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-053- 大会前


 ナツノが旅立ってから一ヶ月。

 剣術、魔術の大会が近づいていた。

 中等部三年生である私は今年の出場メンバーに選抜された。

 もちろん、魔術のほうで。

 ただ、初等部とちがって魔術単体形式と剣術単体形式、それらを合わせた混合形式の試合も行われる。

 要するに、剣士と魔術師が合わさったチームを組んで戦うのだ。

 つまりさ、私の活躍チャンスじゃない?

 ダイスに教えてもらって、剣術も成長したし。

 と、いうわけで、私は大会に向けて少し張り切っていたのであった。


 で、今日はそのチームの顔合わせの日。

 顔合わせと言いつつ、選抜メンバーは全員顔見知りだ。

 魔術師枠で、私、ガナッシュ、フィナ。

 剣士枠でガレル、ダイス、ノーレ。


「ノーレも選抜されたんだね、すごい!」

「ふんっ、当然よ!」


 ノーレはそんなことを言っているが口角が微妙に上がっている。

 相当嬉しいんだろうな。


「それじゃあ、このチームの方針を決めるぞ」


 ガレルが取り仕切る。


「剣を主軸とするか、魔術を主軸とするか。メンバーを見る限りどちらでもいけそうだが……ガナッシュ、どう思う?」

「んー、そうだなぁ……フィナさんは火魔術が得意なんだよね」

「そうだよ」

「……単純に、剣士と魔術師で役割分担するんじゃなくて、剣士の中でも、魔術師の中でもさらに明確に役割を分けた方がいいね。フィナさんは攻撃魔術、僕はどちらかというと妨害魔術、シフォンさんは剣を交えた体を使った魔術。魔術師側の系統があまりにもバラバラだ」


 と、そんな感じで話し合いは進んでいった。

 みんなでいろいろ案を出して議論した結果、基本攻めの姿勢で剣士を全面に出し、後ろから私とガナッシュがサポート、フィナが遠距離攻撃というフォーメーションになった。

 暫定という形ではあるが。


 まずそれぞれの能力を把握しとく必要がある、ということで、剣士、魔術師に分かれてしばらく訓練することになった。


「でも、私たち同じクラスだし、ほとんどお互いとこと知っちゃってるんじゃないかなぁ」


 そんなことを口にすると、


「そんなことないよ。だって僕、みんなに隠してる魔術いくつかあるもん」

「ええ⁉︎」


 ガナッシュ……あれだけ強いのにまだ隠し技があるというのか⁉︎

 さすが前回チャンピオン……恐るべし。


「隠してたのに私たちに言っちゃっていいの?」


 と、フィナ。


「うん。ラズベリル家は隠し事が多いんだけど、この前の事件で爪を隠して殺されてしまっては意味がないってことでいくつか人前で使える魔術が解禁されたんだよ」

「そうなんだ」


 あの事件……訓練場で喋る魔物に襲われたときか。

 そういえばあの時のガナッシュ、いつもと雰囲気が違っていたような……。


「ガナッシュって怒るとああなるの?」

「ああって?」

「ほら、その事件のときにいつもより……なんだろう。いつもよりかっこよく?」

「……」

「かっこよくっていうか、怖く? ほら、魔物に吹っ飛ばされてから、雰囲気変わってたじゃん!」

「……ああ、あれね。あれは、いざという時に力を発揮するために戦闘のON/OFFをはっきりするっていう、ラズベリル家の技の一つなんだよ。魔物に吹っ飛ばされたことによって僕の戦闘のスイッチがONになったんだ」

「えっ、じゃあいつもOFFの状態で戦ってるってこと? 私、今まで力を抑えた状態のガナッシュと戦ってたの?」

「抑えているわけじゃないよ。制約みたいなもので、全力が出せないんだ。その代わり、ピンチのときには大きい力がだせる」

「ふぅん。そんな技もあるんだね」

「うん」


 ガナッシュは相変わらず余裕の表情でにっこり。

 ガナッシュがこんなに余裕の姿勢を崩さないのは、魔術に関する知識が多いからではないだろうか。

 ずるいなぁ。


 ◆


 それから大会まで、お互いの能力を共有し、作戦を立て、みっちり特訓した。

 混合戦は地区予選がないが、個人戦の方はちゃんとある。

 地区予選では、危なげなく通過することができた。

 ミルフィユ学園からは剣士5名魔術師5名合計10名が本戦へと出場することになった。

 ちなみに、私2位通過、ガナッシュ1位通過、フィナ3位通過だ。

 剣術の方はガレルが1位通過、ダイスが2位通過、ノーレが5位通過だった。

 今年の会場は東部。

 モンブライトから馬車に揺られて一日ほど。

 夜に到着して宿で一晩明かせば大会初日。


 そして今、開会式が行われていた。


 ◆


 会場で思いがけない人と再会した。


「シフォンちゃん!」

「えっ⁉︎ リンリン⁉︎」


 そう。ベニエ村の友達、リンリンが会場にいたのだ。


「ふふっ、驚いた? 実は、私も大会に出場するんだ。もしかしたらシフォンちゃんに会えるかも……って思ってたけど、やっぱり!」


 綺麗な水色の髪をなびかせながら、眩しい笑顔を浮かべるリンリン。


「え、リンリン……その制服……」

「あれ? みんなに聞いてない?」

「うん。遠くの魔術学校としか……」

「そうなんだ。ふふふ、実は私、マロン学園に入学してたんです!」

「えー!」


 最も優れた魔術師育成機関の一つ、マロン学園の生徒だったとは……しかも大会に選抜されるなんて……


「リンリンすごい!」

「昔、シフォンちゃんが魔術を教えてくれたおかげだよ」

「いやいや、リンリンの実力だよ!」


 私たちはそれから一言二言交わした後、また話そうと言って別れた。

 いつまでも立ち話しているわけにはいかないからね。


 さて……少し周りを見渡すだけで、この大会のレベルの高さが窺える。

 どの学校も強そうだ。


「お前ら」


 そうした緊張の中、ガレルが声を上げる。


「この大会、俺たちミルフィユ学園が優勝するぞ」

「「おうッ!」」


 緊張するけど大丈夫。

 だって、私たちが劣っているとは感じないから。

 リンリン。再会したばかりだけど、あたったら容赦はしないよ!

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