20・ルナリーナの愚痴
「ふう。どうやら今日はこれでおしまいみたいだね。所でキョン君。この後、
何か予定があるの?も、もし暇だったらさ、学園を一緒に回ら―――って、
あ、あれ?キ、キョン君がいない!?」
ルナリーナが横に顔を向けてそう述べると、そこにいる筈のキョウヤの姿が
どこにもいなかった。
そんなキョロキョロしているルナリーナに気づいた、同じクラスの女子生徒が、
「ねぇ、あなた。もしかしてあなたの隣に座っていたあの男子生徒の事を
探しているの?あの男子なら、クラリネ先生が教室を出たと同時に教室外に
ダッシュで出て行ったわよ?」
ルナリーナに声をかけてきて、キョウヤのどこに行ったのか教えてくれた。
「クラリネ先生と同時に!?ま、まさか、キョン君!せ、先生の後を追い
駆けていったんじゃ!?」
ルナリーナは、もしやという顔をして勘繰りを入れていると...
「多分そうじゃないの?だって、その男子生徒の他にも、クラリネ先生の後を
笑顔満天で追っかけて行った男子生徒が沢山いたからね♪」
ルナリーナに話しかけてきた女子生徒の友達も、ルナリーナ達のいる場所に
寄ってきて、追加の情報を加えてくる。
「ぐぬぬ...やっぱりか!やっぱり、男子という生き物は巨乳がいいのかぁっ!」
その女子生徒の情報を聞いたルナリーナは、膨れっ面でプンプンと怒ると、
クラリネ先生を追っかけて行った男子達に対し、抗議の言葉を口する。
◇◇◇◇◇
「ふう...何とかうまく抜け出せたようだ......」
俺はクラリネ先生が教室を出たのを見計らって、ルナリーナから気づかれ
ないよう、教室の後ろ側にあるドアから素早く廊下へと脱出していた。
「しかしまさか、ルナリーナがFクラスにいるなんて...全く以て、想定外も
良いところだぞ......」
ルナリーナは一番出会いたくない『攻略ヒロイン』の筆頭だっていうのに。
前にも少し述べたが、この『ルナリーナ・ヴァンフォーレス』という
ヒロインは『攻略ヒロイン』の中でも一番攻略が難しいとされるヒロインで、
『好感度』を上げる作業が他のヒロインの約三倍近くもかかってしまう。
まぁ、ルナリーナと関わる気がないので、それは百歩譲っていい。
だが厄介なのが、このルナリーナの『好感度』が下がってしまった場合、
他のキャラの『好感度』も通常の約三倍近く下がってしまうのだ。
更にルナリーナの『ヤキモチ度』は他のヒロインよりも高く、他の異性と
イチャつく行動を取ろうものなら、三倍とまではいかないが、これまた
一気に『好感度』が激下がりしてしまう。
当然、他のヒロイン達の『好感度』を巻き添えにしてだ。
このゲーディス学園というゲームは、他のキャラの『好感度』もある程度上げて
おかないと、バッドエンドに向かうパターンが殆どなので、ヘタをすると、
にっちもさっちもいかずに積んでそこで終わってしまう。
なので、このルナリーナを攻略する際は、他のヒロインとのイベントを極力抑え、
サブキャラも『ヤキモチ度』の下がりにくい、男性陣で固めなきゃいけない。
ア、アホかぁぁああぁぁ―――っ!!
「周囲が男性ばっかで、ヒロインに媚び諂う学園生活なんて、寂しいにも
程があるわぁぁぁぁぁあ―――っ!!」
ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ...ゼェ...
「......ホント参ったな。ルナリーナとはなるべく...いいや、絶対に関わり合う
状況を作りたくなかったっていうのによぉ......はあ~」
この理不尽な状況に追い込まれてしまった事に対し、俺は心から落胆で出る
嘆息を洩らすしかなかった。




