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54.亡者の執念

 勇者×3、元勇者パーティーのゾンビ×3、リア充のゾンビ×44、王国騎士団員×100、大臣×1、計151人。

 対してこちらは、女装の俺、アガサギルドのメンバー×20、ファーム社長×1、ファーム従業員×10、計32人。

 うん、勝ち目はない。


「ここにいたって皆殺しにされるだけだっ、早くワイバーンに乗って魔族領に逃げ込むしかない!」


 俺はそう言うと地下施設の隠し扉を解放した。巨大地下空間の天井がフルオープンになり、偽物の空ではなく本物の空が現れる。


 ここにきてようやく社長は俺がレイだと気が付いたようだ。


「お前レイかっ、どうしたんだその恰好は!?」

「話はあとで!」


 俺はそう言うが、ギルドのメンバーたちからは「レイラちゃんが男装してレイ君になっていたんだ」という誤った情報が拡散しているのが聞こえた。

 しかし訂正している場合ではなく、俺は急いでワイバーンたちに指示をした。


「すまないっ皆、緊急事態だ! 俺たちを乗せて飛んでくれっ」


 しかしワイバーンたちも俺のレイラ姿に困惑している。


『レイノコエダがオマエハだレダ?』

「俺だ、レイだっ」

『ソノすガタハドうシタ、タシカにニオイはレイダガ……マァヨイだロウ。イヤなニオイモスル。シシュウがスルぞ』


 ワイバーンたちはゾンビの死臭をかぎ取り、不機嫌そうに翼をばたつかせる。早くここから飛び去りたいようだ。

 ワイバーンたちに急いで鞍やあぶみを取り付ける。


 その間、ギルドのメンバーが押し寄せるゾンビたちを押しと止めてくれている。

 勇者たちの陣営は、ゾンビを全面に押し出して、後方から王国騎士団が弓矢や投石、魔法で攻撃してくる。


 ゾンビたちはどれほど切られたり殴られたりしても、痛みを感じないようで、全く攻撃が通用しない。足を潰して動けなくするしか対策がなかったが、その状態になってもほふく前進で追いすがってくるから本当に恐ろしい。


 厄介なのはスティーブとエカテリーナのゾンビだった。生前のスキルを使ってくる。威力は生前の1/5ほどに劣化しているが、それでもスティーブの炎やエカテリーナの操る植物の攻撃は堪える。

 ヴィンセント、ロッズ、グレイブで相手をしているようだが、押されている。


 一方、治癒師マリアンヌのゾンビは、治癒のスキルで何故か俺たちを回復してくる。多分アヤカのスキルはゾンビごとの細かい調整が利かないのだろう。有難いのだが、たまに杖で殴打してくるので油断できない。

 治癒スキルではゾンビは回復しないのは助かった。


 とにかくゾンビは既に死人。操られているだけの人形。死や痛みへの恐怖なしに突っ込んでくる。


「流石は勇者を生贄に捧げて呼び出した勇者たちと言ったところかっ、勇者アヤカのネクロマンサースキル、マジで厄介だな!」


 アヤカのスキルの1つはネクロマンサー。他2つはネクロマンサーを補助するようなスキルだろうから、ゾンビを操る以上の脅威はないと思いたい。

 しかし勇者はあと2人いる。彼らがどのようなスキルを持っているか分からない以上は、さっさとこの場から逃げ出すしかない。多分強力なスキルかレアなスキルだろう。何といっても勇者を生贄にして召喚した勇者たちなのだから、生半可なスキルであるはずがない。


 そうこうしている間に何とか、ワイバーンたちが飛び立つ準備が完了した。

 ワイバーンは35匹、乗りたいのは32人。余裕だ。


「よしっ皆ワイバーンに乗ってくれっ」


 これで逃げられる――そう思って少し油断したのが悪かった。


「イデッ!」


 ワイバーンに乗ろうとした時、俺は何かに足を取られて派手に転倒した。

 足を見ると、植物のツタが絡みついている。


「くそっ、エカテリーナかっ!」


 俺はそれを外そうとするが中々外せないばかりか、ますます絡みついてくる。

 絶対に逃がすものか――エカテリーナのそんな執念を感じる。

 どこかでエカテリーナが高笑いしているのが聞こえる気がした。

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