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51.ファーム包囲

「ファームが! 俺の職場が勇者の集団に襲われてるだって!?」

「そうなんです! ワイバーンの違法飼育がバレちゃったみたいです!」

「ナンテコッタイ!!」


 ワイバーンの違法飼育なんて危ない橋だったし、いつかはこうなってしまうんじゃないかと思っていた部分もある。

 それにしたってよりにもよって勇者たちにガサ入れされるなんて、ついていないにも程がある。

 クソっ、俺の可愛いワイバーンたちがっ。


「それで! 俺のワイバーンは!?」

「レイ様のワイバーンじゃなくてルー様のワイバーンです!」

「そんなこまけぇこたぁ、どうでもいいんだよ! ファームはどうなってんだ!?」


 どうでもいいことに突っ込んでくるアリアにイラっとしながらも、ファームの同僚やモンスターたち、俺が丹精込めて育てていたワイバーンがどうなってしまったのか心配だ。


「私が見た時は、皆さん無事でした。ワイバーンも無事ですが国に接収されちゃう感じです。ただ――」

「ただ?」

「勇者の集団と、アガサギルドのメンバーとで争いになっていました。問答無用で皆殺しにしようとする勇者たちと、それを止めようとするギルドメンバーで戦っていました。勇者集団方が優勢に見えたので、もしかしたらもう今頃は――」


 俺はその言葉を聞いた瞬間居ても立っても居られなくなった。

 ファームに行かなければ!


 しかし部屋を飛び出そうとする俺を、ルーファスが制止した。


「レイ待つんだ! 戦闘スキルのない君が行ったところでどうこうなる問題じゃない!」

「でも!」


 それにワイバーンの違法売買の書類が多分事務所には保管されている。そんなものが見つかってしまったら、ルーファスにも捜査の手が及んでしまう。


「ルーファスさん、アンタは早く国に帰るんだ! 追手がかかる前にっ!」

「いや、しかしっ」


 渋るルーファスだが、アリアも俺の意見に同意する。


「そうです、早く帰国しないと、一刻も早く町を出ることが大切です! 購入済みのワイバーンは郊外の森に待機させていますから、町を出て森まで行ければワイバーンに乗って帰れますっ、だから早くっ」


 ルーファスがアリアの言葉に気をとられた隙に、俺はルーファスの横をすり抜けて家から飛び出した。


「待てっレイ! お前その格好で――」


 ルーファスが遠くで何か叫んでいた気がしたが、俺はそれを無視してファームに向かって一目散に走り始めた。

 女装したまま、レイラの姿のままで。



 ◆◇◆



 ファーム周辺はさながら戦場の様だった。

 俺は物陰に隠れて状況を観察した。

 現在戦況は動いていない。膠着状態というよりは、勇者方が攻撃を中断しているという感じに見て取れる。


 ファームには社長や社員が立てこもり、アガサギルドのメンバーがそれを守っている。

 対するは勇者の一団および王国騎士団100人ほど。勇者タケルとアヤカ、マリーゴールドなんちゃらかんちゃら。そしてネクロマンサーアヤカが操る、スティーブ、エカテリーナ、マリアンヌの死体。更には――。


「何じゃありゃ……グロすぎる。まさかアレはカフェで爆死したリア充たちのなれの果てか?」


 赤黒く焼けただれた死体共が、ゾンビのようにうじゃうじゃとファームを包囲している。スティーブたちとちがってローブなしのむき出し状態だ。

 おおよそ40体ほど。犠牲者は44人と言っていたから、数的にも大体一致する。


「あのアヤカって勇者は、人の死を何だと思ってやがるんだ! 自分で殺しておいて、更にその遺体まで操るなんてっ」


 多分何とも思っていないのだろう。

 現に、今もあの女は馬鹿そうにタケルに腕を絡ませて笑っていやがる。タケルもニヤニヤと笑みを浮かべ、この地獄のような光景を笑って見ていた。

 マリーゴールドどうのこうのは、まともな神経をしているようでトンでも化粧の表情からは、強い不快感がにじみ出ていた。


「タケルとアヤカ、あいつら頭のネジがぶっ飛んでいやがるのか? 前の勇者ソウタとはエライ違いだっ」


 俺が毒づいていると、ファーム側に動きがあった。


 ギルドメンバーにガードされながら、メガホンを持ったヴィンセントさんが姿を見せたのである。

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