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55.置いてけぼり

 既に俺以外の人はワイバーンに騎乗している。いつでも飛び立てる状態だ。

 あとは俺だけ――くそっ絡みついたツタが外れないっ!


 ギルドのメンバーも俺がピンチに陥っていることには気が付いてくれているようだ。


「レイラっ! くそっゾンビどもが邪魔でっ」

「誰かレイラちゃんを助けてやってくれ!」

「無理だっ、もうダメだ! ゾンビが押し寄せてくる!」

「レイラちゃんがゾンビにっ、もう手遅れだっくそ!」

「くそっもうダメだ逃げろっ!」


 遠くでギルドのメンバーが撤退する声がした。続いてワイバーンが羽ばたく音も。

 というわけで、ゾンビに邪魔され俺は救出されぬまま。


「ヤバイ、コレ俺だけ助からないパターンだ」


 ここまでやっておいて最後俺だけ置いて行かれるとか酷すぎないか? 誰だよもう手遅れとか言ったやつは。

 誰がそう言ったのかは分からないけれど、ツタに絡まれ転倒した俺をゾンビにやられたと勘違いした人が叫んでしまったのだろう。実際転倒した俺の姿はゾンビたちの陰に隠れて見えなくなってしまっていたし、そう思っても仕方がないのだが……。


 俺は懸命にツタと格闘するものの、ますます強く絡みついてくる。仮にツタを振り切ったところで、既にワイバーンは全頭飛び立ってしまっていない。


「くそっ……前世はいきなり突っ込んできた車に跳ね飛ばされて、気が付いたら死んでたからまだ良かったけど、今回はゾンビに食われるのか? 生きたまま食われる?」


 最悪の想像が脳裏をよぎる。ゾンビ映画とかでよくあるシーンだ、逃げ遅れた人が生きたまま引きちぎられて食われるシーン。身の毛がよだつ。それだけはイヤだ。


 必死にツタと格闘する俺の元に一体のゾンビが近づいてきた。

 ローブがめくれ無残な顔をあらわにしたゾンビ――こいつはエカテリーナだ。


 酷い有様だ。

 スティーブ同様に、死んでから少したってからアヤカにゾンビとして使役されたのだろう。腐敗が進み、眼球が垂れ下がっている。やはりスティーブ同様に、ところどころツギハギのパッチワークのような、一応修復あとのような縫い目がある


『ウゥ……ガ……グオ』


 何事かうめくように呟いている。

 流石に翻訳の指輪でも、そもそも言語として成立していないうめき声までは翻訳不可だ。

 しかし何となく言わんとしていることは分かる。


「エカテリーナ、このクソアマっ。“逃がすものか”って言いたげだな!」


 俺がそう吐き捨てると、エカテリーナゾンビはニヤリと笑った気がした。

 ますます俺を締め付けるツタの力は強くなる。既に足だけではなく、下腹部までツタに絡み取られて、このまま絞め殺される感じだ。


「ゾンビに生きたまま食われるよりは、絞殺の方がまだましか?」


 死してなおエカテリーナがレイラに向ける殺意には恐れ入った。

 これは俺の想像にすぎないが、ゾンビになっても生前強く思っていたことは行動に現れるのかもしれない。

 エカテリーナは俺への殺意。マリアンヌは治癒スキルとバカなところ。リア充ゾンビたちだって、よく見ると2人一組で行動しているように見える。生前のパートナーだったのだろうか。


 俺は既に若干諦めモードだった。

 しかし突然エカテリーナゾンビが炎に巻かれた。


「なっ!?」


 エカテリーナは炎に巻かれのたうち回る。そして動けなくなる前に俺を道ずれにしようとしたのか、俺にのしかかってこようとした。

 しかし更に強い炎がエカテリーナを襲い、とうとう彼女は動きを停止した。彼女は火葬されるかの如く、ただ燃えていった。


「……スティーブか」


 エカテリーナゾンビを焼き払ったのはスティーブゾンビ。

 ヤツはふらふらとした足取りで俺の方へ向かってくる。


「スティーブ、まさか俺のことを助けてくれたのか?」


 ゾンビが生前の思いを反映するというのならば、レイラに恋心を抱いてたスティーブがレイラを助けてもおかしくないと思った。


 しかし現実は甘くなかった。


「くっスティーブ、お前!」


 未だにツタに拘束されたままの俺に、おぞましい姿のスティーブが馬乗りになる。

 そしてスティーブは俺の首に手をかけた。そして強く首を絞めてきたのである。

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