-074- 戦闘訓練
めちゃくちゃ間空いてすみません……!期末テストが忙しくて……
でももう夏休みに入ったので更新ペース上げていきます
ウィッカ先生は私たちに試練を課すとかいってたけど、まだその試練は与えられていない。
魔術のテストを行ったり、各々魔術の特訓をしたりして一日が過ぎていく。
そろそろ新しい刺激が欲しいものだ。
今日も今日とて、魔術の訓練をしていた。
「テナ、それ魔力回復薬?」
魔力回復薬とは、その名の通り魔力を回復することのできるポーションだ。食糧も寝床も提供されない特塾であるが、訓練に必要なら言えば渡してくれる。
もっとも、魔力回復薬については後に調合方法を学ぶようだが。
テナは、口を瓶から外し、簡潔に「はい」と答えた。
「よくぐびぐび飲めるね。すっごく苦いのに」
魔力回復薬は色々な種類があるが、基本的に魔力を多く含む植物から醸造する。
迷惑なことに、この魔力を多く含む植物というのがめちゃくちゃ苦いんだ。
もう苦いなんてレベルではない。慣れてない人が飲むと気絶するレベル。
私も最初に飲んだときはひどかった。舌にいつまでも不快な味が残り、いくら水を飲んでも薄まらない。あの日から私は魔力回復薬をなるべく飲まないようにしている。
「味などいくらでも我慢できます」
「……そうですか」
なんという精神力。私も欲しいよその強さが。
世の中には、魔術を使いまくって枯渇したら魔力回復薬を飲むというのを繰り返す、枯渇トレーニングと呼ばれる悪魔のような訓練があるらしい。
魔力量を効率よく増やすことができるこの訓練、誰がやるんだと思っていたが、テナならやりかねないな……
……いや、いつまでも逃げ続けるのもよくないか。
私はテナと魔力回復薬を交互に見た。
「……テナ。それ、一口ちょうだい」
「構いませんが」
テナから瓶を受け取り、ちびっと舐めた。
全身が粟立ち、身体がいっぱいに拒絶する。
うぅ……やっぱり苦すぎる……
「っ、あ゛り゛か゛と゛う゛……」
回復薬に慣れるのは、もう少し先でいいや。
◆
長いこと人気のない土地を歩いていたが、久しぶりに人工物が見えてきた。
小規模な城。いや、要塞といった方がいいだろうか。
ウィッカ先生はその建物に着くと足を止めた。
「これは五十年ほど前に建てられた要塞だ。他国との国境が近いから建てたらしいが、間もなく世界連盟発足し不可侵条約を結んだため無用になり、ほとんど使われていない。向こうにある建物もそうだ」
少し離れたところには、同じような規模の城があった。
「さて、お前達も個人訓練ばかり疼いてきただろう。発散の場を与えてやる」
そう振り返り、私たちを見てにやりと笑った。
「戦闘訓練をやるぞ」
場に緊張が走る。ウィッカ先生は続けた。
「これまでの訓練とテスト結果からお前たちを二つのチームに分けた。それぞれ別々の要塞を拠点として戦ってもらう。片方のチームは赤の水晶玉を、もう片方のチームは青の水晶玉を渡される。勝利条件は相手の玉を破壊すること」
なるほど、攻城戦と似たようなものか。
「では、チームを発表する。赤チームは、ジーク、ルーゼ、ガナッシュ、エンマ、シフォン。青チームはロフラ、ジャイガ、ベル、ペン、テナ。何か質問のあるやつはいるか」
特に誰も挙手しなかった。
「そうか。赤チームは東の要塞を、青チームは西の要塞を拠点としろ。そして、これが目標となる水晶玉だ」
綺麗な赤色と青色の玉を、それぞれジークとロフラに渡した。
「理解したならば行け。あ、言い忘れていたが負けた方は魔力回復薬3本だからな」
さんぼん!?
3本はさすがにヤバい。死んじゃうって。
そんな私をよそに、ウィッカ先生は不敵に笑った。
◆
要塞に移動した私たちは、造りを一通り確認して、作戦会議をはじめた。
「ある程度の作戦は決めておくけどよぉ、結局個人が臨機応変に対応することになると思うぜ」
ジークがそんなことを言う。
「……その心は?」
「急造チームなんだから、俺らの長所短所が明確じゃないし、相手チームのもわからない。連携も不慣れ。さらに地形も特徴がなくて使いづらい。こんな状況で作戦立てて、それ通りに事を進めるのは難しいだろ」
まあ、確かに。
「ってことで、大まかな方針だけ決めるぜ。まず、先手は取りたい。後手に回るのは俺の性に合わない。開戦と同時に俺とルーゼででかい魔術を敵城にぶち込むけどいいか?」
「まあ、大丈夫じゃない?」
「あと、攻めの姿勢でいきたい。この城に残るのは一人でいい。多勢に無勢になると思うから、そういうの得意なやつに残ってもらいたいんだけど……ガナッシュ、お前が得意そうだな」
「得意かはさておき、ある程度はできるよ」
「よし、じゃあ一人でこの城を守ってもらっていいか?」
「了解」
「他四人は全力で目標を獲りにいく、いいな?」
私、ルーぜはその言葉に頷く。
でも、少し離れて話を聞いていたエンマはフンと鼻を鳴らした。
「エンマ、分かった?」
私がそう尋ねると、うざったそうに口を開いた。
「うるせぇ雑魚、俺に指図すんな。俺は好きなようにやる」
そう言うエンマに反応したのは、ガナッシュだ。
「ちょっと待ちなよ。チーム戦なのに独断で動かれると僕たちが不利になるんだけど」
「あ? 知るかよ」
「個人戦で君が自滅するのは勝手だけど、これはチーム戦だ。リーダーに従えよ」
……なんだろう、ガナッシュが怖い。
見たいともないほど鋭い目つきでエンマを見ている。
普段穏やかな人が怒ると、より一層圧がある。
「……うぜえ」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
相変わらず口が悪い。
私がエンマを追いかけようとすると、ジークが止めた。
「いいよ、ガナッシュ、シフォン。ああいうタイプは無理に抑制するより暴れてもらった方が効果的に働く」
「ジークがそう言うならいいけど……」
「でも、ずっとああなのも困るんじゃない?」
私がそう言うと、ジークは「まあなぁ」と頬杖をついた。
私たちは問題児に頭を抱えつつ、戦いの準備を始めたのだった。




