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-027- 図書館


 ミルフィユ学園中等部入学式。

 初等部からさらに大きい校舎へと移り、学年の生徒は200人から300人ほどに。

 中等部から剣士志望か魔術師志望かによってクラスが別れる。

 私は当然魔術師志望だ。


 ◆


 クラス分けが発表された。

 私は魔術Aクラスだった。

 フィナも一緒でほっとした。

 中等部から外部生が多いからね、仲の良い人がいない状態でのスタートはしんどい。

 新しいクラスに行くと、外部生と思しき人が多かった。

 初等部入学者選抜と中等部入学者選抜では断然中等部の方が厳しいものになる。

 したがって、優等生が集まるAクラスには外部生が多くなるのだ。

 もしかしたら、ガナッシュやガレル以上に優秀な人もいるかもしれないな。

 ガナッシュも当然という顔で魔術Aクラスにいた。

 ガナッシュを初めて見る外部生の女子なんかは見惚れて頬を赤くしている。

 ちっ、イケメンめ。

 ノーレは剣術選択だからクラスが分かれてしまった。

 あの子、不器用だから外部生の子と仲良くやれるか心配だ。

 あんまり強い言葉を使っちゃためだよ?


 ◆


 中等部に入ったらまずやりたかったこと。

 それは、図書館に入ることだ。

 ミルフィユ学園は沢山の本を収めている図書館を持っている。

 初等部の校舎からは少し離れたところにあり、なおかつ初等部の生徒は立ち入りを禁止されている。

 この世界では幼い子に触れさせるには高価すぎるからだ。

 私はもう中学生。

 図書館に入る権利を獲得したのだ。


「わぁ……」


 図書館は吹き抜けの二階建てとなっており、本の重厚感がずんぐり重く館内の空気を押していた。

 これ、全部写本なのか。

 このひとつひとつに写本家の努力が詰まってると思うと感慨深いな。


「すみません、図書館使うの初めてで」


 私は近くにいた司書らしき人に話しかけた。

 とりあえず、私は魔術についての本を読みたい。

 最近、どうも行き詰まっていて、魔術の無駄を無くす訓練くらいしかやることが分からない。


「ああ、魔術についての本だね。奥の方の棚にあるよ」


「ありがとうございます」


 場所を教えてもらい、本棚へと向かう。


「えっと、」


『魔術教本 改訂版』

『生成術とはなにか ラグルド・バーン著』

『術王クロノラティアの人生 ヘルス・ラクタニィア著』

『私が上級魔術師になって思うこと グレモス・ターン著』

『効率的な魔術鍛錬 ヘスティクト・ガブル著』


 うーん、いろいろあるなぁ。

 ざっと見て、読んでみたいと思ったのは『私が上級魔術師になって思うこと』かな。

 私も去年上級になったことだし。

 でも、ちょっと本棚の高いところにある。

 うー、もう少しで届きそうなのに。

 自分の低い身長が憎い。


「やっ」


 やった、ジャンプしたら届いた。

 あ、やばい。

 体のバランスを崩した。

 倒れるっ――


 トン


 誰かが、私を支えてくれたことにより、転倒は免れた。

 私は、顔を上げる。

 私を支えてくれたのは、女の子のような綺麗な顔の男の子だった。


「えと……ありがとう」


 男の子は、私の礼に小さく頷くと、私が持っている本に視線を移した。

 そして、口を開いた。


「魔術について、知りたいの」


「あ、うん」


「だったら、その本はあまり適してないよ。魔術に関する記述が少ない」


 男の子は続ける。


「魔術について学びたいのなら、これがいいよ」


 そう言って男の子がとりだしたのは、『術王クロノラティアの人生』。


「これは術王の伝記なんだけど、なぜクロノラティアが最強に至ったのか、魔術何か、そして、どのように極めていくべきかがよくわかる」


 ふぅん、詳しいなぁ。


「僕から薦めれるのはこれだけかな。他のはまだ読んだことがない」


「ありがとう。えっと……フラン、君?」


 この男の子は、さっき魔術Aクラスにいた。

 確か名前は、リヒテヌート・フラン……だった気がする。


「あぁ君、魔術Aクラスの人か。どういたしまして」


「一年生なのに詳しいね」


「僕は普通の人より本に触れる機会が多かったから、他の写本家のやつを読んだことがあるんだよ」


「ふぅん」


 お金持ちなのかな。


「それじゃ、僕はこれで」


 フランは目的の本を抱えて去っていった。


 ◆


 私は放課後毎日図書館に行き、フランのおすすめ『クロノラティアの人生』を1週間で読み切った。

 図書館から持ち出し禁止だから部屋に持ち込めないのがつらかった。

 でも、読んだ甲斐はあった。

 クロノラティアの魔術についての思想と自分の実感が重なり、分かりみの深い部分が多くあった。

 それが、クロノラティアがいかにして強くなったかの説明の説得力を増していた。

 そして、魔術の本質を少し理解したような気がする。

 まあ、気がするだけだけど。

 1週間、毎日図書館に通っていたわけだが、フランも毎日図書館にいた。

 何か調べ物をしている様子だった。

 私は今日も図書館に居座っているフランに話しかけにいった。


「フラン、この本読み終わったよ。すごくわかりやすかった」


「そう」


 フランは机になにかの資料を並べている。


「フランは毎日何をやっているの?」


「魔法陣の研究」


 へぇ、魔法陣!

 私も興味あるな、それ。

 ベニエ村のみんなが魔法陣を使って車をつくってるのみて、私も学びたくなったんだよね。


「どんな研究をしてるの?」


「……勇者の存在は知ってる?」


「もちろん」


 魔王が現れたとき、人類は魔への対抗手段として勇者を召喚するのだ。


「言い伝えによると、勇者はこことは全く違う別の世界から来たらしい。僕は、勇者のいた世界がどういうものか知りたいし、あわよくば行ってみたい。だから、こうして召喚の魔法陣を解読してる」


「へぇ……」


 自分の夢を持っている人はいいな。

 目が輝いている。


「行けるといいね、勇者の世界」


「あぁ」


 他にもたくさんの世界があるのかな。

 どんな世界なんだろう。


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