23.オークの巣にて
オークたちの巣は、崖下にぽっかり空いた洞窟の中にあった。
オークに担がれ無理やり連れてこられた俺は、葉っぱやら枝やら汚らしい布切れが積み重なった場所に乱暴に放り投げられた。
「やっやめろ! 俺に乱暴する気だな? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
必死に抵抗を試みるが、俺はオークに組み敷かれてしまった。
終わったっ! さよなら俺の清らかなお尻!
いや、俺が男と分かればそのまま嬲り殺しかもしれない。どっちにしてもろくなもんじゃない!
しかしまだ終わってはいなかった。俺を組み敷いたオークが吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばしたのはハイオーク。雑魚のオークよりもデカい。ムキムキの上級ハンターに良そうな体格だ。
どうやら誰が俺をヤルかで揉めはじめたらしい。
しかしそのハイオークも吹っ飛ばされた。吹っ飛ばしたのは、ハイオークよりも更にデカく2m以上はある。こいつはまさか――オークキング?
オークの群れは大体500匹。その内50ほどがハイオークで、リーダーのオークキングは1匹。まさに群れの王。
ギルドでバイトしていた時に依頼書で何度か見たことがある。推奨ハンターランクはA以上の大物だ。
そんなヤバイのが今俺の前にいて、俺を犯しにかかろうとしていた。
しかしオークキング相手にハイオークたちが抵抗をしている。俺を犯す権利を寄こせと――。
「ちゃ、チャンスだ! 今の内に何か、起死回生の策をっ」
俺はこの隙に最低限の荷物を詰め込んだ袋を漁った。
殆どが化粧道具――これじゃだめだ。
国王からもらった役に立たなそうなマジックアイテムも漁るが、めぼしいものはない。
「何だよ、簡単燻製セットって!? キャンプしてんじゃないんだぞ!」
あまりに酷いマジックアイテムのチョイスに、俺はあの王女にしてこの王様ありだと怒り心頭だった。
「あの王のやつ、俺が死んだほうが勇者が本気になるとか思ってたんだろうな! 愛する女の敵討ちとかっ! そうじゃなきゃ、こんなひっでーアイテム寄こさねーよ!!」
袋を漁るが使えそうなものがない。しかし最後に、1つの指輪が転がり出てきた。
「指輪? これは確か――言語が違う種とも会話できるってマジックアイテムか」
ブヒブヒ言ってるオーク相手に、例え言語が通じても話し合いになるとは思えない。
しかし――。
「待てよ、言葉が通じれば……もしかして?」
俺はもう半ばヤケクソで指輪をはめて、オークたちに向かって“スキル”を発動させながらこう言った。
「もう皆、私のために争わないでっ!?」
ニッコリスマイル、かなり引きつってはいたが何とかスマイル。
『オークにスキル”魅了”と”誘惑”が100%発動しました。ハイオークにスキル”魅了”が100%と”誘惑”が80%発動しました。オークキングにスキル”魅了”が100%と”誘惑”が30%発動しました』
脳内アナウンスキター!
言葉が通じるって素晴らしい。
オークたちに俺のスキルがかかった。皆して目がハートになっている。俺の言う通り、争いを辞めて動きを止め俺のことを切望の眼差しで見つめている。
オークキングへの“誘惑”のかかりが弱く、キングのみオロオロとしている。だが俺への好感度は100%爆上がりだ!
オークキングがブヒブヒと鳴く。
翻訳の指輪をはめた俺には、オークキングが何を言っているのか理解できた。
『コっ、コレは……オカシイ、ナにガ、オコッタノダ』
俺はこの機を逃すまいと、オークキングに近寄りボディータッチ。
異種であるオークに人間的な美意識が通用するのか不明だったが、俺はオークキングの腕に絡みつきパットで盛った胸を押し当てる。上目遣いにオークキングを見上げる。
そして再度スキル“誘惑”を発動させる。
「ねぇ、お願い? 私をお家に返して?」
『ハイヨロコンデッ!!』
『オークキングにスキル”誘惑”が100%発動しました』
脳内アナウンスさん、いつもお仕事ありがとうございます!
こうして俺はスキルを使って危機を乗り切ったのである。
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