10・クラスへGO!
「お願いします、先生!」
俺を先生に軽く会釈した後、側にある椅子にちょこんと座り『女神の神託』を
受けるべく、目の前に置いてある【セレナーディのクリスタル】にソッと手を
かざす。
「うむ、うむ。これは......」
先生はクリスタルに顔を近づけて目を凝らし、クリスタルに表示されてる
俺のステータスをチェックしている。
「うん、まあ何とか言うか...へ、平均ギリギリといったステータスと
スキル......かな?」
そして先生は申し訳なさそうな顔をして、俺のステータスとスキルを
伝えてくる。
あはは...平均か。そりゃまぁそうだろうね。
前にも言ったが俺のステータス...というよりか、このゲームの主人公の
ステータスは平均の及第点レベルなんだから。
そう...世間でいう所の主人公の評価は可もなく不可もない、
『ザ・普通』なんだよなぁ。
だから、エリートでも退治するのが難攻不落とされるであろう、
人のスペックを遥かに越えた存在の討伐、魔王退治なんて絶っ対に
冗談じゃないのさっ!
「そ、そうだなぁ...と、取り敢えず、最初は無理をせず、沢山の学科や
実技と色々とこなして、基礎を上昇させる事をキミにお薦めするよ...うん!」
「はは...お気遣いの言葉をありがとうございます。そうですね、先生の言う通り
基礎の上昇、まずはそれを重点に考えて行動してみますね!俺も学園長の言う、
理想のジョブを手にしたいので、頑張って身を粉にして精進します!」
「そうそう。まだ最初の段階。先は四年もあるんだ。気を落とさず、その四年で
勉学や実技の向上して頑張れよ!」
「はい!では、失礼します!」
俺は当たり障りのないお礼の言葉を先生に述べて深々と一礼すると、その場を
そそくさと離れて行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから数時間...
『女神の神託』が無事に終わった後、先生から渡された紙に書かれてある、
能力判定の結果とその能力値で選ばれた教室を目指して、一年生の教室が
並ぶ廊下を歩いていた。
「えっと。確か...俺の教室は、Fクラスだったよな?」
このゲーディス学園は能力ごとに教室を分けられる。
各学年ごとに能力判定の結果を踏まえた総合で最高の結果の集まりの
Aクラスから、最低の結果のFクラスまである。
つまり俺の能力は一番最低のランクなわけだ。
まぁ、この結果はゲームでも同じだし、分かってはいたんだけどね。
だってこのゲームの主人公って、別にエリートでもなんでもない
普通の一般人だから。
因みに主人公のステータス数値は、ゲームを始めるごとにスキル同様、
ランダムで違ってくる。
なので、初期ステータス数値が気に入る数値になるまでリセット、リセットと
繰り返すのが、このゲームでは基本的な技なのだ。
特に、とあるヒロイン攻略には、このリセットを繰り返す行為は絶対に
欠かかす事の出来ない、必須な作業でもある。
「ハァ...しかしリセットが出来ないとは、結構...いや、かなりキツいよなぁ...」
ゲームで今の俺のステータス数値が表示されてみろ、即座にポチッとリセット
コースだぞ、ホント。
このステータス数値で四年の間にCクラスまで駆け上がれとか、冗談だろと
嘆き叫びたいわっ!
「せめての救いは、冒険者エンドの条件がAクラスじゃないって事か...」
どう転んでもこんなステータスじゃ、Aクラスなんて夢のまた夢だしな。
俺は冒険エンドのフラグにAクラスという条件が入っていない事に
心の底から良かったと安堵する。




