5 城壁
俺は、施設全体を見渡した。
ぱっと見は、人目を忍ぶ巨大テーマパークだ。
実際、マスコットキャラクターがネズミのテーマパークって、言ってたしな。
周辺には、人っ子一人いない。
休園しているかのような静けさだ。
秘密厳守の空間という言葉に、嘘はないのだろう。
ド派手な『ディ○ニーランド』や『U〇J』とは、対照的だ。
だが、スケールの方は、全く引けを取らない。
とりわけ目を引くのが、万里の長城のように、果てしなく連なる巨大な壁だ。
ここが『進〇の巨人』のテーマパークだったら、クオリティは高いと思う。
だとしたら、壁の高さは、実物大の1/10くらいだろうか。
まさか、巨人の能力で作った壁じゃないよな?(←当たり前です!)
そういえば、正面に進めと言われたっけ。
確かに、正面の壁だけは、正門っぽい佇まいをしている。
中央に、業務車両用だと思われる大きな門。
右端には、人間用の門と、チケット売場っぽい透明窓のブース。
ブースの中、透明窓の奥には、受付の人が座っている。
間違いなく、あそこが入国ゲートだろう。
俺は、ブースへ向かった。
「すみません。入国ゲートは、こちらでしょうか?」
透明窓越しに、招待状を見せながら、声をかけると・・・、
とんでもない びじょが あらわれた!
美女は、ニッコリ微笑んだ。
「大竹まもる様ですね。お待ちしておりました。」
まもるは うっとり びじょに みとれている!
「スマホのご提出を、お願いいたします。」
美女の声が、夢の世界にいた俺の意識を呼び覚ました。
「は、はい。」
俺は、ギクシャクしながら、スマホを渡した。
一体、スマホで何を審査するのだろう?
しかし、意外にも、美女の対応は、あっけなかった。
「確かに、お預かりいたしました。
入国手続きは、これで完了です。」
え?
もう終わり?
審査は?
美女は、スッと立ち上がり、裏手に回った。
そして、国境を意味するであろう門を、おごそかに開放した。
美女は、呆然と立ちすくむ俺を、にこやかに招く。
「この扉をくぐれば、夢の国チュウニーランドです。
どうぞ、お入りください。」
全てを捨てる覚悟だとか、二度と戻れないだとか、散々脅されたけど。
こんなに、あっけないものなの?
だが、真正ボッチの俺に、美女へ話しかける度胸はない。
結局、美女に誘われるがまま、フラフラと扉をまたいでいた。
国境の薄いトビラを抜けると、夢国であった。
目の前には、山を中心とする巨大な城郭都市が、広がっていた。
壁内の町ってところが、ますます『進〇の巨人』っぽい。
ここが、夢の国か。
俺は、感慨にふけり、立ちつくした。
美女は、両手を広げて、俺を歓迎した。
「夢の国 チュウニーランドへようこそ!」