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47.遭遇

 イラついた時のストレス解消法!

 それはっ――。


「女装だーぁ! 女装してやるー! もう我慢できないっ!!」


 最後にレイラになったのは1年前が最後だ。

 勇者パーティー爆死事件でレイラがお尋ね者になって以来、俺は化粧道具こそ手放さなかったものの、レイラになることは1回もなかった。自分の家でさえ、念には念を入れて女装を封印してきた。


「いいや! 限界だ女装するね! 今だッ! 俺には女装が必要だ!!  女装! やらずにはいられないッ! ヒャッハー!」


 というわけで、俺は色々ストレスやらなんやらが積み重なって頭がパーンとした結果、封印していた禁断のレイラになることにしたのである。

 もちろんレイラの姿で外を歩き回るわけにはいかない。お家の中でだけ、俺一人の自己満足のためだけに女装するのだ。



 身長168cm、1年前に比べて1cmだけ伸びだ。だがこれが俺の成長限界だろう。これ以上の成長は期待できそうにない。

 女性としては結構長身、モデルであればこれくらいの身長は普通だ。男としてはもう少し欲しかったところだが、まぁ子供の頃のチビな身長から考えれば、何とか頑張って伸びた方だろう。


 スレンダーなモデル体型。

 胸がないのはどうしようもないので、パットを詰めてBカップ程度を再現。

 爪は赤いマニキュアを塗る。

 若干気になる喉仏は、幅広のチョーカーで首元をガード。

 髪はオイルを少し垂らしてツヤツヤさせて、胸元付近でふんわりカール。


 ワンピースとかドレスは、俺が買うのは不自然極まりないので持っていない。

 代わりに大きなサテンの布を上手く体に巻き付けて、ドレスを再現。


 頭のてっぺんから足や指先に至るまで、洗練された女性の所作をイメージして美しい立ち居振る舞いを心掛ける。


「1年ぶり、レイラ。相変わらず……いや、1年前よりも確実に美しいよ俺」


 元々スキルとの親和性を高めるために始めた女装は、すっかり俺の趣味となっている。趣味を制限されることほどツライことはない。


 せっかくの女装も、俺が鏡で見るしか楽しむことが出来ないのは残念過ぎる。

 レイラがお尋ね者にさえなっていなければ、この姿で町に出たいところだ。誰もがレイラから目を離せない。その眼差しを独り占めにする罪深い俺。その瞬間がたまらないというのに。


「せっかく本気で化粧したってのに、誰にも見せられないなんて本当に残念でならない。昨日のマリーゴールド・ハート……なんだっけ? とにかくマリーとか言うヤバイオカマが人前に出るのが許されて、この美しいレイラが活動自粛ってのは納得できん!」


 方向性が違うといえばそこまでなのだろうが、同じ女装愛好家としてアレはどうなのかと思う。


「もう少し女に寄せる努力しろや! スネ毛をそるなり、化粧のテクニックを上げるなり。あれじゃバケモンじゃねーかよ!」


 アレは他人に見せるための女装ではない。完全に自分が楽しむため、自分自身の自己満足のためだけの女装だ。

 それが彼? 彼女? のスタイルなのだろうが、やはり納得できないものがある。


「あれが勇者とか世も末だろ。ヤバげな男に、頭悪そうなネクロマンサー女、そして男全開のオカマ……。向こうの世界はアイツらが暮らしている日本はどうなってんだ? 世紀末か?」


 俺はグジグジ独り言で文句を垂らしながら、紅茶を入れた。


 やることが無い。女装してしまっているから、このまま外にも行けないし。

 1週間社長から休みをもらったものの、正直言ってやることが無い。暇だ。いつもならファームで違法飼育ワイバーンのお世話をしている時間だというのに。



 しかし、不意に玄関の鍵がカチャカチャと開けられる音がした。


「は? 何?」


 俺がびっくりしていると、玄関を開けて部屋に侵入してきた人物と鉢合わせしてしまった。


「え? ルーファスさん」

「何故……いつもはファームで仕事をしている時間では……」


 ルーファスはびっくりしただろう。

 いないと思っていたはずの部屋の主がいるし、しかも女装していたのだから。

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