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-013- 招待状

前にも書きましたが、この世界では春から一年がカウントされます。ですので、春に大晦日、正月があります。


 スイト王国には、剣杖会(けんじょうかい)と言うものがある。

 この会は招待状がなければ参加できない。

 招待されるには二つの条件があり、剣術、または魔術の才が世の中に認められていること、そして10歳以上の学生であることだ。

 つまるところ、この会の主催者は魔術や剣術の才能溢れた若人を集めたいのだ。

 

 なぜ急にこんな話を始めたのかというと、それは私が今持っている手紙に起因する。


『ハトサブル・シフォン殿

 貴殿の活躍は我々の耳にも届いた。その才能を認め、スイト王国剣杖会へ招待する。

 詳細は以下の通り……』


 あっ、招待状だこれ。


 この前の秋で10歳になったので私にも招待状が届いたのだ。

 普通剣杖会の招待状をもらったら嬉しくて飛び上がって喜び、周りからは羨望の眼差しで見られるものなのだが、正直あまり嬉しくない。

 剣杖会は年の境に開かれる。

 つまり、年末年始をベニエ村で過ごせない!

 そんなのいやだ!

 ロールとわちゃわちゃしながら年を越したい!

 オランと遊びながら新年を迎えたい!


 と、いうわけで先生に聞いてみた。


「ボイコットしていいですか?」


「いいわけないだろ」


 即答された。


 先生は大きくため息をついた。


「お前なぁ、何が気に食わないんだ? 剣杖会に招待されるってことは人によっては一生に一度あるかないかなんだぞ」


「はあ」


 先生はもう一度ため息をついた。


「どうしてもって言うんなら学園長に言え。俺は立場上ボイコットとしていいとは言えん」


「わかりました」


 学園長かぁ。

 あの人苦手なんだよな。

 会話が自分の思い通りにいかないって言うかペースが乱されるっていうか。

 とりあえずお願いしてみよう。


 ◆


「ダメ」 


 こちらも即答だった。


「私は勝手に招待されただけです。行く義務までは発生しないのでは?」


 学園長はその胡散臭い髭を撫でながら言った。


「真面目な話をするとね、招待されたらどんな用事があろうとキャンセルして剣杖会を優先させるっていうルールがあるの」


「それは、どこかに明記されてるのですか?」


「されてない。暗黙のルール」


「……明記されてなきゃ大丈夫じゃないですか?」


「あのね、剣杖会の招待状を破り捨てるっていうのほ主催者に泥を塗るようなものなの。剣杖会を何よりも優先させるって暗黙のルールができるくらい主催者は力を持ってるんよ? 敵に回すのはやめた方がいいよ」


「……」


 なんてはた迷惑な。

 招待を断ることが許されないなんて。


「行ってきなさい」


 学園長は諭すように言ってきた。


「はい……」


 しょうがなく私は返事をした。

 ああ、春休みベニエ村へ帰れないや。

 辛い。


「あの、剣杖会で戦うことってありませんよね?」


「そういうプログラムは組まれていないはずよ」


 それを聞き私はほっと胸を撫で下ろす。

 よかったー、他校の人と戦いなんて絶対無理だからね。


 ◆


 ミルフィユ学園は毎年学年に3人ほど剣杖会へ招待される。

 とすると、ミルフィユ学園全体で考えると27人ほど招待されていることになる。

 これはかなり多い。

 他のとこだと、学校に1人いるかいないかってくらいなのに。

 そして、私の他にも四年生で剣杖会に招待されている人がいた。

 ガレルとガナッシュだ。


「2人も招待されてたんだね」


「まあな」


 ガレルが当然というように鼻をならした。

 今は移動中。

 剣杖会が開かれるアフォールという都市に向かうため、学園が用意した馬車に乗っている。


「ガレルね、招待されるか不安ですごく緊張してて、招待状が届いた瞬間飛び上がって喜んでたんだよ」


 ガナッシュがおかしそうに笑う。


「うるせぇよ」


「だいたい、小四でガレルくらいの剣術があれば間違いなく招待されるでしょ」


「同い年に、しかも女子に負け続けてるんだ。自信くらい無くす」


「じゃ、今回の剣杖会で同い年の剣士と戦って自信を取り戻しなよ」


「そうする」


 ん、待てよ。今聞き捨てならないことが。


「ねぇ、剣杖会って戦うの?」


「戦うぞ」


 ……⁉︎


「え、でも、学園長はそんなプログラム無いって……」


「ああ、確かに剣杖会はあくまで才能持つ者同士の交流会でしかない。だが、全国から年の近い強者が集まってくるんだぞ? 勝負を挑んでくるに決まってる。学園長はそこらへんを誤魔化したんだろ」


 学園長のニヤニヤとした笑顔が頭に浮かんだ。

 あんの詐欺師!

 絶対わざと黙ってただろ!


「ふ、2人はどうするの?」


「俺はもちろん戦う。カヌレ学園の生徒なんかとはなかなか戦う機会ないからな」


「僕も手合わせはお願いしようかな。マロン学園の魔術師と戦ってみたし」


 ふ、2人とも意識たかっ!


「私、影薄くしてたら誰にも挑まれないよね……?」


 恐る恐る2人に尋ねる。

 2人は顔を見合わせてから、肩をすくめた。


「残念だがシフォン」


「シフォンさんは他校でも有名だからちょっかいだされると思うよ」


「いやーー!」


 ま、まじか……

 ど、どうしよう。

 勝負を挑まれても前世の死の記憶が蘇って怖くてまともに戦えない気がする。

 はぁ、やだなぁ。

 どうやって戦いを避けようか。


 そんな会話をしているうちに、アフォールへと着いてしまった。

 誰にも絡まれず終えれますようにと願っておいた。


1週間ほど更新止まります。

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