68.雑に爆死
自分が死んだ瞬間なんて思い出したくもない。
少し考えるだけで、割れそうなほどの頭痛がする。本能的に思い出すことを拒否しているんだなと思う。
しかし俺は思い出した。思い出してしまった。
猛スピードで向かってくる車を、その運転手が狂気的な表情を浮かべていたのを。その運転手がタケルだったことを。
思い出したらやることは一つだ。
コイツ絶対に許さない! 殺す? いや俺の良心が痛むから殺しはしない。だから――。
「さあ、洗脳して私のメスにしてあげるよ!」
「バカ言ってんじゃねーよ、この腐れ外道」
俺は暴言を吐きながらニッコリとほほ笑んだ。
『タケルにスキル”魅了”が100%、”誘惑”が70%発動しました。相手の自我が強いです』
脳内アナウンスが流れる。
前回、奴は俺を女だと思っていたから『0%で性癖が一致しない』という謎アナウンスだった。
しかし、今なら可能だ。タケルの性癖は男の娘が好き。そして奴は俺が女装した男だと知ってしまった。性癖一致っ! ばっちりだ!!
「70%か……腐っても勇者か、意志は強いってか?」
「あっ……あぁ、貴方の尻にピー(自主規制)したいっ! 私の太いピー(自主規制)で奥にピー(以下自主規制)」
おっと、この小説はR15なので流石に直接的な卑猥表現は自主規制だ! しかもBL作品ではないので、男性同士のピー的なのもNGだ!
とにかく俺に卑猥なことをしたい妄想を吐き出してくる。要するに尻を差し出せということだ。
「お願いです! やらないか!?」
「やらねーよ! けっ、俺を轢き殺した野郎に尻の純潔を捧げるのだけは絶対に御免だね。おい、動くなよ」
「はいっご命令の通り動きません! だからやらせてっ」
正直言ってこいつに近づきたくはない。
“誘惑”が70%かかっているとはいえ、いつぞやのオークキングのように残った理性で抵抗される可能性がある。抵抗されて“洗脳”スキルを使われては厄介だ。
しかし――より確実により高いパーセンテージでスキル“男殺し”を発動させるには、濃厚接触で俺にメロメロにさせるしかない。
「タケルは俺に――レイに興味あるの? 気持ちいことしたいの?」
俺は布を少しだけ身体に巻き付けて半裸状態で、蠱惑的な表情を浮かべながら、タケルを堕としにかかる。
ふぅ、と耳に吐息を吹きかけてやる。
「あぁーレイくん、耳元でそんなぁ! そんなことされると、興奮しちゃうじゃないか!」
俺は奴の股間を見ないようにした。股間がズキューンとしている……オエッ! ウエッー!!
そして俺は意を決して――タケルの唇に熱―いキッスをかましてやった。
『タケルにスキル”男殺し”が90%発動しました』
脳内アナウンスが90%という高パーセンテージを告げる。
よし! 体を張った甲斐があったというものだ。
「ザマぁ見ろっ! これでお前は俺の恋奴隷だ!」
俺はタケルを前世の恨みも込めて、奴隷として活用することに決めたのだ。腐っても勇者、こんな奴でもスキルは超優秀!
それに、俺が城から抜け出すにはこいつの協力が必要不可欠なのだ。
◆◇◆
「ちっ、使えぬ勇者め! もうよい、処分する。矢を射よっ!!」
えーっ!? 嘘だろっ!?
さっき恋奴隷にしたばかりの勇者タケルは、王の命令で放たれた矢でハリセンボン状態にされてしまった。まだ息はあるのかピクピク痙攣している。
タケルの先導で城の脱出をはかった俺だったのだが、曲がり角でちょうど国王&大臣&騎士団員の集団に出くわしたのである。
俺は曲がり角の陰に隠れ、タケルに王たちの相手をさせてこの場をやり過ごそうと思った。なのにタケルはあっという間にハリセンボン。
王は清々したとばかりにタケルを忌々しそうに見つめる。
「全く、“洗脳”なんぞ危険なスキルを持ちおって。おかげでお前の我儘に長いこと付き合わされた。ようやく始末できた、清々する! おいまだ息があるぞ、アレを投げろ」
「はっ!」
そして騎士団員はポイッとハリセンボン状態のスティーブに向かって、いつもの物を投げた。
破裂音と閃光がし、爆風が起る。――爆弾だ。
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せっかくの手ごまが雑に爆死しました。レイくん、残念!