-044- 冒険
ごめんなさい。また少し更新止まります。
秋休みも終わり、大気が冷気を帯び始めてきた季節。
私はあいも変わらずいつもの野原で剣術と魔術の鍛錬をやっていた。
そこへ、ナツノがやってくる。
「ナツノ、おはよう」
「ああ」
ナツノはたまにこの野原に来る。
そして一緒に鍛錬し、お話しして、帰るのだ。
一緒に一時間ほど鍛錬して、休憩する。
そんなとき、ナツノが口を開いた。
「シフォン。俺とパーティを組んでくれないか」
「パーティ?」
「ああ。この前、シフォンも一緒に冒険者ライセンスをとっただろう? ライセンスをとってから俺はガレルやガナッシュと何度か危険度3の地域へ行っているのだが、どうも後衛が足りなくてな。お前みたいな強力な魔術師がいてくれたら助かるんだ」
「ふぅん……」
そういえば、私もライセンス使って危険度の高い地域に行こうと思ってたけど、全然行ってなかったなぁ。
「いいよ。今度はいついくの?」
「おそらく、次の休みの日になると思う」
「集合場所は?」
「冒険者街の広場」
「りょーかい。楽しみにしてるね」
「ああ」
それから、私はナツノにいくらか剣の相手をしてもらい、家に帰った。
◆
次の休みの日の早朝、私は戦える服装に着替えて、愛剣双葉を手に家を出た。
そういえば、冒険者街に行くのも久しぶりだ。
あまり用も無かったからね。
集合場所にはすでにガレル、ガナッシュ、ナツノの三人がいた。
「遅いぞ、シフォン」
ガレルが私を見るなりそう言い放った。
はい? 時間通りですけど。
「ごめんね、シフォンさん。ガレル、今日のことを楽しみにしてて一時間も前からここに来てたんだよね」
ガナッシュがやれやれといった顔で言った。
この様子だとガレルに付き合わされてガナッシュも一時間前から待ってたみたいだ。
大変だな、ガレルの親友役も。
「それじゃあ、行こうか」
ナツノの言葉で私たちは今回の目的地へと向かった。
◆
今回の目的地はラルコー岩石地帯という、モンブライトから北に数十キロ離れた危険度3の場所だ。
今日は、ていうか学生のうちはたぶん泊まりは(主にガレルやガナッシュの家が)許してくれないので日帰りだ。
だから、目的地まで悠長に歩くわけにもいかないので、馬を借りる。
冒険者街には馬を借りれる施設があるのでそこへ行き、手続きを終えると、私たちは馬に乗って街を出た。
馬を走らせること一時間弱。
ラルコー岩石地帯の手前の村に着いた。
私たちはこれからこの村に馬を預け、徒歩で岩石地帯まで向かう。
諸々準備を終え、岩石地帯へ出発しようと歩き始めると、王国兵士のような身なりの二人組から声をかけられた。
「おい、君たち。どこに行くというんだ」
「その先はラルコー岩石地帯だ。特別な許可がなければ立ち入れない」
どうやら私たちを無資格と見なして注意しに来てくれたようだ。
「ご忠告、ありがとうございます。ですが、僕たちはちゃんと資格を持ち合わせておりますので、何も心配はいりませんよ」
ガナッシュが一歩前へでて、ライセンスを見せながら言った。
私たちもそれに倣いライセンスを提示する。
二人組はそれを確認すると、申し訳なさそうに言った。
「や、そうだったか。それはすまない、君たちの年でライセンスを持ってる人なんてなかなか居ないからね」
「ライセンスを持っているとはいえ、君たちはまだ幼い。ラルコー岩石地帯は危険だ。行くなとは言わないが、十分に気をつけるんだよ」
「はい。肝に銘じさせていただきます」
ガナッシュがそういうと、二人組は私たちのもとを去って行った。
「こんな僻地にまで王国兵士の人が来てるんだね」
「ここら辺は危険度は高いが、売り物になる植物や魔物が多く存在する地域だからな。金儲けのために無資格で立ち入るやつを取り締まるためだろ」
「無資格で危険地帯に入るのも罪に問われるからね」
「へぇそうなんだ」
王国兵士の人も大変だなぁ。
お仕事お疲れ様です。
◆
ラルコー岩石地帯に着くと、そこに待っていたのは絶景だった。
大迫力の崖や岩山に、思わず叫びたくなる。
草木は一切生えてなく、それがまたごつごつとした印象を強くさせていた。
この景色を見れただけで、ライセンスをとってよかったと思える。
「シフォン、ここからは魔物が出てくる。気を引き締めていけよ」
「うん」
私たちは慎重に歩き始めた。
歩いている途中、私以外の三人はしっかりと地図とコンパスを使い居場所を確認しながら進んでいた。
「みんな、すごい手慣れてるね」
「俺ら三人はベテラン冒険者の旅について行って冒険のノウハウを学ばせてもらったからな。この地図も、今回ここへ行くと言ったとき、そのベテラン冒険者の人たちがくれたんだ」
「へぇ……」
ガレルは猪突猛進なところがあると思っていたが、初めてのことに関してはしっかりと勉強から始めるあたり、意外と慎重な人なのかもしれない。
いや、もしくはガナッシュの入れ知恵か。
このまま冒険の雑用を三人に任せっぱなしだと悪いから私も積極的に勉強しなくては。
◆
歩くこと十分。
今回の冒険で初めての魔物が現れた。
ロックラット。
岩のような鎧で身を守ったネズミの魔物。
ネズミが魔物化したとき近くに岩や石があるとそれを巻き込んで生まれる。
体はネズミにしては大きい。
だいたい人の頭くらい。
一体の戦闘能力はそこまで高くなく、C級冒険者四人パーティならなんなく倒せるだろう。
そして、それが十体。
うん、多くない?
「少し数が多いな」
「打ち合わせ通り、ナツノとシフォンさん、僕とガレルがペアでいこう」
ロックラッタは体を丸めて転がり攻撃してくる。
その速さが非常に速いため、魔術師とは相性が悪い。
だから、その攻撃を一回前衛に弾いてもらうことで、魔術の発動時間を稼ぐ。
私は、ナツノが剣で弾きスピードを削がれたロックラッタを次々と氷漬けにしていった。
そんな連携攻撃により、十体もいたロックラッタは、あっという間に戦闘不能になってしまった。
「シフォンがいてくれて助かった。いなかったらもっと苦労していたよ」
「そっか。役に立てたのならよかったよ」
ロールとオランと暮らしたときにも感じたが、共同作業というのは楽しいものだ。
さて、冒険はまだはじまったばかり。
私は少しわくわくしながら前へ進む三人の後を追った。




