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夢の国 チュウニーランドへようこそ!  作者: あおいりゅう
第一章 旅立ち
4/9

4 チュウニー

 どうやら乗客は、俺一人のようだ。

 添乗員らしき女性は、運転席に座った。

 運転手兼、添乗員って感じだな。 

「出発します。」

 添乗員さんの声とともに、バスは、静かに走り出した。


 さっき、『チュウニーランド』って、言ってたな。

 どことなく名前が、リア充御用達の某有名テーマパークと似ている。

 夢の国とも、言っていた。

 俺のようなヲタクが尊敬されるVIP(カーストの頂点)というのが本当なら、確かに夢のような話ではある。

 そういえば、「ヲタク達が、幸せに暮らす町が、できた。」って都市伝説が、あったっけ?

 まさかね。


 いつの間にか、車窓は、森一色になっていた。

 バスは、ひたすら山を登り続けている。


「大竹様、もうすぐ到着ですよ。」

 添乗員さんの声を受け、俺は、前方へ目をやった。

 ここが、夢の国か。

 巨大な門が、立ちはだかっている。

 この先は立入禁止の私有地だと、宣言するかのような威圧感だ。

 門の両端は、巨大なネズミのキャラクターが、かたどられている。

 両側から、来客を出迎えているようにも見える。

 ネズミねぇ。

 これは、いよいよ『ディ○ニーランド』のパクリか?

 それにしては、極めて醜悪なフォルムだ。

 あの愛くるしいキャラクターとは、似ても似つかない。

 お世辞にも可愛いとは、言えないぞ。

 夢の国を謳いながら、よくこんなデザインを採用したな。

 そんな俺の心を、見抜いたのだろうか。

 聞いてもないのに、添乗員さんが、説明してくれた。

「あの2匹のネズミが、当テーマパークのマスコットキャラクターです。

 チュウ&チュウと、呼ばれております。」

 2匹のネズミ、チュウ&チュウ?

 くだらない発想が、俺の頭を駆け抜けた。

「まさか、()()()2()匹だから、()()()()ーなんてことは?」

 添乗員さんは、何も言わず、悪戯っぽく微笑んだ。

 まさか、図星なのか?

 ひどい駄洒落だ。

 醜悪なデザインと、劣悪なネーミングセンス。

 ひど過ぎる。

 本家の『ディ○ニーランド』も、訴えるどころか、相手にすらしないだろう。

 まさか、それが狙いなのか?

 

 バスの到着を歓迎するかのように、巨大な門が、おごそかに開いた。

 バスは、静かに敷地内へ入った。

 門の内側も、森だった。

 周辺に、入口らしき建造物は、見当たらない。

 バスは、再び、山を登り始めた。

 本当の入口は、もっと先にあるってことか。


 バスが、山の中腹に、さしかかったところで、目の前の景色が一変した。

 巨大な壁が、そびえ立っている。

 さっき見た門以上の威圧感を放っている。

 バスは、巨大な壁の前で、静かに停車した。

 ここが、目的地なのだろう。

 添乗員さんは、俺の方を向き、あらたまった。

「大竹様、お疲れ様です。

 夢の国 チュウニーランドに、到着いたしました。

 バスを降りたら正面へ、お進みください。

 入国ゲートが、ございます。」

 俺は、立ち上がりながら、添乗員さんへ、感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとう。」

 添乗員さんは、念を押した。

「ここから先は、秘密厳守の空間です。

 二度と戻れなくなる可能性も、あります。

 よくよく、お考えになった上で、降りてくださいね。」

 大袈裟な言い方だなぁ。

 でも、俺の気持ちは、固まっている。

 この期に及んで、後悔などない。

「ご忠告、ありがとう。

 俺は、全てを捨てる覚悟で来たんだ。

 大丈夫だよ。」


 俺は、振り返ることなく、夢の国 チュウニーランドの敷地へと、降り立った。

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