14・『黙して、ニコニコ笑顔作戦!』
ん......会話?
ああぁっ!そうだぁぁっ!!
この『会話』というワードに対し、俺の直感がピコンッと頭の中を過ると、
ルナリーナと会話するべく開こうとしていた口を大慌てで閉じる。
そ、そうだよ...!
翌々考えてみたらさ、今さっきのルナリーナとの会話って、俺が相手の事を
ルナリーナとして『認識』しないで会話をしていたよな?
じゃあ、もしかしてそのせいでルナリーナがヒロイン登録されなかったという
可能性がやるやも知れんじゃん!
あはは。い、いや~、流石にそれはちと考え過ぎかな?
いや、いや!駄目だ、駄目っ!
その可能性が例え1パーセントでも否めない限り、疑がって注意して
かかった方がいいだろう。
何せ、これからの学園生活...選択のひとつでも間違えてしまったら、
俺の命運がめちゃくちゃ危うく大ピンチに陥ってしまうんだから!
だがよく考えてみたら、俺の目指す冒険者エンド...
そのフラグには複数のヒロインと登録をしなきゃいけないんだよな?
だ、だったら、ここは思いきってヒロイン登録がされるか否か、意を決して
ルナリーナと会話を試みるべきか?
いや、やっぱり駄目だっ!
このルナリーナは、一番ヒロイン登録をしてはいけないヒロインなんだから!
何故ならば、このルナリーナというヒロイン、知的で美人で基本能力も高くて、
人からの人望もあつく、そして人柄も憎めない性格の持ち主...
なのだが、
しかし、このルナリーナは数あるヒロインの中でもダントツにヤキモチ度が
高くて『好感度』もガクッと下がりやすいヒロインなんだよ。
そのヤキモチ度合いを簡単に説明すると、他のヒロインとはヤキモチ度が
約2倍違うし、好感度なんか、約3倍近くも下がってしまうんだぞ。
このやり直しが効かない状況下、下手にそんな危険な行為に飛び込む訳には
絶対にいかないのだよ!
どうせ試すんだったら、他のヒロインで試した方が断然いいのは確実な事実っ!
......と言うわけで、
ここはルナリーナとの会話はキッパリと諦めて、
さっき咄嗟に思い付いた作戦...
『黙して、ニコニコ笑顔で会釈作戦!』
この作戦にて、何とかここは乗り切ってみせるぜっ!
俺は刹那の狭間、ルナリーナのヒロイン登録の危険度を思考しまくった結果、
さっき思い付いた作戦...『黙して、ニコニコ笑顔会釈作戦!』を敢行する。
そして、
「.........ニコ♪」
俺はなるべく目線を合わせないよう注意し、ルナリーナの鼻先近くに目線を
ロックした後、ルナリーナのいる隣に顔をゆっくり向けて微笑んだ。
「ああ。やっと、こっちを向いてくれた!ねぇ、もう一回聞くけど、キミの隣、
この席って...本当に私が座ってもいいんだよね?」
「.........ニコ♪」
――コクン。
俺は緊張感でドキドキの止まらない心音をグッと抑え、ルナリーナのこの問いに
最高の笑顔を浮かべながら、言葉はひと言も発する事なく、タダ静かに小さく
頭を縦に振って、ルナリーナの言葉を肯定する。




