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44.新たな勇者たち

 翌日俺はファームに出勤した。

 精神的にやばかったから本当は休みたいと思ったが、部屋に一人でいるよりもファームのモンスターたちにモフモフ癒されたかった。モフモフセラピーしたかった。


「レイくん、昨日のカフェ大爆発事件聞いた?」

「ええ、実は近くを通っていて……本当に酷い有様でした。すみません、ちょっと思い出したくないので……」

「ご、ごめんね、嫌なこと聞いちゃって!」

「いいえ、大丈夫です」


 ファームの職員たちの間では、昨日の大事件の話でもちきりだった。

 俺は思い出したくないので殆ど話には加わらなかったが、どうしても耳に入ってきてしまった。


「なんでも、犯人は魔族らしいぜ。王国騎士団が調査したらしい。今その魔族を騎士団が探してるんだってさ」

「マジかよ、そういや1年前に勇者様たちを殺したレイラって魔族も捕まってないよな」

「今度の勇者様方がベナンに来るのって今日だろ? その牽制のための攻撃なのか? 前の勇者様だって、魔族の先制攻撃で亡くなったんだろ」

「全く、物騒な世の中になっちまったもんだぜ」


 犯人は魔族……事件の調査に当たった王国騎士団は、そう結論付けたらしい。確かにもっともらしい理由だ。


 だが俺はどうもしっくりきていなかった。

 そもそも勇者ソウタのパーティーが全滅したのは、魔族のせいではない。レイラを原因にして、パーティーが仲間割れを起こしたのが原因だ。


「あの時と一緒だ……あの時も、国王は事件を魔族のせいにして、ヘイトを魔族へ向けさせた」


 それに俺が見た犯人の姿。無残な有様になっても動いているスティーブが、カフェを焼き払ったのだ。

 国王が引き取って埋葬したはずの遺体が何故?

 警備が最も厳重のはずの王都に埋葬されたというのに、魔族がスティーブの遺体を盗み出す? そんなことが出来るのだろうか。もしそんなことになっていたら大騒ぎになると思うのだが……。


「レイ、ちょっといいか?」


 つい考え込んでしまっていた俺は、社長の声で現実に引き戻された。


「はい、どうかしましたか?」

「お前、大丈夫か? 酷い顔色してるぞ」


 寝不足――ではない。昨日は気絶するように夕方前には寝てしまい、朝までぐっすりだった。夢も見なかった。

 それほどまでに精神的に疲れていたのだ。


「さっき聞いたんだが、お前昨日の事件現場近くにいたんだってな。酷い有様だったと聞いた」

「えぇ、まぁ……」

「お前、暫く休め」

「え?」

「無理に働かなくていい、今はゆっくり休め。1週間休みをやる、欠勤にはしないから気にするな。家でのんびりするなり、何処か気晴らしに遊びに良くなりしてリフレッシュしろ」


 俺はモンスターたちのモフモフに癒されたくて出勤したのだが、俺の顔色の悪さを見かねた社長が俺に休みをくれるという。有り難いような、有り難くないような……。


 そうして俺は1週間強制休養を与えられることになってしまった。

 俺のモフモフセラピー……。



 ◆◇◆



 ファームから強制帰宅させられた俺は、昨日の現場近くを通りがかった。まだ焼けたような臭いがするような気がする。俺はあまりそちらを見ないように顔を背けた。

 しかし何故か人だかりができているように見える。


「昨日の事件の野次馬か? それにしちゃ多いな。何かあるのか?」


 俺は気になったが、好奇心を自制しないとろくなことにならないと身に染みていたのでその場をあとにすることにした。


 人だかりの方へ向かっていく人たちとすれ違う。

 彼らは口々に「勇者様がいらっしゃった」と言いながら、人だかりの方へ走っていく。


「そう言えば、新しい勇者様方が今日ベナンに到着するって言ってたな……。事件現場に献花にでも来たのか?」


 俺はかなり迷ったものの、その新勇者とやらを一目見たいと思ってしまった。どうしても脳裏に勇者ソウタの最期の姿がチラついたからだ。


「……確かあの通り、2階にテラスがあるバーがあったな。そこから見てみるか」


 少し遠くから見るくらいなら良いだろう――そう思って俺は、バーへと足を向けたのだった。

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