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-049- 鍛錬


 ダイスはガレルにも劣らぬ強さだった。

 むしろ、剣の精度に関しては遥かに上回っているように感じる。

 何回か打ち合ったところで、「だいたいわかった」と言ってダイスは手合わせを終わりにした。


「それで、私の剣……どう?」

「ああ……全然ダメだな」

「えっ」


 うそ、全然ダメ⁉︎

 ええ、ショック!


「そ、そんなにダメだったの……?」

「そうだな、お前はもうちょっと円神流の勉強した方がいいな」

「勉強?」

「ああ。円神流の基礎は抑えているようだが、そこから先がない。基礎は大事だ。だが、あの男と張り合いたいなら基礎だけでは足りない」

「……」

「お前はその勉強不足を持ち前の反射神経と身体能力でカバーしてるだけだ」

「そうなんだ……」

「お前、今まで剣は誰に教わってきたんだ?」

「六歳までお父さんに教わって、そっからは誰にも師事してない……」

「……六歳までに基礎を教え込まれ、そっからは素振りや基礎の型の反復練習だけをやっていたってことか。どうりでか……」


 ……私、円神流にもっと先があるなんて初めて知ったんだけど。

 お父さん、教えてくれなかった。

 ひどい。


「だけどな」


 ダイスは少し声音を柔らかくして言った。


「基礎だけでここまで戦えるってのは、それだけ土台が出来ている証拠だ。剣術Aクラスにもここまで基礎が出来上がっているのは数えるほどしかいない。ここに円神流の技が加われば……」

「加われば?」

「お前の実力は、跳ね上がる」

「!!」

「今日はもう解散にしよう。明日までにこれからの鍛錬の方法を考えてくる」

「ありがとう!」

「それじゃ、明日また同じ時間に」

「うん!」


 そうして、1日目の特訓は終わった。


 ◆



「とりあえず、シフォンには必要最低限の円神流の型をマスターしてもらうことにした」


 2日目、ダイスはそう言って修行に入った。

 円神流の型は、基礎4つと、そこからさらに派生して全部で20こあるらしい。

 私はその基礎の4つの型しか知らないから、まだまだ実戦で戦えるレベルになっていないとのこと。

 これから、私は私が知らない16個の型のうち重要度の高い4つの型をおぼえることになる。


「ゆっくりやるから真似しながらやってくれ」


 ダイスが私の前に立ち、ゆっくりと剣を振る。

 ああ、懐かしいなぁ。

 昔、お父さんともこうして剣の訓練をやったんだよなぁ。


「シフォン、集中」

「ご、ごめんなさい」


 昔のこと思い出してなんかいたらダメだ。

 さ、集中!


 ◆


 4つの型を一通りやった頃には、もう外はかなり暗くなっていた。


「これ、今日やったことが一通り書いてあるから」


 と言って、ダイスはメモ書きを渡した。

 そこには、びっしりと型について書かれていた。

 一つ型を覚えるというのはかなり大変なことで、剣の振り方、足の置き方、腰の位置、重心の移動など、注意しなければならないことが多岐にわたる。

 当然、私の頭はそんなに優秀じゃないから何度も何度も練習することでそういうのを覚えていくのだが、それにはお手本がいる。

 今日はダイスがお手本になってくれていたが、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

 ダイスからしたら、もう何度もしたであろう型の練習を私のためにものすごいスローでやらされるのだ。

 それはとてもかったるいことだろう。


「あの、ダイスありがとう。型を覚える練習なんてダイスからしたら時間の無駄なだけなのに」

「いや、そうでもないぞ。ゆっくりやることでその型の精度を上げることができる。ちょうどいいと思ってたから、気にはなくていい。それに、剣を教えるっていうのはそういうものだ。僕も昔は型を覚えるのに師匠に何度も付き合ってもらっていた」

「そっか。あ、でも今度なんかお礼するよ。なにがいい?」

「……お礼を、くれるのか?」

「もちろん!」

「……考えておく」


 そう言って、ダイスは黙りこくってしまった。


 ◆


 それから数週間、私は毎日ダイスと鍛錬を行った。

 この数週間で仲良くなって話すことも多くなって聞いたのだが、ダイスは剣術Aクラスの次席らしい。

 つまり、ガレルに次いで剣の腕がいいということだ。

 ガレルとの勝率は2割といったところなんだそうだ。

 私はあのガレルに勝てるだけですごいと思うのだが、本人は納得していない様子。


 ナツノも時々鍛錬に混じるようになった。

 ナツノの実力はダイスと拮抗していた。

 ただ、やはりナツノは身体能力が異常に高く、勝率はナツノの方が高かった。

 私もナツノと打ち合ったのだが、鍛錬前より明らかにいい勝負になっていて自分の成長が感じられたので嬉しかった。


 そういえば、この前うっかりガレルと廊下で遭遇してしまった。

 今、私はガレルに無視を決め込んでいる。

 当然だ。私は怒っているのだ。

 あっちから謝ってくるまで絶対に話してあげない。

 そんなわけで私はささっとガレルに背を向けて逃げようとするのだが、ガレルは私に声をかけてきた。


「おいシフォン。なんで最近ダイスのやつと一緒にいるんだ?」


 あなたにギャフンと言わせるためだよ!

 私は無言で走り去った。

 それが癪に触ったのか、最近やたらとガレルが私に話しかけてくる。

 どうしてダイスといるの、とか、剣の手合わせをやろう、とか。

 ふんっ、ガレルが謝るまで絶対に答えてあげないからね!



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