表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/82

-021- 修学旅行中止


 ――修学旅行中止のお知らせ


 近年魔物の動きが活発していることを受け、生徒の安全の確保が困難と判断致しましたので、今年度の修学旅行は中止とします。――


 初等部6年生に上がってから数日後。

 修学旅行の中止を知らせる紙が学年掲示板へ張り出された。


「うそ……楽しみにしてたのに……」


「まじかよー……」


 張り紙を見た子たちはみんな落胆している。

 泣きはじめてしまった子さえいた。

 もちろん、私だって残念だ。

 低学年の頃から楽しみにしていたのに。


「最近、世界レベルで魔物が暴れはじめてるよね」


「うん、どうしたんだろ。心配だな」


 国内のほとんどの学校の修学旅行が中止になったらしい。

 こう全国で次々とイベントが中止になっていくのを見ると前世で世界がパンデミックに陥ったときのことを思い出す。

 あのときは大変だった。


「……たぶん、魔王じゃないかしら」


 ノーレがつぶやく。


「魔王?」


「ええ。前にパ……お父様が話しているのを聞いたのだけど、魔王が誕生した可能性が高いって」


「へぇ……魔王、ね」


 この世界では、全ての生物は魂、肉体、魔力の三つから成り立っているという、三源説が有力だ。

 生命の本質たる魂と、それが宿る肉体、そしてその肉体を動かす魔力。

 これらのどれか一つが欠けたら生きることは不可能と言われている。


 ちなみに、私はこの説をあまり信じていない。

 前世の知識があるから、どうしても……ね。


 生物が魔物かそうでないかと判断される基準は、魂と魔力の力関係にある。

 私たち人間や普通の動物は魂でもって魔力をコントロールしているが、魔物は魂が魔力に乗っ取られている。

 その結果、知性や理性が無くなり、暴力のみを求めるようになったのだと。


 そんな魔物たちの中でまれに王が誕生する。

 それが、魔王だ。

 魔王が誕生すると東の大陸(魔物の領域)での魔物の動きが活発化し、世界全体での魔力濃度が上がり、西の大陸(人間の領域)での魔物の自然発生も増える。

 あ、魔物の自然発生というのは、動物などの魂が何らかが原因となって自身の魔力に乗っ取られ、魔物化するというものだ。


 魔王の誕生は完全に不定期で、前回の誕生から300年近く開くこともあるし、10年と開かないこともある。

 今最後に誕生したのは100年ほど前だから、確かにこの魔物活性化の原因は魔王誕生という説はあるだろう。


「ま、でも魔王誕生してたとしても私たちには関係ないよね」


「何言ってるの、シフォン」


「え?」


 フィナは呆れた表情をしていた。


「16年前、シラルスの人魔大戦で、隣のバゼル王国はあまりにも兵が足りなかったから、学徒出陣まで行ったんだよ。対魔王戦で苦戦することになったら私たちも戦地に向かう可能性は十二分にあるんだからね」


「えぇ……そんなぁ……」


 うう、戦いたいたくないよぉ。

 ああ、魔王様!

 どうか一生誕生しないでくださいお願いします!


 ◆


「シフォンさん、おめでとうございます。今日からあなたは上級魔術師です」


「ありがとうございます」


 6年生になって三ヶ月ほどたったある日、私は上級魔術師になった。


 初等部のうちに上級になるというのはすごいことだ。

 うん、自分で言うのもなんだけどすごいことなんだよ。

 剣杖会を探しても初等部で上級魔術師になった人なんて片手に収まるくらいしかいないだろう。

 それくらい、すごいことなんだ。

 だけど私、学年二人目なんだよね、上級魔術師になったの。

 つまり、私より先に一人上級魔術師になってるんだよね。


「おめでとう、シフォンさん。すごいね、初等部で上級魔術師なんて」


 にこやかな表情を浮かべ、私より先に上級魔術師になった男が近づいてきた。


「……それ、すごく煽っているように聞こえるから気をつけた方がいいよ、ガナッシュ」


 ラズベリル・ガナッシュ。

 やはりこの男は天才だった。

 ガナッシュは一ヶ月前、炎の上級魔術を取得したことにより上級魔術師となった。

 さらについ先日、風の上級魔術も習得し、初等部で全属性の上級魔術を取得という頭のおかしい記録を打ち立てた。

 全属性上級魔術取得っていうと普通に王城で仕えれるレベルだ。


「僕はずっと魔術に専念してたから一足先に上級へなれただけだよ。シフォンさんは剣術もがんばってるじゃん」


「私は魔術の方が得意だから魔術で負けたことが悔しいの」


 なんでかな。

 私、魔術の方が得意なのに、剣杖会の女の子やガナッシュの二人に負けてる。

 剣術はガレルにしか負けたことないのに。


「総魔力量ではシフォンさんの方が上だよ」


 ガナッシュは笑いながら言う。

 これだ。

 このガナッシュの余裕の笑み。

 なんなんだろう、私はガナッシュが感情的になってるところを見たことがない。

 焦ってるところとか、動揺しているところとか、悔しがってるところとか。

 ここ2年でかなり仲良くなったけど、初対面のときと距離感が全く変わらない。

 幼馴染のガレルと過ごすときも同じくらいニコニコしてるのかな。

 それはそれで気持ち悪いけども。


「? 僕の顔になにかついてる?」


「いや……うん、ついてるよ。すごく分厚い仮面がね」


「へぇ……」


 ガナッシュは意味深な笑みを浮かべた。

 やば、余計なことを言ったかもしれない。

 ガナッシュは腹黒だからなにされるかわからない。


「僕、シフォンさんの前でこの仮面を外すつもりはないよ」


 へぇそうですか。

 ……いつかその仮面をひっぺがしてやろう。

 そのときの顔が楽しみだ。


今更ながら魔術師の昇級システムについて少し。


初級:初級魔術を三属性取得

中級:中級魔術を三属性取得

上級:上級魔術を三属性取得


この世界では複数の属性を組み合わせて魔術を使うので一属性だけできても上には上がれません。

この基準はよっぽど小国でない限り万国共通です。


フィナの回想で特級という言葉がでてきましたが、これは国際機関が特別と認めた極めて強い戦力のことで、上のシステムとは少し違い、明確な基準がありません。


特級の称号は魔術師か剣士に与えられます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ