12・予想外の展開がもう!?
そう...例えば、不意をつかれてヒロインと出会ったとする。
その時、もし俺がゲーム通りの行動や会話を取らなかった場合は
一体どうなるんだろう?
ヒロインと出会った後のアプローチが会話イベントだとしたら、
その会話を完全に無視した場合、どうなってしまうのだろうか?
そんな行動を取ったとしたら、はたしてヒロインは『ヒロイン枠』に
登録されてしまうのだろうか?
それとも否か?
もしイベントを無視した行動を取っても、ヒロイン達が『ヒロイン枠』に
登録されなかったら、俺の今後の予定がグッと楽に...イージーになって
くれるんだけどなぁ...
だけど、この行動には少し問題がある。
こんな態度を取ったにも関わらず、ヒロインのフラグが立った場合だ。
そうなってしまったら最悪だ。
気を悪くした状態でヒロインが登録されてしまい、この後の予定が
御の字どころか、大きく狂ってしまい、
その結果、ご機嫌ななめなヒロインのご機嫌取りの為にゴマを擦って、
貴重な日数を消費しなきゃいけない羽目になってしまう。
「ぐぬぬぬ...い、いかん。想像しただけで頭がクラクラしてきた......」
ホント、このゲーディス学園というゲーム、恐ろしく好感度の巻き返しが
面倒かつ、難航だったからな。
あ、そうだ!こ、こういうのは、どうだろうか?
ヒロインに対峙した時、会話をせず、ただ黙って会釈...
更にこれに加え、好意を感じてくれるだろう屈託のない爽やかなる笑顔で
会釈を返すというのは?
これなら、ヒロインの気分を阻害することもないだろうしさ、ヒロインと
会話もしていないから登録される事もないはず。
ふ...どうせ、一度は通らなければいけない道なんだ。
よし!
もしヒロインと出会ってしまったら、取り敢えず、この作戦を決行して
みるとしようかな!
そうさ。
これでヒロインの登録がされなかったら、さっきも述べた俺の計画が
一気にイージーへと変わってくれるんだ。
仮にこの作戦が失敗して、攻略ヒロインが登録されてしまったとしても、
俺が目指す冒険者エンドには、ヒロインの好感度を上げろという条件が
ある訳なんだし。ヒロインがひとり、ふたり登録されたとしても最終目的の
支障にはあまりならないだろうさ!
「うっし。今後の予定スケジュールの組み立ては大体これくらいでいいかな?
後は実行でやっていくし――」
俺が今後の行動予定を決め終わると、気持ちを切り替える為に気合いを
グッと入れようとしたその瞬間、
「ねぇ。そのキミ、ちょっといいかな?」
「へ!?」
突如、後ろから俺に誰かが声をかけてくるので、俺はその声にビクッと
なりつつも、ゆっくりその声がする後ろへと顔を振り向ける。
すると、
「ここの席って、私が座ってもいいんですよね?」
俺の向けた目線の先に、今しがた声をかけてきた人物の人差し指が
映り込んでくる。
そしてその人差し指は俺の左隣の席をスッと差していた。
なので、俺は笑顔を作って...
「ええ、勿論いいですよ。クラスのみんなも自由にどこかれと座ってる
みたいだしね♪」
...と、返事を返した。
「そうなんだ。だったら、私がここに座っても何の問題もないよね?
それじゃ、遠慮なく座るね♪」
声をかけてきた人物がニコッと俺に微笑むと、俺の左隣へと座った。
おほほう♪
こ、この可愛らしい声...
こいつはかなりの美人さんと見たぜっ!
そんな美人さん(多分)が進んで俺の隣に座るだなんて、今までの
俺の経験ではありえないパターンだ!
異世界ヤッホーッ!
ぐふふ...さてはて、一体どんな子が俺の隣を御希望で?
一体どんな可愛い子が俺の隣に座ったんだろうと、心の中でドキドキ
ワクワクと想像をしながら、隣に座った人物の顔を見るべく、ゆっくり、
ゆっくりと目線を向けて行くと...
「――――なぁぁぁッ!?」
キキキ、キミはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
ルルルルル、『ルナリーナ・ヴァンフォーレス』ッ!!!?
俺の目線に映って見えるは、ゲーディス学園で一番人気のヒロイン、
『ルナリーナ・ヴァンフォーレス』がお日様の様な爽やか笑顔と
キラキラと光る蒼色の髪を輝かせて立っていた。




