09・女神の神託
この世界には、人々のこと細かいステータスやスキルを見る事が
出来るというマジックアイテムが存在する。
そのマジックアイテムは気まぐれに人の願いを叶える女神様、
『セレナーディ』から取って【セレナーディのクリスタル】と呼ぶ。
何故このマジックアイテムが女神の名を冠しているかというと、
それは【セレナーディのクリスタル】は少し特殊なマジックアイテムで、
一年に一度のとある春月のとある日...つまり、今日のこの日にのみ
使用する事ができるマジックアイテムなのだ。
因みにこの【セレナーディのクリスタル】で一度でもステータスを
判定すると、その後【ステータスカード】と呼ばれるカードにて、
自分のステータスやスキルをいつでもチェックする事が出来るようになる。
ガヤガヤ...ざわざわ......
「おお、これは凄い!どうやらお前は格闘向きのようだな。武闘の勉学を
中心に学ぶ事を進めるよ!」
「あらら...貴女は見た目通りに魔力が高いみたいね。どの魔法科を学んでも
ついていけると思うよ♪」
「ふむうむ。これは...狩人が今の所、一番の理想かな?」
...という具合に、
各先生が【セレナーディのクリスタル】で出た能力の結果を生徒達に伝えて、
どの教科を学ぶべきかの適切なアドバイスを送っている。
そして各先生の送るアドバイスを踏まえ、それを聞いていた生徒達が...
「あ、ありがとうございます!そっか...俺は格闘の能力が高いのか!」
「やった!私、魔法スキルを学びたかったんだよね!判定、ありがとう
ござました、先生!」
「狩人か...う~ん、正直、俺の目指すジョブじゃないな。はぁ、しょうがない。
魔力を上げる為の勉学を頑張るか...アドバイス、ありがとうございました!」
生徒達が自分の学ぶべき教科を改めて確認すると、その場を去っていく。
「よし、次!」
「はい!お願いします、先生!」
そして次の生徒の能力を測る為、先生達が列の前に並んでいる生徒に
声をかけて手招きする。
それから数十分の時が過ぎ去り...
「よし。次の生徒、こっちに来なさい!」
「あ。は、はい!」
お。俺の前の奴が呼ばれたぞ。
いよいよ、俺のステータスを判別する『女神の神託』の番は
次みたいだな。
何か、ドキドキしてきた。
...と、言っても、俺は別に自分のステータスがいつでも見れるから、
ステータスの判定をする必要はないんだけどね。
どうやら個人で詳しくステータスチェックができるのは、レアスキルである
『超アナライザー』を習得している主人公だけらしく、
他の者は『女神の神託』でステータスやスキルをチェックした後、
【ステータスカード】と呼ばれるマジックアイテムでしか、自分の
ステータスやスキルを見る事ができない。
またこの『女神の判定』は、力や防御といったステータスをSからFまでの
ランクでしか見る事が出来ず、主人公の『超・アナライザー』の様に、
ステータスを数値化して見る事は出来ないらしい。
更に毒や麻痺、混乱や魅力といった異常効果などもまた、
【ステータスカード】で見る事が出来ないとのこと。
そう考えると、超アナライザーって便利なスキルだよな。
まぁ、主人公なんだし、これくらいの贔屓はいいよね。
俺が超アナライザーやステータスの事で、あれこれと考えていると、
「お~い、聞こえているか~い?次の生徒、こちらに来なさぁ~い!」
ボゥッとしている俺に向かって、先生がこちらに来いと少し大きな声で
手招きをしてくる。
おっと、俺の番がきたみたいだ。
「すいません、今行きまぁ~す!」
先生に呼ばれた俺はそう返事を返すと、小走りで先生のいる場所まで
移動して行く。