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43.死者の復活

 命からがら、俺は自分の家に帰ってこれた。

 怪我はなく、ルーファスに渡す予定の菓子折りも無事だった。本当に奇跡的なことだった。


 ただし俺の精神は無事じゃなかった。

 凄まじい吐き気と嫌悪感で、俺は自宅に戻るなりトイレで吐いていた。吐き気の原因――爆発で地獄絵図と化したカフェの惨状を見たからではない。


 俺は見た、確かに見たのだ。


「うっ……、何でだ? リア充爆発しろとは思ったが、本当に爆発して欲しかったワケじゃないのに! なんでアイツが、スティーブの野郎がいやがるんだよ!? オエー!!」


 俺は止まらない吐き気と戦いながらも、先刻の恐ろしい光景を思い出した。



 ◆◇◆



 ローブの男が剣を抜いた瞬間、剣に炎が絡みつき、リア充たちで溢れていたカフェの店内は一瞬にして爆風と業火に包まれた。


 入口付近に座っていて一瞬で焼死した者はまだ良かった。入口から少し離れるにつれて、火達磨になってのたうち回る人や、酷い火傷を負ったものの死にきれずにうめき声をあげる者が溢れた。

 正に地獄絵図――。


 俺が無傷だったのは、奥まった席に隠れるように座っていたことと、俺よりも手前の位置に座っていたルーファスと一緒にいた女の子が、強力なシールドのスキルを発動したためだ。そのおかげでついでに俺もシールドに守られる形になったのだ。


「ルー様っ、ご無事ですか!?」

「私は大丈夫だ! くっ、アレは一体なんだ? 生きている人間ではないぞっ」


 ルーファスが入口付近を見ながら叫ぶように吐き捨てる。


「此処は危険です! とにかく逃げましょうっ、爆風で壁が崩れています。こちらから外へ!」

「っ、助かった、アリア」


 ルーファスとアリアと呼ばれた女の子は、崩れた壁から外に逃れた。

 そして俺もすぐに同じように崩れた壁からカフェの外へ逃れ、そのまま自宅へ逃げ帰ったのだ。



 トイレでゲーゲー吐きながら脳裏をよぎるのは、爆風に襲われる一瞬の光景。

 爆風が起る瞬間、俺はローブがめくれ上がりその男の素顔がされされるのを見た。確かに見た。


「あれは間違いなくスティーブの野郎だった……。オエーッ! ゲロロロロロッ」


 しかも生前の姿、結構イケメンだった頃の姿ではない。

 思い出すだけでおぞましい。凄まじい嫌悪感と寒気がする姿。


 エカテリーナのヤンデレ大爆発に巻き込まれて、奴は王女と共に爆風で飛ばされて木にぶら下がるようにして死んでいた。グロ注意死体――あれが数日たって腐敗したような姿だった。目玉はデロンと垂れ下がり、顔の皮膚はところどころ不格好につぎはぎして縫い合わされたような姿……。


「グロすぎんだろありゃ、いったいどうなってんだ」


 ルーファスはアレを“生きている人間ではない”と言っていた。確かにその通りだと思う。アレは絶対に死んでいる。

 ならアレは何なんだ?


「何かのスキルか? ゾンビ……死体を動かすスキル……ネクロマンサー?」


 かなりのレアスキルだが、ありえない話ではない。むしろそのスキルであって欲しいと、心からそう思う限りだ。もしあの状態でアイツが生きているのなら酷すぎる。

 いくらスティーブの野郎を恨んでいたからと言っても、俺は死してなおあんな姿を晒しているスティーブが哀れに思えた。


「スティーブとエカテリーナ、マリアンヌ。勇者ソウタの遺体は消えちまったからいいとして、あの時死んだ3人の遺体は国王が引き取って埋葬したはずじゃなかったのか? もう一年も前の話だぞ? 一体どうなってるんだ」


 とにかく俺は精神的に限界だった。

 もう何も考えずに眠ってしまいたかった。


 ルーファス女説立証? の方も物凄く気になったけれど、あの会話を聞く限り多分本当に女なのだろう。人間不思議なもので、女ですと言われれば確かに女に見えてくるから不思議なものだ。確かに所作は男ではなく女っぽかった気もする。

 男よりイケメンの女。世の中は広い。まぁ俺みたいな男もいるんだ、ありえない話でもないだろう。


「あぁ……買い物なんか行かなきゃよかった……」


 俺はそう呟いて目を閉じた。

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