-046- 勇者とフラン
行間を詰めました。
今日はナツノを連れて図書館に行く。
かなり前から勇者に聞きたいことがあるとフランに言われていたからだ。
フランはナツノの精神状況を考えて色々落ち着くまで待ってくれていたのでこんな遅い時期になってしまった。
こっちにきたばかりのナツノは随分傷心していたからね。
私はナツノを連れて図書館き入り、いつもの場所に向かった。
「フラン、ナツノを連れてきたよ」
「ああ、ありがとう……どうして彼らも?」
そう、何故かガレルとガナッシュもついてきたのだ。
「別に、シフォンがここで何をしているのか興味があっただけだ」
「僕もそんな感じかな〜」
二人は淡々とフランに答える。
二人がいる時にナツノを呼んだのが失敗だったなぁ。
ナツノを図書館に連れていくと言ったらガレルが「俺も行く」とか言い出すしガナッシュも「だったら僕も」とか面白がってついてくるし。
先に二人に黙って約束しとけばよかった。
「ふ〜ん。そんなに面白いものじゃないよ?」
「……大丈夫だ。一度見てみたいだけだからな」
「そ。ならいいよ」
そう言って、フランはナツノに向き合った。
「話すのは初めてかな。僕の名前はリヒテヌート・フラン。よろしく」
「タツキ・ナツノだ。よろしく頼む」
「僕は古代魔法陣の解読をしてて、それに君の協力が必要なんだ。今からいくつか質問をするから、それに答えてほしい。もちろん、答えたく無かったら言ってくれればいいよ」
「わかった」
フランは一呼吸置いてから質問を投げかけはじめた。
「この世界に来て、体の変化とかはあった?」
「あったな。前の世界ではこんなに身体能力は高く無かったし、それが普通だった」
「ふむ……他には?」
「あとは……成長スピードが異様に速い気がする。剣の上達とか、魔術の上達とか」
「なるほど……それじゃあ――」
と、そんな様子を、ガレルは難しそうな表情で眺めていた。
「ガレル、古代魔法陣の解読なんてわかんないでしょ」
「……まあな。でも、それはお前も同じだろ」
「私は今頑張って勉強してるの。フランに教えてもらって」
「……ふぅん。あいつは頭がいいのか」
「そうだよ。フランはすっごいんだから」
私も知識はついてきたけど、やはりアメリアやフランには及ばない。
魔法陣って、パズルみたいなところもあるから、知識だけじゃどうにもならないのが難しいんだよね。
「そういえば、僕もこの前フラン君の魔術授業で見たけど凄かったよ」
「……すごいって?」
「魔術ひとつ発動するのにも、何重もの工夫がなされてるんだよね、彼の魔術。あれって、魔術の知識が多いからこそできるんだろうなぁ」
「……ふぅん」
ガレルは面白くなさそうにフランを見つめる。
その視線には若干の敵意が混じっているようにも見える。
……こいつ、もしかしてフランに嫉妬しているのか?
まったく……ガレル、めんどくさい性格をしている。
「ガレル、ちょっと心が狭いんじゃない?」
「は?」
「シフォンさん、それあまり口に出さない方が……」
◆
翌日、図書館に行くとフランが紙に書かれた複雑な魔法陣を広げていた。
「なあにこれ」
「勇者召喚の魔法陣」
「えっ、」
勇者召喚の魔法陣とは、国の上層部のほんの一部しか場所を知らないような、大事なものだったんじゃ……
「研究所の先生が昔魔法陣の部屋に行ったことがあるらしくてね。そのときに写し書いたものを貰ったんだ。ナツノから話を聞いてこの魔法陣を考察し直す予定」
「……え、それ、発動するの……?」
「……今のシフォンなら、するかどうかわかるんじゃない?」
……安易に人に答えを求めるなと。
はい、すみません。自分で考えます。
えーと、陣は古代の命令式で書かれていて、しかも大分古いやつだ。
命令式の数はざっと16個……?
それに相当する魔力を流すとすると……
「紙じゃ耐えれないってことだね」
「正解」
おー! 凄い私! 成長してる!
「ちなみにシフォン。命令式はいくつ見つけた?」
「え? 16個くらい?」
「……アメリアはどう思う?」
仕事をしていたアメリアは顔をあげ、こちらを向いた。
「……60とちょっとですか?」
「残念。この魔法陣に描かれている命令式は100個を超えてるよ」
「えっ! そうなの⁉︎」
フランに教えてもらい確認してみると、確かにその命令式は100個を超えていた。
こんな小さな紙の中にそんなに命令式を組み込んじゃうのか。
昔の人、すごい。
「そういうわけだから、勇者を召喚しようと思ったらシフォンが20人いてギリギリ魔力足りるくらいだよ」
「そ、そうなんだ」
勇者召喚って思ってる以上に大掛かりなんだなぁ。
◆
中等部2年の冬、私はガレルたちと一緒に何回も冒険に行った。
どの冒険も密度が高く、楽しかった。
後期も終わり、剣杖会の時期。
今年は、初めてメンバーが変わり、私、ガレル、ガナッシュに加えてナツノも一緒に行った。
要するに、いつもの冒険のメンバーだ。
ナツノは勇者ということもあり、剣杖会では引っ張りだこだった。
手合わせを申し込まれたり説法を説かれたりと大変そうだった。
とまぁ、そんなこんなで。
私は中等部3年へと進級した。
↓本編になんの関係も無いから飛ばして大丈夫です!
魔法陣について少し。
この話で、シフォンたちは魔法陣が発動するか否かについて話していましたが、あの議論の前提として、魔法陣が精巧に写しとられているというのがあります。
魔法陣をトレースしてもトレースする人に技術が無ければ発動しません。
魔法陣の量産が難しいのもそこに理由があります。
現代魔法陣を写す職人さんは少ないです。
古代魔法陣を写す職人さんはもっと少ないです。




