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19.好奇心で死んだ猫

 各々の言い分はこうだった。


 勇者&スティーブ&大臣→パーティーは華やかな方がやる気が出る。可愛い子がいたほうが国民からの人気も出る。

 王女&治癒師→足手まとい。男に色目を使う女狐。

 ヴィンセントさん&王都のギルド長→非戦闘員がパーティーに加わるのは危険すぎる。


「あのっ、私は戦闘訓練も受けたことないですし、戦うなんて無理です!」


 私はそう主張するものの、勇者ソウタとスティーブは「俺が守る!」の一点張りで話にならない。


「大丈夫ですよ、レイラさん。貴女のことは必ず私が守って見せます」

「大丈夫だレイラ! お前のことは俺が守る!」


 いや、好きな女を死地に連れていくバカがどこにいる。……ここにいたが。

 とにかく、ふつーそこは「必ず帰ってくるから、待っていて欲しい」と「帰ったら結婚しよう」とか死亡フラグをぶっ立てるところじゃねーのかよ!?


 何とか引き下がってもらえないだろうかと、スキルを使ってみるも、2人とも意思が強すぎてスキル“誘惑”がかからず、操れない。

 流石腐っても勇者&勇者パーティーメンバーの実力ということか。くそっ!


「勇者様とスティーブ殿の言う通りだ! こんな美しいお嬢さんが勇者パーティーに加われば、人気もうなぎのぼり間違いなし!」

「おいっ大臣、てめーの人気取りのために俺の娘を危険に晒すんじゃねーぞコラァ!」

「そうよ、そうよ! あんな女、ただの足手まといじゃない! ソウタ様に倒れ掛かったのだって演技よ! 演技!!」

「なんだと!? 俺の娘を足手まとい扱いするのか!?」

「アガサのギルドの受付嬢に“女狐”と呼ばれている性根の悪い女がいると聞きましたわ。そんな人がパーティーに加わるなんて……」

「レイラさんは女狐なんかではない!」

「頼むっ、みんな落ち着いてくれ!!」


 王都のギルド長エドガーさんが悲鳴を上げて制止しようとする。しかし誰も聞く様子がなく、全員好き勝手に言い合っている。

 駄目だ埒が明かない。


 結局この日は、エドガーさんが私をこっそりギルドから逃がしてくれた。

 エドガーさんは私の処遇については王様に指示を仰ぐことにするからと言って、とりあえず私は宿屋にいるよう言われた。


 処遇も何も、私は戦えない。パーティーに加われば魔王軍から格好の標的にされるのは目に見えている。

 王様は私のことを諦めるように、あの馬鹿どもを説得してくれることだろう。

 そうだ、そうに違いない――。



 ◆◇◆



 大変なことになってしまった。

 俺の元には一通の手紙――陛下直々の命令書である。


 王都のギルド長エドガーさんに言われた通り、俺は宿屋に引きこもっていた。

 そこに王様の使者を名乗る数人がやってきて、この手紙を置いていったのだ。


 内容は――。


「勇者ソウタのパーティーに加わり、ともに魔王軍と戦え……んなことできるかボケがぁ!!」


 俺は異世界転生者と言っても、うっかり交通事故で死んだただの男子高校生だ。そんな俺が勇者パーティーに加わっても戦力外である。もう死ぬしかない。


 俺の希望に反して、王はソウタやスティーブの意見を尊重してしまった。

 とにかく手紙には王の言い訳がつらつらと書かれていた。


「勇者やスティーブが、レイラが一緒じゃなきゃ魔王軍と戦わないと駄々をこねているから……。一緒に同行するだけでいいから、何とか2人をやる気にさせて魔王軍と戦ってくれ?」


 結局のところ、俺は勇者をやる気にさせるための生贄にされたわけだ。


 勇者が戦わないというのだけはどうしても避けたい。

 王女や治癒師、ヴィンセントさんの意見よりも優先度が高い。

 犠牲になるのは俺一人……。


 あまりにも非情な決定に俺は泣いた。

 俺が死なないように色々なマジックアイテムを融通してくれるとか、そんなこともつらつらと書かれてはいるが、そういう問題じゃない。


 戦えない、命の危険がある。もちろんそれも大問題だ。

 それ以上に大問題なのは、俺を敵認定している王女様と治癒師がパーティーにいるということだ。こんな恐ろしいことは他にない。

 2人とも黙っていれば超可愛い。しかし俺の最高の“レイラ”の足元にも及ばない。

 2人が俺を黙って仲間にするだろうか?


「どう考えても虐められる、嫌がらせされる……女の敵は女、ホント勘弁してくれ」


 俺は王都に来たことを後悔した。心底悔やんだ。

 そして安易に勇者を見たいとか好奇心に負けたことも後悔した。


 好奇心は猫を殺す――まさに俺はそれを身をもって味わうことになったのである。

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