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39.よくありがちなお持ち帰りされるシチュエーション

 ワイバーンの違法飼育に加担させられること既に3ヶ月――俺は17歳になっていた。


 勇者パーティーが全滅してから間もなく1年になる。

 風の噂では、国王は王家に伝わる秘術とやらで、また異世界から勇者を招いたそうだ。しかも今度は勇者2人に聖女1人……いや、勇者1人に聖女2人という話もある。また日本人なのか、ちょっと気になる。

 とにかく国は本気で魔族と戦う準備をしているのだ。



 魔族との国境に近いベナンの町も、日に日に警戒態勢が強化されている。


「おい、お前! 市民証を提示しろ」

「はいはい、どうぞ」


 最近では酒場に入るのでさえ、こうして身分証提示が必須になってしまった。実に面倒な限りである。

 しかも俺はワイバーンの飼育という絶対に知られてはいけない秘密がある。

 ワイバーン飼育や訓練については、どちらかといえば癒しだ。あの竜属の武骨さがたまらん。男なら皆好きだろドラコンとか? 憧れるだろ?


 とはいえ、俺はストレスMAX状態だった。

 ワイバーン飼育の秘密というストレス、相変わらず女装が出来ないストレス、そして――。


「すみません、遅くなってしまって!」

「いいよ、私も今来たところだし」


 ルーファスの相手をしなければいけないストレス。


 ルーファスはワイバーンの違法取引のお相手。社長にとって最重要顧客。

 以前は何だかんだ理由をつけて俺はルーファスの誘いを断っていたけれど、こうして同じ秘密を共有する者同士になってしまって以降は、お互いの信頼関係維持のために誘いを断るわけにはいかなくなってしまった。ツライ。


「17歳おめでとう、レイ」

「ありがとうございます、わざわざ俺のためにすみません……」

「かまわないよ、私が好きでやっていることだし。ほら、好きなものを頼んで! 全部私が奢るから」

「本当に申し訳ないです……」

「いいんだよ、いつも君の売ってくれる子たちは皆最高だからね。あんなに良く調教された子たちは本当に素晴らしいよ。あっ、これ誕生日プレゼント、開けてみて」


 そう言って渡された包みを言われるがままに開けてみる。


「あの、ルーファスさん? これは……」


 中にはアクセサリーが入っていた。女の子なら誰でも目を輝かせてしまうような。

 しかし俺は男だ。俺は物凄く困惑した。


「おっと、すまない。間違えてしまった、こちっちだった」


 そう言って似たような包みを取り出す。そちらの中身は普通に万年筆のセットだった。


 安心した……。

 ルーファスは女性へのプレゼントを買っていて間違えて俺に渡した。ということは、そういう相手がいるということである。つまりはルーファスの恋愛対象は男ではなく、女。

 俺の尻が狙われているわけじゃなかった……本当に安心した。



 そうしてルーファスと食事をすること数時間――俺は物凄く酔っぱらっていた。


「大丈夫かい、レイ?」

「……うっ、うー……」


 おかしい……。

 俺は酒に弱くないはずなのに、ほんの数口程度しか飲んでいないはずなのに。物凄く酔いが回っている。まともに言葉が出てこない。

 前後不覚一歩手前。

 まだかろうじて意識はあるものの、いつぶっ倒れてもおかしくないレベルで酔っぱらっていた。


 なんでだ? なんでこんなことになってるんだ? お客の前でこんな醜態を晒すなんて、ありえない。


「家まで送って行こう、家はどこだい?」

「う……うぅ……」


 俺はうめき声しか上げられなくて、鈍った頭でどうにかこうにか身分証をカバンから取り出した。身分証の裏面には俺の住所が記載されている。


 ルーファスはそれを確認して、ニヤリと笑った気がした。

 彼は俺を軽々と背負うと酒場をあとにした。

 そんな光景は所々で見られる光景で、誰も俺たちに気を留める者はいなかった。

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