64.彼女と彼氏? の再会
タケルのスキルは“洗脳”。
このスキルでマリーゴールドの記憶からユカを消したのか。そしてアヤトもこれにやられて女装してアヤカにさせられてるんだ。……何でそういう洗脳をかけたのかは、タケルのみぞ知るだけど。
「その優男、他には何か言ってなかった?」
「えーっと、もう半年も前のことだから……」
「そこを何とかっ!」
「んー、覚えているのは、王様から手渡された紙を見てスキルがどうのこうの言っているのと、その後アヤトとかオカマとかに触ってた。そしたら皆ぼんやりしちゃって……私にも触って来たんだけど“効かない、スキル遮断が”とか言ってて……私のことを軟禁するように指示して、アヤトを連れてどっかに行っちゃったの」
「“スキル遮断”? それって君のスキル?」
「多分。王様が私にスキルが書かれた紙を渡してくれたんだけど、『スキル遮断・肉弾戦(極)・自爆』って書いてあった……」
……どういうチョイスよそれ!?
スキル遮断はいいにしても、肉弾戦(極)は女の子にどうなの? それに自爆って死んでまうやん!!
俺よりも酷いチョイスのスキルかもしれない。
と、とにかく今は“スキル遮断”についてだ。
このスキルは本人の意思に関わりなく常時展開してあらゆるスキルを無効化するから、タケルはユカも洗脳しようとしたけれど失敗したんだ。
だから彼女だけは軟禁して、隔離していたんだ。自分のスキルが効かない相手だから、邪魔者だったんだ。
そしてタケルの“洗脳”スキルの発動条件は、相手に直接触れること。もしかしたら触れる場所とかの条件があるかもしれないが、とにかく触られなければ洗脳されることはなさそうだ。
くそっ! ここまでタケルのスキルについて分かっているというのに、無様に捕まっている状態では何もできやしない。悔しい。
ほぞを噛む思いで俺が悔しがっていると、牢屋に兵士たちが数人現れた。
「おいっ囚人ども! お前たちが断罪される時が来たぞ!」
どうやら最期の時が近づいてきているようだ。
◆◇◆
俺とユカは牢屋から出されて、謁見の間的な場所に連れてこられた。
俺たちがいた牢は、王城の地下牢だったようだ。
牢から出された時、俺たちはお互いの姿に驚いた。
ユカは俺を声や話し方から男だと思い込んでいたようで、実際に見たら女だったから目を丸くしていた。正確に言えば女装した男なのだが、彼女は俺を女だと思ったらしい。兵士もいたし、訂正している場合ではなかった。
一方の俺も、ユカの姿にビビった。彼女は女だったけれど、鈴を転がしたような可愛らしい声と打って変わって、大男のような体格で筋肉ムキムキマッチョガールだった。
納得のスキル“肉弾戦(極)”である。
女っぽいアヤトとムキムキのユカ、ある意味お似合いだけれど。そうか、世の中は広いなって思った。やはり大事なのは見た目ではなく、中身なのか……。
「さて、君たち、最期に言い残したいことはありますか?」
謁見の間――玉座に現れたのは王ではなかった。そこに座ったのはタケル。側にアヤカを侍らせている。
タケルは自分たち以外の兵士たちを下がらせた。
残っているのは、アヤカが操るゾンビたち30体ほど。スティーブとマリアンヌゾンビの姿がある。エカテリーナゾンビはファームで焼かれて再起不能になったのか、この場にはいなかった。
「えっ? アヤト?」
ユカがアヤカを見て驚愕に目を見開いた。
あー……やっぱり、アヤト=アヤカ(女装)だったのか。彼もタケルに洗脳されているとはいえ、ご愁傷様な有様だ。
こんな劇的再会を果たしてしまうのなら、先に俺がユカにアヤトの現状を伝えたほうが良かったかもしれない。しかし洗脳されている可能性が高いとはいえ、君の彼氏が彼女にされているとは言えなかった……。
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