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-034- 他校


 とある休日。

 私はブレッドの店に来ていた。


 カランカラン


 何度聞いたかわからない扉の開く音を聞きながら建物に入る。


「いらっしゃ〜い。あら、シフォンちゃんじゃない」


「こんにちは」


「ちょっと待っててね、今呼ぶわ。ブレッド〜、シフォンちゃんが来たわよ〜」


 ブレッドのお母さんがブレッドを呼んでくれる。

 やがてトタトタと小走りでやってくる音が聞こえ、奥の扉が開いた。


「やぁ、シフォンちゃん。今日はどうしたの?」


「いつも通りだよ。パンを買いに来たの」


「そっか」


 そんな話をしていると、ブレッドがやってきた扉の奥から二つの顔が覗かせていた。


「……ブレッド、あちらは?」


「あっ、お前ら、待ってろって言ったろ? ごめんね、シフォンちゃん。あいつらは僕の学校の友達だよ」


「へぇ、ブレッドの友達……」


 思えば、私ってブレッド以外に他校の知り合いいないんだよな。


「おい、ブレッド! 誰だよそのかわいい子!」


 二人のうちの一人の男の子がそう叫んだ。


「全く……ブレッドったら何人ガールフレンドがいるの」


 隣にいたショートカットの女の子がうんざりしたような言う。

 どうやらブレッドは男2女1のメンバーで遊んでいたらしい。


「リトン、クミレちゃん。この子はよくうちのパンを買いに来てくれる友達のシフォンちゃん」


 そう紹介され、私は軽く会釈する。


「で、シフォンちゃん。こっちの男の方がリトン、女の子の方がクミレちゃんだ」


 そう言われ、二人は「よろしく〜」と手を振った。

 そんな二人を横目に見ながら、「よければだけど」とブレッドが切り出す。


「この二人もいるけど、どう? シフォンちゃんうちで遊んで行かない?」


「うん、ぜひ」


 私はブレッドの家へと上がらせてもらった。


 ◆


「えーっ、シフォンさんってミルフィユ学園なの?」


「お嬢様じゃんっ!」


 私が通っている学校を言うと、二人はそんなふうに驚いた。


「え、みんなミルフィユ学園にどんなイメージもってるの……」


「そりゃあ……」


「ねぇ……?」


 リトンとクミレは顔を合わせてから少し躊躇いがちに、


「「お坊ちゃん、お嬢様の学園」」


「えーっ、なにそれ⁉︎」


 私お嬢様じゃないし。


「通っている生徒にお金持ちが多いのも確かだけど、それは幼少期の頃の教育環境がよかった子が必然的に入学できる実力をもっているようになっただけで、貧しい家の子もちゃんといるよ」


「家が貧しくても入れるんだ?」


 クミレがそう尋ねる。


「ミルフィユ学園には国が出資してくれてるからね。実は入学者からそんなに搾り取らないんだ」


「そうなんだ。じゃあさ、じゃあさ、俺たちみたいのでも入れるのかな?」


「高等部の選抜試験に受かれば、ね」


 そう言うと、リトンは目をキラキラと輝かした。


「ごめんね、シフォンちゃん。騒がしくて。ミルフィユ学園ってのは、普通の学校の生徒からしたら憧れの場所なんだよ」


「憧れ……そうなんだ」


 そう言われると、無性に嬉しくなる。


「ブレッドはどう思ってるの? ミルフィユ学園」


「僕? そうだな〜、ミルフィユ学園は僕の目標かな」


 そう言って、ブレッドは意味深な笑みを浮かべたのだった。


 ◆


 せっかくなので、他の学校の様子も聞いてみる。


「ブレッドたちの学校は、今どんなこと勉強してるの?」


「それはもういろいろだよ」


 ブレッドが答える。


「僕なんかは、将来パン屋を継ぐつもりだから商業的な知識や、経済学なんてものを学んでるよ」


「俺は建築だな!」


 リトンが言う。


「将来、すっごい大きい建物をつくるために建築技術を学んでるんだ!」


「建築か〜、すごいねぇ。魔術とかは学校で習わないの?」


「習うよ」


 クミレが答える。


「でも、私たちは剣も魔術も初級で終わりだからミルフィユ学園のような魔術師育成機関みたいに長い時間かけて学ぶとかは無いかなぁ」


「そうなんだ」


 スイト王国では大抵の子供は中学校を出たら職、もしくは何かの見習いに就く。

 ミルフィユ学園には高等部があるが、実はそれは少数派なのだ。

 ブレッドたちの学校では中学校を卒業しても職に困らないよう、専門的な知識、もしくは技術を学ぶのだ。


「でもね、シフォンさん。実はブレッドってすごいんだよ」


 クミレがブレッドの肩を叩きながら言う。


「そうなの?」


「こいつ、パン屋志望のくせに火属性魔術を中級まで使えるんだぜ」


 リトンも同じくブレッドの肩を叩いて言った。


「パン屋志望のくせに、じゃなくてパン屋志望だから、だよ」


 ブレッドがそう訂正する。


「そうだとしたら、ブレッドほんとにすごいね。中級まで使えたらミルフィユ学園でも落ちこぼれることはないよ」


「そう? ……ありがとう」


 私が褒めると、ブレッドは珍しく照れた。



 ◆


「今日はありがとね、シフォンちゃん」


 帰り際、ブレッドにお礼を言われる。


「こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ」


 他の学校がどんな様子なのか知れたしね。


「シフォンさん、また遊ぼっ」


「今度は一緒に街を回ろうね!」


 リトンとクミレも暖かい言葉をくれた。


「うん。それじゃ、ばいばい」


 私は手を振り、寮の方へと歩いていった。

 こうして、私はリトンとクミレという、他校の子と友達になったのだった。


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