03・バッドエンド その1
無事に物語が終わって流れ出す、感動のエンドロール。
そしてその感動のエンドロールが最後まで流れ終わった直後に現れる、
主人公とヒロインの『その後』を伝える語り...エピローグが始まる。
このエピローグ...『その後』こそが、今の俺に取って、
「最大最悪なる最凶のエピローグなのだっ!!」
そのエピローグに書かれているテキストはこうだ...
「ヒロインに選ばれし英雄、キョウヤ・クロカワネは、この世界を
震撼させ、征服せんとする魔族達を...そしてそれを率いる魔王の進行を
阻止するべく、その持てる全ての力を以て、ヒロインと共に魔族や魔王の
住む魔界へと討伐の旅に赴くのだった!」
はぁぁあぁぁっ!魔族っ!?魔王っ!?何だ、そりゃぁぁぁっ!!?
恋が成就した直後にいきなり魔界へ魔王退治に行けって、それはいくら
なんでも展開が急過ぎるわぁぁぁぁっ!!!
ホント、何なんだよ!このオチはさぁっ!
なんで学園生活を終えたばっかりの学生が...
闘うジョブだって、まだまだ初心者の二人が...魔界に乗り込んで、
魔王退治なんぞをせにゃならんのよっ!
そもそもゲーム内テキストに、一行足りとも魔王関連の事は書かれて
いなかっただろうがっ!
開発スタッフの野郎、この魔王設定、絶っっ対に後付けしやがっただろうっ!
ゲーオタにはわかんだぞ!微妙なテキストの流れでよ!!
クソ、何が魔王退治だっ!
んなもん、やりたくないに決まってんだろうがいっ!
んなもん、各地にいる騎士達や、勇者にでも任せとけよっ!!
俺はな、自慢じゃないですが、都会の中でノンビリ育ったコテコテなる
現代っ子...スーパーモヤシっ子ですぞっ!
そんな俺がですよ、何が悲しくて魔物や魔族の溢れる魔界なんかに行かにゃ
いかんのですかぁっ!
どうせ行った所で、百パーセント...
いいや!百二十パーセント...
いいや!億パーセントの確率で死んじゃうからねぇぇぇっ!
「これ、火を見るよりも明らかだねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ......
しかし、参ったな...
ゲームでは多少の苦笑と苛立ちレベルで済んだけど、リアル現状として
のし掛かってきた今となっては、ちっとも笑えないぞ、この展開。
最初は学園には通わず、どこかに逃げ出そうかと思ったんだが、
それをやった事で一体どんなアクシデントが起こるか分からないからな...
下手したら、死にフラグが発動する可能性もある。
いや、その可能性はめっちゃ高いだろう。
何せ、『野垂れ死に』フラグなんてものがあるくらいだからな。
...と、いう訳で俺は学園から逃げ出すのを諦めて、しぶしぶ学園に
通う事に決めた。
学園から逃げ出して不確定なフラグが発動するよりも、この理不尽ない
破滅フラグを回避できるフラグが学園には存在するからだ。
このフラグを立てたエンディングを迎えれば、俺の破滅人生は
何とか回避できる。
そのフラグを立てた先にあるエンディング、その名は......
『バッドエンド・冒険者!』