-065- 学校紹介
勇者サイドは殺伐としていますが、こちら側はまだまだ平和です。
私はミルフィユ学園高等部に進学した。
今日は新学期初日。クラスの発表がある。
私はAクラスだった。教室にいくと、ガナッシュとフィナもいた。やっぱりこの2人は残ってるよね。
ちなみに、高等部から魔術科と、魔術研究科に別れる。魔術科の人が魔術師志望で、魔術研究科の人は研究者志望だ。フランは魔術研究科なので、今年からクラスが分かれてしまう。
そして私にとっての1番気になるのは……
「おはよう、シフォンちゃん」
「ブレッド! おはよう! Aクラスに入れたんだね」
「うん、なんとか」
よかった。努力の甲斐あり、ブレッドはAクラスに入れたようだ。
ミルフィユ学園の制服を身にまとったブレッドはなんとも新鮮。
「ブレッド、制服似合ってるね。かっこいいじゃん」
「ありがとう。ミルフィユ学園の制服、着るの夢だっからすっごい嬉しい」
ブレッドは幸せそうにはにかんだ。
うんうん、ずっと受験に向けてがんばってたもんね。
「ブレッドくん、久しぶり。合格おめでとう」
「フィナちゃん。うん、ありがとう」
近くにいたフィナが喋りかけてきた。
「すごいね、Aクラスくるなんて」
「シフォンちゃんのおかげだよ。受験期、つきっきりで教えてもらったんだ」
「へぇ」
そんな会話をしてると、ガナッシュが近づいてきた。
「おはよう、シフォンさん。彼、外部生の子? 友達なの?」
「うん。彼はブレッド。仲良くしてあげてね」
「もちろん」
結局、Aクラスは内部生と外部生が半々くらいになった。
やはり外部生は厳しい試験を乗り越えてる分優秀なのだ。
私も新しく外部生の友達をゲットした。うれしいなぁ。
◆
「私が校舎案内してあげるよ!」
私はブレッドに申し出た。
初等部と中等部の校舎は少し離れているが、中等部と高等部は隣同士。棟こそ違えど、案内できるくらいには知っている。
「やっぱりこの学園はすごいよ。広いし綺麗」
廊下を歩きながらブレッドはそんなことを言ってくる。
「そうだよね。私も初等部に入学した頃びっくりしたもん」
まず、案内するのは図書館。
ついでに、フランとアメリアも紹介したい。
「ここが図書館。調べたいものがあるときはここにくるといいよ」
「大きいね。僕、図書館ってはじめて」
この世界では本は貴重。
その本を一般公開するわけにもいかないし、本を多く収める図書館など、学校や研究室にしかない。
私たちは中に入る。
そしてやはりというか、フランとアメリアがいた。
「やっほ、フラン、アメリア」
「こんにちは、シフォン先輩」
「……ん」
フランは何か集中して本を読んでいる様子。
「フラン、ちょっといい?」
「ん?」
そう聞くとフランは顔を上げてくれた。
「友達紹介したくて。こちらはブレッド。外部生なんだけど、小さい頃からの私の友達」
「よろしく。僕の名前はブレッド」
「あぁ。僕はリヒテヌート・フラン。よろしく。で、こっちが……」
「メリス・アメリアです」
アメリアはぺこりと頭を下げる。
「フランとアメリアはね、すっごく頭がよくて、なんでも知ってるから! 魔術でわからないことがあれば聞くといいよ!」
「へぇ、すごいね」
「ふふん、そうだよ。2人はめちゃくちゃすごいんだよ」
私が誇らしげに言うと、2人は恥ずかしそうな表情をした。
「シフォン先輩、あの、私を買ってくれているのは嬉しいんですが……」
「シフォン、あまり大袈裟に言わないでくれ」
別に大袈裟に言ってるつもりないんだけどね?
◆
次は魔術の訓練場。
「授業でもたくさん使うんだけど、個人的に借りることもできるよ」
「シフォンちゃんもここで特訓してるんだ?」
「んー、友達と鍛錬するときはそうかなぁ。一人でやるときは郊外の野原でやってる」
「こんな立派な訓練場……僕、これからの学園生活めちゃくちゃ楽しみになってきたよ」
豪華な施設を見て、想像が膨らんだのだろう。
ブレッドの目が輝いている。
そんな反応をしてくれるなんて、案内した甲斐があったものだ。
と、そこで、訓練場のドアがバンと開いた。
誰かと思って見てみると、それはガレルだった。
「……ここにいたか」
「ガレル、どうしたの?」
「……」
「……?」
ガレルはブレッドと私の顔を交互に見る。
「……お前が外部生に校舎を案内して回ってるっていう噂を聞いたから、来てみただけだ」
「なんで?」
「……」
ガレルは押し黙ってしまった。
まあいいや。ちょうどいい。
「ブレッド。この人はガレル」
そういうとガレルはブレッドに向き合った。
「シャルロット・ガレルだ」
「僕の名前はブレッド。よろしく」
「あぁ」
「ガレルは剣術全国一位だからね。めちゃくちゃ強いよ」
「えっ、全国一位!? それは……すごいね」
ブレッドから尊敬の眼差しで見られ、ガレルは少し居心地が悪い様子。
「シフォンちゃんにガレルくん、魔術と剣術での全国一位が両方いるなんて、やっぱりミルフィユ学園はそこらへんの高校とは違うね」
穏やかに笑うブレッドを、ガレルは少し面白くなさそうに見つめる。
どうしたのかな。
しばらくした後、ガレルは口を開いた。
「まぁ……なんだ。シフォンは、優秀なようで結構抜けてるけど、芯の通ったいいやつだから仲良くしてやってほしい」
なんだその上から目線は。「あはは、知ってるよ」とブレッドは笑う。
「悪いけどガレル、私とブレッドの付き合いはあなたより長いからね」
そう言うと、ガレルは思いっきり顔を歪ませた。
ブレッドは隣で「あぁ、そういうこと」と呟いている。どういうこと?
「……二人は、仲がいいのか?」
「うん。ブレッドが受験するとき、二人で一緒に特訓したんだよね」
「……へぇ……二人で」
ガレルの目にブレッドに対する敵意が生じる。
……こいつ、嫉妬しているのか? ブレッドに?
まあずっと紹介してなかったわけだし、ガレルからしたら晴天の霹靂か。
でも、二人には仲良くしてもらいたいんだよね。
どうしようかなーと悩んでいると、先にブレッドが口を開いた。
「ねぇガレルくん、今度一緒にご飯行こうよ。僕、剣の話とか聞いてみたい」
「……別に構わないが」
「じゃあ決まりね」
あっという間にご飯の約束をしてしまうブレッド。さすがだ、コミュ力が高い。それに引き換えガレルはどうだ。いつもはあんな堂々としているくせに、ブレッドのコミュ力の前にデクノボウになってしまっている。
がんばれ、負けるなガレル!
その後のブレッドとガレルの会話では、ガレルはただ無愛想に薄く相槌を打っているだけだった。
ガレルー……




