71.あからさまにフラグ立てるのヤメテ
クーデターの首謀者はまさかのヴィンセント。あの人なにしてんの!? まぁそのおかげで俺は助かったわけなんだけど。
それにしても、ルーファスとヴィンセントに面識があったとは知らなかった。接点なかったように思うんだけど。
「ヴィンセントさんがですか!? なんで……いくら元Sランクハンターでアガサのギルド長だからと言って、何でこんな大それたことを、勝算はあるんですか!?」
いくらかつてはハンターとして有名人だったとはいえ、何がどうなってクーデターに至ったのかさっぱり分からない。
動機は? どれくらい賛同者がいるんだ?
先ほど爆発のあった城門方面から聞こえる騒音から察するに、相当大規模の襲撃がおこなわれているようだ。一体そんな人数をどこから集めたのか……。
「勝算と言うのなら心配ない。ヴィンセント殿は――国王の実兄だし、国王の実子であるグレイブ殿とロッズ殿もいることだし。賛同者は多く、勝算は8割方あるから心配はいらなし」
「え? なんて? 王の実兄と実子?」
ルーファスはさも当然であるかのように話すけれど、俺は情報過多のあまり、頭がパーンとしていた。
え? だって意味わかんないでしょ。ヴィンセントがクソ王の実兄で、あのグレイブとロッズがクソ王の息子? ってことはクソエカテリーナの兄弟!? え? えぇーっ!?
確かにヴィンセントがグレイブとロッズの叔父で、兄グレイブと弟ロッズというのは聞いていたけれど、王族云々の話は初耳だ。
「俺、アガサのギルドに勤めてましたけど、ヴィンセントさんたちが王族だなんて聞いたことありませんでした」
グレイブとロッズに至っては、俺の股間を見ても作り物だ何だ言ってサカってまさぐってきた変態だっ!! 危うくアーッ! なことになりかけた。それが――王子ってこの国ヤバない? 王女のエカテリーナもとんでもないクソ女だったし。
「一応彼らの身分については秘匿されているからね。ヴィンセント殿は先王の長子だったけれど、母親が側室で身分が低い女性だった。そのため正室が産んだ弟と王座を巡って骨肉の争いになるのを避けるために、自ら身を引いて出奔しハンターになったそうだよ」
「そ、そうだったんですか……」
「グレイブ殿とロッズ殿は、国王のやり方に反発しての家出だ。なにせ、王は今までの小競り合いと違って、本格的な大戦争をしようとしていたのだから」
何やら俺が知らない設定がバンバン出てくる。
あれ? これ俺の物語だよね? なんか俺よりも設定が濃い人多いんじゃない?
うっかり事故で死んで異世界転生してスキルの関係で女装しているだけの俺よりも、よっぽど人物的に掘り下げることが出来るキャラクターいるんじゃないの? あれ?
「このクーデターは、要は王族同士の争いなんだよ。魔族の国エンシスハイムに侵攻したい派閥と、戦争をしたくない派閥の争いさ。戦争をしたがっているのは国王と一部の貴族だけで、他の貴族や国民は戦争を望んでいない。だから王兄のヴィンセント殿を奉じてのクーデターということさ」
「あーだから、色々魔族のせいにしてヘイトを向けさせようと必死だったわけか」
戦争の気運を高めるために、勇者パーティーが全滅したことをレイラのせいにした挙句、レイラを魔族ということにしやがった。しかもベナンの町では、リア充を爆発させて44人も殺傷してそれも魔族のせいにした。
その時新たに一頭のワイバーンが飛来した。やってきたワイバーンにはアリア嬢が騎乗していた。
「ルー様!!」
「アリア、戦況はどうだ?」
「問題ありません! 既に本隊は城門を突破し、城内の制圧にかかっています。まだ国王やその一派は拘束できておりませんけど、時間の問題なのです! もう勝ったも同然なのです!」
アリアはそう言って胸を張る。
しかし俺は今の彼女の言葉を聞いて、俄然心配になった。そういうセリフは一般的にフラグというのだから……。
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あからさまにフラグをぶっ立てにアリア。
そして意外と濃い設定だったギルドのメンツ。甥だの伯父だのという話は、35話のところにちょっとあります。