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夢の国 チュウニーランドへようこそ!  作者: あおいりゅう
第一章 旅立ち
2/9

2 入国審査

 すぐに、招待状が返信されてきた。

 どうやら、入国審査なるものが、あるらしい。

 審査には、スマホの提出が、義務付けられている。

「スマホの提出?

 交友関係でも、チェックするつもりなのだろうか。」

 俺はボッチなので、SNSやメールは、ほぼ使用しない。

 幸か不幸か、履歴を見られて、困ることはない。

 とりあえず、H系の痕跡だけ、消しておくことにしよう。

 

 持参物は、着替えや食料も含めて、特に不要とのこと。

「パソコンなどの情報端末機器のみ、持参推奨か。

 入国という大袈裟な表現の割には、生活感がないな。」

 全てを捨てて逃げ出す覚悟があるならって、警告するくらいだ。

 修行僧のような生活が待ち受けているのだろうか。

 それとも、まだ審査で追い返される可能性がある段階だ。

 生活用品まで持ち込む必要はないということか。

 まぁ、どうでもいいか。

「要するに、スマホだけ、持ってこいってことだな。」

 タブレットは、持ってない。

 ノートパソコンだけ、リュックに入れていこう。

「それなら、充電器も、あった方が便利か。」

 俺は、ノートパソコンと充電器を、リュックへ詰めた。

 とても軽い。

「ミニマリストの国だったりして。」


 一人暮らしの俺の部屋は、ヲタクグッズで溢れかえっている。

 ミニマリストなら、眉をひそめるに違いない。

 全てを捨てるというのは、このヲタクグッズを失うという意味なのだろうか。

 それなら、俺のコレクションの価値を、買いかぶり過ぎだろう。

 集めたことに対する愛着はあるが、この期に及んで執着するほどの希少性はない。

「まぁ、その時は、その時だな。

 とりあえず、行ってみるか。」

 毎日、暇を持て余している俺を、今さら引き止めるものなど何もない。 

 俺は、すぐさま指定された場所へと、向かった。


 電車に揺られて着いたのは、商業施設がない、閑静な郊外の駅だった。

 駅から5分ほど歩いたところに、送迎バスが待っているらしい。

 招待状の地図を見ながら歩いていると、本当に5分で見つけることができた。


「あぁ、あのバスか!」


 閑静な住宅街には、似つかわしくないデザインが施されたワゴンだ。

 車体は、漫画やアニメのキャラクター達で、埋め尽くされている。

 『痛車(いたしゃ)』?、それとも『(いた)バス』とでも呼ぶべきだろうか。

 バスの前には、先客がいた。

 20代の微笑ましい、いかにもリア充のカップルだ。

 爽やかカップルと『痛バス』の組み合わせは、不釣り合いで、少し笑えた。

 『痛バス』に乗るってことは、ヲタクカップルなのかな?

 『電車男』みたいで、ちょっぴり羨ましい。


 彼氏の方が、バスの傍らに佇む、添乗員らしき女性へ、話しかけている。

「二名、乗車したいんですけど。」

 添乗員らしき女性は、お辞儀をし、丁重にお詫びした。

「誠に申し訳ございません。当バスには、ドレスコードが、ございまして。」

「は?」


 ちょっと待って!

 招待状には、服装のことなんて、書いてなかったぞ。


 彼氏の方も、俺と同様に、驚いた様子だ。

 当然のごとく、反論する。

「ドレスコードって、どういうこと?

 スーツでも着ろっての?」

 しかし、添乗員らしき女性は、まったく怯む様子がない。

「そういうわけでは、ございません。

 招待状をお持ちでない方につきましては、このバスに、ふさわしい服装かどうかで、判断させていただいております。」

 そんな取って付けたような理由に、納得できるわけがないだろう。

 やはり、彼氏は反発する。

「招待状?どこで手に入れれば、いいんだよ!」

「それは、申し上げることができません。

 申し訳ございませんが、本日は、ご乗車いただくことが、できません。

 どうぞ、お引き取りくださいませ。」

 言い方こそ丁寧だが、添乗員らしき女性は、毅然と彼氏を、はねつけた。

 取り付く島もない様子に、爽やかカップルは諦め、残念そうに帰っていった。


 ってか、俺の格好も、そんなに変わらんような気がするけど!

 先客の、やりとりを見て、戸惑う俺。

 しかし、添乗員らしき女性は、ニッコリと、俺に微笑みかけてきた。

「お次の方は、ドレスコードクリアですよ♪」

「え?」

「やはり、(ほん)ヲタの方は、纏っているオーラが違いますね。」

「本ヲタ?」

 何を言ってるんだ?この人は・・・。

 俺は、懸命に、この人の発言内容を理解しようとした。


 ドレスコードクリアってことなら、俺の服装は、このバスに、ふさわしいはず。

 逆に、乗車拒否された二人の服装は、このバスに、ふさわしくない。

 だけど、実際、そんなに変わらないと思う。

 服装以外で、二人と違う点が、あるとすれば・・・。

 『纏っている本ヲタのオーラ』って、一体、何?


 さっぱり、意味が分からない!

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