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-066- 恋愛相談


 シャルロット・ガレルは苦悶していた。

 今まで悩みなどなにひとつなかった彼が、人生最大の壁に当たっている。

 それは彼の不得手な分野であり、彼にはどうしたらよいかわからなかった。


 そう、恋愛についてである。


 寮の自室でしばらく考え込んでいると、コンコンと扉がなった。


「誰だ」

「僕」


 ガレルは黙って扉を開ける。現れたのはガナッシュ。ガレルの幼馴染であり、親友。

 二人は中に入り向かい合って椅子に腰掛ける。


「珍しいね、呼び出すなんて」

「……ああ」


 ガレルの悩みを打ち明けるために、今日、ガナッシュを呼んだのだ。


「お前に……相談がある」

「うん」


 ひとつ、大きく深呼吸をしてから口を開いた。


「俺には好きな人がいる」

「知ってる」


 ガナッシュがそう言うと、ガレルは顔を引き攣らせた。


「え、バレてないと思った?」

「いや、隠していたつもりはないが……」

「恥ずかしいんだ?」

「……ああ」


 やはり面と向かって言われると、居た堪れなくなるものだ。

 ガナッシュは穏やかな声で次を促す。


「それで、相談って?」

「俺は、シフォンが好きだ」

「うん」

「だけど……あいつは仲間だ」

「そうだね」

「特級を目指すと言い出したのは、俺だ。恋愛にうつつを抜かすわけにはいかない。……このもどかしい気持ちを、どうすればいいかわからない」


(ピュアだなぁ)


 ガナッシュは内心苦笑する。

 ガレルは不器用でありこそすれ優秀な人間で、大抵のことは難なくこなせていたのだが、恋愛のことになるとどうも愚鈍だ。


(でも、そこがガレルのいいところなんだけどね)


 純粋で、裏表がない。自分には無いその性質が、ガナッシュにはとても輝いて見えた。


「僕は、ガレルは我慢する必要はないと思うけど。どんどんアタックしたらいいんじゃない」

「……ナツノは魔王討伐のために今も命を張って戦っている。そんな中、俺たちだけ遊んでいられるかよ」

「別に遊ぶわけじゃないでしょ。ガレルは真剣なんだろ?」

「……」


 ガナッシュの言葉に、ガレルは黙りこくってしまった。


(相変わらず頑固だなぁ。これはもうちょっと尻を叩いてやらないとダメそうだ)


 そう思ったガナッシュは、再び口を開く。


「ガレルってさぁ、シフォンさんが恋愛にうつつを抜かして鍛錬を怠る人だと思ってる?」

「そんなわけない」

「そうでしょ? 彼女はたとえ恋をしたとしてもすべきことを見失わない賢明さを持っている。そして、それはガレルにも言えることだ」

「……」

「つまり、僕は君たちなら恋と修行、両立できると思ってる」

「……」


 ガレルはしばらく黙った後、口を開いた。


「……俺は、シフォンという人間を見失っていた。たしかに、あいつはなにがあろうとやることはやるやつだし、俺も鍛錬を怠るつもりは毛頭ない」

「でしょ?」

「あぁ、ありがとう。心が軽くなった」

「どういたしまして」


 ガレルはすっきりした表情。それをみて、ガナッシュも満足気に頷く。

 これで少しは進展するかな、と思っていると、ガレルが今度は急に深刻そうなお面持ちになった。


「……確認しておきたいことがある」

「なに?」

「……おまえはシフォンを恋愛対象として見ているか?」

「僕が? シフォンさんを? あはは、それはないよ」


 ガナッシュはひとしきり笑った後、「もちろん、魅力溢れた人だけどね」と付け加える。

 ガレルは真剣な顔で問い詰める。


「ほんとうに、この先も好きにならないと断言できるか?」

「うん。僕がこの先シフォンさんを好きになるのはありえない」


 ガナッシュの目を見つめて数秒、ガレルはようやく脱力した。


「そうか……よかったよ」

「よかった? なんで?」

「お前が恋敵とか、地獄だろ」

「腑に落ちないけど、まあいいや」


 ガナッシュは自分が恋愛が得意などと一度たりとも思ったことはないが、それを言ってもしょうなないので黙っておく。


「シフォンさんモテるから、遅くなると誰かに取られるよ? 今までは他の男子がシフォンさんをアイドル化して誰も告白しないから大丈夫だったけど」

「ああ、わかっている」


 高等部ではその沈黙もいずれは破られるだろう。一度破られたら大量の男子がシフォンに近寄るのは目に見えている。

 焦りを感じていたからこそ、今日ガナッシュに相談したのだ。

 焦る要因はそれだけではなく……


「シフォンさん、意外と男友達多いよね」

「そう、そうなんだ……!」


 最初にそれを思ったのはフランと仲良さそうに話しているとき。そして次は、ダイスやペン。そして、ついこの間、自分より付き合いの長いというブレッドまで出てきた。

 ガレルからしたら気が気じゃ無い。シフォンが外部生の男を連れて二人で学校案内をしているなんてことを聞いた時には、飛んで探しに行った。


「誰とでも仲良くするのはあいつの長所だが、俺からしたら勘弁してほしいな」

「ガレルからしたらそうだろうねぇ」


 ガナッシュはくすくす笑う。


「シフォンさん、ガレルを恋愛対象として見てくれるかな。っていうか、ガレルがシフォンさんを好きって気づいているのかな」

「……わからん。だが、お前からしたらあからさまだったんだろ」

「そうだけど、あの人、結構鈍いからなぁ。たぶん、気づいてない」

「……そうか」


 シフォンは誰とでも親しくすることができる。さらに、人によって態度を変えることはほとんどない。そんな彼女の本音を覗くのは難しい。今はとにかく、少しでも意識してもらえるようアピールするしかないのだ。


「まぁがんばってよ。できることならするからさ」

「ああ」


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