41.リア充爆発しろ
ルーファスに大迷惑をかけてしまったお詫びに、俺は菓子折りを買いに町へ出た。
昨夜あんな泥酔状態だったのに二日酔い一つなく、体長はすこぶる良い。少し不思議に思ったものの、別に好き好んで二日酔いに苦しみたくなかったのでラッキーと思うことにした。
「また警戒が厳しくなってるな……」
通りを見渡すと一目でわかる。
1週間前に買い物に来た時よりも、兵士やハンターと思われる人が目立つ。そこかしこで兵士が見回りをしているし、物々しい雰囲気だ。
「こりゃさっさと菓子折り買って帰ったほうがよさそうだ」
この警戒の原因は、残念な死を遂げたソウタに替わって、追加召喚されたという3人の勇者だ。
噂によると、1人目の勇者ソウタの失敗を踏まえて、今回は王国騎士団やら腕利きのハンターやらがしっかりと守ってレベル上げにいそしんでいたらしい。その結果魔王軍と戦えるだけの練度に達したようで、そろそろ実戦投入という運びになったそうだ。
なので、もう少しでこの魔族領との国境に近いこのベナンに勇者×3が立ち寄るのだそうだ。
いよいよ本格的な魔族との戦争が近づいてきているということ。
「今までもずっと魔族とは小競り合いやらなんやらは続けてきていたが、勇者×3の投入ってのは本格的にドンパチやるつもりなんだろうな……。ベナンは魔族領に近いがそれなりに距離はあるから、人間側が負けでもしない限りはこの町が戦場になることはないだろうが……」
ワイバーンの違法飼育という問題点はあるものの、俺はせっかく見つけた天職を手放したくなかった。この町から離れるという選択肢は、余程戦火が迫ってこない限りにはするつもりはなかった。
「早く菓子折り買って帰ろう。ルーファスさんはどんな菓子が好みだろうか」
そんなことを考えながら、俺はショップでお菓子を選んだ。
過度に高価なものでも良くないが、安物というわけにもいかない。彼の好みは詳しくは分からないが、これまでの付き合いから甘いものは好きだとは知っている。男性には珍しく、かなりの甘党だ。
「すみません、これ贈り物にしたいので包装お願いできますか?」
「かしこまりました。リボンと造花のバラ飾りもつけることが出来ますが、どういたしますか?」
「あー、じゃあそれもお願いします。リボンの色は――このプラチナカラーで。造花の色はパープルでお願いします」
何となく、ルーファスの髪の色と目の色に合わせて選んでみた。容姿に合わせた色だと彼が気が付くかは分からないが、そういう気遣いをされて悪い気もしないだろうと思った。
◆◇◆
菓子店を出ると、既に昼時に近い時間帯だった。
「そう言えば今朝は色々頭が混乱していて、朝食も食べないまま部屋を出てきてしまった。腹が減った」
早く帰る予定が、意外と菓子店で悩んで長居してしまったこともあり、俺は昼食をとるべくカフェに向かった。
が、入店して早々に後悔した。
「ちくしょう、休日のカフェなんてカップルだらけじゃねーかよ。失敗した。くそっ、リア充爆発しろっ」
店内はカップルだらけ。俺のようなお一人様のしかも男っていうのは殆どいなかった。
入店してしまったものは仕方ないので、俺は目立たない端っこの方の席に座った。観葉植物の陰に隠れて、ちょうど死角になっているラッキーな席が空いていた。
「くそっ、さっさと食べて店を出よう。……あっ?」
すぐ近くのテーブルから聞き覚えのする声が聞こえた。
俺は観葉植物の陰から覗くと、何とルーファスがいた。しかも彼女っぽい可愛い女の子と一緒だ!
「くそう、ルーファスお前もか! お前もリア充か、この野郎」
俺はギリギリっと歯を食いしばって、悔しさを味わった。
これだからイケメンはっ!
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