27.大爆死
「スティーブっ、おやめになってください!」
必死にスティーブの剣技を躱すエカテリーナ。
王女という身分だけで勇者パーティーに入ったわけではなく、それなりの実力はあるようだ。スキルだろうか? バリアのようなものや、襲い来るスティーブを拘束しようと木々のツタを操って抵抗をしている。
しかしスティーブもスキルを使い、剣に炎を乗せて、エカテリーナが操るツタを焼き払っている。
「王女殿下! 貴女のような女に私のレイラさんが殺されたなんてっ、命を持って償っていただく!」
「スティーブっ、私は本当のことを言っているのです! レイラさんはオークに――」
「黙れっ!」
「きゃぁ!」
スティーブが一際強い斬撃を放ったとき、エカテリーナとスティーブの間に割って入った者がいた。
ソウタだ。
「お前らいい加減にしねーか! 仲間だろうが!」
ソウタはこの中では一番まともだったようで、本当に至極当然のことを言っている。
指南役のヴィンセントさんの指導の賜物だろう。召喚当初の悪行はなりを潜め、荒々しくはあるが凄くまともなことを言っている。
「しかし勇者様! その女はレイラさんをっ」
「だとしても殺していい理由にはなんねーだろっ! 今俺たちがやるべきなのは、オークからレイラの身体を取り返すことだ!!」
「くっ、そうですがっ!」
「こんなことをして、あの心優しいレイラが喜ぶわけないねーだろうがっ!!」
嬉しいかどうかと聞かれたら、若干嬉しい。というのが本音だ。
なんせマリアンヌもエカテリーナも、俺をオークに辱めさせて殺そうとしたのだから。復讐心はある。……ただ死んで欲しいとまで思っていたわけでもなかったのだが。
「お2人ともお止めになってくださいっ、勇者様っ、スティーブっ!」
「うっせぇ!」
「お前は黙っていなさい!」
今度はエカテリーナが止めに入ろうとするが、2人に一喝されてしまった。
彼女は今までそんなことを言われたことが無いようで、プライドを傷つけられたのか、怒りでプルプル震えている。
スティーブよりもソウタの方が強いようで、スティーブの剣技はエカテリーナに届かない。
スティーブもソウタに諭され少し冷静になったのか、はたまたレイラ殺害に関わっていないソウタと戦うのを躊躇したのか、剣技は精彩を欠いている。
そんな男2人の戦いが続く。
しかし1人、エカテリーナの様子がおかしかった。
彼女は怒りに震えるように拳を握りしめながら、何事かをぶつぶつと呟いているようだ。
「……皆して、そうやってレイラレイラレイラレイラっ!!」
エカテリーナは怒りが爆発したように、レイラの名を憎々しく叫んだ。
そして――。
「私のものにならない男なんて許せないわっ! スティーブっ、お前なんぞ死んでしまえっ!!」
突然ヤンデレたエカテリーナは、争うソウタとスティーブに向かって何かを放り投げた。
その瞬間凄まじい閃光と爆音が響き、俺はとっさに岩陰に身を隠し小さく縮こまった。
凄い熱を感じる。
この大きな岩の陰に隠れていなかったら、俺もただでは済まなかったと思うほどの衝撃だった。割れて砕けた岩の破片や、地面の塊がボコボコ落ちてくる。
恐らくエカテリーナは爆弾のようなものを使ったのだと思う。
彼女は爆弾にこれほどの威力があるとは思っていなかったのかもしれない。だってあの至近距離でこの爆風に飲み込まれては、本人も無事では済まない。
バリアっぽいスキルを展開している雰囲気もなかったから、本当に何も考えずにアレをぶん投げてしまったのだろう。浅はかなことだ。
爆風が収まり、辺りは静寂に包まれた。
聞こえるのは川のせせらぎだけ。
俺はその惨状を見るのが怖くて、周囲が明るくなるまで岩陰に縮こまったまま微動だにできなかった。
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とりあえずタイトル回収しました(笑)