05・新入生の意気込み
ゲーディス学園が創立されて、今年で丁度100年目が経った
グラウス暦2030年の春。
今年もまた、自分のなりたい理想と希望のジョブを追い求めて、
ゲーディス学園へ新入生が入学してくる。
その心には大きな不安と緊張、そしてそれと同じくらいの大きな
期待と興奮。
そんな様々なる声を響かせながら、沢山の新入生が登校してくる。
「なぁ、お前ってさ、習得したいジョブはもう決めてあるのか?」
「いやまだ決めてない。そういうお前こそ、習得したいジョブを
決めているのか?」
「ふ。当たり前よ!どんな神託で結果が出ようとも、俺は剣を扱う
ジョブ...『剣士』の一卓のみだぜっ!」
「いや、剣を扱うジョブって『戦士』、『騎士』、『魔戦士』とか、
他にもいっぱいあったと思うぞ?だから、お前の言う、その一卓と
言うのは間違いだと思うんだが?」
「やれやれ...お前、ホント細かい事を気にするよな......」
「こ、細かいか......?」
「ねぇ、見てよ!これ...私の母が作ってくれたんだよ!いいでしょう♪」
「おお、カッコいいじゃん。確かあんたんとこの両親って、二人とも
『道具作成師』だったよね?じゃ、あんたも道具作成師になるの?」
「うう~ん、どうだろ?もしかしたら他にやりたいジョブが見つかるかも
しれないから、今は道具作成師は保留かな?」
「うおおお!待っていろよ、ゲーディス学園!俺は『格闘家』になって、
格闘スキルの全てを完全にマスターしてやるからなぁぁぁぁっ!」
「うわ...暑苦しい...あっち行け、しっし!」
「ちょっ!?幼馴染だからとはいえ、今の発言は涙ものだぞぉぉぉっ!」
「はいはい。泣いてもいいから、ちゃっちゃと学園に行くぞ、ウスノロ!」
「見ていて下さい、父さん、母さん。きっとこの学園で『商人』のジョブを
開花させ、良い暮らしをさせてあげるからね!」
「うふふ。私はこの学園で、きっと『歌い手』のジョブをマスターしてみせる!
そして、習得した歌い手のスキルで世界のみんなを幸せにするんだから!」
「ほう、歌い手か...。だったら、あたいは『踊り子』のジョブであんたの
相棒になってあげるよ!」
「本当!ありがとう!えへへ...流石は持つべき私の幼馴染だよぉ♪」
「見ててくれよ!俺、一生懸命がんばって『魔法使い』のジョブをゲットし、
キミとの暮らしを楽にしてやるからね!」
「ふふ、良い気合いだね。とっても嬉しいよ♪それじゃ、わたしは
『神官』になって、回復魔法や異常回復魔法であなたのそのサポートを
してあげるわね♪」
「俺ってさ、動きがめっちゃ素早いじゃん。だからこれを生かすには
『忍者』の道しかないと思うんだよねぇ!」
「はあ?確か忍者って、上位クラスのジョブだったよね?あんた程度の
実力じゃ、どう逆立ちしても、どう転んでも、絶っ対に無理だと思うよ。
変な高望みはしないで、ここは素直に『盗賊』で我慢しておきなさい!」
「ええぇ、嫌だよ!盗賊って、いかにも悪役って感じじゃんっ!」
「こらこら、そんな事を言わない!『盗賊』だって立派なジョブで、
それを目指している人だって沢山いるんだぞ!」
「お前だって、我慢しとけとか言っていたじゃん......」
色々な種族の新入生達が、学園生活での目標...決意の声を高らかに
飛び交わせながら、次々とゲーディス学園の門を潜り、内へと入って行く。
「...............」
そんな新入生達の歩く通学路のど真ん中にて、ひとりのとある新入生が
目の前に見えるゲーディス学園を感動なる表情で見ていた。