40.無事?
ルーファスに背負われて、俺はゆらゆら心地よい揺れに身を任せながら自宅に到着した。
俺の意識の半分以上が夢の世界に旅立っていたが、それでも完全に意識を落とさないように踏ん張っていた。
一体どうしてこんなに酷く酔ってしまったのだろうか? ルーファスには迷惑をかけてしまった。せっかく俺の誕生日を祝ってくれたというのに。
何か身体も熱いし……全部脱いでしまいたい。
「部屋の鍵はどこですか?」
ルーファスが鍵の場所を聞いてくるが、俺はもう唸る気力も残っていなかった。
「……勝手にカバンの中身を漁りますね」
ルーファスがカバンを漁り鍵を取り出す。何とか部屋の中に入り、俺はベッドに降ろされた。
もう意識は限界だった。
自分の部屋に帰ってきて、自分のベッドに横たえられて……もう俺は安心しきってしまっていた。
たださっきから体が熱いので、何とか服を脱ごうとする。しかし酔っぱらっているせいで指先も上手く動かず、シャツのボタンが上手く外れないし、ベルトも外せない。ガチャガチャやってみるが無理だ。脱ぎたいのに脱げない。
「脱ぎたいんですか?」
そうだ、ルーファス。まだ部屋にいるんだった。
「……仕方ないですね、脱がせてあげますよ」
そう言って彼は俺のシャツやズボンに手をかける。
あっという間にボタンは外されて、ズボンも降ろされる。
俺の頭の中で警鐘が鳴る。
このままひん剥かれたらヤラレルかもしれない。いくらなんでも下心なしにここまで丁寧に世話をしてくれるだろうか?
やっぱりルーファスは俺の尻を狙ってるんだ――あぁ、でも俺はもう動けない。もうダメだ……意識が落ちる……。
「やはり、男……よかった」
意識が落ちる瞬間、俺はルーファスのそんな呟きを聞いた気がした。
◆◇◆
チュンチュンと軽快な雀のさえずりで目を覚ました。
「……やってしまった」
俺は目を覚ますと当時に、昨夜のことを思い出して頭を抱えた。
今日が休日で本当に良かったと思う。
二日酔いのような酷い体調ではない。ただ少し気持ちがフワフワしたような気怠さと、一方で何かすっきりしたような妙な感覚だ。
そして思い出したのは昨夜の失態。
「俺はなんという失態をしてしまったんだ……。お客様に誕生日を祝ってもらっておいて泥酔、自宅まで運んでもらった上に、着替えまで……どんだけ迷惑をかけたんだ」
しかも何かいい夢を見ていた気もする。
「何か骨太のおなごとにゃんにゃんしている夢を見た気がする……まさかっ!?」
俺は慌てて飛び起きて、自分の尻を確認した。
「……別に違和感も何もない、流石に俺の考えすぎか」
俺は安心して、再びベッドに倒れ込んだ。
「ルーファスさんにここまで世話してもらっておいて、疑って自分の尻の心配するとか、最低だろ俺」
起きた俺はきちんとパジャマに着替えさせられており、脱いだ服はきちんと畳まれていた。
テーブルの上には、ルーファスさんからのメモがあった。メモの内容は、外から鍵を閉める都合上スペアキーを預かるというものだった。
迷惑をかけた上に疑うなんて。
俺は自己嫌悪に襲われて、俺は枕に顔を押し付けて唸り声をあげた。
「……いや待てよ、夢だと俺がヤラレたんじゃなくてヤッタほう? まさか俺がルーファスさんを? いや、ないない」
あんなカッコいい人が俺とどうこうなるわけがない。
とにかく俺の尻は無事だし、ルーファスに迷惑をかけたのは明らかだった。とにかくお詫びをしなければいけない。
そう思った俺は、取りあえず町へ出てお詫びの品を購入することにした。菓子折りくらい用意して謝罪しなければ、流石に失礼が過ぎるというものだ。
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