禁小屋で監視を任されたロナイン、少しずつミザリーと話すようになる。
元々この作戦が自分勝手なものだと思っていたロナインは、ビッテルの影響もあり、この星で静かに暮らしたいと思っていた。
それなら全く逆の立場になる、この星の未来を守るのだ。
そう思った時ロナインの心は晴れ、同時にゴルを殺らなければ、っと思った。
そして……
ゴルに戦いを挑んだロナインは、見事にゴルを撃破する。
ゴルを倒したのはいいが、リーブルでは残りの6人の飛翔族に狙われてしまう。
そう思ったロナインはミザリーを逃して、『250年後に戻る』っと言い残してレイモンに戻った。
ここからは関係ないが少しだけ。
レイモンに戻って200年と少し。
恋愛などする資格がないと頑なに思っていたロナインが1人の人間に惚れてしまった。
仕事で接するうちに1人の優しい笑顔の人間に惚れた。
少し身体は弱かったのも、逆に守りたいと思わせたのかも知れない。
そして結婚、妊娠……
1年後にスウェインが産まれるが、魔力たっぷりの飛翔族との子、人間の平民の娘では体に負担がかかり過ぎたのか、寝たきりになってしまう。
それから数年、やっと起き上がれるようになった妻と、無詠唱を引き継いだ優しい子との暮らしで、ロナインは人生最高の時を過ごす。
が……
亜人国ではハーフは20歳までしかこの国に居られない。
スウェインは20歳で戦争中の人間国に旅立った。
それから10年、スウェインが結婚することを知らせてくれて休戦中の人間国に行く。
そこでミーナやルナと会う。
亜人国に帰って来てから1年、妻が亡くなる……
もうロナインの人生はミザリーとの約束しかない。
そう思ったロナインはリーブルへ飛んだ。
「こんな感じじゃ。 最愛の息子を殺したのはワシじゃ、それは否定せん。 だが来年に飛翔族がドリアードを、ミザリーを狙ってやってくる。 ワシはミザリーを守ると約束したんじゃ、だから…… それまでは許してくれ……」
まぁ、今の話では爺さんは悪くないよな。 ……寧ろいいか。
「まぁ、狙われたミザリーの判断に任せるよ。 それよりレミアも狙われるってこと?」
「もしかしたら…… 今のレミアの精神は最悪よ。 何もなければ良いのですが……」
なっ! ……帰って探しに行こう。
「そんで最後に。 何で新しい神木が爺さん達のせいなの?」
「レイモンの南で攫ったドリアードはきっと今は493歳、つまりレイモンの南に生えるはずだった神木が砂漠で生えれなくてランダムでリーブルの東に生えてしまった。 ワシはそう考えたんじゃ……」
ランダム…… クッソ〜!
「ミザリー、人間になる方法を詳しく教えてくれ」
どの道レミアの命はあと7年、そんなの俺が嫌だ。
「普通に人と同じ生活よ。 食べて寝るだけ。 ただレミアはそれを選ばないわ」
ただ単にドリアードの運命を全うするって感じか?
「俺の命をかけてレミアを守るし長生きさせる」
「リュウ、これはもうリーブル全体の問題だ。 ドリアードを1人でも攫われればレイモンと同じことがおこるでござるぞ」
確かにそうだ。
きっと戦争になる。
「爺さん、残りの6人の行方は?」
「わ、分からん…… 済まん」
まぁ、レイモンに行ってたから仕方ないか。
「とんでもないことになったでござるな、リュウ。 誰が信用出来るかさえ分からない。 とにかくサンカルムに帰ろう」
300年活動している圧倒的な能力の持ち主、羅刹種。
国の中枢に入っていても可笑しくない。
「爺さん、羅刹種のスキルは?」
「ソナーが全方向に3キロ、多分だがこっちのドリアードは居場所を把握されてると思ったほうがええ、まあワシの仲間だった奴等が生きていればの話だが。 それに無詠唱で発動した魔術を相手の間合いまで消せるぞ」
なんちゅ〜スキルを待ってるんだ。
「消せる距離は?」
「ワシは10メートル、他は多分もっと少ないぞ」
ふ〜ん。
自分で神童って言っちゃうくらいだからな。
「爺さん、ルークにこの森に来てもらうから話をしてあげて」
空を飛んで来るから爺さんから発見出来る。
「リュウは来ないのか?」
「俺は多分忙しくなると思う。 でもまた会いに来るよ」
「リュウ…… その…… 済まなかった」
「今更何も変わらないよ。 もうこれからの話をしよう」
「ああ……」
そう言って爺さん達と別れたが、爺さんが俺とルークに体力を回復する回復薬とレシピを教えてくれた。
ノマノーラのレシピの体力の回復薬。
スペルティの回復薬の倍は回復する。
爺さんもこの回復薬だから海の滝を越えられたと言っていた。
父さんのスウェイン。
子煩悩で正義感が強かったそう。
受け継いだスキルは無詠唱、特性は受け継いでない。
爺さんより少しだけ魔力量が多かったらしい。
ーーーーー
それから2日、魔力切れで休んだりして来たが、何とか夜にサンカルムに着いた。
ラザノフと相談してたように、クラルさんを海の家に連れて来る。
貴族街の家にやはりシータの姿はなかった。
もう自分の里にケジメを付けに行ったようだ。
今回は出掛けたら少し時間がかかりそうなので皆んな海の家で待っててもらうことにした。
明日にでもポンタに言って、留守中のラリィ達を気にかけてもらうつもりだ、何だったらポンコさんを連れてこの家に居てもらってもいい。
ビジョンの森であったことをスエメルさんとクラルさんとユリアに報告、今日のうちにキャプトマン王子に伝えたいが、キャプトマン王子からと違って俺からは手順を踏まなければならない、貴族とは面倒くさいのだ。
「女神様って…… その人のことを言ってたの?」
ゲリールを教えてもらった相手、俺は女神様とユリアに説明している。
「そうだよ」
「…… リュウにとってどのくらい大事な人なの?」
俺にとってと言うよりも……
「女神様に例えたようにこの世界に必要な人。 何より優先して俺は守る」
「ラ、ラリィちゃんより?」
「ちょっと考えたくないけど、両方守るよ」
「き、綺麗な人なんだよね?」
綺麗、関係ある?
「そうだね、何で?」
「いえ、いいの…… もうずっと前から貴方が特別って、嫌ってほど知ってるから……」
特別強くなったとは思う。
でもユーリスはお姫様、俺より特別だ。
この時の寂しそうな目をしたユーリスが何を思っていたかを、俺が知ることはない。
それから2日、話はラザノフに任せて先にレミアを探しに行きたい、と言う俺はラザノフに宥められ、キャプトマン王子との会談の後にレミアを探しに行く。
キャプトマン王子との会談。
ビジョンの森であったことを話してからの会話。
「にわかには信じられない…… 先ずドリアードとは伝承の生き物、本当に存在していると知る人はほぼ居ないだろう。 それに羅刹種、しかもリュウの祖父だと? ……まあリュウが羅刹種の孫というのは間違いないが、まさか祖父が生きていてこの騒動の中心に居るとはな」
「それは拙者も同じだったでござるよ。 ただ話を聞くしか出来なかったでござるからな。 ただ拙者が会ったドリアードと言う人物は本物。 神々しく美しい…… あの方が普通の人族であるはずがない。 ……それで、対応を聞かせてほしいでござる」
キャプトマン王子は考え込み、逆にラザノフに聞いた。
「竜族はどう動くつもりだ?」
「東はバッチリ土竜族の里がある。 きっと土竜族は防衛に動くでござる」
ガルフさんがどう動くかだな……
「こっちはもちろん王のビッシュに相談しよう。 それにビジョンの森かあるルークの出身国のリズーンも絡みそうだからな、その辺りで足並みを揃えたいが…… 懸念はある」
「敵が入り込んでる懸念でござるか?」
「それもあるが、伝承の生き物、ドリアードを食すと不老不死になる、は有名だ。 ドリアードが実際に存在するなら吸血族なんて比べられないほど危険に晒されるだろう」
「つまり守る側にも狙われる可能性があると言う話でござるか?」
「怖いのはその後だ。 例えば自分の子があと3日の命だった場合、ドリアードの存在を知ってる人々の中には子供に与えるためにドリアードを襲う人も居るかも知れない」
確かに人々の中にはそういった人も居るかもしれないな……
「極秘で守ったほうがいいですかね?」
「分からない。 でも大っぴらにドリアードの存在を知られたくない一面もあると言うことだ」
確かにこのドリアード防衛戦が後世にまで語られる戦いになった場合、その後のドリアードはいつも危険となる。
特にソナー持ちは何もない空間に反応があるので簡単にドリアードを見つけるかも知れない。
しかもドリアードは鈍くて弱い。 ……神々しくてめちゃ可愛いけど。
「難しくなったでござるな、リュウ」
「ああ…… それでもレミアを保護する方が先だ。 ミザリーはいいとして…… もう1人は何処にいるのだろう?」
「それも問題だな…… ギガッデスの問題は何処かに消えたな、リュウ」
討伐しなきゃいけないという問題…… 問題にもならない。
「とにかく先にルークに知らせたい。 出来ますか、キャプトマン王子?」
「トゥルフ王子経由でならな。 なんてメッセージを送る?」
「俺とルークの爺さんがビジョンの森に居る。 ビジョンの森を飛んで爺さんに見つけてもらってくれ、と」
「ああ、分かった、早急に送ろう」
その後、俺が帰って来てから最優先で面会出来ることを約束して俺達はお城から離れた。
俺はもう限界、直ぐにレミアを探しに行く。
海の家に帰って軽く身支度をする。
何日かかるか分からないので今回は着替えを持って行くことにした。
「リュウ君いいかしら?」
スエメルさんが話しかけてきた。 ……頷く。
「私達、土竜族の里で待っていたほうがいいんじゃないのかしら?」
確かにそうだけど……
「里は人族を入れないんでしょ、普通は?」
「ふふ、ラリィちゃんに貴方、氷竜族の里にまで滞在しているのよ。 緊急事態だし大丈夫」
まぁ、ユーリスだけだからな。
「ラザノフは何て?」
「全く危険のない姫様なら大丈夫だって」
それならそれがいい。
「それじゃ、そうして。 俺はもう出るから土竜族の里で会おう」
「うん。 女神様を必ず探して来てね」
それは100パーセント確実だ、っと思って頷いた。
いつものように、ラリィの父ちゃんが眠るお墓から出発。
レミア、直ぐに見つける!
ーーーーー
あれから2日、順調にレミアの森にやって来た俺は、いつもと同じような行動をとることにした。
魚を捕って小屋で待つ…… もちろん徒歩圏内は探す。
この理由はレミアの能力で、人族が俺とレミアが過ごす場所にずっと居ると思わせたいから。
思えば俺と分かるはずだ。
しかし……
数日経ってもレミアは現れず……
持って来たプレゼントの指輪を見て、何故か俺の瞳が濡れていた……
それからは積極的に動いた。
空からも高く高く上がって叫んだ。
「レミア〜! 俺だ〜! レミア〜! リュウだ〜!」
何度も何度も叫んで降りた場所は……
『ふん、紛らわしい小僧め……』
そんなことを言われた気がする……
あの時のジジイ…… 羅刹種!
ガーンと頭痛がする……
レミアは…… 居ない……
……が、気配!
バッと振り返った先に居たもの、それは前世でよくイラストやアニメで目にした生き物だった。
妖精。
手のひらサイズの小ささ。
トンボの羽みたいので飛んでいる。
俺は確信する。
この世界からの地球への転生者が妖精の姿をイラストに描き写したと……
「あ、あの…… リュウ様ですよね……」
妖精は恥ずかしそうに目を逸らしながら話した。
……レミアとの会話で、俺のことをよく妖精に話してるって言ってたので、俺を知っていた⁈
「そうだよ。 レミアを知ってる?」
「はい! レミア様が…… レミア様が……」
少し興奮して口籠る妖精。
「うん、ゆっくりでいいから話してみて……」
興奮気味だった妖精をなだめて、俺はその後の言葉を待った。
半年前、レミアはこの森に1人の人族が居るのを感じた。
リュウさん⁈
そう思ったのかも知れない。
急いでその人族の元に行き姿を見せてしまう……
そこに居たのはリュウではなくお爺さん。
それでもレミアは姿を直ぐに消して、その時は何ともなかった。
しかし……
更に2ヶ月前、また同じことがあり、今度はそのお爺さんは待っていた網で素早くレミアを拘束したのだ……
それを見ていたのが、今話してる妖精のチッカ。
「レミアは何処に連れて行かれたか分かる?」
妖精は怖がりと聞いた。
なるべく怖がらせないように話した。
「はい…… 北にあるお城、フォルマップル国のラ・マカン城の牢屋です」
フォルマップル国!
「その情報は確かなの?」
「私達はネットワークで繋がっております。 レミア様がそのお城の牢屋に入ったのを見た妖精が居ます」
妖精はいっぱい居るのかな……
「分かった、ありがとう、チッカ。 でも最後の質問をさせて。 新しい神木のことは知ってる?」
俺が神木と言った辺りから動揺して両手で顔を覆って泣いてしまった。
「ごめん。 でもレミアのことは安心して。 俺が必ず助け出すから」
ブァっと眼の魔法陣が広がった。
これより俺はレミア救出に入る。
邪魔するやつは無慈悲に斬る!




