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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

横断歩道の白い所を踏まないと死ぬ交差点へ

作者: マガミアキ

「あんた暇でしょ。ミクを散歩に連れて行ってあげてくんない?」

 夏季休講で実家へ帰省した時、姉にそんなことを言われた。

 六歳になる姪のミクは人懐っこい性格をしていて、世話をするにしても手がかからない子どもだ。

 実際ヒマしてた俺は何の気なしに引き受けた。


 川辺まで行こう。

 ミクに告げて、俺達は連れ立って外に出た。

 彼女は俺の前を歩きながら謎の鼻歌を口ずさんで楽しそうだ。


 不意にミクが道の曲がり角で振り返った。

「叔父ちゃんこの道! 日影を歩かないと死ぬから!」

「お? あー、はは。俺も昔そんなルール作って学校行ってたわ。はいはい、日影ね」

 俺はミクに調子を合わせつつ、日影の下をぬって進んだ。


「叔父ちゃん! この交差点ね、横断歩道の白い所だけ踏んで渡らないと死ぬから!」

「あるある、そういうの。おっけー、任せろ」

 ミクは慎重に距離を測りながら白い部分を踏んで渡り切った。


 微笑ましく感じながら、俺はミクを追って横断歩道に足を踏み出す。


 ふとスマホが鳴った。

 姉からだ。

 俺は電話に出ようと足元から視線を外した。


 その時だった。

 交差点の信号機が、激しい音を立てながら俺の真横に倒れて来た。

 倒れた信号機を避けようとしたのはタンクローリーだ。

 急ハンドルが立てるタイヤの軋み音が交差点中に響き、そのままタンクごと横転する。


 タンクが轟音と共に爆発し、見上げるばかりに巨大な爆炎と黒煙が夏空を焦がす。


 爆発を避けた数台の乗用車が立て続けぶつかっては転倒していった。


 熱風を肌に感じつつ、俺はその惨状に目を奪われていた。

「叔父ちゃん危ないよ! 爪先が白い所から出てるよ!」

「は?」

 道の向こう側にいるミクの声に、俺は慌てて足を引いた。


 呆然としながら、俺は鳴りっぱなしのスマホに出る。

『あ、出た。言い忘れてたんだけどね。あんた、ミクの言うことは絶対に守るようにしてね』

「それ、どういう……」


『ミクね、ちょっと先の未来が見えるの。あの子の言う通りにしてればみんな助かるから。信じないかも知れないけど、とにかくミクの言うことにはちゃんと付き合うんだからね?』

 背中を嫌な汗が流れていく。


 俺は震える足で横断歩道の白い所を踏んで道を渡った。

「危なかったねー、叔父ちゃん! この先はね、道のタイルの黒い所だけ踏まないと死ぬ場所!」

 ミクは元気に告げてくる。

 俺は突然命懸けになった散歩に、思わず喉を鳴らした。

なろうラジオ大賞3 応募作品

……でしたが、投稿時間間違ってました。

・1,000文字以下

・テーマ:交差点


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